税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

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審査請求書の記載に当たっては 別紙 審査請求書の書き方 を参照してください 付表 1 号様式 ( 次葉 ) 正本原処分に係る異議申立ての状況 9 異議申立てをした場合 ( 該当する番号を で囲む ) 10 異議申立てをしていない場合 ( 該当する番号を で囲む ) 審査請求書 ( 次葉 ) 審査請求

03_税理士ラスパ_相続税法_答案用紙-1.indd

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平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 税金の時効 遺産未分割の場合の相続税の申告 http://www.up-firm.com 1

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合の所得税 ( 年末調整のみの給与所得者を含む ) 相続税 消費税 期限内確定申告の場合の法人税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 5 年 1 なお 贈与税は特則により申告書の提出期限から 6 年間まで更正 決定処分されます ( 相法 361) 平成 15 年度税制改正で 5 年から 6 年に延長されました 上記の 3 年や 5 年と違う理由は 贈与スキームが極端な租税回避に最もよく利用されるからです 例えば海外贈与事件が典型事例です 平成 11 年 12 月に贈与したケースでしたが 無申告なので平成 12 年 3 月 15 日が平成 11 年分贈与税の法定申告期限でした このため 課税庁は平成 17 年 3 月 15 日までに決定処分する必要がありました ( 当時は 5 年の除斥期間 ) そして実際 税務署は平成 17 年 3 月 2 日付で決定処分しました 有名な A 社 B 社方式の租税回避行為でも 5 年の時効に阻まれて課税できなかった判例があります ( 横浜地裁平成 13 年 3 月 17 日判決 ) 2 移転価格税制により更正処分できるのは 6 年前までという特例もあります ( 措置法 66 条の 416) 3 脱税と判断される場合 ( 偽りその他不正の行為があった場合の更正 決定 ) 法定申告期限から 7 年 相続税の申告書を提出した場合の調査では 税務署は被相続人や親族 相続人の過去 5~7 年分の預金記録や 資金移動を調べます これは 過去に贈与税を無申告で家族名義の預金や金融資産を作成していないかを確認す るためです 2. 納税者側の除斥期間 ( 通則法 23) 原則として 納税者側から税額を減少させる 更正の請求 が出来る期間は法定申告期限から 1 年間です 過年度の所得が過大であることが法定申告期限から 1 年を経過した後に判明した場合には 更正の請求期間は経過しています しかし 法定申告期限から 5 年が経過していない場合には 税務署長は職権により減額更正することが出来ます この場合は 税務署長に減額更正を求める嘆願書を提出することになります 嘆願書は書式が用意されている訳ではなく 各納税者が事情を説明した書類や資料を提出することになります また 税額を納税者側から減少させるのが 更正の請求 ですが 増加させるのを 修正申告 といいます 納税者が 修正申告を行うことができる期限はありませんから いつまでも出来ます http://www.up-firm.com 2

3. 登記しない土地の贈与資産の譲渡時期は 原則として契約日です ( 相基通 1 の 3 1 の 4 共 -8) 過去には身内の親族に不動産を贈与して 贈与税の除斥期間 (= 時効 ) の7 年 ( 国通法 70) が経過してから不動産の登記名義を変更する租税回避行為が横行しました まず 贈与契約書を作成して公証人役場で確定日付をもらいます しかし不動産登記簿の名義変更はすぐにしなくてはならないという規定が民法上にはありません 不動産の名義を変更すれば 登記簿を管理する法務局から税務署へデータが自動的に転送されています 税務署に所有権移転の事実関係を把握されないように 意図的に登記のタイミングを遅らせる時効制度の悪用です しかし 現状では通達で禁じられています 合理的な理由も無く不動産の所有権移転の登記名義変更が遅延した 場合は 契約時ではなく登記変更時に贈与があったと推定されます ( 相基通 1 の 3 1 の 4 共 -11) この通達が昭和 57 年に制定されてもまだ実行する人が多かったので 国税不服審判所の裁決に多数の事例が登場しています 平成 9 年 1 月 29 日裁決が 典型的な公正証書贈与事件です 税務署は平成 7 年 7 月 5 日付で 贈与税 1 億 935 万円と無申告加算税 1,640 万円を決定処分しました これは訴訟となりましたが 名古屋地裁平成 10 年 9 月 11 日判決 名古屋高裁平成 10 年 12 月 25 日判決 最高裁平成 11 年 6 月 24 日決定でも納税者敗訴の結論です 東京地裁の平成 18 年 7 月 19 日判決も同様の事件で 納税者が課税されています http://www.up-firm.com 3

遺産未分割の場合の相続税の申告 1. 概要相続税の申告期限までに相続人間の調整や遺産分割協議がまとまらない場合は 各相続人の個人別の相続財産金額が不明です 納税額も不明ですがこの場合は 民法の法定相続分 ( 民法 900) で相続したものと仮定して計算した申告書を提出して各個人が納付します ( 相法 55) 相続税の申告書は 10 ヶ月以内に 財産も債務も未分割のまま法定相続分で相続したと仮定して申告 納税します 原則としては法定相続人が共同で1 通の申告書を提出しますが 個人別でも提出できます 相続税の申告後でも遺産分割協議が成立してから 4 ヶ月以内ならば 還付請求できます 普通は 税金の還付を 求める更正の請求は法定申告期限から 1 年以内に制限されています ( 通則法 23) しかし相続税法上は 以下のケ ースに限定して 更正の請求の特則 という制度があります ( 相法 321 一 ~ 八 ) 1 遺産分割協議の成立 2 認知裁判の確定 相続人廃除の確定 胎児の出生 失踪宣告等による相続人の異動 3 遺留分減殺請求額や価額弁償額の確定 4 遺言書の発見 遺贈の放棄 5 財産の権利帰属に関する裁判の判決 遺産分割後の被認知者の価額支払請求額の確定 条件付遺贈の条件の成就等 上記のように 後日協議が決着したり調停 審判や判決が出てから実際の取得分が法律上確定します そして 法定相続分より実際取得分が多い人は修正申告 ( 相法 311) を 少ない人は更正の請求を 新たに納税義務のある人は期限後申告 ( 相法 301) をすることになります 既に期限内申告を済ませていて 相続人トータルでは財産総額や相続税の総額には変更がありません つまり税務署としては 損しないので 上記のような手続きをしてもしなくても自由 任意です しかし 更正の請求をして税務署が減額更正すると 他の相続人に対して特則の 更正 決定 をすることになります ( 相法 353) この場合は 特則の修正申告なので延滞税 ( 相法 512 一ハ ) や過少申告加算税は課税されません ( 事 務運営指針平成 12 年 7 月 3 日 ) http://www.up-firm.com 4

2. 争続による不利な取り扱い 相続税の申告期限である 10 ヶ月以内に遺産分割協議が成立しない場合は 以下のように一定の特例が利用でき ません 税法は 訴訟にならない円滑な遺産分割を推奨しています 1 小規模宅地等の評価減 ( 措置法 69 条の 44) 2 配偶者の税額軽減 ( 相法 19 条の 2 一部でも分割していれば適用できます) 3 農地等の相続税の納税猶予 ( 措置法 70 条の 6 農地のみの一部分割なら納税猶予できます) 4 延納や物納の際の適格性の問題 ( 相続登記ができないため 物納できません ) 12 の場合は 遺産未分割の場合でも一定の書類を税務署に提出しておけば 分割できる日から 4 ヶ月以内に限 り特例を適用する 更正の請求 ができます ( 措置令 40 条の 212) しかし 3 の場合は 未分割を救済する手続きがあ りません Reference Purpose Only 本レターに掲載している情報は 一般的なガイダンスに限定されています この文書は 個別具体的ケースに対する会計 税務のアドバイスをするものではありません 会計上の判断や税法の適用結果は 事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます また 解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります 実際に企画 実行される場合は 当事務所の担当者にご確認ください http://www.up-firm.com 5