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調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若

「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

働き方の現状と今後の課題

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調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

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派遣社員の評価に関する 派遣先担当者調査結果

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

回答者のうち 68% がこの一年間にクラウドソーシングを利用したと回答しており クラウドソーシングがかなり普及していることがわかる ( 表 2) また 利用したと回答した人(34 人 ) のうち 59%(20 人 ) が前年に比べて発注件数を増やすとともに 利用したことのない人 (11 人 ) のう

第1回「若手社員の仕事・会社に対する満足度」調査   

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

調査概要 1) 調査期間 2013 年 2 月 4 日 ~3 月 20 日 2) 調査方法 1 施設調査 2 個人調査とも 自記式調査票を郵送配布 回収 3) 調査対象 1 全国の 8,633 病院の看護管理代表者回収数 2,651 件 ( 回収率 30.7%) 2 本会会員 1 万人を無作為抽出有

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

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平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

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[2] 研修の対象と予算比率 社員研修を実施している対象は 新入社員研修 が 95.9% で圧倒的に多く 次いで 若手社員研修 81.1% 管理職研修 62.1% と続く 新入社員を含む若手社員を対象とした研修を実施する企業は多いが 次世代経営層を入れても 経営者研修を実施している企業は少ない 年間

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調査結果 1. 働き方改革 と聞いてイメージすること 男女とも 有休取得 残業減 が 2 トップに 次いで 育児と仕事の両立 女性活躍 生産性向上 が上位に 働き方改革 と聞いてイメージすることを聞いたところ 全体では 有給休暇が取りやすくなる (37.6%) が最も多く 次いで 残業が減る (36

調査方法 ; (1) 調査名 : 職場のコミュニケーションに関するアンケート ( 管理職用 一般社員用 ) (2) 調査対象 :1 日本生産性本部経営開発部主催の階層別教育プログラム等への参加者 2 企業 組織別研修参加者 (* 主旨に賛同いただいた企業 組織 ) (3) 調査期間 :2016 年

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 30~60 代の既婚男女 2. サンプル数 800 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2006 年 1 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 769 名 (96.1%

スライド 1


従業員満足度調査の活用

第2回「若手社員の仕事・会社に対する満足度」調査 

2. 有期契約労働者を雇用しているか 設問 1 パート アルバイト 契約社員 嘱託 派遣社員などの有期契約労働者を雇用していますか 選択肢 1 雇用している 2 雇用していないが 今後雇用する予定 3 雇用していないが 以前雇用していた 4 雇用しておらず 今後も雇用しない予定 全体

3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

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地域包括支援センターにおける運営形態による労働職場ストレス度等の調査 2015年6月

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第三章:保育士の就業・就職行動と意識

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最初に あなたの働く目的は何ですか? という質問をしたところ 20~50 代のすべての年代において 生活 家族のため と答えた人が最も多かった その割合は 20 代が 63.6% 30 代が 74.0% 40 代が 83.8% 50 代が 82.5% だった また 全年代共通で 第 2 位が 自由に

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中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

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調査実施の背景 わが国は今 人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため 女性の活躍を推進し経済成長を目指しています しかし 出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています 女性の活躍を促進させるためには 継続就業のための両立支援策ととも

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

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イノベーション活動に対する山梨県内企業の意識調査

自分がこだわりのある部分には 積極的にお金をかけたい (P.9) の学生では特に こだわり消費 への意識が高い 将来を見据える一方 必要と思うものには積極的に消費する姿勢あり 選ぶのが難しいモノを購入 契約するときに 情報を収集したり調べたりするのは面倒くさい (P.1) の学生でも半数近くが情報収

2005 年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要 2005 年 5 月 31 日 目次 調査方法...2 ファイル交換ソフトの利用者数の実態 ファイル交換ソフトの利用率とその変化 ファイル交換ソフトの利用者数とその変化...5 ファイル交換の実態 利用されてい


2016年11月_第7回ビジネスパーソン1000人調査(仕事と感謝編)

2017 年 9 月 8 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2017 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

小学生の英語学習に関する調査

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調査の背景と目的 健康長寿社会の実現がわが国の重要課題となる中 企業が人々の健康づくりに取り組むことを促す動きが広がっています また 健康経営 という観点から 企業が従業員の健康づくりに取り組んだり それを推進したりする動きもあります こうした動きと並行して 従業員の健康づくりへの取り組み状況等に関

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1. 職場愛着度 現在働いている勤務先にどの程度愛着を感じているかについて とても愛着がある を 10 点 どちらでもない を 5 点 まったく愛着がない を 0 点とすると 何点くらいになるか尋ねた 回答の分布は 5 点 ( どちらでもない ) と回答した人が 26.9% で最も多かった 次いで

調査の実施背景 近年の消費スタイルは 長引く不況下での節約志向の定着の中で 環境問題や節電が 心がけられたり 東日本大震災の復興支援を目的とした応援消費 支援消費が意識され るなど 単に 安くていいもの を基準としたコストパフォーマンスだけでは説明でき なくなってきています こうした動きの中で 消費

長く働き続けるための「学び直し」の実態と意識

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

(2) 予定される行動計画導入方法 ( 問 21 で 2 策定に向けて検討中である と答えた方へ ) 付問 1 一般事業主行動計画は どのような方法で導入する予定ですか ( はいくつでも ) 次世代育成支援対策推進法に基づく 一般事業主行動計画 を策定に向け検討中の事業所で どのような方法で導入する

関東地方の者が約半数を占める (45.3%) 続いて近畿地方 (17.4%) 中部地方 (15.0%) となっている 図表 2-5 地域構成 北海道 東北関東中部近畿中国四国九州 沖縄総数 (%) 100.0% 8.9% 45.3%

調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

求人サイト利用についての自主調査 雇用形態や制度の変化が急激に進む中 求人産業が大きく成長し 求人サイトの利用が高まっています 正社員 派遣 アルバイトといった雇用形態によって 求人サイトの利用状況や サイトに期待される機能は異なっているのでしょうか また 求職者はモバイルサイトと PC サイトをど

有価証券報告書・CG報告書比較分析

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1 教育研修費用総額と従業員 1 人当たりの教育研修費用 (1)1 社当たりの教育研修費用総額 1 社当たりの教育研修費用総額は 2014 年度は予算額 5,458 万円 ( 前回調査 5,410 万円 ) 同実績額 4,533 万円 ( 同 4,566 万円 ) であり 2015 年度は予算額 5

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『いい夫婦の日』夫婦に関するアンケート調査 【プレゼント編】調査報告書

無党派層についての分析 芝井清久 神奈川大学人間科学部教務補助職員 統計数理研究所データ科学研究系特任研究員 注 ) 図表は 不明 無回答 を除外して作成した 設問によっては その他 の回答も除外した この分析では Q13 で と答えた有権者を無党派層と定義する Q13 と Q15-1, 2 のクロ

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結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

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2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

警備員指導教育責任者の選任の基準 ( 警備員規模別 ) 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 9 人以下 (n=65) 26.2% 9.2% 6.2% 6.2% 49.2% 3.1% 2.6% 10~29 人 (n=116) 30.2% 13.8% 5.2% 8.6

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ECONOMY TOPICS

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滋賀県内企業動向調査 2018 年 月期特別項目結果 2019 年 1 月 滋賀銀行のシンクタンクである しがぎん経済文化センター ( 大津市 取締役社長中川浩 ) は 滋賀県内企業動向調査 (2018 年 月期 ) のなかで 特別項目 : 働き方改革 ~ 年次有給休暇の取得

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アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

Presentation Title

Press Release 仕事に対しては総じて前向きな結果に 仕事への期待 が過去最高で 仕事に対する夢 の有無も昨年より上昇 売り手市場や手厚い内定フォローの影響か調査開始以来減少傾向にあった 仕事への期待 と 仕事に対する夢 の有無について 今年は一転上昇に転じた 仕事への期待がある ( どち

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調査概要 調査テーマ : 若年層の写真 動画コミュニケーションに関する調査 調査対象者の条件 : スマートフォン利用者 /16 歳 25 歳男女計 1040サンプル 対象エリア : 全国 調査期間 :2015 年 12 月 23 日 24 日 調査方法 : スマートフォン端末で回答するインターネット

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Transcription:

仕事をする上でのコミュニケーション能力 各コミュニケーション能力の重要性認識と自己評価の属性別比較 上席主任研究員宮木由貴子目次 1. はじめに 26 2. 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 27 3. 個別にみたコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 29 4. 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーション 36 5. 考察 38 要旨 1 近年 職場におけるコミュニケーション能力が非常に重視されている 一言でコミュニケーション能力といっても 具体的にどのようなコミュニケーション能力が重視され その能力はどのように自己評価されているのだろうか これについて 本稿では 職場のコミュニケーションに関するアンケート調査 から 仕事をする上でのコミュニケーション能力に関する部分を分析した 2 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性の認識が最も高かったのは 話す能力である また 自己評価が高かったのは読む能力だった プレゼンテーション能力やリーダーシップ能力 自己主張能力などは重要性の認識 自己評価ともに高くなかった 3 各コミュニケーション能力を属性別にみると の女性管理職では総じて重要性の認識 自己評価ともに他の属性より高い傾向がある 4 今後の職場のコミュニケーション能力について考えるにあたっては 特に男性のコミュニケーション能力の向上に加え 過大 過小な自己評価についても考慮する必要がある また プレゼンテーション能力や自己主張能力といったコミュニケーション能力の重要性を再認識し 積極的に能力が発揮できる職場環境の構築が求められる キーワード : コミュニケーション 能力 職場 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 25

1. はじめに (1) 研究の背景と目的 今日 様々な調査において 仕事上重要な能力の1つとして コミュニケーション能力 が上位にあげられている しかし 一言でコミュニケーション能力といっても 企業で求められるそれは多岐にわたり 具体的にどのような能力がどのような人で重要ととらえられ 各人においてそれぞれのコミュニケーション能力が自分にどの程度あると思っているかについてまで明らかにされることは少ない そこで本稿では 2014 年に実施した 職場のコミュニケーションに関する調査 から コミュニケーション能力に関するものについて分析した 仕事をする上で必要と考えられるコミュニケーション能力として 本稿では図表 1にある 15 項目をとりあげている 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 図表 1 職場のコミュニケーションに関する調査項目書類やメールなどの文章を 読む 能力書類やメールなどの文章を 書く 能力人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力相手に応じて適切に 敬語を使う 能力人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力会話において相手の話を きいて理解する 能力講習や研修などにおいて きいて理解する 能力その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力グループをまとめる リーダーシップ 能力相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力相手の気持ちによりそう 共感 能力筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性 女性の活用推進や女性管理職の増加 非正規職員の増加といった動きにより 職場にいる人の背景やライフスタイル 価値観は多様となり 職場のコミュニケーションも複雑化する傾向にある 本稿では 各職場における今後のコミュニケーションの在り方を検討する一助とすべく 企業規模ごとに正規社員 非正規社員別 管理職 非管理職別 性別の比較を行うことで 各コミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価の実態を明らかにし 課題の発見を試みた 26 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

(2) 調査概要調査概要と主な属性は図表 2 のとおりである 図表 2 調査概要と主な属性 調査時期 : 2014 年 9 月 27~28 日 調査地域と対象 : 全国の企業に勤める 20~59 歳の男女 1,440 名 調査方法 : インターネット調査 ( 株式会社クロスマーケティング ) 正規社員 管理職 ( 部長 課長 ) 非管理職 ( 係長 役職なし ) 非正規社員 ( 単位 : 人 ) (20~300 人未満 ) (300 人以上 ) 合計 合計 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 合計 720 720 1,440 1,440 2. 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 まず 全体的な傾向をみるために 仕事をする上での各コミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価について 調査対象者全体の回答をみた 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性について 非常に重要である と まあ重要である の合計値が最も高かったのは 3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力だった ( 図表 3) これに 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力 15 筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性 13 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 9 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力が続いた 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力や 11グループをまとめる リーダーシップ 能力 14 相手の気持ちによりそう 共感 能力などは下位に位置している また 仕事をする上でのコミュニケーション能力の自己評価について 能力あり ( 十分あると思う と まああると思う の合計) とする割合は 上位から 2 書類やメールなどの文章を 読む 能力 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力 8その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力などとなっており 11グループをまとめる リーダーシップ 能力 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力 12 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力などは下位に位置した ( 図表 4) 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 27

図表 3 コミュニケーション能力の重要性の認識 0% 20% 40% 60% 80% 100% 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力 49.2 44.7 5.1 1.0 会話において相手の話を きいて理解する 能力 46.3 46.1 6.6 1.0 筋道を立ててわかりやすく物事を伝える 論理性 38.9 52.4 7.4 1.3 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 35.3 55.1 8.3 1.3 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力 38.1 51.9 8.7 1.4 書類やメールなどの文章を 読む 能力 31.7 57.8 8.1 2.4 話す相手に応じて適切に 敬語を使う 能力 30.8 57.4 10.3 1.5 その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力 33.8 54.1 10.6 1.6 書類やメールなどの文章を 書く 能力 32.5 54.9 10.3 2.3 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力 29.9 55.9 12.2 2.1 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力 26.9 58.1 12.9 2.1 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 26.0 57.8 14.2 2.1 相手の気持ちによりそう 共感 能力 23.9 57.7 16.5 1.9 グループをまとめる リーダーシップ 能力 27.9 50.6 18.0 3.5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション ( 発表する ) 能力 29.3 49.2 17.5 4.0 非常に重要であるまあ重要であるあまり重要ではないまったく重要ではない 図表 4 コミュニケーション能力の自己評価 0% 20% 40% 60% 80% 100% 書類やメールなどの文章を 読む 能力 14.3 62.6 19.2 3.9 会話において相手の話を きいて理解する 能力 14.0 56.8 24.6 4.6 その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力 15.9 54.8 24.3 5.0 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力 12.2 56.7 26.2 4.9 話す相手に応じて適切に 敬語を使う 能力 15.4 52.8 26.4 5.4 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力 11.3 55.6 28.2 5.0 書類やメールなどの文章を 書く 能力 12.7 53.8 28.1 5.3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力 10.3 48.8 32.7 8.2 筋道を立ててわかりやすく物事を伝える 論理性 10.7 47.7 35.1 6.6 相手の気持ちによりそう 共感 能力 9.8 48.2 35.8 6.2 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力 8.9 47.4 35.6 8.1 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 9.9 45.6 35.3 9.3 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 6.5 43.7 40.4 9.5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション ( 発表する ) 能力 7.9 34.8 39.7 17.6 グループをまとめる リーダーシップ 能力 7.5 34.8 39.5 18.2 十分あると思うまああると思うやや不足していると思う非常に不足していると思う 28 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

3. 個別にみたコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 (1) 読む 書く 各コミュニケーション能力について 企業規模ごとに正規社員 非正規社員別 管理職 非管理職別 性別に 重要性の認識 ( 非常に重要である ) と自己評価 ( ( 能力が ) 十分あると思う ) についてみる 1 書類やメールなどの文章を 読む 能力について 非常に重要である とした人が最も多かったのはの女性非正規社員で 44.2% を占めた ( 図表 5) これにの女性管理職 の女性非管理職が続いた 一方 読む能力が 十分あると思う と回答した人はの女性管理職で21.7% であるのに対し の女性非正規社員との女性非管理職では15% 程度だった 一方 2 書類やメールなどの文章を 書く 能力について 非常に重要である と回答した割合は の男性管理職で44.2% と最も多い これにの女性管理職 の女性非管理職 の女性管理職が僅差で続いた 全体的にの女性で読む 書く能力を重視する人が多い 自己評価は 読む能力とかなり近い傾向を示しており 管理職で比較的高い 読む能力 書く能力ともに 自己評価はの男性非正規社員との女性非管理職 の男性非管理職で低かった 図表 5 読む 書く 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 書類やメールなどの文章を 読む 能力 < 十分ある > 書類やメールなどの文章を 書く 能力 < 十分ある > 50 40.0 40 35.8 30 25.8 24.2 男26.7 25.8 28.3 30.0 33.3 31.7 36.7 44.2 43.3 43.3 24.2 26.7 40.8 41.7 25.0 25.0 44.2 38.3 20 10 14.5 12.8 18.5 17.6 12.9 12.2 18.3 16.7 8.5 7.4 7.7 5.6 18.8 17.1 20.8 18.3 21.7 16.7 9.2 6.7 14.3 12.2 11.8 9.6 15.0 12.6 0 女性女性女性男性男性性女性男性男性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 29

(2) 話す 敬語を使う プレゼンテーションする続いて 3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力の重要性の認識についてみると ともに女性管理職では6 割を超えた ( 図表 6) の女性非管理職と の女性非正規社員でも6 割近くに及ぶ 自己評価については の女性管理職で 十分あると思う (19.3%) とする割合が最も多い これにの男性管理職 の女性非正規社員 の女性管理職が続いた また 4 相手に応じて適切に 敬語を使う 能力については ともに女性非正規社員で 非常に重要である とする割合が高い 自己評価は の女性管理職に次いで の女性非正規社員で高い 一方 の男性非管理職の自己評価は低かった さらに 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力についてみると 重要性の認識はの女性管理職で 45.0% と高いが 自己評価はの男性管理職が僅差で最も高い また 全体的にの女性は 非常に重要である とする割合がの女性に比べて高かった 図表 6 話す 敬語を使う プレゼンテーションする 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力 話す相手に応じて適切に 敬語を使う 能力 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力 < 十分ある > < 十分ある > < 十分ある > 70 64.2 61.7 60 58.3 56.7 57.5 53.3 50 45.0 48.3 46.7 44.2 40.8 42.5 39.2 38.3 40.8 36.7 40 22.5 38.3 38.3 35.0 34.2 35.0 34.2 29.2 27.5 27.5 30 29.2 16.7 25.0 20.0 26.7 24.2 22.5 19.2 19.2 18.5 23.5 20 12.8 21.0 20.8 16.7 19.3 16.9 14.2 15.0 8.8 11.7 14.3 15.1 6.8 12.6 15.0 6.8 11.1 11.9 10 9.2 14.2 6.9 4.2 6.2 14.4 8.0 9.3 5.8 6.0 4.2 8.0 6.3 8.0 4.2 0 3.8 1.0 男男男性性性男性男性男性女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 30 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

(3) 相手の話をきいて理解する 講習や研修をきいて理解する 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力に対する重要性の認識は の女性管理職で最も高く これに の女性非正規社員が同割合で続く ( 図表 7) 重要性の認識が最も低かったのはの男性管理職である 自己評価については ここでもの女性管理職で最も高く これにの女性非正規社員が続いた 一方 7 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力については 人の話をきいて理解する能力に比べると重要性の認識が全体的に低い 最も高かったの女性管理職においても その割合は4 割程度である ただし 自己評価については 概ね人の話をきいて理解する能力の自己評価と同程度となっていた 人とのコミュニケーションにおいて きく のと 聴衆の1 人として一方向的に発せられる情報を きく のとでは きく 姿勢において大きな違いがある 重要性の認識についてはかなりの差があるものの 双方の自己評価に大きな差がないのは 自分に後者の きく 能力があるかについて 普段あまり意識していないことも影響しているのかもしれない 図表 7 相手の話をきいて理解する 講習や研修をきいて理解する 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 会話において相手の話を きいて理解する 能力 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力 70 64.2 60.0 60.0 60 54.2 50.0 50 44.2 42.5 43.3 40.8 40 37.5 37.5 36.7 35.8 33.3 31.7 30.0 30 27.5 26.7 22.5 22.5 21.7 18.3 20.8 25.8 20 17.6 17.5 17.5 16.8 10.3 19.3 11.1 18.3 12.5 7.6 14.4 10.1 12.8 18.3 10 9.4 16.2 24.2 13.4 9.6 10.2 3.5 5.8 0 4.4 2.8 男男性性女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性男性男性男性正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 31

(4) 空気を読む 情報共有する職場においては 8その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力も求められる 重要性の認識は の女性非正規社員 の女性非正規社員 の女性非管理職 の女性管理職の順で高く 他の項目で目立っていたの女性管理職が目立たない結果となった ( 図表 8) の女性管理職はコミュニケーションに関する多くの項目で重要性の認識が他より高かったが 空気を読む能力については相対的に高くなかった ただし 自己評価についてはの女性非正規社員に次いでの女性管理職で高く 能力はあると認識している人は少なくない 一方 空気を読む能力の自己評価が低いのは の男性非正規社員との男性非管理職だった また 9 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力についてみると の女性では重要性の認識が一様に高いが の男性非管理職や男性非正規社員では低い また の男性管理職や男性非正規社員でも重要性の認識の低さが目立つ 自己評価が低いのはの女性非管理職との男性非管理職が同割合で最下位だった の女性を除くと 周囲の雰囲気を感じとり 報告 連絡 相談といった情報共有を行うのは 男性より女性で積極的に行われているようである 図表 8 空気を読む 情報共有する 能力の重要性の認識と自己評価 (%) その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力 60 50 48.3 40.8 40 35.0 34.2 30.8 30.8 30 28.3 26.7 24.2 21.7 20.3 20 12.8 6.2 13.4 12.7 10 17.8 10.3 7.7 2.5 3.6 0 男性女性女性男性男性45.0 41.7 女性29.2 37.5 38.3 52.5 22.5 14.2 24.2 14.5 13.3 女性23.5 23.3 28.3 6.8 2.5 44.2 女性男性男性52.5 16.8 15.1 20.0 30.0 男性14.7 8.5 47.5 50.8 女性管理職非管理職管理職非管理職 25.8 15.1 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 32 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

(5) リーダーシップ 自己主張 11グループをまとめる リーダーシップ 能力については その性質上 管理職を中心に特に求められる能力だが とりわけの女性管理職では重要性の認識 自己評価ともに他より高い ( 図表 9) 十分ある とする割合は の女性管理職で2 割近くに及ぶが の男性では1 割強にとどまっている また 管理職の予備軍ともいえる非管理職についてみると では重要性の認識 自己評価ともに女性より男性で高いが の非管理職では男性より女性で高いとの結果を得た さらに 12 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 いわゆる アサーティブ コミュニケーション の能力についてみると 重要性の認識はここでもの女性管理職で突出していた 自己評価はの女性非正規社員で最も高かった の男性非管理職との男性非正規社員は 並んで自己評価が最下位となっており うまく自己主張をする能力がないと考えている人が多い様子が浮き彫りとなった 全体として リーダーシップ 自己主張ともに それらの能力を求められる管理職では重要性の認識 自己評価がもう少し高くてもよいのではないかという印象を受ける 図表 9 リーダーシップ 自己主張 能力の重要性の認識と自己評価 (%) グループをまとめる リーダーシップ 能力 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 50 40 35.0 30.0 30 20.8 20 10 6.1 4.3 0 男性女性34.2 11.0 7.6 23.3 男性25.0 22.5 19.2 18.3 8.8 8.5 1.7 0.9 男性13.3 2.9 0.9 23.3 29.2 9.2 6.0 43.3 男性25.0 11.7 8.3 45.8 40.0 19.3 10.9 23.3 男性女性女性女性15.8 1.7 0.9 27.5 31.7 女性17.5 20.8 7.8 4.3 6.3 3.6 男性28.3 33.3 女性管理職非管理職管理職非管理職 12.8 10.1 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 33

男性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 Report (6) 調整 感情コントロール 10 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力についてみると 重要性の認識はの女性管理職 の女性非管理職で多く これにの女性管理職 の女性非正規社員が続くなど 全体的に女性で高い ( 図表 10) 男性についてみると の男性管理職が 35.0% で男性の中では最も高いが それ以外は重要性の認識が低い 自己評価については の女性非管理職との男性非管理職が同割合で最下位だった 13 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力の重要性の認識については の女性全般との女性非正規社員で特に回答が多い 一方で男性は全体的に重要性の認識が低かった 自己評価はの女性管理職で最も高く の男性非正規社員で最も低い 筆者が 2010 年に実施した 職場のコミュニケーションに関する調査 の自由回答では 女性が職場で感情的に行動する旨を指摘する男性が散見されたが 今回のデータを見る限り 少なくとも女性は感情をコントロールすることの重要性を認識しているように見える また 男性の感情コントロールの自己評価が必ずしも女性より高いわけではない点も 一概に 男性は 女性は と言えないことを物語っている 図表 10 調整 感情コントロール 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 52.5 51.7 50 40 38.3 38.3 36.7 46.7 35.0 43.3 40.0 45.0 38.3 60 男30 20 10 0 25.0 23.3 7.7 6.0 性25.8 25.0 25.0 14.3 8.3 男性9.2 7.8 女性5.9 17.5 25.8 3.6 2.6 1.8 男性26.7 女性10.0 9.0 27.5 14.2 11.7 23.3 24.2 20.2 15.0 男性8.3 2.6 26.7 20.0 12.0 13.4 10.3 6.9 男性11.8 11.4 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 34 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

(7) 共感 論理性 14 相手の気持ちによりそう 共感 能力は 一様に女性より男性で重要性の認識が低く 特にの男性非正規社員の回答は1 割にとどまった ( 図表 11) 重要性の認識が高かったのは中小 ともに女性非正規社員で いずれも 35% 以上だった 自己評価はの女性全般との女性非正規社員で高かった 自己評価が最も低いのはの男性非管理職で 能力が 十分ある と回答した人は 1.7% だった 最後に 15 筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性 についてみると 重要性の認識はの女性管理職で最も高く 6 割近くを占めたが 自己評価としてはの男性管理職が最も高く 2 割近くが 十分ある と回答しており の女性管理職より高い割合を占めた 図表 11 共感能力 論理性 の重要性の認識と自己評価 (%) 相手の気持ちによりそう 共感 能力 筋道を立ててわかりやすく物事を伝える 論理性 60 57.5 50 40 30 20 10 0 70 男性15.0 27.5 6.8 25.8 43.3 10.3 13.4 8.5 20.0 男性38.3 12.7 8.5 25.0 35.0 10.0 5.1 5.1 22.5 男性4.6 4.6 37.5 35.0 15.8 10.0 20.8 45.0 男性女性女性女性18.3 12.5 33.3 女性16.8 14.2 16.7 32.5 男性9.2 1.7 32.5 49.2 女性14.3 9.2 18.3 28.3 男性6.0 6.0 36.7 50.0 女性管理職非管理職管理職非管理職 16.1 11.8 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 35

4. 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーション 企業規模ごとの正規社員 非正規社員別 管理職 非管理職別 性別の全体的な傾向をみるべく 各コミュニケーション能力の自己評価の結果を 因子分析結果を元に 基本 協調型コミュニケーション 項目と 発展 統率型コミュニケーション 項目に分類した ( 図表 12) 基本 協調型コミュニケーションとは 読む 書く 話すなどの基本的なコミュニケーション能力に加え 敬語使いや共感などが含まれる 発展 統率型コミュニケーションはプレゼンテーション能力や調整能力 リーダーシップ 自己主張など グループを統率したり積極的に主張をするコミュニケーション能力群である 図表 12 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーションの因子分析結果 基本 協調 発展 統率 1 書類やメールなどの文章を 読む 能力.885 -.082 2 書類やメールなどの文章を 書く 能力.668.130 3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力.432.409 4 相手に応じて適切に 敬語を使う 能力.656.074 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力.066.671 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力.849 -.018 7 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力.894 -.054 8その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力.538.183 9 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力.462.357 10 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力.162.665 11グループをまとめる リーダーシップ 能力 -.164.936 12 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力.122.641 13 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力.321.291 14 相手の気持ちによりそう 共感 能力.488.175 15 筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性.421.401 因子抽出法 : 最尤法 回転法 : Kaiser の正規化を伴うフ ロマックス法 3 回の反復で回転が収束 この結果を元に 各項目の自己評価について 十分ある に4 点 まああると思う に3 点 やや不足していると思う に2 点 非常に不足していると思う に1 点を付与し それぞれを合計して 基本 協調型コミュニケーション 得点と 発展 統率型コミュニケーション 得点を作成した (Cronbachα 係数はそれぞれ 0.926 0.844) この 2つの得点を それぞれサンプルの分布が等分に近くなるように高得点群と低得点群に2 分し 基本高群かつ発展高群 基本高群かつ発展低群 基本低群かつ発展高群 基本低群かつ発展低群 の4 区分に分けて属性別にみたものが図表 13 である 基本 協調型コミュニケーション 能力も 発展 統率型コミュニケーション 能力もともに自己評価が高い 基本高群かつ発展高群 が最も多いのはの女性管理職で 61.2% を占めている これにの男性管理職が 56.3% で続いている 以下 の管理職女性 (50.9%) の管理職男性 (45.6%) の女性非正規社員 (44.1%) と続く 一方 基本 協調型コミュニケーション 能力も 36 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

発展 統率型コミュニケーション 能力も ともに自己評価が低い 基本低群かつ発展低群 が多いのはの男性非正規社員 (58.7%) の男性非正規社員 (55.2%) の女性非正規社員(52.1%) だった また の男性管理職では 基本 協調型コミュニケーション 能力は低いが 発展 統率型コミュニケーション 能力は高いとの自己評価をしている 基本低群かつ発展高群 が 21.0% と 他と比べて若干多い 一方 基本 協調型コミュニケーション 能力は高いが 発展 統率型コミュニケーション 能力が低いとの自己評価をしている 基本高群かつ発展低群 はいずれの職位においても男性より女性で多かった なお 属性ごとに基本 協調的コミュニケーション能力と発展 統率コミュニケーション能力の高低と職場の人間関係満足度との関係について分析を試みた それぞれのサンプル数が小さくなるために参考値として検証したが すべての属性でコミュニケーション能力の自己評価が高いと人間関係満足度も高いとの結果を得ている ( 図表省略 ) コミュニケーション能力の自己評価と人間関係の満足度に関連性が認められたことから 各人のコミュニケーション能力の自己評価を向上させることで職場の人間関係満足度が向上する可能性が示唆された 100% 図表 13 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーションの分布 80% 60% 40% 20% 36.8 13.2 4.4 45.6 25.0 17.9 6.3 50.9 47.6 45.0 52.1 58.7 15.0 17.1 8.3 8.7 11.0 7.6 3.3 16.7 27.6 29.0 29.3 22.9 19.3 18.1 14.7 21.0 6.0 3.4 61.2 56.3 40.7 48.6 55.2 14.8 9.9 5.4 11.1 9.5 3.8 36.0 33.3 31.4 34.3 12.7 8.8 44.1 基本低 発展低 基本低 発展高 基本高 発展低 基本高 発展高 0% 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 管理職 非管理職 管理職 非管理職 正規社員 非正規社員 正規社員 非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 37

5. 考察 以上の結果から いくつかの示唆や課題が得られた まず 個々のコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価について随所で属性別に差がみられたが 特にの女性管理職と比べての男性非管理職の値が低かった また の非管理職における男女差と比べても の非管理職における男女差が大きい 非管理職は将来の管理職予備軍だが では男性の非管理職の意識が低い点が目立った 現在 女性活用 というスローガンのもと 女性のスキルアップやキャリアアップが注目されているが 今回の調査結果をみる限り 男性にも積極的にスキルアップやキャリアアップの意識喚起をしなければ 企業を担う次世代の育成として十分ではないだろう 今後 企業においては男性を中心にコミュニケーション能力への意識を喚起し その能力向上に取り組むことが 重要な課題であると考える また の女性管理職におけるコミュニケーションの自己評価が高い点についても注視する必要がある 従業員満足度調査などでも 管理職が非管理職に比べてかなり肯定的な職場環境評価をする傾向があり 同一の職場に対する評価に齟齬が生じるケースが指摘されている 今回のコミュニケーション能力の評価はあくまで自己評価であり 実際の能力の有無ではない 自分のコミュニケーション能力を客観的に評価することは難しいが 実際の能力の差以外に 過大 過小評価も影響していると推察される 職場に対する認識のギャップを最小化するためにも 管理職と非管理職 非正規社員の相互理解を促進し 多様な立場の人との活発なコミュニケーションを通じて自己のコミュニケーション能力を多方面から客観視できる職場環境が求められる さらに プレゼンテーションや自己主張といった能力に対する重要性の認識があまり高くなかった点も今後の課題である 本稿で国際比較はできないが 日本人の性質上 自分を打ち出すことを美徳としてこなかったコミュニケーションスタイルが 今も積極的な発言を阻んではいないだろうか 周囲との軋轢を最小限にしつつ きちんと発言ができる環境を形成し 業務遂行や人間関係形成において必要な情報発信をすべきであるとの認識を持つ人が増えることで 職場のコミュニケーションも活性化されるのではないだろうか 職場において必要とされるコミュニケーション能力は 業界 業態や男女比率などの各職場の特性に応じて様々であり 今回の調査結果が各職場にそのまま当てはまるものではないが まずはこれらの実態について各職場で意識をし それぞれのコミュニケーション能力の見直しと能力開発の再検討を行っていくことで 従業員満足度の向上や職場のコミュニケーションの円滑化が見込めるのではないだろうか ( 研究開発室みやきゆきこ ) 38 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部