仕事をする上でのコミュニケーション能力 各コミュニケーション能力の重要性認識と自己評価の属性別比較 上席主任研究員宮木由貴子目次 1. はじめに 26 2. 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 27 3. 個別にみたコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 29 4. 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーション 36 5. 考察 38 要旨 1 近年 職場におけるコミュニケーション能力が非常に重視されている 一言でコミュニケーション能力といっても 具体的にどのようなコミュニケーション能力が重視され その能力はどのように自己評価されているのだろうか これについて 本稿では 職場のコミュニケーションに関するアンケート調査 から 仕事をする上でのコミュニケーション能力に関する部分を分析した 2 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性の認識が最も高かったのは 話す能力である また 自己評価が高かったのは読む能力だった プレゼンテーション能力やリーダーシップ能力 自己主張能力などは重要性の認識 自己評価ともに高くなかった 3 各コミュニケーション能力を属性別にみると の女性管理職では総じて重要性の認識 自己評価ともに他の属性より高い傾向がある 4 今後の職場のコミュニケーション能力について考えるにあたっては 特に男性のコミュニケーション能力の向上に加え 過大 過小な自己評価についても考慮する必要がある また プレゼンテーション能力や自己主張能力といったコミュニケーション能力の重要性を再認識し 積極的に能力が発揮できる職場環境の構築が求められる キーワード : コミュニケーション 能力 職場 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 25
1. はじめに (1) 研究の背景と目的 今日 様々な調査において 仕事上重要な能力の1つとして コミュニケーション能力 が上位にあげられている しかし 一言でコミュニケーション能力といっても 企業で求められるそれは多岐にわたり 具体的にどのような能力がどのような人で重要ととらえられ 各人においてそれぞれのコミュニケーション能力が自分にどの程度あると思っているかについてまで明らかにされることは少ない そこで本稿では 2014 年に実施した 職場のコミュニケーションに関する調査 から コミュニケーション能力に関するものについて分析した 仕事をする上で必要と考えられるコミュニケーション能力として 本稿では図表 1にある 15 項目をとりあげている 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 図表 1 職場のコミュニケーションに関する調査項目書類やメールなどの文章を 読む 能力書類やメールなどの文章を 書く 能力人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力相手に応じて適切に 敬語を使う 能力人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力会話において相手の話を きいて理解する 能力講習や研修などにおいて きいて理解する 能力その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力グループをまとめる リーダーシップ 能力相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力相手の気持ちによりそう 共感 能力筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性 女性の活用推進や女性管理職の増加 非正規職員の増加といった動きにより 職場にいる人の背景やライフスタイル 価値観は多様となり 職場のコミュニケーションも複雑化する傾向にある 本稿では 各職場における今後のコミュニケーションの在り方を検討する一助とすべく 企業規模ごとに正規社員 非正規社員別 管理職 非管理職別 性別の比較を行うことで 各コミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価の実態を明らかにし 課題の発見を試みた 26 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部
(2) 調査概要調査概要と主な属性は図表 2 のとおりである 図表 2 調査概要と主な属性 調査時期 : 2014 年 9 月 27~28 日 調査地域と対象 : 全国の企業に勤める 20~59 歳の男女 1,440 名 調査方法 : インターネット調査 ( 株式会社クロスマーケティング ) 正規社員 管理職 ( 部長 課長 ) 非管理職 ( 係長 役職なし ) 非正規社員 ( 単位 : 人 ) (20~300 人未満 ) (300 人以上 ) 合計 合計 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 男性 120 120 240 女性 120 120 240 480 合計 720 720 1,440 1,440 2. 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 まず 全体的な傾向をみるために 仕事をする上での各コミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価について 調査対象者全体の回答をみた 仕事をする上でのコミュニケーション能力の重要性について 非常に重要である と まあ重要である の合計値が最も高かったのは 3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力だった ( 図表 3) これに 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力 15 筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性 13 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 9 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力が続いた 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力や 11グループをまとめる リーダーシップ 能力 14 相手の気持ちによりそう 共感 能力などは下位に位置している また 仕事をする上でのコミュニケーション能力の自己評価について 能力あり ( 十分あると思う と まああると思う の合計) とする割合は 上位から 2 書類やメールなどの文章を 読む 能力 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力 8その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力などとなっており 11グループをまとめる リーダーシップ 能力 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力 12 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力などは下位に位置した ( 図表 4) 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 27
図表 3 コミュニケーション能力の重要性の認識 0% 20% 40% 60% 80% 100% 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力 49.2 44.7 5.1 1.0 会話において相手の話を きいて理解する 能力 46.3 46.1 6.6 1.0 筋道を立ててわかりやすく物事を伝える 論理性 38.9 52.4 7.4 1.3 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 35.3 55.1 8.3 1.3 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力 38.1 51.9 8.7 1.4 書類やメールなどの文章を 読む 能力 31.7 57.8 8.1 2.4 話す相手に応じて適切に 敬語を使う 能力 30.8 57.4 10.3 1.5 その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力 33.8 54.1 10.6 1.6 書類やメールなどの文章を 書く 能力 32.5 54.9 10.3 2.3 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力 29.9 55.9 12.2 2.1 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力 26.9 58.1 12.9 2.1 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 26.0 57.8 14.2 2.1 相手の気持ちによりそう 共感 能力 23.9 57.7 16.5 1.9 グループをまとめる リーダーシップ 能力 27.9 50.6 18.0 3.5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション ( 発表する ) 能力 29.3 49.2 17.5 4.0 非常に重要であるまあ重要であるあまり重要ではないまったく重要ではない 図表 4 コミュニケーション能力の自己評価 0% 20% 40% 60% 80% 100% 書類やメールなどの文章を 読む 能力 14.3 62.6 19.2 3.9 会話において相手の話を きいて理解する 能力 14.0 56.8 24.6 4.6 その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力 15.9 54.8 24.3 5.0 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力 12.2 56.7 26.2 4.9 話す相手に応じて適切に 敬語を使う 能力 15.4 52.8 26.4 5.4 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力 11.3 55.6 28.2 5.0 書類やメールなどの文章を 書く 能力 12.7 53.8 28.1 5.3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力 10.3 48.8 32.7 8.2 筋道を立ててわかりやすく物事を伝える 論理性 10.7 47.7 35.1 6.6 相手の気持ちによりそう 共感 能力 9.8 48.2 35.8 6.2 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力 8.9 47.4 35.6 8.1 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 9.9 45.6 35.3 9.3 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 6.5 43.7 40.4 9.5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション ( 発表する ) 能力 7.9 34.8 39.7 17.6 グループをまとめる リーダーシップ 能力 7.5 34.8 39.5 18.2 十分あると思うまああると思うやや不足していると思う非常に不足していると思う 28 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部
3. 個別にみたコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価 (1) 読む 書く 各コミュニケーション能力について 企業規模ごとに正規社員 非正規社員別 管理職 非管理職別 性別に 重要性の認識 ( 非常に重要である ) と自己評価 ( ( 能力が ) 十分あると思う ) についてみる 1 書類やメールなどの文章を 読む 能力について 非常に重要である とした人が最も多かったのはの女性非正規社員で 44.2% を占めた ( 図表 5) これにの女性管理職 の女性非管理職が続いた 一方 読む能力が 十分あると思う と回答した人はの女性管理職で21.7% であるのに対し の女性非正規社員との女性非管理職では15% 程度だった 一方 2 書類やメールなどの文章を 書く 能力について 非常に重要である と回答した割合は の男性管理職で44.2% と最も多い これにの女性管理職 の女性非管理職 の女性管理職が僅差で続いた 全体的にの女性で読む 書く能力を重視する人が多い 自己評価は 読む能力とかなり近い傾向を示しており 管理職で比較的高い 読む能力 書く能力ともに 自己評価はの男性非正規社員との女性非管理職 の男性非管理職で低かった 図表 5 読む 書く 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 書類やメールなどの文章を 読む 能力 < 十分ある > 書類やメールなどの文章を 書く 能力 < 十分ある > 50 40.0 40 35.8 30 25.8 24.2 男26.7 25.8 28.3 30.0 33.3 31.7 36.7 44.2 43.3 43.3 24.2 26.7 40.8 41.7 25.0 25.0 44.2 38.3 20 10 14.5 12.8 18.5 17.6 12.9 12.2 18.3 16.7 8.5 7.4 7.7 5.6 18.8 17.1 20.8 18.3 21.7 16.7 9.2 6.7 14.3 12.2 11.8 9.6 15.0 12.6 0 女性女性女性男性男性性女性男性男性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 29
(2) 話す 敬語を使う プレゼンテーションする続いて 3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力の重要性の認識についてみると ともに女性管理職では6 割を超えた ( 図表 6) の女性非管理職と の女性非正規社員でも6 割近くに及ぶ 自己評価については の女性管理職で 十分あると思う (19.3%) とする割合が最も多い これにの男性管理職 の女性非正規社員 の女性管理職が続いた また 4 相手に応じて適切に 敬語を使う 能力については ともに女性非正規社員で 非常に重要である とする割合が高い 自己評価は の女性管理職に次いで の女性非正規社員で高い 一方 の男性非管理職の自己評価は低かった さらに 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力についてみると 重要性の認識はの女性管理職で 45.0% と高いが 自己評価はの男性管理職が僅差で最も高い また 全体的にの女性は 非常に重要である とする割合がの女性に比べて高かった 図表 6 話す 敬語を使う プレゼンテーションする 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力 話す相手に応じて適切に 敬語を使う 能力 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力 < 十分ある > < 十分ある > < 十分ある > 70 64.2 61.7 60 58.3 56.7 57.5 53.3 50 45.0 48.3 46.7 44.2 40.8 42.5 39.2 38.3 40.8 36.7 40 22.5 38.3 38.3 35.0 34.2 35.0 34.2 29.2 27.5 27.5 30 29.2 16.7 25.0 20.0 26.7 24.2 22.5 19.2 19.2 18.5 23.5 20 12.8 21.0 20.8 16.7 19.3 16.9 14.2 15.0 8.8 11.7 14.3 15.1 6.8 12.6 15.0 6.8 11.1 11.9 10 9.2 14.2 6.9 4.2 6.2 14.4 8.0 9.3 5.8 6.0 4.2 8.0 6.3 8.0 4.2 0 3.8 1.0 男男男性性性男性男性男性女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 30 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部
(3) 相手の話をきいて理解する 講習や研修をきいて理解する 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力に対する重要性の認識は の女性管理職で最も高く これに の女性非正規社員が同割合で続く ( 図表 7) 重要性の認識が最も低かったのはの男性管理職である 自己評価については ここでもの女性管理職で最も高く これにの女性非正規社員が続いた 一方 7 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力については 人の話をきいて理解する能力に比べると重要性の認識が全体的に低い 最も高かったの女性管理職においても その割合は4 割程度である ただし 自己評価については 概ね人の話をきいて理解する能力の自己評価と同程度となっていた 人とのコミュニケーションにおいて きく のと 聴衆の1 人として一方向的に発せられる情報を きく のとでは きく 姿勢において大きな違いがある 重要性の認識についてはかなりの差があるものの 双方の自己評価に大きな差がないのは 自分に後者の きく 能力があるかについて 普段あまり意識していないことも影響しているのかもしれない 図表 7 相手の話をきいて理解する 講習や研修をきいて理解する 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 会話において相手の話を きいて理解する 能力 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力 70 64.2 60.0 60.0 60 54.2 50.0 50 44.2 42.5 43.3 40.8 40 37.5 37.5 36.7 35.8 33.3 31.7 30.0 30 27.5 26.7 22.5 22.5 21.7 18.3 20.8 25.8 20 17.6 17.5 17.5 16.8 10.3 19.3 11.1 18.3 12.5 7.6 14.4 10.1 12.8 18.3 10 9.4 16.2 24.2 13.4 9.6 10.2 3.5 5.8 0 4.4 2.8 男男性性女性女性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 男性男性男性男性正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 31
(4) 空気を読む 情報共有する職場においては 8その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力も求められる 重要性の認識は の女性非正規社員 の女性非正規社員 の女性非管理職 の女性管理職の順で高く 他の項目で目立っていたの女性管理職が目立たない結果となった ( 図表 8) の女性管理職はコミュニケーションに関する多くの項目で重要性の認識が他より高かったが 空気を読む能力については相対的に高くなかった ただし 自己評価についてはの女性非正規社員に次いでの女性管理職で高く 能力はあると認識している人は少なくない 一方 空気を読む能力の自己評価が低いのは の男性非正規社員との男性非管理職だった また 9 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力についてみると の女性では重要性の認識が一様に高いが の男性非管理職や男性非正規社員では低い また の男性管理職や男性非正規社員でも重要性の認識の低さが目立つ 自己評価が低いのはの女性非管理職との男性非管理職が同割合で最下位だった の女性を除くと 周囲の雰囲気を感じとり 報告 連絡 相談といった情報共有を行うのは 男性より女性で積極的に行われているようである 図表 8 空気を読む 情報共有する 能力の重要性の認識と自己評価 (%) その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力 60 50 48.3 40.8 40 35.0 34.2 30.8 30.8 30 28.3 26.7 24.2 21.7 20.3 20 12.8 6.2 13.4 12.7 10 17.8 10.3 7.7 2.5 3.6 0 男性女性女性男性男性45.0 41.7 女性29.2 37.5 38.3 52.5 22.5 14.2 24.2 14.5 13.3 女性23.5 23.3 28.3 6.8 2.5 44.2 女性男性男性52.5 16.8 15.1 20.0 30.0 男性14.7 8.5 47.5 50.8 女性管理職非管理職管理職非管理職 25.8 15.1 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 32 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部
(5) リーダーシップ 自己主張 11グループをまとめる リーダーシップ 能力については その性質上 管理職を中心に特に求められる能力だが とりわけの女性管理職では重要性の認識 自己評価ともに他より高い ( 図表 9) 十分ある とする割合は の女性管理職で2 割近くに及ぶが の男性では1 割強にとどまっている また 管理職の予備軍ともいえる非管理職についてみると では重要性の認識 自己評価ともに女性より男性で高いが の非管理職では男性より女性で高いとの結果を得た さらに 12 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 いわゆる アサーティブ コミュニケーション の能力についてみると 重要性の認識はここでもの女性管理職で突出していた 自己評価はの女性非正規社員で最も高かった の男性非管理職との男性非正規社員は 並んで自己評価が最下位となっており うまく自己主張をする能力がないと考えている人が多い様子が浮き彫りとなった 全体として リーダーシップ 自己主張ともに それらの能力を求められる管理職では重要性の認識 自己評価がもう少し高くてもよいのではないかという印象を受ける 図表 9 リーダーシップ 自己主張 能力の重要性の認識と自己評価 (%) グループをまとめる リーダーシップ 能力 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力 50 40 35.0 30.0 30 20.8 20 10 6.1 4.3 0 男性女性34.2 11.0 7.6 23.3 男性25.0 22.5 19.2 18.3 8.8 8.5 1.7 0.9 男性13.3 2.9 0.9 23.3 29.2 9.2 6.0 43.3 男性25.0 11.7 8.3 45.8 40.0 19.3 10.9 23.3 男性女性女性女性15.8 1.7 0.9 27.5 31.7 女性17.5 20.8 7.8 4.3 6.3 3.6 男性28.3 33.3 女性管理職非管理職管理職非管理職 12.8 10.1 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 33
男性女性女性女性女性管理職非管理職管理職非管理職 Report (6) 調整 感情コントロール 10 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力についてみると 重要性の認識はの女性管理職 の女性非管理職で多く これにの女性管理職 の女性非正規社員が続くなど 全体的に女性で高い ( 図表 10) 男性についてみると の男性管理職が 35.0% で男性の中では最も高いが それ以外は重要性の認識が低い 自己評価については の女性非管理職との男性非管理職が同割合で最下位だった 13 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力の重要性の認識については の女性全般との女性非正規社員で特に回答が多い 一方で男性は全体的に重要性の認識が低かった 自己評価はの女性管理職で最も高く の男性非正規社員で最も低い 筆者が 2010 年に実施した 職場のコミュニケーションに関する調査 の自由回答では 女性が職場で感情的に行動する旨を指摘する男性が散見されたが 今回のデータを見る限り 少なくとも女性は感情をコントロールすることの重要性を認識しているように見える また 男性の感情コントロールの自己評価が必ずしも女性より高いわけではない点も 一概に 男性は 女性は と言えないことを物語っている 図表 10 調整 感情コントロール 能力の重要性の認識と自己評価 (%) 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力 52.5 51.7 50 40 38.3 38.3 36.7 46.7 35.0 43.3 40.0 45.0 38.3 60 男30 20 10 0 25.0 23.3 7.7 6.0 性25.8 25.0 25.0 14.3 8.3 男性9.2 7.8 女性5.9 17.5 25.8 3.6 2.6 1.8 男性26.7 女性10.0 9.0 27.5 14.2 11.7 23.3 24.2 20.2 15.0 男性8.3 2.6 26.7 20.0 12.0 13.4 10.3 6.9 男性11.8 11.4 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 34 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部
(7) 共感 論理性 14 相手の気持ちによりそう 共感 能力は 一様に女性より男性で重要性の認識が低く 特にの男性非正規社員の回答は1 割にとどまった ( 図表 11) 重要性の認識が高かったのは中小 ともに女性非正規社員で いずれも 35% 以上だった 自己評価はの女性全般との女性非正規社員で高かった 自己評価が最も低いのはの男性非管理職で 能力が 十分ある と回答した人は 1.7% だった 最後に 15 筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性 についてみると 重要性の認識はの女性管理職で最も高く 6 割近くを占めたが 自己評価としてはの男性管理職が最も高く 2 割近くが 十分ある と回答しており の女性管理職より高い割合を占めた 図表 11 共感能力 論理性 の重要性の認識と自己評価 (%) 相手の気持ちによりそう 共感 能力 筋道を立ててわかりやすく物事を伝える 論理性 60 57.5 50 40 30 20 10 0 70 男性15.0 27.5 6.8 25.8 43.3 10.3 13.4 8.5 20.0 男性38.3 12.7 8.5 25.0 35.0 10.0 5.1 5.1 22.5 男性4.6 4.6 37.5 35.0 15.8 10.0 20.8 45.0 男性女性女性女性18.3 12.5 33.3 女性16.8 14.2 16.7 32.5 男性9.2 1.7 32.5 49.2 女性14.3 9.2 18.3 28.3 男性6.0 6.0 36.7 50.0 女性管理職非管理職管理職非管理職 16.1 11.8 正規社員非正規社員正規社員非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 35
4. 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーション 企業規模ごとの正規社員 非正規社員別 管理職 非管理職別 性別の全体的な傾向をみるべく 各コミュニケーション能力の自己評価の結果を 因子分析結果を元に 基本 協調型コミュニケーション 項目と 発展 統率型コミュニケーション 項目に分類した ( 図表 12) 基本 協調型コミュニケーションとは 読む 書く 話すなどの基本的なコミュニケーション能力に加え 敬語使いや共感などが含まれる 発展 統率型コミュニケーションはプレゼンテーション能力や調整能力 リーダーシップ 自己主張など グループを統率したり積極的に主張をするコミュニケーション能力群である 図表 12 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーションの因子分析結果 基本 協調 発展 統率 1 書類やメールなどの文章を 読む 能力.885 -.082 2 書類やメールなどの文章を 書く 能力.668.130 3 人に口頭で何かを正確に伝える 話す 能力.432.409 4 相手に応じて適切に 敬語を使う 能力.656.074 5 人前で発表したり報告をする プレゼンテーション 能力.066.671 6 会話において相手の話を きいて理解する 能力.849 -.018 7 講習や研修などにおいて きいて理解する 能力.894 -.054 8その場の雰囲気を感じとる 空気を読む 能力.538.183 9 社内での報告 連絡 相談などにより 情報を共有する 能力.462.357 10 社内での意見 見解や方向性を 調整する 能力.162.665 11グループをまとめる リーダーシップ 能力 -.164.936 12 相手を不快にさせずに自分の考えを伝える 自己主張 能力.122.641 13 感情的にならずに冷静でいる 感情コントロール 能力.321.291 14 相手の気持ちによりそう 共感 能力.488.175 15 筋道をたててわかりやすく物事を伝える 論理性.421.401 因子抽出法 : 最尤法 回転法 : Kaiser の正規化を伴うフ ロマックス法 3 回の反復で回転が収束 この結果を元に 各項目の自己評価について 十分ある に4 点 まああると思う に3 点 やや不足していると思う に2 点 非常に不足していると思う に1 点を付与し それぞれを合計して 基本 協調型コミュニケーション 得点と 発展 統率型コミュニケーション 得点を作成した (Cronbachα 係数はそれぞれ 0.926 0.844) この 2つの得点を それぞれサンプルの分布が等分に近くなるように高得点群と低得点群に2 分し 基本高群かつ発展高群 基本高群かつ発展低群 基本低群かつ発展高群 基本低群かつ発展低群 の4 区分に分けて属性別にみたものが図表 13 である 基本 協調型コミュニケーション 能力も 発展 統率型コミュニケーション 能力もともに自己評価が高い 基本高群かつ発展高群 が最も多いのはの女性管理職で 61.2% を占めている これにの男性管理職が 56.3% で続いている 以下 の管理職女性 (50.9%) の管理職男性 (45.6%) の女性非正規社員 (44.1%) と続く 一方 基本 協調型コミュニケーション 能力も 36 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部
発展 統率型コミュニケーション 能力も ともに自己評価が低い 基本低群かつ発展低群 が多いのはの男性非正規社員 (58.7%) の男性非正規社員 (55.2%) の女性非正規社員(52.1%) だった また の男性管理職では 基本 協調型コミュニケーション 能力は低いが 発展 統率型コミュニケーション 能力は高いとの自己評価をしている 基本低群かつ発展高群 が 21.0% と 他と比べて若干多い 一方 基本 協調型コミュニケーション 能力は高いが 発展 統率型コミュニケーション 能力が低いとの自己評価をしている 基本高群かつ発展低群 はいずれの職位においても男性より女性で多かった なお 属性ごとに基本 協調的コミュニケーション能力と発展 統率コミュニケーション能力の高低と職場の人間関係満足度との関係について分析を試みた それぞれのサンプル数が小さくなるために参考値として検証したが すべての属性でコミュニケーション能力の自己評価が高いと人間関係満足度も高いとの結果を得ている ( 図表省略 ) コミュニケーション能力の自己評価と人間関係の満足度に関連性が認められたことから 各人のコミュニケーション能力の自己評価を向上させることで職場の人間関係満足度が向上する可能性が示唆された 100% 図表 13 基本 協調型コミュニケーションと発展 統率型コミュニケーションの分布 80% 60% 40% 20% 36.8 13.2 4.4 45.6 25.0 17.9 6.3 50.9 47.6 45.0 52.1 58.7 15.0 17.1 8.3 8.7 11.0 7.6 3.3 16.7 27.6 29.0 29.3 22.9 19.3 18.1 14.7 21.0 6.0 3.4 61.2 56.3 40.7 48.6 55.2 14.8 9.9 5.4 11.1 9.5 3.8 36.0 33.3 31.4 34.3 12.7 8.8 44.1 基本低 発展低 基本低 発展高 基本高 発展低 基本高 発展高 0% 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 管理職 非管理職 管理職 非管理職 正規社員 非正規社員 正規社員 非正規社員 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Summer 2015.7 37
5. 考察 以上の結果から いくつかの示唆や課題が得られた まず 個々のコミュニケーション能力の重要性の認識と自己評価について随所で属性別に差がみられたが 特にの女性管理職と比べての男性非管理職の値が低かった また の非管理職における男女差と比べても の非管理職における男女差が大きい 非管理職は将来の管理職予備軍だが では男性の非管理職の意識が低い点が目立った 現在 女性活用 というスローガンのもと 女性のスキルアップやキャリアアップが注目されているが 今回の調査結果をみる限り 男性にも積極的にスキルアップやキャリアアップの意識喚起をしなければ 企業を担う次世代の育成として十分ではないだろう 今後 企業においては男性を中心にコミュニケーション能力への意識を喚起し その能力向上に取り組むことが 重要な課題であると考える また の女性管理職におけるコミュニケーションの自己評価が高い点についても注視する必要がある 従業員満足度調査などでも 管理職が非管理職に比べてかなり肯定的な職場環境評価をする傾向があり 同一の職場に対する評価に齟齬が生じるケースが指摘されている 今回のコミュニケーション能力の評価はあくまで自己評価であり 実際の能力の有無ではない 自分のコミュニケーション能力を客観的に評価することは難しいが 実際の能力の差以外に 過大 過小評価も影響していると推察される 職場に対する認識のギャップを最小化するためにも 管理職と非管理職 非正規社員の相互理解を促進し 多様な立場の人との活発なコミュニケーションを通じて自己のコミュニケーション能力を多方面から客観視できる職場環境が求められる さらに プレゼンテーションや自己主張といった能力に対する重要性の認識があまり高くなかった点も今後の課題である 本稿で国際比較はできないが 日本人の性質上 自分を打ち出すことを美徳としてこなかったコミュニケーションスタイルが 今も積極的な発言を阻んではいないだろうか 周囲との軋轢を最小限にしつつ きちんと発言ができる環境を形成し 業務遂行や人間関係形成において必要な情報発信をすべきであるとの認識を持つ人が増えることで 職場のコミュニケーションも活性化されるのではないだろうか 職場において必要とされるコミュニケーション能力は 業界 業態や男女比率などの各職場の特性に応じて様々であり 今回の調査結果が各職場にそのまま当てはまるものではないが まずはこれらの実態について各職場で意識をし それぞれのコミュニケーション能力の見直しと能力開発の再検討を行っていくことで 従業員満足度の向上や職場のコミュニケーションの円滑化が見込めるのではないだろうか ( 研究開発室みやきゆきこ ) 38 Life Design Report Summer 2015.7 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部