小泉小委 社会保障 メッセージ(最終版)

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

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Microsoft Word - こども保険に関するFAQ.docx

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第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

三鷹市健康福祉総合計画2022

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

Microsoft PowerPoint - 020_改正高齢法リーフレット<240914_雇用指導・

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

女性が働きやすい制度等への見直しについて

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

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2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

第3回税制調査会 総3-2

年金改革の骨格に関する方向性と論点について

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度

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第3節 重点的な取り組み

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

Microsoft Word 「100年人生を考えようLAB」アンケート調査 ニュースレター.docx

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

平成13年8月29日

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

平成16年年金制度改正における年金財政のフレームワーク

【事務連絡】「高額療養費制度の見直しに関するQ&A」の送付について

Microsoft Word - M 平成30年度診療報酬改定の基本方針

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平成13年度税制改正(租税特別措置)要望事項(新設・拡充・延長)

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

資料 4-2 リカレント教育 厚生労働省人材開発統括官若年者 キャリア形成支援担当参事官室 1

陳情議決結果一覧 ( 平成 19 年 5 月 ~ 平成 23 年 4 月 ) 番号受理年月日件名付託委員会 議決年月日 結 果 陳情 第 1 号 H 非核日本宣言 を求める意見書の提出要請について 総財委 H 採 択 陳情第 2 号 H 原爆症認定制度の抜本的改

3. 働き方や家族のあり方の構造変化への対応現在の社会保障制度は 終身雇用や年功序列 男性が世帯主で専業主婦の妻と子どもを養うという雇用 家族形態を標準モデルとしてきた しかし 雇用慣行や労働市場が激変する中で 働き方や家族のあり方も大きく変化している それらに柔軟に対応できる社会保障制度を構築する

2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少


第 9 回社会保障審議会年金部会平成 2 0 年 6 月 1 9 日 資料 1-4 現行制度の仕組み 趣旨 国民年金保険料の免除制度について 現行制度においては 保険料を納付することが経済的に困難な被保険者のために 被保険者からの申請に基づいて 社会保険庁長官が承認したときに保険料の納付義務を免除す

第8回税制調査会 総8-2(案とれ)

資料9

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主な論点 資料 4 1. ワーク ライフ バランスの推進 生産性向上等の観点から 働き方とともに休み方を見直すことの必要性 重要性 (1) 有給休暇取得状況と長時間労働の国際比較 (2) 休暇取得と生産性との関係 (3) 仕事と仕事以外の生活の充実 2. 秋の連休の大型化等を実現する上での課題 (1

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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平成 31 年度社会保障関係予算のポイント 頁 新 ( 平成 31 年 1 月 18 日閣議決定 ) 旧 ( 平成 年 12 月 21 日閣議決定 ) 1 平成 31 年度社会保障関係費の姿 平成 31 年度社会保障関係費の姿 ( 注 ) 年度 31 年度増 減 329, ,914 +1

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Microsoft PowerPoint - 7.【資料3】国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額について

高齢社会は危機かチャンスか

消費税 5% 引上げによる社会保障制度の安定財源確保 消費税率 ( 国 地方 ) を 2014 年 4 月より 8% へ 2017 年 4 月より 10% へ段階的に引上げ 消費税収の使い途は 国分については これまで高齢者 3 経費 ( 基礎年金 老人医療 介護 ) となっていたが 今回 社会保障

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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( 参考 ) と直近四半期末の資産構成割合について 乖離許容幅 資産構成割合 ( 平成 27(2015) 年 12 月末 ) 国内債券 35% ±10% 37.76% 国内株式 25% ±9% 23.35% 外国債券 15% ±4% 13.50% 外国株式 25% ±8% 22.82% 短期資産 -

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調査結果 転職決定者に聞く入社の決め手 ( 男 別 ) 入社の決め手 を男 別でみた際 性は男性に比べると 勤務時間 休日休暇 育児環境 服装 オフィス環境 職場の上司 同僚 の項目で 10 ポイント以上 かった ( 図 1) 特に 勤務時間 休日休暇 の項目は 20 ポイント以上 かった ( 図

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

附帯調査

ブラジル ブラジルにおける柔軟な退職の状況は? ブラジルの年金制度は 1988 年に過剰ともいえる給付を導入して以来 政府予算に対して重荷となっており 国は 1990 年代から年金制度改革に取り組んでいます この改革には 最低退職年齢の導入 年金制度間での資産のポータビリティ向上への取り組み 柔軟性

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

特定健康診査等実施計画 ( 第 3 期 ) ベルシステム 24 健康保険組合 平成 30 年 3 月 1 日 ( 最終更新日 : 平成 30 年 7 月 27 日 )

計画の今後の方向性

< 参考資料 目次 > 1. 平成 16 年年金制度改正における給付と負担の見直し 1 2. 財政再計算と実績の比較 ( 収支差引残 ) 3 3. 実質的な運用利回り ( 厚生年金 ) の財政再計算と実績の比較 4 4. 厚生年金被保険者数の推移 5 5. 厚生年金保険の適用状況の推移 6 6. 基

平成 29 年 4 月から 保険料の軽減率が変わります 後期高齢者医療保険料は 1 被保険者全員に納めていただく定額部分 ( 均等割 ) と 2 所得に応じて納めていただく部分 ( 所得割 ) があります 平成 29 年 4 月から 保険料が下のように変わります 1 均等割の額が変わる方 元被扶養者

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

1. 制度趣旨関連 問 1 なぜ 制度の見直しが必要なのですか? 国保制度は 年齢構成が高く医療費水準が高い 所得水準が低く保険料負担が重い 小規模な運営主体 ( 市町村 ) が多く財政が不安定になりやすい などといった構造的な課題を抱えています また 市町村ごとに運営されているため 被保険者の医療

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除額の変遷 1 昭和 49 年産業構造が転換し会社員が急速に増加 ( 働き方が変化 ) する中 (1) 実際の勤務関連経費が給与所得控除を上回っても 当時は特定支出控除 ( 昭和 63 年導入 ) がなく 会社員は実際の勤務関連経費がいくら高くても実額控除できなかった

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

今後検討すべき課題について 日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長代理小林由紀子 2019 年 3 月 19 日 1

稲垣氏講演資料

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要 旨 政府の社会保障国民会議は 2008 年 5 月 19 日の雇用 年金分科会で 公的年金制度に関する定量的なシミュレーションを公表した 主たる注目点は 基礎年金の財源を全額税方式とした場合の必要財源の規模と消費税率換算のシミュレーションである 基礎年金の税方式化を行うにあたっては 制度移行前の

【政治経済】 第9回 「W」の未来予想図

平成 27 年 1 月から難病医療費助成制度が変わりました! (H26 年 12 月末までに旧制度の医療費助成を受けている人は 3 年間の経過措置 を受けられます ) 分かり難い場合は協会又は自治体の窓口へお問い合わせください H27 年 1 月からの新制度 1. 難病医療費助成の対象は ALS 重

年金の成り立ち(歴史)

2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

柔軟で弾力的な給付設計について

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厚生年金の適用拡大を進めよ|第一生命経済研究所|星野卓也

公的年金制度について 制度の持続可能性を高め 将来の世代の給付水準の確保等を図るため 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく社会経済情勢の変化に対応した保障機能の強化 より安全で効率的な年金積立金の管理及び運用のための年金積立金管理運用独立行政法人の組織等の見直し等の

取材時における留意事項 1 撮影は 参加者の個人が特定されることのないよう撮影願います ( 参加者の顔については撮影不可 声についても収録後消去もしくは編集すること ) 2 参加者のプライバシーに配慮願います 3 その他 (1) 撮影時のカメラ位置等については 職員の指示に従ってください (2) 参

平成 31 年度予算案 の概要について 平成 30 年 12 月 人材開発統括官


平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

第22回規制改革会議 資料3

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

年金・社会保険セミナー

Transcription:

人生 100 年時代の社会保障へ ( メッセージ ) はじめに 2020 年以降は 人生 100 年を生きる時代 になる 終身雇用 定年という一つだけのレールだけでなく 多様な生き方が当たり前になる こうした変化に対応し 労働法制や社会保障も変わらなければならない 我が国の社会保障は 戦後の高度成長期に形成された 多くの方が 20 年学び 40 年働き 20 年老後を過ごす という典型的な人生を歩んだ時代 年金や医療介護は こうした単一のレールを想定して整備された 例えば 現在の社会保障の大宗は 所得ではなく 年齢を基準に給付を行っ ている 高齢になれば 充実した社会保障が受けられる これは 定年後の人生に政府の支援を集中すれば 国民の安心を確保できたからだ しかし これを今後も維持することはできない 終身雇用ではない働き方を選択する若者 定年を越えて働く元気な高齢者 子育てと仕事を両立する女性 今の社会保障は こうした多様な生き方 働き方に対応出来ていない これからの社会保障は いろいろな 人生のレール に対応していく必要がある そして 多様な生き方を選ぶことがリスクにならない社会を実現する これにより 1 人 1 人の国民が自立して生きていくことを目指す 第二創業期のセーフティーネット ~ 勤労者皆社会保険制度の創設 ~ 2020 年以降 グローバル化 IT 化 高齢化が更に進展し 世界的に所 得の二極化が進行する 人工知能やロボットなどの技術革新が急速に進み 機械と人間が協同して仕事する時代になる 働き手の知識やスキルも常に更新することが求められる 様々な企業が次々に生まれ 転職も当たり前になる こうした変化の激しい時代に 国民の安心の基盤を確保するためには 雇 1

用を守る のではなく 人を守る 発想への転換が必要だ 生産性の低い企業に補助金を出して雇用を守るのではなく 一人一人が必要なスキルを身につ け より個々の想いに応じた働き方ができるように支援していく このためには 新しい時代のライフスタイルに合わせた労働法制や社会保障 の見直しが必要だ 企業も働く側も より自由に働き手 働き場所を選べるようにすべきだ そのためにも 企業が働き手の再訓練や再就職の費用を負担する仕組みを作っていく 同時に 企業を飛び出した働き手が成長産業に円滑に移動することを支援するため 社会人の学び直しや再就職に対する支援を抜本強化する 少ない自己 負担で 成長分野のスキルを身につけることを可能とする さらに 社会保障も 多様な働き方を前提とした見直しが必要だ 現在の社 会保障は 終身雇用を前提に設計されており 新しいライフスタイルに対応できない 例えば 企業の社会保険は正規雇用のみを対象にしている 一定の所得 勤務時間に満たない勤労者は 企業の厚生年金や健康保険に加入できず 十分なセーフティーネットの対象になっていない 今後は いかなる雇用形態であっても 企業で働く方は全員 社会保険に加 入できるようにして 充実した社会保障を受けられるようにすべきだ いわば 勤労者皆社会保険制度 ( 仮称 ) の実現である また 所得の低い勤労者は 社会保険料を免除 軽減すべきだ 事業主負担は維持すること等で 社会保険の中での助け合いを強化する 政府も 社会保障改革により生み出した財源を活用して 激変緩和に必要な支援を行う こうした改革が実現すれば 所得の低い勤労者も 社会保険料負担の免除 軽減によって現在の手取り所得が拡大する また 充実した年金を将来受け取 ることができるようになり 将来不安が解消する こうしたセーフティーネットが確保されていれば 学び直しやチャレンジに取り組む人も増えるだろう 足下では 半数近くの若者が国民年金保険料を払っていない これを放置すれば 将来 無年金 低年金の高齢者が増え 高齢者の生活保護費が倍増する 2

恐れがある 改革により こうした無年金 低年金という 将来の爆弾 も解決できる もちろん 解雇規制の見直し 学び直し 再就職支援の拡充 勤労者皆社会保険制度 ( 仮称 ) の導入といった一連の改革は 一時的には大きな痛みが伴う 事業者は 労働コストが拡大するため 生産性の更なる向上が必要になる 働く側も 着実に経験を積むと共に テクノロジーへのキャッチアップが必要となる しかし 短期的には大きな痛みとなっても 中長期的には この改革をやりきることで 生産性の向上とセーフティーネットの充実を同時に実現すること ができる 多様な働き方とそれを支える社会保障こそ 持続的な経済成長と安心の基盤だ 労使双方の理解を得て 必要な改革を断行すべきだ 人生 100 年型年金 ~ 年金受給開始年齢の柔軟化 ~ 今の年金制度は 財政面だけを見れば 十分に持続可能である 根拠無く 年 金が破綻する と批判することは無責任だ 政府は 年金財政が健全であることを国民にしっかり説明していく必要がある ただし 今の年金制度には大きな課題がある 2020 年以降 健康寿命がさらに延びていく 人工知能やロボット等の技術革新に支えられ 高齢者はより長く元気に活躍できるようになる 今後は 40 年働き 40 年休む という人生ではなく より長く働くことを選択する方が増えていく 現在進められている働き方改革でも より多様 で柔軟な働き方が重視されている 今の年金制度は こうした働き方の変化に対応していない 例えば 定年を 越えて働く高齢者は少ないと想定してきたため 現在の制度では 一定年齢を超えると保険料が納付出来なくなったり 働きながら年金を受給すると年金が減額されたりする仕組みになっている これでは 働き方改革が進展しても 年金制度が障害となって 働く意思や 3

能力のある高齢者の就労を阻害してしまう恐れがある 年金制度は 長く働くほど得をする仕組み へと改革すべきだ 例えば 年金受給開始年齢はより柔軟に選択できるようにする 年金保険料はいつまでも納付できるようにする 働くと年金が減額される仕組みは廃止する これらにより 1 人 1 人のライフスタイルに合った年金制度を実現する 働き方改革と合わせて こうした年金改革を実施することで 高齢者がより長く 働くことが当たり前になる こうしたライフスタイルの変化を見据え 諸外国でも長時間かけて実現して いる支給開始年齢の引き上げ ( 受給開始の標準年齢の引き上げ ) についての議論をただちに開始すべきである 健康ゴールド免許 ~ 自助を促す自己負担割合の設定 ~ 2020 年以降 高齢化の進展に加え 医療技術がますます高度化すると 医療介護費用が一層高額化していく 医療介護制度の持続可能性を確保するためには 病気になってから治療す る だけでなく そもそも 病気にならないようにする 自助努力を支援していく必要がある 医療介護費用の多くは 生活習慣病 がん 認知症への対応である これらは 普段から健康管理を徹底すれば 予防や進行の抑制が可能なものも多い しかし 現行制度では 健康管理をしっかりやってきた方も そうではなく生活習慣病になってしまった方も 同じ自己負担で治療が受けられる これでは 自助を促すインセンティブが十分とは言えない 今後は 健康診断を徹底し 早い段階から保健指導を受けていただく そして 健康維持に取り組んできた方が病気になった場合は 自己負担を低くする ことで 自助を促すインセンティブを強化すべきだ 4

運転免許証では優良運転者に ゴールド免許 が与えられる 医療介護でも IT 技術を活用すれば 個人ごとに検診履歴等を把握し 健康管理にしっかり 取り組んできた方を ゴールド区分 に出来る いわば医療介護版の ゴールド免許 を作り 自己負担を低く設定することで 自助を支援すべきだ もちろん 自助で対応できない方にはきめ細かく対応する必要がある また 現行制度では 自助で対応できる軽微なリスクも 大きな疾病リスクも 同じように支援している 例えば 湿布薬やうがい薬も公的保険の対象で あり 自分で買うと全額負担 病院でもらうと 3 割負担だ こうした軽微なリスクは自助で対応してもらうべきであり 公的保険の範囲を見直すべきだ 終わりに 少子化対策は抜本的強化が必要だ 社会保障改革や歳出効率化の取り組みに よって得られる財政的リソースは 最優先で投入していかなくてはならない 子育て世代の代表たる本小委員会としても 少子化対策については 最重要課題であるがゆえに その抜本的強化の具体的中身について引き続き検討してい くこととしたい ただし 我々が忘れてはならないことは 仮に出生率が人口水準を維持する ために必要な 2.07 まで上がっても 人口減少は不可避であるという事実である 毎年人口が減り続けることを嘆いても 明るい未来は切り開けない 人口減少を前提に 経済社会システムを抜本的に見直すことで 人口減少をチャン スととらえ日本の強みに変えていくことが必要だ 社会保障も 終身雇用を前提とした制度から 多様なライフスタイルに対応 した 自助を最大限に支援する制度へと改革する必要がある 働く現役世代が 安心して暮らせる社会にする 高齢者が働くほど得をする年金制度にする 病気にならないように努力した人は 自己負担が低くなる医療介護にする こうした安心の基盤を整備すれば より多くの国民が 多様な生き方や働き方を選択しやすくなる 結果として 労働力人口が下支えされ 生産性も向上 する 経済成長を維持して 社会保障も持続可能になる 5

今こそ 人口減少でもやっていける という楽観と自信をもつことにつながる社会保障改革が必要だ 一時的に痛みが伴う改革から逃げてはならない 国民の理解を得て 必要な改革を断行すべきだ 6