背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

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2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

前立腺の変化を知る


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前立腺癌

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はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

がん登録実務について

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5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専


主な手術実績根治的前立腺全摘除術 85 ( ロボット支援手術 85) 膀胱全摘除術 12 ( 腹腔鏡下手術 12) 腎摘除術 23 ( 腹腔鏡下手術 21) 腎部分切除術 18 ( ロボット支援手術 18) 腎尿管全摘除術 26 ( 腹腔鏡下手術 26) ドナー腎摘出術 17 ( 腹腔鏡下手術 17

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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第 7 章 腎 泌尿器領域 (a) : すべての専門医が到達すべき知識 技術 (b) : すべての専門医が, さらに高度の専門性を獲得するために到達すべき知識 技術 (c) : 該当する領域において, 専門医が到達すべき知識 技術 (d) : 該当する領域において, 専門医がさらに高度の専門性を獲得

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

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密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

腹腔鏡補助下膀胱全摘除術の説明と同意 (2) 回腸導管小腸 ( 回腸 ) の一部を 導管として使う方法です 腸の蠕動運動を利用して尿を体外へ出します 尿はストーマから流れているため パウチという尿を溜める装具を皮膚に張りつけておく必要があります 手術手技が比較的簡単であることと合併症が少

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「             」  説明および同意書

地域公開講演会 2007.3.24

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ


1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

外来在宅化学療法の実際

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

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Microsoft Word 高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版主な変更点_最終

泌尿器科救急

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

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27 年 ₅ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 589 号付録 ) 平成27 年5 月平成 に転移がないものでは₅ 年は100% また 所属リンパ節への転移や隣接臓器 ( 膀胱など ) への浸潤を認めるが遠隔転移を認めないものでも94.8% の₅ 年と非常に良好な成績が報告されています し

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

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尿路結石が 突然増悪する強烈な側腹部痛で来院すると思い込んでいたのが一番の誤診の原因だったと思う 症状を説明できるような水腎が無いと一時点で思考停止してしまったのも良くなかった 夜間に腹痛が増悪し 来院時には軽減 ~ほぼ消失していることらから 繰り返し増悪するエピソードを説明できるような診断を付けな

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

健康た?よりNo109_健康た?より

2009年8月17日

70 頭頸部放射線療法 放射線化学療法

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

3 尿意切迫感 : 急に起こり抑えられない強い尿意で我慢することができないという愁訴である. 水に触れたり, 流れる音を聞いたり, 水の流れを見たりすると誘発されることが多い. 正常者が感じる排尿を我慢していて徐々に増強する強い尿意とは異なり, 予測できない突然起こる強い尿意である. 4 切迫性尿失

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

乳がん術後連携パス

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AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

ヘルスケア・スクエア(仮称)設立に向けて

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC


付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

NEW版下_健診べんり2016_01-12

減量・コース投与期間短縮の基準

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

目次 1. 地域医療連携パスとは 肝疾患医療連携パスの運用方法について... 3 (1) 特長 (2) 目的 (3) 対象症例 (4) 紹介基準 (5) 肝疾患医療連携パスの種類 (6) 運用 3. 肝疾患医療連携パス... 7 (1) 肝疾患診断医療連携パス ( 医療者用 : 様式

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おしっこが赤い どのような泌尿器科疾患があるの? 埼玉医科大学病院泌尿器科 朝倉博孝 1. はじめに血尿は 肉眼的には認識できないが 検査で尿中に血液を認める場合と肉眼的におしっこが赤いという臨床症状でわかる場合がある 前者を顕微鏡的血尿 ( 顕微鏡でわかる ) 後者を肉眼的血尿( 肉眼で赤くみえる ) という 一般的には 顕微鏡的血尿よりも 肉眼的血尿の方が重大な病気がかくれている可能性が高い また 肉眼的に尿が赤い場合が すべて血尿というわけではない 水分が十分に補給されなくて濃縮尿である場合や 食べ物や内服薬の影響で尿が赤く見えて 肉眼的血尿と間違えることもある 本日は 血尿をおこしうる泌尿器科疾患について 診断 治療を中心に説明する 2. 血尿について血尿は 顕微鏡的血尿と肉眼的血尿に分けられる よく 人間ドックや健診で指摘される血尿は 顕微鏡的血尿である 顕微鏡的血尿は 肉眼的には透明で 顕微鏡で観察してなんとかみえる程度の軽い血尿である 顕微鏡的血尿を呈する代表的な泌尿器科疾患として 尿路結石があげられる 顕微鏡的血尿の場合は 一般的に命にかかわるような重大な疾患である可能性は極めて低い 私の経験では 顕微鏡的血尿の 90% 以上は 放置しても問題がない しかし 顕微鏡的血尿とタンパク尿が同時に示されると内科的な腎臓病疾患が潜んでいる可能性はある また 顕微鏡的血尿に膿尿と細菌尿が同時に検出されれば 急性膀胱炎と診断でき 治療の対象になる また 血尿は 血尿所見に何らかの臨床症状を伴うかどうかで すなわち 症候性血尿と無症候性血尿にわけることができる 泌尿器科疾患の特異的な臨床症状としては 排尿時痛 頻尿 排尿困難などの下部尿路症状や陰嚢痛 側

背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり 慎重に対応する必要性がある 次に 血尿を呈する可能性のある疾患の診断について説明する 3. 診断について : 臨床症状により かなり診断はしぼられる (1) 尿路感染症 : 急性前立腺炎 急性膀胱炎などの下部尿路感染症の場合は 排尿時痛 頻尿 尿意切迫感を呈する 急性精巣上体炎では 精巣上体の痛み 硬結を触知する これらの下部尿路感染症のうち 急性膀胱炎だけは 通常は 発熱を伴わないのが特徴である 代表的な上部尿路感染症である急性腎盂腎炎の場合は 39 程度の発熱と背部痛や叩打痛を呈する 尿路感染症の検尿所見は 血尿を認めることもあるが 白血球や細菌の存在の証明が必須である 慢性尿路感染症の場合は 症状は軽いこともあり 糖尿病などの基礎疾患がある場合や無症候性の場合は 特に治療を必要としないこともある (2) 尿路結石 : 通常は 全く症状はないが 一旦 発作状態になると 強烈な背部痛あるいは下腹部痛が出現する 尿路結石が 尿管を通過し 膀胱近くまで落ちてくると 尿意切迫感や頻尿などの下部尿路症状を呈することがある 発作時には 血尿を呈することが多い 画像診断により 尿路結石が証明され 確定診断となる (3) 前立腺肥大症 : 前立腺肥大症が血尿の原因なる可能性は低いが 男性の肉眼的血尿の原因となることがしばしばある 一般的に 排尿困難 頻尿 排尿後滴下などの下部尿路症状を呈し 直腸診などにより 前立腺肥大が証明されば 前立腺肥大症と診断できる 前立腺肥大症は 検査所見よりも むしろ 臨床症状により診断が確定されることが多い (4) 悪性腫瘍 : 無症候性肉眼的血尿が 尿路上皮腫瘍 ( 腎盂癌 尿管がん 膀胱がん ) の唯一の臨床症状である事がある 腎がんの場合は 腎盂に浸潤するなど

進行すると 血尿を呈することがある 前立腺がんは 最近 前立腺特異抗原 (Prostate Specific Antigen) の普及に伴い 早期診断が可能となった しかし 前立腺がんの場合は 膀胱内浸潤など進行癌にならないかぎりは 血尿を呈することはない 悪性腫瘍の診断は 画像診断によりなされ 組織診断 ( 病理診断 ) により確定される (5) その他 : 尿路外傷 特発性腎出血 腎梗塞 腎静脈血栓症など 4. 治療について次に 各疾患についての治療法についてのべる (1) 尿路感染症 : 一般的には 抗生剤投与 しかし 慢性尿路感染症の場合は 必ずしも 治療の対象になるとは限らない また 糖尿病 尿路結石 前立腺肥大症など基礎疾患があり 尿路感染症が存在する場合は 基礎疾患の治療を優先させる (2) 尿路結石症 : 強烈な側背部痛など結石発作の場合は 除痛を目的とした鎮痛剤投与を優先させる 時には 麻薬を用いることもある 結石そのもの治療としては 結石成分と大きさにより治療方針が異なる 最も頻度の高いカルシウム含有結石は溶かすことはできない しかし 溶解はできなくても 増大阻止をする薬物はある 溶かすことのできる結石は 尿酸結石である また 先天代謝異常であり 頻度の低いシスチン結石も溶かすことはできる 結石が5 mm 以下であれば 60-90% 5-10mm 程度あれば 40-60% くらいの確率で自然排石する 結石が 1cm 以上になると 自然排石が難しくなり 積極的な治療の対象となる 従来は 手術による結石摘出が行われていたが 最近は 切らなくても 内視鏡で結石を摘出することが可能である 結石の大きさが 2cm 以下であれば 体外衝撃波による治療が推奨される 2cm 以上の結石であると 残石率が高くなるので より確実に結石を摘出する 経尿道的結石摘出術 (TUL) や経皮的結石摘出術 (PNL) の適応となる 尿路結石により 尿路の通過障害がおき 水腎症を呈する場合には ステント挿入あるいは腎瘻造設する また 腎盂腎炎などの尿路感染症の原因になっている場合は 抗生剤投与する

(3) 悪性腫瘍 : 治療は多岐にわたるので簡単に述べる 1) 膀胱がん : 経尿道的膀胱腫瘍切除術 膀胱摘出 + 尿路変更術 抗がん剤 放射線療法 2) 前立腺がん : 前立腺摘出術 放射線療法 ホルモン療法 抗がん剤 3) 腎盂がん 尿管がん : 腎尿管摘出術 抗がん剤 放射線療法 4) 腎がん : 腎摘出術 分子標的薬 インターフェロン (4) 前立腺肥大症 : 血尿の原因になる場合は 5α 還元酵素阻害剤を使用して 前立腺を縮小させると血尿を認めなくなることがある しかし 前立腺肥大症の治療の目的は 症状をとることが目的である 排尿症状には α-blocker を投与し 頻尿など蓄尿症状が改善しない場合は 抗コリンン剤をかぶせる そして 薬物療法では効果がなく 大きな前立腺肥大症の場合は 経尿道的前立腺切除術 (TURP) を施行する (5) その他 : 多岐にわたる治療 省略 5. 日常生活での注意点 潜血陽性 というように 検査値に異常があると 重大な病気ではないかと心配なさる方が多いが かならずしも重大な病気が潜んでいるとは限らない その意味するところは 何らかの病気が潜んでいる可能性があるので 念のために 精密検査をした方がよいということである 特に 年齢が高くなるほど 検査所見に異常がでるのは あたりまえで それなりに 体がうまくバランンスを取って支障をきたさなく機能させていて 問題になることは少ない いわゆる検診で指摘される顕微鏡的血尿だけでは 治療の対象になるような重大な病気である可能性は極めて低い しかし 肉眼的な血尿 特に 高齢者で 無症候性肉眼的血尿である場合は 膀胱がんなどの悪性腫瘍が存在している可能性があるので できるだけ早く 泌尿器科専門医を受診した方がよいであろう 最近 脳梗塞あるいは冠動脈疾患 冠動脈ステント挿入されて抗凝固剤を内服している患者さんも散見され 血尿の原因が抗凝固剤ということもある そのような場合は 支障がない限り 抗凝固剤を減量してもらったりする

いずれにしても 血尿がある場合 特に 肉眼的血尿を認める場合には 腎臓 内科 あるいは泌尿器科を受診することを推奨する 6. 診断窓口 : 埼玉医科大学病院泌尿器科外来 049-276-1290