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<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

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アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

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(100817)

( 県の責務 ) 第三条県は 地震防災に関する総合的な施策を策定し 及びこれを実施する責務を有する 2 県は 市町村 自主防災組織その他防災関係機関等と連携して 地震防災対策を推進しなければならない 3 県は 地震に関する調査及び研究を行い その成果を県民 事業者及び市町村に公表するとともに 地震防

(3) 設備復旧対策事例 ~ 基地局及びエントランス回線通信事業者各社で取り組んだ主な基地局あるいはネットワーク設備復旧対策としては 光ファイバー 衛星回線 無線 ( マイクロ ) 回線の活用による伝送路の復旧や 山頂などへの大ゾーン方式 ( 複数の基地局によるサービスエリアを1つの大きなゾーンとし

1 首都直下地震対策の具体的な推進 ( 提案要求先内閣官房 内閣府 国土交通省 ) ( 都所管局総務局 政策企画局 ) (1) 首都直下地震等の災害から住民の生命と財産を守るとともに 首都機能への打撃を最小限にとどめるため 財政上の措置を実 施するなど 首都直下地震対策を具体的に推進すること (2)

三鷹市耐震改修促進計画(改定素案)

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1 首都直下地震の概要想定震度分布 (23 区を中心として震度 6 強の想定 ) 首都直下地震 想定震度分布 出典 : 中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ 首都直下地震の被害想定と対策について ( 最終報告 ) ( 平成 25 年 12 月 ) 2

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

地震被害予測システムにより建物被災度を予測 また 携帯電話と地図を利用した 被害情報集約システム では GPS 機能と地理情報システムとの連係により 現在位置周辺にある同社施工済物件を検索し 物件や周辺の被害状況を文字 静止画 動画を添付して報告することができる これら被害情報を地理情報システムに集

第 5 部 南海トラフ地震防災対策推進計画

目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

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「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

国土技術政策総合研究所 研究資料

序章 計画改定の背景 足立区では 昭和 57 年 3 月に 大地震による火災から区民の生命と財産を守る た め 足立区防災まちづくり基本計画 を策定し この計画に基づき各種事業を展開し てきました その後 平成 7 年 1 月 17 日に発生した阪神 淡路大震災では 密集市街地に被害が 集中し 改め

4 災害時における他機関 他施設との協定の締結状況災害時に他機関 他施設との協定を結んでいる施設は 97 施設で 1 か所と締結している施設が多くありました 締結先は 地元自治会 町内会 病院 近隣施設 社会福祉施設 物流会社 福祉ネットワーク 市町村等でした 図 2 災害時における他機関 他施設と

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1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

大阪市防災 減災条例 目次第 1 章総則 ( 第 1 条 - 第 3 条 ) 第 2 章本市の責務 ( 第 4 条 - 第 7 条 ) 第 3 章市民の責務 ( 第 8 条 ) 第 4 章事業者の責務 ( 第 9 条 ) 第 5 章災害予防 応急対策 ( 第 10 条 - 第 25 条 ) 第 6

(3) 東京都が掲げている目標を確実に達成するには 延焼遮断帯の形成やその主要な要素である特定整備路線の整備 老朽木造建築物の除去等の施策をより強制力をもって展開することが必要であり 一定の私権の制限もやむを得ないと考える その際 移転や住替えを余儀なくされる住民へ移転先をしっかりと確保するなど き

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H28秋_24地方税財源

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

防災業務計画 株式会社ローソン

北栄町耐震改修促進計画の目的等 目的 本計画は 町民生活に重大な影響を及ぼす恐れのある地震被害から 町民の生命 財産を保護するとともに 地震による被害を軽減し 社会秩序の維持と公共の福祉に資するため 建築物の計画的な耐震化を促進することを目的とします 計画の実施期間 本計画の実施期間は 国及び県の実

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首都圏で大地震が起きると 建物 が 倒 れ ま す! 揺れで建物が倒れます 窓ガラスが割れ 道路に飛び散ります 火災があちこちで起きます 特に木造の建物が集まっている 火災 が 起 き ま す! 地域では 大規模な火災が起きる場合があります 道路 が 通れ な く な り ま す! 建物が倒れて道路

東京事務所版 BCP 実施要領目次応急頁 < 第 1グループ> 直ちに実施する業務 1 事務所における死傷者の救護や搬送 応急救護を行う一時的な救護スペースの設置 運営 備蓄の設置 医療機関への搬送 1 2 事務所に緊急避難してきた県民や旅行者等への対応 避難 一次避難スペースの運営 指定避難所への

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☆配布資料_熊本地震検証

2011 年 12 月 15 日発行 東日本大震災リスク レポート ( 第 5 号 ) 次の大地震 大津波への対応 : 防災計画の見直しと企業に求められる対応 発行 : 三菱商事インシュアランス株式会社リスクコンサルティング室 はじめに 1 本年 3 月 11 日 ( 金 ) の東日本大震災の発生か

事業継続計画(BCP)作成用調査ワークシート

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各府省からの第 1 次回答 1. 災害対策は 災害対策基本法に規定されているとおり 基礎的な地方公共団体である市町村による第一義的な応急対応と 市町村を包括する広域的な地方公共団体である都道府県による関係機関間の総合調整を前提としている を活用してもなお対応できず 人命又は財産の保護のため必要がある

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第18期火災予防審議会地震対策部会

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大規模住宅団地の現状と活性化・再生の進め方

目 次 ページ はじめに 1 地区防災計画制度について 1 防災計画の全体像 地区防災計画制度の全体イメージ 2 地区防災計画とは 2 3 本冊子 手引き の活用方法 2 手引きの構成 手引きの活用イメージ 地区防災計画 作成の手引き 1 制度の背景 3 (1) 作成の目的 (2) 自助 共助の重要

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九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

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2 地震 津波対策の充実 強化 (1) 南海トラフ地震や首都直下地震の被害想定を踏まえ 地震防災上緊急に整備すべき施設整備 津波防災地域づくりに関する法律 の実効性確保 高台移転及び地籍調査の推進など事前防災や減災に資するハード ソフトの対策を地方公共団体が重点的に進めるための財政上の支援措置を講じ

3 歯科医療 ( 救護 ) 対策 管内の歯科医療機関の所在地等のリスト整理 緊急連絡網整備 管内の災害拠点病院 救護病院等の緊急時連絡先の確認 歯科関連医薬品の整備 ( 含そう剤等 ) 自治会 住民への情報伝達方法の確認 病院及び歯科診療所での災害準備の周知広報 - 2 -

職員の運営能力の強化 避難所担当職員研修の実施 全庁対象の避難所担当職員研修(5 回開催で約 400 名参加 ) 区毎の避難所担当職員研修 男女共同参画の視点に立った避難所づくり 共助による災害時要援護者支援の取り組みについて説明 各区災害対策本部との連絡 避難所内の課題解決の調整など 地域団体等へ

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(溶け込み)大阪事務所BCP【実施要領】

国土技術政策総合研究所 研究資料

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高度防災都市づくりに向けた取組

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その一方で 防災行政無線の聞き取り状況の調 査では 図 3に示すように20% の人が放送内容を聞き取れなかったと答えており 今後の改善 もしくは代替え手段の充実の必要性を示唆している なお 情報の入手先としてテレビの割合が低いのは地震による停電 ( 岩手県 宮城県では95% 以上が停電 ) が原因と

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資料 4 国土強靱化 ( ナショナル レジリエンス ) 推進に向けた取組みについて 平成 25 年 11 月 20 日 古屋臨時議員提出資料

本書の目的介護保険サービス事業所は, 高齢者の方が多く利用しており, 災害発生時には避難等の援助が必要となるため, 事業者は, 災害発生時に迅速かつ適切な行動をとれるように備えておく必要があります 本書は, 介護保険サービス事業所が災害対応マニュアルを作成する際に特に留意する点についてまとめています

帰宅困難者対策の東京都の取り組みについて 帰宅困難者対策を考える際の東京都の特徴 東京都の3.11までの取組み 駅前滞留者対策協議会 災害時帰宅支援ステーション 3.11( 東日本大震災 ) の状況 東京都の3.11 以後の取組み 首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 2

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平成 28 年度 県民 Webアンケート 第 6 回自主防災の取り組みについて 実施期間 2016/9/15~2016/9/21 アンケート会員数 224 人回収数 191 件 ( 回収率 85.3%) 近年 全国各地で自然災害が多発しており 奈良県でもいつ大きな災害に見舞われるかわかりません 災害

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福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律 について <1. 特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設 > 従来 帰還困難区域は 将来にわたって居住を制限することを原則とした区域 として設定 平成 29 年 5 月復興庁 地元からの要望や与党からの提言を踏まえ 1 帰還困難区

先行的評価の対象とするユースケース 整理中. 災害対応に関するユースケース. 健康に関するユースケース. 移動に関するユースケース. 教育に関するユースケース. 小売 物流に関するユースケース 6. 製造 ( 提供した製品の保守を含む ) に関するユースケース 7. 農業に関するユースケース 8.

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⑴ 政策目的 市街地再開発事業の推進により 土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るとともに コンパクトシティの推進及び密集市街地の解消を図る 新設 拡充又は延長を必要とする理由 ⑵ 施策の必要性 以下の施策の推進のため 本措置の延長により 民間事業者による早期かつ着実な保留床の取得を促

第11回市民講座の準備について

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災害時要援護者支援マニュアル策定ガイドライン

験をいかし 地域防災力充実強化計画のような形で 地方公共団体や関係団体の事業まで含む関連施策を網羅した総合計画を作成し 関係者がその実施状況を点検しながら 状況に応じて必要な修正を加えつつ 粘り強く全体を着実に実行するという いわば施策実行のシステムを確立して 地域防災力充実強化の実をあげるようにす

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

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基本方針

建築物等震災対策事業について

1. まとめ 1 災害医療の現状と課題 災害時に 防ぎ得た死 を少なくするのが最大の課題だ だが東日本大震災を受けた 災害医療等のあり方に関する検討会報告書 が生かされているとは言いがたい 2 計画 予算など対策の現状と課題 被災自治体だけでは対応できない大規模災害に備え 広域医療搬送を含めた都道府

新規文書1

4 回答者属性 (1) 性別 人数割合 (%) 男性 女性 49.4% 0.4% 男性 5 女性 % 2 0.4% (2) 年代別 人数割合 (%) 20 代 % 30 代 % 40 代 % 50 代 % 60~6

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市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査


News Release 2014 年 3 月 24 日 伊丹市と新関西国際空港株式会社が 伊丹市域におけるまちづくりの推進 について合意 伊丹市と新関西国際空港株式会社は 伊丹市域の生活環境の改善 地域コミュニティの再生等を図るためのまちづくりを連携して推進するため 2014 年 3 月 24 日

大規模災害対策マニュアル

Transcription:

平成 23 年 11 月 8 日 東京都知事 石原慎太郎 殿 東京都議会自由民主党 幹事長 宮﨑章 防災対策強化に向けての提言 東京都議会自由民主党は 東日本大震災復旧 復興対策推進本部 を設置し 被災地に視察団を送ると共に 高度防災都市づくりの視点から都内施設の視察を行いました さらに 各業界団体と震災による影響について意見交換を行い 危機管理の面から見た防災の講演会などを開催しました これらの実態調査と併せて 2つのワーキングチームにより ハード ソフトの両面から首都東京にふさわしい防災のあり方や都市づくりについて 都民の目線から見た生きた防災 を主眼にすえ 検討を行ってきました その結果を別添のとおり Ⅰ 発災時にも都民が安心できる体制 Ⅱ 発災直後の混乱を回避するような仕組み Ⅲ 地震に強いまちづくりのさらなる推進 Ⅳ 地域住民や企業 団体の協力を得た地域防災力の強化 の4つの柱のもとに具体的な提言としてまとめました 都においては この提言を十分に受け止め 今後の高度防災都市づくりに反映されるよう強く要望します

防災対策強化に向けての提 平成 23 年 11 月 都議会自由民主党 東日本大震災復旧 復興対策推進本部

都議会自由民主党東日本大震災復旧 復興対策推進本部防災対策強化に向けての提言について はじめに 東日本大震災の発生により 多くの方々がその尊い生命をおとされました 亡くなられた皆様のご冥福を心よりお祈り申し上げます 未だに避難生活を強いられている方々 被災された皆様にお見舞いを申し上げるとともに 一日も早い復旧 復興を願うばかりです 自然災害は後を絶ちません 複数の大陸プレートに囲まれた火山国であり 急峻な山によって成り立っている国土 我が国日本は 世界でも有数の災害多発国でありますが 自然と共に生きる という大きな命題を与えられた国民であるとも言えます しかし その自然災害に手をこまねき 指をくわえて看過するわけにはいきません 災害に備え 立ち向かい 時には回避し 被災時には必ず復興していく 国民が一体となって信念をもって事にあたる 常に災害と向きあいながら日々の生活を送らなければならないのです 我々 都議会自由民主党は さきの大震災を踏まえ 東日本大震災復旧 復興対策推進本部 を即刻立ち上げ 東京の そして都民の安全 安心を守るために何を為すべきか 検討を重ねてまいりました 5 月から7 月にかけて 被災地である東北三県 ( 岩手県 宮城県 福島県 ) に視察団を送るとともに 高度防災都市づくりの視点から 都内施設の視察を行ったところです 5 月中には 各業界団体との意見交換の場を設け 震災による影響についてヒアリングを重ねました 都内の災害発生時の状況をふりかえり検証するとともに 都民の皆さんの声に耳を傾け 実態の把握も行ってまいりました 10 月には軍事アナリストである小川和久氏を迎え 危機管理の面から見た防災の講演をいただき 意見交換を行いました - 1 -

こうした実態調査と同時に2つのワーキングチームにより ハード ソフト両面から首都東京にふさわしい防災のあり方 都市づくりの検討をくり返し行ってきた結果を今回の報告書にとりまとめたところです 都民の目線から見た 生きた防災 を主眼にすえ あらゆる角度から検証を行ったものであり 本報告をもとに都に対しての提言をしてまいります 平成 23 年 11 月 7 日 都議会自由民主党東日本大震災復旧 復興対策推進本部 対策推進本部長 宮崎章 - 2 -

推進本部での検討 都議会自由民主党東日本大震災復旧 復興対策推進本部では 東京の防災力 の一層の高度化に向けて ハード ソフト両面から 従来の防災対策全般にわたり 幅広く検証を進めてきた ハード面の対策 水防 津波対策 水門等の耐久性の検証 情報連絡体制の確保 交通インフラ対策 道路ネットワーク整備等 道路 橋梁の安全確保 鉄道の安全確保と早期復旧 ライフライン対策 上下水道の耐震化 液状化対策等 地震に強い都市づくり 木密地域の整備 不燃化 高層ビルの安全化 ~ 長周期振動対策 エレベータ対策 ソフト面の対策 情報連絡の確保に向けた対策 広域的な連携強化 地域の防災力向上等 物資備蓄等の推進 備蓄の推進 物資の種類の整理 備蓄拠点の配置等 電力供給停止への対策 電力の確保 物流ネットワーク断絶への対策 私企業等との連携 こうした検証を踏まえて 今後の防災対策についての 4 つの柱と 15 項目の 具体的な提言をとりまとめた - 3 -

高度防災都市の実現に向けた防災対策の 4 つの柱 Ⅰ 発災時にも都民が安心できる体制を都民の命と暮らしを守る仕組みを充実強化し 安全と安心を確保する < 提言項目 > 医療機能の確保と救命救助 消火体制の強化 避難や備蓄の体制整備と機能する仕組みづくり 発災時の応急対応力の強化 高齢者や障害者などの不安を取り除く取組み Ⅱ 発災直後の混乱を回避するような仕組みを東日本大震災の際 都内で発生した混乱を振り返り 再び同様の事態を招くことのないよう 発災時の仕組みを再構築する < 提言項目 > 帰宅困難者対策に早期に対応 交通ネットワークの耐震性向上と早期復旧の実現 都民に安心を与える情報通信手段の確保 安定した燃料確保の仕組みづくり Ⅲ 地震に強いまちづくりのさらなる推進を都民生活と首都機能を守るため 強固な都市基盤を実現する < 提言項目 > 木造住宅密集地域対策の充実強化 公園等を活用した多様な防災拠点整備の促進 建築物の耐震性向上の加速 ゼロメートル地帯などでの津波や高潮対策のさらなる強化 ライフライン機能の確保策の充実 Ⅳ 地域住民や企業 団体の協力を得た地域防災力の強化を多様な主体の参画の下 大都市における自助 共助を推進する < 提言項目 > 町会 自治会やボランティアなどの力を結集した地域防災力の強化 地域の中小企業や団体とも連携した防災対策の充実 - 4 -

東京の防災力向上に向けた提言 Ⅰ 発災時にも都民が安心できる体制を 医療機能の確保と救命救助 消火体制の強化 救急医療機関の耐震化を強力に推進し 医療機能を確保すること あわせて 非常用発電機や薬品などの備蓄体制を強化すること 救命救助活動 消火活動のための体制を強化すること また 地域の防災リーダーである消防団の支援を充実すること 提案の背景 医療機能の確保について 先の被災地では地震や津波により病院も被災し 満足な医療を提供することができなかった このため 東京都でも透析が必要な患者を多数受け入れ 都内の施設で治療を行うなどの協力を行った 震災時 病院自体が機能を失っては救える人命も救えなくなる 直下型地震に向け 救急医療機関の耐震化を一層進めること 加えて 医療機能に必要な電源を確保し 治療に必要な薬品や医療器具を備蓄するなど 医療機能が維持できる対策をあらかじめ講じること 消防団の支援強化について 今回の震災では 東京の有する高度な救命救助能力 消火能力が 被災地支援において大きな力を発揮した 首都直下地震の発災に備えて 資器材の充実や消防水利の確保など 救命救助 消火の体制について より一層の充実強化を図ること 一方 震災時には 公共機関だけで全ての救命救助に対応することは困難であり 日頃から地域の防災リーダー役を担う消防団の力を結集することが必要 消防団の能力の維持向上は ひいては地域防災力向上にもつながることから 発災時の救命救助活動に必要な資器材の確保など 消防団への支援を強化すること - 5 -

避難や備蓄の体制整備と機能する仕組みづくり 的確な避難誘導 遠方への避難者への情報提供 避難者に対するメンタルヘルスケアの充実など 都民が安心して避難できる体制を整えること 公園等の防災上の拠点における発電設備 給水設備 トイレ設備などを充実すること 区市町村や事業者と連携し 物資を円滑に搬送できる体制を整えること 提案の背景 避難の体制と仕組みづくりについて 東日本大震災からも明らかなように 発災時の迅速な避難行動は 多くの命を救うことに直結する また 今回の被災地では 他自治体など遠方への避難によって避難者への情報提供が困難となったほか 避難所生活の長期化によって 避難者は大きな精神的負担を強いられた このため 都民が迅速に避難できるよう的確な避難誘導の体制を確立すること また 遠方へ避難した都民にも情報が行き渡る仕組みを整えるとともに 避難者に対するメンタルヘルスケアの体制を構築すること 備蓄について 都立公園等は いざという時 都民の避難場所となるが 現在 こうした防災拠点となる施設でも 給水機能が十分でないものがある また 今回の震災では 都内における帰宅困難者への対応の際 交通渋滞等により物資の搬送が円滑に行えなかった 首都直下地震の発災時にも 同様の事態が発生することが懸念される 物資搬送に関しては 区市町村の分散備蓄の有効性等を検証するとともに 物流事業者も活用した効率的な搬出も検討する必要がある このため 公園等の防災上の拠点における発電設備 給水設備 トイレ設備などを充実すること また 区市町村や事業者と連携し 物資を円滑に搬送できる体制を整えること - 6 -

発災時の応急対応力の強化 関係機関との連携を強化するなど 都の初動態勢を強化すること 自衛隊の派遣などに関する国との連携 全国知事会等との応援体制など 発災時の広域的な相互応援機能を強化すること 区市町村の体制強化を 訓練等を通じて支援すること 提案の背景 初動態勢について 今回の震災で 都は 災害即応対策本部を立上げて対応に当たったが 本部立上げ後に庁内の役割分担等の調整を要するなどの課題が明らかになっている 発災直後から円滑な応急対応を行うためには 庁内各局はもとより 区市町村や各防災機関と緊密に連携する必要があり 関係機関との連携を強化するなど 都の初動態勢を強化すること 広域的な相互応援について 大規模な災害時には 自衛隊が大きな力を発揮する 今回の震災でも 救出救助 道路復旧 物資配給など 様々な場面で活躍している 首都直下地震が発生した場合には 首都中枢機能を維持するため 自衛隊の迅速な派遣などをはじめとする国との円滑な連携が求められる また 大災害時には 広域的な支援が必須となるが 今回の震災では 全国知事会等による支援が円滑に進まなかった このため 国との連携 全国知事会等との応援体制など 発災時の広域的な相互応援機能を強化すること 区市町村の体制強化について 発災直後の都民の安全を守るためには 基礎的自治体である区市町村の災害対応力を高めることが欠かせないことから 都としても 区市町村の体制強化を 訓練等を通じて支援すること - 7 -

高齢者や障害者などの不安を取り除く取組み 高齢者や障害者などの災害時要援護者も安心できるような安否確認や避難誘導の仕組みを充実 強化すること 提案の背景 災害時要援護者の安否確認等について 今回の震災では 多くの高齢者が亡くなっており 身元が判明している死者のうち 60 歳以上の方は 全体の 65% を占めている また 災害時要援護者の安否確認の仕組みが 十分に機能しなかった地域もあったほか 帰宅困難者となった災害時要援護者に対する情報提供などの支援策の充実も講じる必要がある このため 今回の経験を踏まえて 区市町村とも連携して 災害時要援護者保護の仕組みを改めて検証し 高齢者や障害者などの災害時要援護者も安心できるような安否確認や避難誘導の仕組みを充実 強化すること 東日本大震災における死者と地域人口の年齢構成比較 ( 岩手県 宮城県 福島県 ) ( 出典 ) 平成 23 年版防災白書 - 8 -

Ⅱ 発災直後の混乱を回避するような仕組みを 帰宅困難者対策に早期に対応 企業や学校での施設内保護を徹底すること 鉄道事業者などによる利用者保護を徹底するとともに 区市町村や事業者と連携して一時待機施設を確保すること 情報通信基盤の強化や 大型ビジョンなどを活用し 安否確認などが確実に行える仕組みをつくること 帰宅支援ステーションを拡充するとともに その認知度を向上させ 都民が安全に帰宅できるよう対策を講じること 提案の背景 帰宅困難者対策への早期対応について 今回の震災では 差し迫った理由もなく帰宅しようとした外出者が多数存在し 大きな混乱が生じた 今回の経験を踏まえて 徒歩帰宅者の発生を抑制するための備蓄を進め 発災時には 企業や学校で施設内保護するというルールを徹底すること また 駅構内から利用者等が締め出されるなど 利用者保護の観点から不適切な対応が見られた上 帰宅困難者を受け入れる施設の数も十分ではなかったことから 事業者の利用者保護を徹底するとともに 一時待機施設の確保を図ること 加えて 携帯電話がつながりにくくなるなど 安否確認等の情報収集が困難であったことが 徒歩帰宅を誘発した一因となっている このため 情報通信基盤の強化や大型ビジョンなどを活用した安否確認など 災害時にも確実に情報提供ができる仕組みをつくること さらに 帰宅支援ステーションについては その存在が十分に知られていないという実態がある 帰宅支援ステーションの拡充を図るとともに その認知度を向上させること - 9 -

交通ネットワークの耐震性向上と早期復旧の実現 三環状道路の整備や橋梁 沿道建築物の耐震化を強力に進めること 交通規制や道路の早期復旧の体制構築などソフト対策を推進すること これらにより 都民の命を守る緊急交通路を確保すること 提案の背景 交通ネットワークの確保について 今回の震災では 被災地の道路が地震 津波により寸断され 各地で不通区間が多発した 震災時に 物資輸送拠点と広域避難場所を結ぶ道路などの交通ネットワークが途絶すると 救助救援や物資の輸送等が遅延し 被害の拡大を招く 首都直下地震の際にこうした事態を招かぬよう 三環状道路の整備や橋梁 沿道建築物の耐震化を強力に進め 震災時の交通ネットワークを確保すること 加えて 震災時に 交通規制や道路復旧などが的確に実施されるよう ソフト対策を推進すること これらの対策により 震災時に一人でも多くの都民の命を救えるよう 緊急交通路を確保すること - 10 -

都民に安心を与える情報通信手段の確保 無線機や衛星携帯電話を整備し 防災関係機関などとの通信を確保すること 情報通信基盤の強化や 大型ビジョンなどを活用し安否確認などが確実に行える仕組みをつくること 再掲 提案の背景 情報通信について 今回の震災では 都内では 電話の輻輳による影響を受けたものの 防災行政無線など複数の手段を活用して情報連絡を行った 一方で 被災地では 庁舎が津波の被害を受けたことから 通信が完全に途絶し その後の応急 復旧活動に支障が生じたケースもあった 発災時において迅速な応急 復旧活動を実施するためには 都 国 区市町村はもとより 協定締結団体なども含めて防災関係機関との情報連絡を確実に行う必要がある このため 無線機や衛星携帯電話を整備し 防災関係機関などとの通信を確保すること また 帰宅困難者対策における情報通信については 今回の震災では 携帯電話がつながりにくくなるなど 安否確認等の情報収集が困難であったことが 徒歩帰宅を誘発した一因となっている このため 情報通信基盤の強化や大型ビジョンなどを活用した安否確認など 災害時にも確実に情報提供ができる仕組みをつくること - 11 -

安定した燃料確保の仕組みづくり 石油関係団体との協定について しっかりと分析 検証すること あわせて 実践的な訓練を通じて 供給体制を確立すること 災害拠点病院など燃料供給を絶やすことのできない施設の燃料について 実効ある確保策を講じること 提案の背景 燃料確保について 今回の震災では 東日本の6ヶ所の製油所が被災し 一時稼動を停止した このため 都内も含めた各地で 局地的な燃料の不足が生じた 発災時の燃料の安定調達は 非常用自家発電設備等による電力確保の面からも重要であり 都は 石油関係団体との間で締結している 大規模災害時における石油燃料の安定供給に関する協定 について 改めて 燃料の確保から搬送 供給に至るまでの過程を詳細に分析し その実効性を検証すること あわせて 実践的な訓練を通じて 供給体制を確立すること また 災害時拠点病院が 燃料不足から機能維持が困難になると 深刻な影響が生じる このため 災害拠点病院など燃料供給を絶やすことのできない施設の燃料について 実効ある確保策を講じること - 12 -

Ⅲ 地震に強いまちづくりのさらなる推進を 木造住宅密集地域対策の充実強化 木造住宅密集地域の不燃化に向けて 生活者の視点に立った実効性ある対策を打ち出すこと ハード対策とあわせて 住民の意識啓発や消火体制の整備などのソフト対策も充実させること 提案の背景 木造住宅密集地域対策の充実強化について 阪神 淡路大震災では 木造建築物が密集している地域で 建物倒壊や大規模火災により甚大な被害が生じた 都内でも 未だ不燃化が進んでいない地区が残っており 居住者の高齢化や複雑な土地権利関係などにより整備が進みにくい状況である 対策を進めるに当たっては 居住者の生活再建なども十分考慮し 居住者が受け入れやすい解決策を示していくことが必要である このため 生活者の視点に立った新たな誘導策を導入するなど 実効性の高い対策を打ち出すこと ソフト対策の充実について 木造住宅密集地域の整備を進めるには 所有者が危険性を認識し 主体的に取り組むことが必要である 住民の危機意識を喚起するような取組みや 火災発生時には迅速に消火できる体制を整備するなど ハード対策とあわせてソフト対策を充実させること - 13 -

公園等を活用した多様な防災拠点整備の促進 住民の避難や救出救助活動の拠点となる都市公園の整備を促進すること また 発電設備 給水設備 トイレ設備の整備など その機能向上に向けた取組を強化すること 民間開発を利用した公園や備蓄倉庫の整備など 民間事業者と連携した取組みを推進すること 提案の背景 都市公園の防災機能の向上について 今回の震災では 被災地において 避難場所や救援物資の集積所などに公園等が活用され 防災拠点としての重要性が改めて認識された 震災時に防災拠点として活用できる公園等を確保しておくことが必要である また 停電時の対応など 震災時に必要となる機能をもたせることも重要である 都市公園等の整備をさらに進めるとともに 発電設備 給水設備 トイレ設備の整備など機能向上に向けた取組を強化すること 民間事業者との連携について 都心部等では 用地取得が困難であるなど 長期間 公園の整備が進んでいない地域がある 防災拠点となる公園等を整備していくには 行政だけでなく 民間事業者を活用することも重要である 民間開発を利用した公園や備蓄倉庫の整備など 民間事業者と連携した取組みを進めること - 14 -

建築物の耐震性向上の加速 公共建築物はもとより 劇場 百貨店やマンション等の耐震化を促進すること とりわけ 民間医療機関や私立学校など より高度な安全性が求められる建築物については 耐震化助成などの支援策を講じること 長周期地震動による被害を防止するため 高層建築物等の安全確保対策を講じること 提案の背景 建築物の耐震化促進について 今回の震災では 都内でも地震の揺れによる建物被害が約 3,600 件発生し 建築物の天井が落下して死者が出るという被害もあった 首都直下地震が起きた場合には さらに甚大な被害が生じることが予想される 公共建築物はもとより 劇場 百貨店など不特定多数の人が利用する特定建築物やマンションが倒壊すると 大きな影響を及ぼすことから これらの建築物の耐震化をより一層促進すること 民間建築物の中でも 医療機関や私立学校などについては 震災時に重要な役割を担うものであり より高度な安全性が求められる このため 耐震化助成など さらに耐震化を加速させるための対策を講じること また 東海 東南海 南海連動地震の発生時には 長周期地震動が都内に大きな影響を与えることが懸念される 東京は 高層ビルが多数存在する大都市であり こうした特性を踏まえた対策を講じる必要がある このため 長周期地震動による被害を防止するため 高層建築物等の安全確保対策を講じること - 15 -

ゼロメートル地帯などでの津波や高潮対策のさらなる強化 東京湾の水害に備え 水門や防潮堤などの耐震化等について一層の促進を図ること 津波や高潮を想定した訓練を実施すること ゼロメートル地帯への浸水に備えて 広域的な避難対策を講じること 提案の背景 水門等の耐震化対策について 被災地では 津波で堤防が破壊されたり 操作室が流出して水門が操作不能となるなどの被害があった 水門や防潮堤が機能を喪失すると 甚大な被害をもたらすことになる このため 耐震化対策のさらなる促進を図ること また 都の水門や防潮堤は 主に高潮対策として整備されたものであり 津波等の災害に対する耐性についても 十分な検証を行うこと こうしたハード対策に加えて 発災時に都民が的確な避難行動をとれるよう 区市町村とも連携し 津波や高潮を想定した訓練を実施すること 広域的な避難対策について 今回の震災では 想定外の大津波により甚大な被害がもたらされたが 一方で 的確な避難により 被害を免れた事例も数多く報告されている いざというときに備え 避難場所や避難誘導などの対策を万全にしておくことが必要である 都内には 区部東部にゼロメートル地帯が広がっており 万が一 浸水した場合にも 迅速かつ的確に避難できるよう 区市町村や他県とも連携した広域的な避難対策の検討を進めること - 16 -

ライフライン機能の確保策の充実 電力事業者に対し施設の耐震化を働きかけること 都としても 自家発電設備の充実や電線類の地中化等を促進し 都民生活に必須の電力を確保すること 上下水道施設の耐震化 液状化対策を推進し 発災時にも水道やトイレの使用を可能とすること 提案の背景 電気施設の耐震化について 今回の震災では 電力の供給不足による計画停電が実施され 都内においても大きな影響を受けた 電力供給が途絶えると 生活に大きな支障が及ぼされるほか 医療機関や在宅療養患者等においては 人命にかかわる問題となる 今回の震災の経験を踏まえ 電力事業者に対し 施設の耐震化をさらに万全なものとするよう働きかけること 加えて 都としても 自家発電設備の充実や電線類の地中化等により 震災時においても必要な電力を確保できるよう対策を講じること 上下水道の耐震化について 今回の震災では 東北 3 県を中心に200 万戸以上が断水した また 下水道について1000km 以上にのぼる管きょが被害を受け トイレ不足や仮設トイレの使用に伴うし尿処理への対応など 公衆衛生上 大きな問題となった 飲料水や生活用水 トイレの確保は 生活を営む上で不可欠である これまでの取組みをさらに加速させ 避難所等につながる上下水道の対策を重点的に促進するなど 発災時にも水道 トイレが使用できるよう耐震化 液状化対策を講じること - 17 -

Ⅳ 地域住民や企業 団体の協力を得た地域防災力の強化を 町会 自治会やボランティアなどの力を結集した地域防災力の強化 町会 自治会と協力して 防災隣組 を早期に構築するなど 地域の防災力強化と地域の活性化を図ること 自助 共助の精神を涵養する防災教育を充実するとともに ボランティアの力を最大限活用すること 提案の背景 地域の防災力向上と活性化について これまでの震災と同様に 東日本大震災においても 自助 共助の有効性が明らかになった 都内でも地域の防災力を一層向上することが必要であるが 住民の高齢化や住民同士のつながりが希薄であるなどの課題がある このため 区市町村や地元の町会 自治会と連携しながら 地域の取組を後押しし 防災隣組を早期に構築するなど 地域の防災力強化と地域の活性化を図ること 防災教育の推進とボランティアの活用について 岩手県釜石市では 小中学生が日頃の防災教育の成果を遺憾なく発揮し 津波から無事に避難できた 災害による被害を軽減するためには 都民一人ひとりの防災力を高めることが重要であることから 都は 自助 共助の精神を涵養しながら 発災時の行動力を向上させる防災教育の一層の充実を図ること また 発災後は 意欲の高いボランティアによる活動が 復旧 復興への大きな力となる 今回の震災で明らかになった課題を踏まえて ボランティアコーディネートの円滑化などに向けて必要な対策を講じ ボランティアの力を最大限活用すること - 18 -

地域の中小企業や団体とも連携した防災対策の充実 中小企業による減災の取組を強く支援すること 地域の事業所と町会 自治会の連携した協力を支援し 地域の共助を推進すること 提案の背景 減災の取組の支援等について 発災時 事業者には 事業活動の継続に加えて 地域の一員として共助の一端を担うことが求められている 東日本大震災の被災地でも 事業者による取組によって 多くの地域住民が支えられていた また 都内の帰宅困難者対策などにおいても 事業者による従業員 利用者の保護などの取組を進めることが 被害を減少させることにつながる しかしながら とりわけ 中小企業においては 経営基盤が弱いこと等から こうした取組が円滑に進まない恐れがある このため 中小企業による減災の取組を強く支援すること また 事業所が 地域において共助の取組を進めるには 地元の町会 自治会等の協力が不可欠であり 都は 区市町村とも連携して 地域の事業所と町会 自治会の連携した協力を支援し 地域の共助を推進すること - 19 -

おわりに ~ 防災対策の継続的な改善に向けて~ さいごに 安全 安心の確保は一朝一夕になし得るものではありません 先人の皆さんが経験と知恵に基づいて築いてきた安全 安心を我々は受け継ぎ 守り そしてより発展させて次世代へと引き継ぐ使命と責任を負っていると考えます 千年に一度と言われた今回の大震災 地球温暖化に歯止めがかかっていない自然環境の変化などを踏まえ 常に時代に即した災害対策に取り組み 進化させていかなければならないのです この度の報告書は 前述したように 都民目線 を第一義にとりまとめたものです 従って他の課題がまだ多くあることも認識しております 電力 エネルギー対策や総合的な危機管理体制 法改正を含めた国への提言など 多岐にわたる防災対策が必要であるとともに こうした取組の発信と都民への啓発活動も同時に行っていくべきだと考えております 今後もあらゆる機会をとらえ 引き続き提言を行ってまいります - 20 -