病原体に対する障壁 ( 第一の防衛 ) 小腸のパネート細胞に産生される抗菌ペプチド 杯細胞によって産生されたムチンによって保護されたゾーン 物理的障壁 : 化学的障壁 : 微生物学的障壁 : 上皮細胞 粘液 涙鼻腔の線毛 液体 気体の流れ 低 ph ( 例外 ピロリ菌 ) 酵素 ( リソチーム ペプ

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病原体に対する障壁 ( 第一の防衛 ) 小腸のパネート細胞に産生される抗菌ペプチド 杯細胞によって産生されたムチンによって保護されたゾーン 物理的障壁 : 化学的障壁 : 微生物学的障壁 : 上皮細胞 粘液 涙鼻腔の線毛 液体 気体の流れ 低 ph ( 例外 ピロリ菌 ) 酵素 ( リソチーム ペプシン ) 抗菌ペプチド ( デフェンシン ) 常在細菌

初期感染に対する 3 種類の応答 血液 リンパ 間質上皮細胞表面例 : コレラ菌 大腸菌 細胞外 ピロリ菌 淋菌 細胞質内 例 : ウィルス クラミジア リケッチア 小胞体内 例 : チフス菌 レジオネラ エルシニア トリパノゾーマ 細胞内 詳しくは,p43 図 2.3 参照 自然免疫 感染 感染源の除去 抗原非特異的な即時型の反応 初期誘導応答 感染 感染源の除去 適応免疫応答 感染 感染源の除去 Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p39, 図 2.1 より抜粋

ヒトでよくみられる細菌感染源 細胞内感染 Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p42, 図 2.2 より抜粋

自然免疫担当細胞 好中球 貪食 NADPH 骨髄系 G-CSFで分化炎症が始まると最初に感染部位に集まる短命 ( 貪食後すぐ死ぬ ) 膿 マクロファージ 樹状細胞 NK 細胞 貪食 貪食 抗原提示 抗原提示 リンパ球系 NADPH 骨髄系 肝臓 : クッパー細胞皮膚 : ランゲルハンス細胞 (CD1a 陽性 ) 骨 : 破骨細胞 骨髄系 GM-CSFとIL-4により単球から組織で分化 CD11c 陽性 MHC class-iiを高発現自然免疫と獲得免疫の橋渡しに重要な役割を担うピノサイトーシス ( 飲作用 ) 機能を持つ 顆粒を持つ大型リンパ球キラーレクチン様レセプター (KLR) ファミリーとキラー細胞免疫グロブリン様レセプター (KIR) ファミリーを発現細胞障害性を有して ウィルス感染細胞や腫瘍細胞を排除 NK 細胞機能不全患者ではヘルペス感染の感受性亢進 NADPH: Nicotineamide adenine dinucleotide phosphate ( ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 )

自然免疫様リンパ球 B1 B 細胞 自然免疫様リンパ球 免疫記憶はない細胞表面に CD5 を発現腹腔 胸腔に存在して自己再生する自然抗体と呼ばれる IgM isotype の抗体を産生自然抗体は病原体表面の多糖抗原に抗原非特異的に結合 T 細胞受容体 γδt 細胞 免疫記憶はない皮膚や腸管上皮中に存在する原始生物にも存在 MHC 非依存性で特殊な抗原を認識免疫活性を誘導するインターフェロン (IFN)-γ を急速に分泌 NKT 細胞 インバリアント T 細胞受容体 α 鎖を有し 免疫記憶はない CD1d 拘束性で糖脂質抗原を認識 IFN-γ インターロイキン (IL)-4 IL-10 を急速に分泌 Invariant: 変化しない 不変の

粘膜上皮機構と防御のメカニズム 呼吸器系の粘膜上皮 : 上皮線毛 (cilium) 呼吸器 腸管蠕動による感染因子の移動 胃酸による低 ph 上部消化管の消化酵素 胆汁酸塩 脂肪酸 リン脂質の産生 涙や唾液中の酵素 ( リゾチーム ホスホリパーゼA) 小腸パネート細胞 ( クリプチジン α/β デフェンシン ) 皮膚 呼吸器 泌尿器がつくる抗菌ペプチド 常在細菌叢による上皮細胞における病原微生物との競合 消化器 全身

健常人の腸管上皮は 2 層のムチン層で構成されている 腸内細菌 1 外側ムチン層 2 内側ムチン層 腸管上皮細胞 Hooper LV and Macpherson AJ, Nat Rev Immunol, 2010

炎症の 4 主徴 腫脹 (edema) 発赤 (redness) 発熱 (fever) 疼痛 (pain) サイトカイン分泌が関与している

活性化したマクロファージや樹状細胞はサイトカインを産生する IL-1: TNF-α: IL-6: IL-8: IL-12: 血管内皮の活性 ( 血管透過性亢進 = 腫脹 血流亢進 = 発赤 熱感 ), 局所破壊が起こった部位での産生 ( 疼痛 ) 痛み物質 ( 疼痛 ) と熱物質 ( 発熱 ) 産生誘導炎症の促進 血管内皮の活性 ( 血管透過性亢進 = 腫脹 血流亢進 = 発赤 熱感 ) リンパ流量増加 ( 腫脹 ) 痛み物質痛み物質 ( 疼痛 ) と熱物質 ( 発熱 ) 産生誘導炎症の促進 肝臓の C 反応性タンパク質 (CRP) 産生誘導 リンパ球活性 好中球の遊走惹起 Th1 T 細胞の分化誘導 NK 細胞の活性化 Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p59, 図 2.21 より抜粋

TNF-α は生体に対して諸刃の剣の役割を担う いったん感染が血流に広がると TNF-α が局所感染をとどめるのと同時に 大きな障害を誘導する 敗血症性ショック 敗血症 : 全身性の TNFα の産生を誘導し 全身性の血管拡張 血管透過性亢進による血漿量の減少によるショックを惹起する IFN-α IFN-β は抗ウイルス作用を有する C 型肝炎ウィルス ウイルス感染は 循環型の樹状細胞である形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cells) からの IFN-α と IFN-β の産生を誘導 IFN-α IFN-β: ウィルス複製に対する宿主細胞の抵抗性を亢進 ( ウィルスの増殖抑制 )

単球からマクロファージへの分化 単球 血管の管腔内 血管内皮細胞 組織 マクロファージ Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p51, 図 2.12 より抜粋

病原体を最初に迎え撃つマクロファージ Mφ は多くの微生物構成成分に対するレセプターを発現している Mφ 上のレセプターに細菌が結合するとサイトカインや伝達物質の分泌が誘導される Mφ は結合した細菌を貪食して消化する 細菌 scavenging= cleaning Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p44, 図 2.8 より抜粋, 改変

自然免疫系におけるパターン認識 自然免疫系のレセプター ( 抗原非特異性 ) ( 抗原特異性 ) 適応免疫系のレセプター Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p53, 図 2.13 より抜粋, 改変

病原体を認識するパターン認識レセプター (PRR) 自然免疫系は 病原体上に発現する特定の分子構造を認識して自己と非自己とを識別する 特定の分子構造とは?? à 病原体関連分子パターン (Pathogen-Associated Molecular Pattern: PAMPs) パターン認識レセプター (PRR) によって PAMPs が認識される PAMPs と PRR の例リポ多糖 (Lipopolysaccharide: LPS) à TLR4 によって認識ペプチドグリカン (peptidoglycan) à TLR2 によって認識ムラミルジペプチド (muramyl dipeptide:mdp) à NOD2 によって認識 次のページのスライド参照 マンノース結合レクチン (mannose-binding lectin: MBL): 血漿中に存在するレセプター マクロファージマンノースレセプター : 貪食細胞の表面に存在するレセプター

細菌の細胞壁の構造 NAcGlu N- アセチルムラミン酸 Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p54, 図 2.14 より抜粋, 改変

Toll-like Receptor (TLR) は病原体の種類を認識する ショウジョウバエ 細胞膜 自然免疫における病原体と自己の区別 生体 : パターン認識レセプター Pattern recognition receptor (PRR) Toll 様レセプター (Toll-like receptors: TLR) 細胞質 TLR-3 TLR-7 TLR-9 細胞表面には発現していない Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p56, 図 2.16, 2.17 より抜粋

Toll-like Receptor (TLR) は病原体の種類を認識する 病原体 : 病原体関連分子パターン Pathogen-associated molecular pattern: PAMP 病原体の表面には分子構造の繰り返しがある TLR3 ( 細胞内 ) TLR7 ( 細胞内 ) ウイルス 1 本鎖 RNA Flagellin ウイルス 2 本鎖 RNA Nucleoid Ribosome フラジェリン TLR5 ( 細胞表面 ) CD14, MD-2 TLR4 ( 細胞表面 ) グラム陰性菌リポ多糖 (LPS) TLR9 ( 細胞内 ) 非メチル化 CpG DNA(CpG DNA) ホスホジエステル結合 TLR1/TLR2 TLR6/TLR2 ( 細胞表面 ) グラム陽性菌ペプチドグリカン

グラム陰性菌の LPS は TLR-4 を介して細胞内シグナルを伝達する MD-2 MyD-88 LPS と LBP との結合 LPS と CD14 との結合 CD14 と TLR4/MD-2 との結合 Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p58, 図 2.19 より抜粋

マンノース結合レクチン (Mannose-binding lectin, MBL) MBL は MBP ( マンナン結合蛋白 ) とも呼ばれ マンノースや N- アセチルグルコサミンに Ca 依存性に結合する MBL はオリゴマー構造をしている 各ドメイン構造を持つ束状の蛋白で 血漿中に存在する 1 システインに富むドメイン 2 コラーゲン様ドメイン 3 ネックドメイン 4 糖鎖認識ドメイン マンノースやフコース残基が規則正しい間隔で配置されている病原体表面に結合する MBL 病原体表面ヒト細胞表面 規則正しい間隔なので MBL が結合できる 不規則な間隔なので MBL が結合できない

NOD (Nucleotide-binding oligomerization domain) l NOD は細菌の分解産物や構成成分に対するレセプターで 細胞質内に存在する NOD1: グラム陰性菌の分解産物 γ- グルタミルジアミノピメリンを認識 NOD2: グラム陰性と陽性菌のペプチドグリカンの成分であるムラミルジペプチド (MDP) を認識小腸のパネート細胞から α デフェンシン ( 抗細菌蛋白 ) の発現誘導 l NOD2 は IBD( 炎症性腸疾患 ) も感受性遺伝子の一つである Arg Trp Gly Arg Leucine 以下が全て別のアミノ酸に置き換わる

NOD 蛋白は細菌感染のセンサーとして機能する 細菌由来のプロテオグリカン NOD2 Nucleotide binding oligomerization domain 2 MyD88 Myeloid differentiation primary response protein 88 TLR-3 以外のほとんど全ての TLR のアダプター蛋白としてシグナル伝達にかかわる サイトカイン 核 核 サイトカイン TLR とリガンド結合ドメインの特徴を共有している蛋白で細胞質内に存在している RICK Receptor-interacting serine-threonine kinase NOD2 に対するアダプター蛋白キナーゼで NOD2 による NF-kB の活性化 ( 核内移動 ) を誘導する Janeway s 免疫生物学原書第 7 版 p59, 図 2.20 より抜粋, 改変

転写因子 NF-κB の核内移行によるシグナル活性化 細胞質 (p65) 核内

病原体の貪食 (Phagocytosis): 細胞外にいる病原体を食べる 1 2 1. 細胞膜で囲まれる 2. 病原体を包み込む 4 3 3. ファゴソームの形成と同時に内部は好酸性に変わる 4. 抗菌作用を持つ酵素 ペプチドを含有するリソソームと融合してファゴリソソームを形成し 細菌を殺菌 オートファジー (Autophagy, 自食 ): 細胞内に侵入した病原体を食べる, リステリアの様にファゴソームを破壊できる病原体を細胞質内で再度捕獲する 1 2 3 4 1. LC3, Atg5-12 等が結合開始し膜の一部を形成 2. 病原体を取り囲む 3. オートファゴソームの形成 4. 抗菌作用を持つ酵素 ペプチドを含有するリソソームと融合してオートリソソームを形成し 細菌を殺菌

膜結合性 NADPH オキシダーゼ 好中球はスーパーオキシドアニオン (O2 - ) と過酸化水素 (H2O2) を産生してカタラーゼ陽性 過酸化水素非産生病原体を殺菌する ヒドロキシラジカル カタラーゼ陽性菌 : 黄色ブ菌 クレブシエラ 大腸菌 結核菌 アスペルギルス カンジダ カタラーゼ陰性菌 : 肺炎球菌 溶連菌 膜結合性 NADPH オキシダーゼは gp22phox, gp91phox, p47phox, P67phox, p40phox, Rac と呼ばれる蛋白の複合体 Question: 先天性に NADPH オキシダーゼが欠失した遺伝性疾患は? NADPH: Nicotineamide adenine dinucleotide phosphate

慢性肉芽腫症 (Chronic Granulomatous Disease: CGD) 劣性遺伝による NADPH オキシダーゼの欠失 男児の gp91phox の遺伝子異常が 75% 日本で 200-400 患者 平均余命 25-30 歳 好中球の機能障害のため代償性の好中球増加 乳児期よりカタラーゼ陽性 過酸化水素非産生病原菌による 肉芽腫を伴う化膿性皮膚炎 腸炎 肺炎 中耳炎 肝臓膿瘍 肛門周囲膿瘍を繰り返す 診断 : 活性酵素産生能の欠損