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第1章

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にかかるコストをまかなえればよいという発想で安い運賃をオファーし 古紙 スクラップ 穀物 パルプなどの輸送を行っていたという話を聞かせていただいたことがある その際にはコンテナ回送の代わりに運賃を極端に低くして貨物を運んだり リーファーコンテナでも電源を入れずにドライコンテナと同じようにして運用する

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年 年 に設定した 世界合計 の輸出金額は 年 3 兆 2,310 億ドルから 年 6 兆 1,930 億ドル 年 14 兆 6,520 億ドルと 4.5 倍に拡大した後 年秋のリーマンショックを契機として 2009 年には前年の約 3/4 に急激に落ち込み その後 徐々に回復が進み 年 16 兆

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2018年3月期 決算説明会

2018年度 第3四半期累計 1-9月 実績 2017年 19月期 2018年 19月期 増減 () 9,302 9, % +4.1% 営業利益 % 0.0% % +9.7% 親会社の所有者に 帰属する四半期利

Transcription:

コンテナ化の国際貿易促進効果 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO138 日本海事センター企画研究部 研究員松田琢磨 はじめにコンテナ化は大きなイノベーションであり 世界貿易を促進したといわれている たとえば ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のポール クルーグマン教授は 世界を変えたテクノロジーについて考えるとき インターネットだとかワクワクさせるようなものを思い出しがちだ けれども 国際貿易の世界で何が起こったかを解き明かそうとすると コンテナ化がまさに大きく世界を変えたものであることに気づかされる と述べている コンテナ化による貿易促進効果については定量的な分析が難しいといわれてきたが 今年 2 月 英国ノッティンガム大学のバーンホーフェン教授らは コンテナ化について 世界 157 か国について 62 年から 9 年までの 29 年間のデータを用いて コンテナ化が貿易に与えたインパクトについて分析した結果を発表した 今回の記事では彼らの分析結果の紹介にあわせて筆者による日本と米国 英国 オランダ 豪州との貿易を対象とした検証結果などを説明したい 貿易額の増加とコンテナ化第二次世界大戦後 世界の貿易額は大幅に増加した バーンホーフェン教授らによると 62 年には 1,38 億ドルであったが 9 年には 3.5 兆ドルと約 26.5 倍に増加した ( 図 1 参照 ) 56 年 シーランド社のマルコム マクリーンによって始まったとされるコンテナ化は 6 年代に始まった世界経済のグローバル化の進展に一役買ったとされている 実際 コンテナの基準が統一され コンテナ化が進展した時期と世界の貿易額が急増を始めた時期は重なっている

1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 197 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 198 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 199 4, 35, コンテナ化が進展したとされている時期 3, 25, 2, 15, 1, 5, 図 1: 世界の貿易額の推移 (1962-199 年 単位 : 億ドル ) データ出所 : 全米経済研究所 コンテナ化の効用としてはまず 荷役作業や港の運営を効率化したことが挙げられる たとえば コンテナ化が進展している時期の 72 年に英国政府がマッキンゼー社に依頼した調査の結果をみると 英国と西欧地域でコンテナ化が始まる前の 65 年 1 人の港湾労働者は 1 時間当たり 1.7 トンの貨物を運ぶことができたが コンテナ化後の 7 年には 3 トンに増えたとされている また 荷役の効率化が進んだことでコンテナ化によって輸送のために大きな船舶を使用することが可能となり その結果輸送に用いられる船舶も大型化した また 現在のインターモーダルシステム ( 海陸一貫輸送 ) の構築を促したこともコンテナ化の効用といえる インターモーダルシステムが広がることで 生産拠点の分散やグローバルサプライチェーンの確立がなされやすくなった たとえば東南アジアで加工された部品を中国に送り そこで組み立てた製品を日本や欧米に輸出するといった水平分業の広域での地域的展開がコンテナ化を前提としたインターモーダルシステムの広がりによって促進された これらの効用は輸送コストの低減につながり 貿易を促進する効果を持つと考えられている この点についてコンテナ革命に関する著名な著作である コンテナ物語 ( 村井章子訳 ) の著者マルク レビンソン氏は 輸送がきわめて効率的になったおかげで 輸送費は利益計算にさほどの影響を及ぼさなくなった と述べている さらに 時間の節約と正確さの向上もコンテナ化の効用であり これによってメーカ

ーも小売業者も大量に在庫を抱える必要がなくなった 上記のような定性的な利点は以前から指摘されてきたものの レビンソン氏も述べているように コンテナは世界経済にどれほどの影響を与えたのか これを数字で示すのは難しい といわれ 定量的な分析は難しいと考えられてきた ここで紹介しているバーンホーフェン教授らの分析ではダミー変数と呼ばれるものを用いてコンテナ化の影響を検証している 計量経済分析においては 現実のデータを使用して特定要因の影響の大きさを算出するが 法制度やイノベーションといった定量化しがたい変化の影響を分析するためによく用いられるのがこのダミー変数である 具体的には 貿易にかかわる双方の国が海運や鉄道でコンテナ化したかどうかをダミー変数として取り扱うことでコンテナ化の影響を分析できる また 分析で用いられたデータは国連が集めている各国の貿易統計データを全米経済研究所が加工したデータとなっている なお 彼らは 66 年から 83 年までを コンテナ化が進展した時期 としている コンテナ化が世界貿易に与える効果バーンホーフェン教授らの分析結果によると コンテナ化が 22 の先進国において行われた後 5 年間で平均的には 32% 貿易額を増加させ コンテナ化後の 2 数年では 79%( 海上コンテナのみの場合 292%) 増加させているというものである 海上コンテナのみの場合の増加分が小さくなっていることについて バーンホーフェン教授らは鉄道貨物のコンテナ化が進展し インターモーダルシステムが確立することが貿易を拡大するうえで重要であると解釈を加えている また 彼らは計量経済学的に因果関係の検証を行い 先進国間の貿易の場合はコンテナ化の進展が国際貿易を促進するという関係がみられるとしている なお 二国間の自由貿易協定 (FTA) の締結では 2 数年で 41% の増加 関税および貿易に関する一般協定 (GATT) への加入は 2 数年で 285% の増加との結果となっている 途上国を含む場合には コンテナ化後 2 数年の増加は 357% で 先進国同士の貿易に比べるとコンテナ化の効果は限定され 因果関係の存在も確認できないとしている 日本の貿易額の変化とコンテナ化上記の分析結果であるが 個別の国ごとに貿易額の推移を見てみると 分析結果が ( 平均的な効果とはいえ ) コンテナ化の効果を過大に見積もっている可能性がある点には注意が必要である 筆者はバーンホーフェン教授らと同じデータを利用して日本と米国 英国 オランダ 豪州との貿易を対象に貿易額の変化とコンテナ化について検証してみた その結果は表のとおりとなっている 日本で本格的なコンテナ化が始まる直前の 68 年とその 5 年後の 73 年で 32% を超える増加となったものは見られなかった 日本からの輸出についてみると 英国 オランダでは比較的増加率が高いが 米国と豪州は

低めとなっている 日本への輸入を見ると 豪州が比較的高い増加率となっているが 英国と米国は 2% を切っている この時期オランダは為替レートの水準が高くなって工業製品の輸出が停滞していたこともあり オランダからの輸入額の増加率は 1% を切っている 68 年から 73 年までのこの時期は円ドル間の固定相場制が崩壊し 71 年のスミソニアン合意に基づく体制を経て変動相場制が始まった時期を含んでおり この時期に為替レートが大きく円高に振れたことを考慮すると コンテナ化による貿易額の増加はさらに小さくなる 68 年と 9 年の 22 年間の増加率は表のとおりとなっている この結果は バーンホーフェン教授らの分析結果で示された 22 の先進国の貿易についてコンテナ化によって 2 数年間で生じる貿易額の増加である 79% を超えている しかし 引き続き為替レートが円高に振れていることに加えて 米国の消費者物価指数も 68 年の 2.6 から 9 年の 66.8 と 3 倍近くに増大している したがって 彼らの分析結果をそのままコンテナ化による貿易額の増加とみなすことは無理があるだろう 表 : コンテナ化後の日本の輸出入額の増加率 ( 単位 :%) 相手国 1973 年の輸出額増加率 199 年の輸出額増加率 相手国 1973 年の輸入額増加率 199 年の輸入額増加率 日本の輸出 米国 英国 オランダ 豪州 135.5% 291.4% 285.6% 195.% 2182.4% 4341.8% 4968.9% 177.% 日本の輸入 米国 英国 オランダ 豪州 163.% 195.1% 92.3% 279.5% 1396.% 1934.1% 126.8% 1241.8% データ出所 : 全米経済研究所のデータをもとに著者作成 現在の状況と展望バーンホーフェン教授らの分析期間 (62 年から 9 年 ) を過ぎた現在も図 2 の通り海上コンテナ輸送量と貿易額の関係は類似した動きを見せており 二つの変数の相関関係の強さを示す相関係数は.98 とかなり高い 彼らが主にコンテナ化の進展した時期としている 83 年を過ぎてもコンテナ化による国際貿易促進効果はなお続いているように見える

18 16 14 12 1 8 6 4 2 2 18 16 14 12 1 8 6 4 2 コンテナ輸送量 ( 左軸 ) 貿易額 ( 右軸 ) 図 2: 世界のコンテナ輸送量と貿易額の推移 (1996-212 年 左軸単位 :1 万 TEU 右軸単位 : 兆ドル ) データ出所 :Clarkson 国連統計 コンテナ輸送のシステム整備が進んでいることと貿易の拡大が併行している状況は現在も変わっていない 2 年代に入ってからは中国やアジアの貿易が拡大したが これに貢献したのはこの地域の経済成長はもちろんのことであるが 中国やアジアにおいてコンテナ港湾などコンテナ輸送のインフラ整備が進んだこともある 今後についても コンテナ化 ないしはコンテナ輸送の促進が貿易を促進する可能性は残されていると著者は思っている 現在も発展途上国を中心にインフラ整備の効率化の余地は残っている また コンテナについてもリーファーコンテナの機能が向上するなど様々な技術革新が進んでいる 生鮮食品や医療関連品など以前はコンテナ輸送では運ばれていなかったものがコンテナで運ばれるようになっていることからも見られるように これまでは航空貨物で運ばなければならなかったために輸送コストが問題となって取引できなかった品目が貿易されるということも考えられる また 金属スクラップのようにこれまでばら積み船で運ばれていたものであっても コンテナ化により 小口での取引を可能とし 小規模業者でも取引できるようになる ということもある コンテナ化の国際貿易促進効果についてのバーンホーフェン教授の分析結果については留保をつけざるを得ないが 研究の蓄積が進んで 実務面でも参考となりうる分析が現れることに期待したい 以上