腰痛の評価評価とアプローチ PartⅡ 2013 3.9 小金井リハビリリハビリ連絡会研修部
腰痛の定義 解剖学的に 腰仙椎部に局在する疼痛 神経根に由来する下肢痛や馬尾由来の下肢症状を含む
腰椎安定メカニズム Ⅲ. 運動制御の改善 Ⅰ. 可動性の改善 Ⅱ. 筋力 筋持久力の改善
Ⅰ. 可動性の改善
1. 姿勢アライメントの修正 矢状面上姿勢障害と原因筋
可動性の改善 短縮している組織 各種マニュアルセラピー ストレッチング 腰背筋群が過緊張の場合 物理療法 筋膜リリース DNIC( ドゥーニック ) などで抑制を図る
Ⅱ. 筋力 筋持久力の改善
インナーユニット
腰の self-splinting 腹腔内圧上昇のみ 腰椎伸展の力源となるには不足 腰の self-splinting 概念 腹筋収縮 腹腔内圧上昇 胸腰筋膜緊張 自分の体幹筋を装具とすることで 損傷を予防する 腰椎周辺組織の安定化
インナーユニットの収縮スキルを学習してから 徐々にアウターユニットとの協調を図る OKC CKC インナーユニット
インナーユニットエクササイズ ドローイン ( 腹部引き込み運動 ) 吸気に合わせて腹部を膨らませる ゆっくりした呼気に合わせて腹部を引き込んでいく インナーユニット アウターユニットの順で収縮させるイメージをもつ
Ⅲ. 運動制御の改善 必要なのは同時収縮による固定的な支持ではなく ダイナミックスタビリゼーションが必要 潜在的な活動性を有した状態 姿勢や課題に応じて柔軟に調節できる能力
ダイナミックスタビリゼーションを得るには 課題制御アプローチフィード バック制御 フィード フォワード制御 フィード バック誤差学習 より確実なボディー スキーマの構築 方法として 安定化運動 (StabilizingExercises) が有効 安定化運動 : 安定性の限界範囲内で重心を保持して動的平衡状態を持続させる運動 運動には バランスボール フォームローラー 不安定板を使用したもの スリング エクササイズ セラピー (SET) などがある
本日は特異的腰痛の中でも 腰椎椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症胸腰椎圧迫骨折 の評価とアプローチを紹介します 先ずは武蔵野中央病院 力武さん, お願いします!
腰椎椎間板ヘルニア
年齢別 性別発生頻度 男女比は 3:1 20 歳代が最も発生頻度が高い 好発部位は L4/5 が 55.6% L4/5,L5/S1 が 19.6% L5/S1 が 15.0%
発生機序 椎間板軟骨に圧迫荷重や剪断荷重が働き 線維輪に断裂が生じ 椎間板内圧により髄核が突出する 線維輪から飛び出した髄核が神経根を圧迫
分類 膨隆 (protrusion) 突出 (extrusion) 脱出 (sequestration) 体位による椎間板内圧の変化
診断基準 ( 日本整形外科学会腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会提唱 ) 1 腰 下肢痛を有する ( 主に片側 ないしは片側優位 ) 2 安静時にも症状を有する 3SLRテストは 70 以下陽性 ( ただし高齢者では絶対条件ではない ) 4MRIなど画像所見で椎間板の突出がみられ 脊柱管狭窄所見を合併していない 5 症状と画像所見とが一致する
評価 1 問診 既往歴としてぎっくり腰を経験したことがある 腰痛と下肢後面の放散痛 膀胱直腸障害 ( 排尿 排便障害 ) がある 腰痛が前屈によって出現する 後屈では痛みは少ない 咳やくしゃみで増悪する 立位や歩行よりも坐位での痛みが強い代表的な問診票 Oswestry 腰痛質問票 (Oswestrydisability index:odi)
2 視診 逃避性側彎 ( 坐骨神経痛側彎 ) が出現 2 1 1. 飛び出した髄核が神経根を圧迫している状態 1 2 2. それを防ぐために対側に側屈する 1. 飛び出した髄核が神経根を引っ張っている状態 2. それを防ぐために同側に側屈する
立位姿勢
3 テスト :( 陽性症状 ) 脊柱前屈テスト 指尖と床との距離 (FFD) が長くなり 脊柱の運動制限が認められる SLR テスト 70 以下の範囲の挙上で坐骨神経に沿って 殿部 ~ 下腿後面に及ぶ 痛みを生じる
Lasegue テスト 仰臥位で股関節と膝関節を90 にし 徐々に膝関節を進展させていくと下肢に放散疼痛を生じる FNS テスト 腹臥位で一側下肢を伸展させた時に大腿前面に疼痛が生じる
脊髄神経の支配領域 神経レベル L4 L5 S1 深部腱反射膝蓋腱反射 (-) アキレス腱反射 脊柱所見後屈制限前屈制限前屈制限 神経根緊張徴候 SLR テスト FNS テス 陰性陽性 陽性陰性 陽性陰性 知覚障害領域 筋力低下 大腿四頭筋 前脛骨筋長母趾伸筋 長母趾屈筋腓腹筋長 短腓骨筋
4 画像 ヘルニアについては CT よりも MRI の方が有用である
5 理学療法介入の推奨グレードとエビデンスレベル 推奨グレード エビデンスレベル 脊柱マニュピーレーション C 運動療法 ( 保存 ) C 2 運動療法 ( 術後 ) B 2 物理療法 C 1
理学療法評価 ( 指標 ) の推奨グレード分類 推奨グレード Grades of recommendations A B C 内容 Type of recommendations 信頼性, 妥当性のあるもの 信頼性, 妥当性が一部あるもの 信頼性, 妥当性は不明確であるが, 一般的に使用されているもの ( ただし, 一般的 には学会, 委員会等で推奨されているものも含む ) 理学療法介入 の推奨グレード分類 推奨グレード Grades of recommendations A B C1 C2 D 内容 Type of recommendations 行うように勧められる強い科学的根拠がある行うように勧められる科学的根拠がある行うように勧められる科学的根拠がない行わないように勧められる科学的根拠がない無効性や害を示す科学的根拠がある
理学療法介入 のエビデンスレベル分類 エビデンスレベル Level of evidence 内容 Type of evidence 1 システマティック レビュー /RCT のメタアナリシス 2 1 つ以上のランダム化比較試験による 3 非ランダム化比較試験による 4a 分析疫学的研究 ( コホート研究 ) 4b 分析疫学的研究 ( 症例対照研究, 横断研究 ) 5 記述研究 ( 症例報告やケース シリーズ ) 6 患者データに基づかない, 専門委員会や専門家個人の意見
6 アプローチ 安静 薬物療法 ブロック療法物理療法 牽引療法 装具療法 運動療法 徒手療法 1) ) 物理療法 急性期 : 局部の冷却または温熱慢性期 : ホットパックなどの温熱療法 2) 牽引療法 急性期 ~ 慢性期に有効と言われてきたが EBM が低く無効という意見も
3) ) 装具療法 ( コルセット ) 腰椎支持の補助 姿勢の矯正 保温 安定 安心感 急性期は装着した方が良いが 慢性期では長時間の装着は避ける
4) ) 運動療法保存療法 :McKenzie 体操 伸展エクササイズ腰椎伸展により腰椎の前方が開き 椎間板内圧も減少するため後方にずれた髄核が前方に移動する 屈曲エクササイズ屈曲すると椎間板内圧が上昇し痛みを惹起するため 髄核の吸収が進んでから行う 痛みが生じる場合は不適応
伸展エクササイズ 最大でも 2~3 分最初は 5~10 秒でも良い
屈曲エクササイズ
手術後の理学療法 急性期 : ストレッチ 筋力トレーニング スタビリゼーション 慢性期 : ストレッチ 筋力トレーニング 認知行動療法 脊柱安定化エクササイズ 5) ) 徒手療法 急性期 ~ 慢性期 : 脊柱マニュピレーション モビライゼーション ストレッチ
臥位でのスタビリゼーション 3~10 秒程度の保持から開始し徐々に時間を延長していく
坐位でのスタビリゼーション
日常生活指導
まとめ 腰椎椎間板ヘルニアは 20 代の男性に多い 体幹前屈で痛みが生じ 後屈では軽減する 咳やくしゃみで増悪する SLR テストで陽性を呈する 逃避性側弯が生じる 治療は牽引療法 物理療法 装具療法 運動療法 急性期 疼痛のある時期は安静を保つ 疼痛が軽減してきたら まずは体幹伸展を促す 髄核の吸収が進んだら 屈曲運動も行う 日常生活指導も同時に行う
次は脊柱管狭窄症です 桜町病院 中野さん, お願いします!
腰部脊柱管狭窄症
発生機序 加齢的な変化や何らかの理由により 脊柱管が狭小化し 脊髄を圧迫する 加齢的変化 : 姿勢調整能 躯幹筋力の弱化 黄色靭帯の肥厚 椎間関節の肥厚性変化 椎弓 椎間板の変成 変形 症 状 : 間欠性跛行 両下肢しびれ 冷感 知覚鈍麻 筋力低下 膀胱障害
病態生理 60 歳以上に多く 外傷がなければ 40 歳未満はまれ L4/5 に最も多く 次いで L3/4 L2/3 と続き L5/S は比較的少ない 変形性脊椎症による狭窄は男性に多く 変性すべり症による狭窄は女性に多い 様々な疾患や病態が混在していることが多い
分類 馬尾型 神経根型 混合型
2. 評価 1 問診 自転車には長時間乗っていられるが 歩き続けると腰や下肢に疼痛や痺れが生じる = 間欠性跛行 前屈位で休むと痛みが軽減する 安静時には無症状 後屈すると疼痛が出現する
下肢 殿部 会陰部の異常感覚膀胱直腸障害 下肢脱力感 性機能不全多根性障害 馬尾型 下肢の疼痛 単根性障害 神経根型 馬尾型と神経根型の合併型 混合型 2その他のテスト SLR FNS 共に陰性 下肢 体幹筋 MMT 体幹 ROM など
3 画像 (MRI が有用 )
アプローチ 第一選択は 1 保存的治療法 尿閉などの高度の馬尾障害を呈する場合や保存的治療法で改善みられない場合 2 手術的治療
1 保存的治療法 日常生活指導 薬物療法 ( 血行改善薬 消炎鎮痛薬 筋弛緩薬 ビタミン 12) ブロック療法 ( 硬膜外ブロック 神経根ブロック ) 装具療法 物理療法 運動療法
運動療法 ( 保存 ) 段階的に治療を進める 症状に合わせた安全な運動の指導 障害部位に対する早期可動域運動 脊柱管拡大運動 骨盤後傾 体幹の前屈運動 非疼痛可動域範囲内での脊柱安定化運動 上下肢機能維持運動 伸張運動 短縮筋 筋緊張亢進筋群に対して 有酸素運動 伸展時痛には自転車エルゴ
非疼痛可動域内での動的運動 複合された運動 荷重量の増加 不安定化での運動 ( 支持基底面の減少 重心位置の上方移動 ) スポーツ特異的運動 特異的筋群の強化および調整
ウイリアムズ (Williams) 体操 1 4 2 5 3 6
2 手術的治療 基本的には圧迫されている神経根 硬膜管を必要なだけ除圧 椎弓切除術 椎弓形成術( 開窓術 ) 1 除圧術 脊柱管拡大術 脊椎固定術 2 固定術 ( 後側方固定術 PLF 後方進入椎体間固定術 PLIF)
固定術 ( 後側方固定術 ) ( 後 ) ( 側面 )
2 手術的治療 基本的には圧迫されている神経根 硬膜管を必要なだけ除圧 椎弓切除術 椎弓形成術( 開窓術 ) 1 除圧術 脊柱管拡大術 腰椎固定術 椎体間固定術 2 固定術 術後 体幹装具 ( 術後約 3 ヶ月間 ) + 運動療法
体幹装具 3 ヵ月 ~ 6 ヵ月
運動療法 ( 術後 ) 等尺性収縮運動 深層筋群 表層筋群 + 大殿筋 ハムストリングス 広背筋 = 体幹の安定化 可動域運動 1 除圧術 神経根周囲の癒着防止とハムストリングスなどの短縮に対して早期から自動的かつ他動的 SLR を実施 2 固定術 腰椎に過度な動きが生じないよう注意しながら実施 歩行運動 有酸素運動 正常歩行パターンの獲得 全身コンディショニングの調整
ポイントと注意点 医師と連絡を取り合いながらアプローチ 術式により理学療法内容は変化 特に固定術の場合 体幹装具で固定した上でも椎体に動きが出る動作は禁忌 SLR を行う際は腰椎の前弯が強制されるのを防ぐため 対側下肢を膝立位にする 積極的な後屈運動は狭窄を強める恐れがあるため注意 発症のきっかけとなった環境や職場の調整 狭窄症患者は長い経過の中で徐々に悪化している例が多い 膝 OA 頚椎症 肩こり 背部痛など全身的症状に対してアプローチ
次は胸腰椎圧迫骨折です 小金井リハビリテーション病院 柳原さん, お願いします!
胸腰椎圧迫骨折
病態 骨粗鬆症を基礎疾患にもつ場合に発症しやすい 女性の発症率が高く 男性の約 2 倍 有病率は高齢になるほど高く 60 歳代で 7.6~ 14% 70 歳代で 37~45% 好発部位は Th12 L1 の胸腰椎移行部で最も多く ついで Th7 8 そして腰椎となる 新鮮 ( 新規 ) 骨折 陳旧性 ( 既存 ) 骨折に分けられる
症状 主な症状は疼痛 脊柱の後彎変形 圧迫骨折 疼痛 急性疼痛 慢性疼痛 脊柱後彎変形
疼痛の分類 症状 2
症状 3 圧迫骨折と背部痛 能力低下発生リスクの関係 倍率
症状 4 脊柱後彎変形 後彎変形は椎体の圧潰により生じ 骨癒合完成後も脊柱後彎化は進行する 変形 脊柱起立筋の筋緊張亢進 脊柱管内への嵌入 腰痛 神経障害
診断学的検査 基本的には X 線による評価 確実な確定診断には MRI が有用 ( 約 30% は X 線のみでは困難 ) X 線画像
診断学的検査 2 MRI 画像 T1 強調画像 T2 強調画像
診断学的検査 3 MRI 画像 T1 強調画像 T2 強調画像 STIR 画像
骨密度検査 BMD(bone mineral density) の値で評価される YAM(young adult mean) が基準となる YAM 男性 :2.907 女性 :2.864 70%~80%: 骨量減少 70% 以下 : 骨粗鬆症
圧迫骨折の分類
治療方針 保存療法 装具療法 運動療法 薬物療法 手術療法 椎体形成術 後 ( 前 ) 方椎体間固定術 第一選択 変形 不安定性 神経症状がみられれば検討
装具療法 基本的には約 3 ヶ月間の着用長期間の着用は筋力低下の原因となる可能性がある
全体の流れ リハビリテーション 急性期 ( 発症 ~1 週 ) 疼痛管理 筋力低下予防 静脈血栓症予防 褥瘡予防 肺炎予防 亜急性期 ( 発症後 1~3 週 ) 体幹コルセット着用など固定下にて可及的に離床促進 抗重力活動の促進 慢性期 ( 発症後 3 週 ~) 偽関節や脊柱変形予防 再発予防 生活指導 新規骨折の予防
リハビリテーション評価
リハビリ実施上のリスクファクター 圧潰の進行 偽関節の発生 遅発性麻痺の発生 脊柱変形 廃用症候群
運動療法の実際 急性期 : 疼痛コントロール下で可能な運動療法を実施する ( 早期離床 )
運動療法の実際 2 亜急性期 : 積極的な離床 ADL 拡大 体幹筋 ( 特に背筋群 ) トレーニング
運動療法の実際 3 慢性期 : 脊柱後彎変形の抑制 ( 体幹筋群強化 股関節周囲筋群強化 前胸部のストレ ッチ ) 体幹伸筋群強化 ブリッジング
運動療法の実際 4 前胸部のストレッチング
手術療法 圧迫骨折椎体形成術 BKP 偽関節による疼痛に対応 Balloon Kypho Plasty(BKP) 偽関節を形成した難治性の骨折に対し バルーンを膨らませたところにセメントを流し込み固定 椎体形成を行う
手術療法 2 腰椎後方椎体間固定術 PLIF 遅発性麻痺に対応 Posterior Lumbar Interbody Fusion(PLIF)
まとめ 疼痛 後彎変形が 2 大症状 保存療法が第一選択となり 適応があれば手術療法を行う 圧潰 偽関節 遅発性麻痺 脊椎変形などがリスクとして挙げられる これらを避けつつ運動療法を実施し 廃用症候群を予防しながら身体機能 ADL を改善していく 運動療法を実施する際 骨折のタイプや骨密度等を確認し 負荷量設定を行う
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