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Web 版 Vol.59( 通巻 704 号 ) 中高齢寡婦加算 ( 遺族基礎年金の4 分の3) 779,300 円 3/4=584,475 円 584,500 円 (100 円単位 ) (2) 老齢厚生年金の年金額の算定式 平成 30 年度の本来水準と従前額保障 図表

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被用者年金一元化法

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再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

Web 版 Vol.69( 通巻 714 号 ) 図表 1 年金生活者支援給付金の概要 高齢者への給付金 ( 老齢年金生活者支援給付金 ) 何回かご覧になっている資料だと思いますので 支給要件 や 保険料納付済期間に基づく給付額 など制度の概要 ( 基本的事項 ) につ


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一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

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平成25年4月から9月までの年金額は

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

スライド 1

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平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

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発行所 一般財団法人 年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX 月号 Vol.77 通巻722号

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第14章 国民年金 

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スライド 1

平成 30 年 2 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 7 千億円 (1.4%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

平成 30 年 1 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 6 千億円 (1.3%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

例 言 厚生年金保険被保険者厚生年金保険被保険者については 平成 27 年 10 月 1 日から被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律が施行されたことに伴い 厚生年金保険法第 2 条の5の規定に基づき 以下のように分類している 1 第 1 号厚生年金被保険者第 2

2909_0 概要

年金・社会保険セミナー

新規裁定当該期間 ( 月又は年度 ) 中に新たに裁定され 年金受給権を得た者が対象であり 年金額については裁定された時点で決定された年金額 ( 年額 ) となっている なお 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が65 歳に到達した以降 老齢基礎年金及び老齢厚生年金 ( 本来支給もしくは繰下げ支給 ) を

(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

被用者年金一元化法による追加費用削減について 昨年 8 月に社会保障 税一体改革関連法の一つとして被用者年金一元化法が成立 一元化法では 追加費用財源の恩給期間にかかる給付について 以下の配慮措置を設けた上で 負担に見合った水準まで一律に 27% 減額することとし 本年 8 月まで ( 公布から 1

受けているときは これらの年金総額が 230 万円となるように計算されます 計算例 1. 単一の共済年金が支給されている場合 事例 1 退職共済年金 + 老齢基礎年金を受給している方の場合 現在の年金額退職共済年金 210 万円老齢基礎年金 60 万円 (= 組合員期間に係る基礎年金相当額 ) 退職

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Microsoft Word - (差替)170620_【総務部_厚生課_櫻井望恵】論文原稿

52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

被用者年金一元化パンフ.indd

月号 Vol.68( 通巻 713 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX

他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

年金・社会保険セミナー

年金・社会保険セミナー

( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

2906_0 概要

平成 27 年 10 月から全国市町村職員共済組合連合会 ( 以下 市町村連合会 1 ) が年金の決定 支払いを行います ~ 各種届出等の手続き及び各種相談は 今までどおり共済組合で行います ~ 平成 24 年 8 月 22 日に公布された 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部

Microsoft Word -

Microsoft Word - T2-06-1_紙上Live_老齢(1)_①支給要件(9分)_

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年金支給開始年齢図 特別支給の ( 給料比例部分 ) 昭和 29 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 特別支給の退職共済年金 昭和 25 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 退職共済年金 経過的職域加算額 ( 旧職域部分 ) 退職等年金給付 ( 年金払い退職給付 ) 平成 27 年 9 月までの組合

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

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【作成中】2903_0 概要

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

年金制度について 31

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 15,250 円 ( 平成 26 年度 ) 付加保険料月額 400

[ 組合員期間等の特例 ] 組合員期間等については 年齢 職種などにより 過去の制度からの経過措置が設けられており 被用者年金制度の加入期間 ( 各共済組合の組合員期間など ) については 生年月日に応じて次表の年数以上であれば 組合員期間等が 25 年以上とみなされます 生 年 月 日 組合員期間

(2) 国民年金の保険料 国民年金の第 1 号被保険者および任意加入者は, 保険料を納めなければなりません また, より高い老齢給付を望む第 1 号被保険者 任意加入者は, 希望により付加保険料を納めることができます 定額保険料月額 16,490 円 ( 平成 29 年度 ) 付加保険料月額 400

3 老齢厚生年金に係る年金額誤りの概要について 平成 16 年 8 月 6 日公表 概要 老齢厚生年金の受給権発生月に厚生年金保険の資格喪失及び同日付の資格取得があった場合でかつ当該日に賞与が支給された場合の年金額計算のプログラム誤り ( 社会保険業務センターの指示誤り ) のため 未払い 過払いが

調布市要綱第  号

強制加入被保険者(法7) ケース1

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財財第  号

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老齢基礎年金 老齢基礎年金を受けられる方 老齢基礎年金は 原則として受給資格期間が 25 年 (300 ヵ月 ) 以上ある方が 65 歳になったときから受けられます 受給資格を満たしているときは 本人の希望により 60 歳から 70 歳までの間で年金を受け始める年齢を変更することができます (17

Microsoft Word ①概要(整備令)


-1- 国家公務員共済組合連合会平成 27 年度財政状況の概要 1. 収支状況 (1) 長期経理 平成 23 年度平成 24 年度平成 25 年度平成 26 年度 平成 27 年度 (~ 平成 27 年 9 月 ) 億円億円億円億円億円億円 収入総額 20,218 19,162 19,064 19,


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ただし 対象期間の翌年度から起算して3 年度目以降に追納する場合は 保険料に加算額が上乗せされます 保険料の免除や猶予を受けず保険料の未納の期間があると 1 年金額が減額される 2 年期を受給できない3 障害基礎年金や遺族基礎年金を請求できない 場合がありますのでご注意ください 全額または一部免除

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目次 1. 一元化後の 経過的職域加算額 と 退職等年金給付 の概要 04 老齢厚生年金 /04 経過的職域加算額 ( 退職共済年金 )/04 退職等年金給付 ( 退職年金 )/04 経過的職域加算額 ( 退職共済年金 ) を算定する場合は 平均給料月額 平均給与月額 /05 老齢厚生年金の年金額を

2 厚年と国年の加入期間がある人 昭和 36 年 3 月以前 20 歳未満および 60 歳以後の厚年の被保険者期間 昭和 36 年 3 月以前の厚年期間のみの人 坑内員 船員 ( 第 3 種被保険者 ) の場合 昭和 61 年 3 月までの旧船員保険の

スライド 1

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老齢基礎年金 老齢基礎年金は 国民年金の加入者であった方の老後の保障として給付され 65 歳になったときに支給されます 老齢基礎年金は 保険料納付済期間 ( 厚生年金保険や共済組合の加入期間を含む ) と保険料免除期間などを合算した資格期間が 10 年以上ある場合に 終身にわたって受け取ることができ

Microsoft Word - 概要

PowerPoint プレゼンテーション

2 障害厚生年金障害厚生年金は次の1~3の条件すべてに該当する方が受給できます 1 障害の原因となった病気やケガの初診日 ( 1) が 厚生年金保険の被保険者である期間にあること 2 障害の原因となった病気やケガによる障害の程度が 障害認定日 ( 2) に法令により定められている障害等級表 ( 3)

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

Ⅱ 厚生年金の給付の種類と受給要件 1 特別支給の老齢厚生年金 (65 歳になるまで ) 次の要件を全て満たしている方に 支給開始年齢から 65 歳になるまでの間 支給されます (1) 支給開始年齢以上であること (2) 厚生年金被保険者期間が 1 年以上であること (3) 受給資格期間が 10 年

年金・社会保険セミナー

しくみ2 厚生年金は基礎年金に上乗せ 厚生年金保険が適用されている事業所に勤めるサラリーマン等は 国民年金と厚生年金保険の2つの年金制度に加入することになります 厚生年金保険から支給される年金は 加入期間とその間の平均収入に応じて計算される報酬比例の年金となっていて 次のように基礎年金に上乗せするか

はじめに 定年 は人生における大きな節目です 仕事をする 働く という観点からすれば ひとつの大きな目標 ( ゴール ) であり 定年前と定年後では そのライフスタイルも大きく変わってくることでしょう また 昨今の労働力人口の減少からも 国による 働き方改革 の実現に向けては 高齢者の就業促進も大き

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強制加入被保険者(法7) ケース1

第 2 節強制被保険者 1 第 1 号被保険者頻出 択 ( 法 7 条 1 項 1 号 ) 資格要件 日本国内に住所を有する20 歳以上 60 歳未満の者 ( 第 2 号 第 3 号被保険者に該当する者を除く ) 例 ) 自営業者 農漁業従事者 無業者など 適用除外 被用者年金各法に基づく老齢又は退

1 被用者年金制度一元化以降における公務員年金制度の現状 ⑴ 被用者年金制度の一元化 ( 平成 27 年 10 月 1 日施行 ) 平成 24 年 8 月に成立し 同月に公布された 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律 により 平成 27 年 10 月より共済年金

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Ⅱ 厚生年金の給付の種類とその受給要件 1 特別支給の老齢厚生年金 (65 歳になるまで ) 次の要件をすべて満たしているときに 支給開始年齢から 65 歳になるまでの間 支給されます 1 支給開始年齢以上であること 2 厚生年金被保険者期間が1 年以上であること 3 受給資格期間が 25 年以上

年金額の改定について 公的年金制度は平成 16 年の法改正により永久に年金財政を均衡させる従来の仕組みから おおむね ( 100 ) 年間で年金財政を均衡させる仕組みへと変わった この年金財政を均衡させる期間を 財政均衡期間 という これにより 政府は少なくとも ( 5 ) 年ごとに財政の検証をおこ

Web 版 Vol.70( 通巻 715 号 ) 国民年金 基礎年金制度の2017 年度財政状況 2017 年度の収支は 収入総額 244,768 億円 支出総額 235,998 億円で 収支残 8,770 億円の黒字収支となった 2016 年度と比較すると 収入総額はプ

国民年金

【資料8】振替加算の総点検とその対応について

Transcription:

2017. 10. 13 10 月号 Vol.55( 通巻 700 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 105-0003 東京都港区西新橋 1-10-2 TEL. 03-3501-4791 FAX. 03-3502-0086 http://kurassist.jp E-mail: info@kurassist.jp 平成 29 年 9 月 13 日に開催された社会保障審議会 年金事業管理部会で 受給資格期間が 10 年に短縮された人たちへの黄色い封筒の発送状況とその年金請求書の受付状況が報告されました 旧法の該当者は約 1 万人これによると 日本年金機構が発送した大正 15 年 4 月 1 日以前生まれ ( 平成 29 年 8 月 1 日現在 91 歳以上 旧法の該当者と思われる ) の人数は 9,985 人 約 1 万人とのことです 全体 ( 約 59 万 8 千人 ) の2% に満たない割合ということになります 請求済は約 6 割 ( 平成 29 年 7 月末現在 ) 当初 発表された人数では 黄色い封筒が送付される人数は 約 64 万人とされていましたが 事前に手続きをされるなどして 実際に送付されたのは 約 59 万 8 千人だったということです また すでに遺族年金や障がい年金を受給している人で 黄色い封筒が送付される人数は 約 9 万 5 千人と公表されていましたが 同様の理由で 実際に送付されたのは 約 7 万 8 千人だったということです 厚生労働省の捉え方によれば 平成 29 年 7 月末現在 すでに請求の手続きを終えられた人は約 37 万 4 千人 ( うち 遺族年金や障がい年金を受給している人約 2.6 万人 ) となり 黄色い封筒が送付された人に対し 約 6 割の人が請求の手続きをされたということです ( 厚生労働省では分母を約 59 万 8 千人とし 分子の取り方は独特なのでここでは詳細を記さない ) < 平成 29 年 9 月 13 日開催の社会保障審議会 年金事業管理部会に提出された 資料 6 7 頁 > 保険料納付済等の期間が10 年未満の人には お知らせハガキ を送付 年内から! 一方 保険料納付済等の期間が 10 年未満の人には 平成 29 年中からお知らせハガキを順次送付する予定 とのことです < 平成 29 年 9 月 13 日開催の社会保障審議会 年金事業管理部会に提出された 資料 6 3 頁 > 当日は 振替加算の支給漏れについての報告があり この お知らせハガキ の内容についての踏み込んだ説明 質問はありませんでした したがって お知らせハガキ が送付される対象者の生年月日別の対象人数ですとか 平成 29 年の何月頃から送付する という時期については 審議会では明らかにされていません なお お知らせハガキ の記載内容については 平成 29 年 2 月号の本欄で報告した情報より 新しい情報の提供はありませんでした 念のため アクセスして確認しておいてください http://kurassist.jp/nenkin-kouhou/vol47/pro-lecture/pro-lecture-02.html 老齢厚生年金を受給する人の遺族共済年金の先充て計算はどうするのか? (1) 老齢厚生年金を受給する人の遺族共済年金の先充て計算はどうするのか? 被用者年金制度一元化が平成 27 年 10 月に施行され 共済組合に加入していた夫が死亡し 退職共済年金を受給していた夫の遺族年金と妻自身の老齢厚生年金の併給調整はどのように行うのか という相談が増えてきているようです 妻自身の老齢厚生年金を優先受給する いわゆる 先充て計算を行う場合 経過的職域加算額 ( 遺族共済年金 : 旧 3 階部分 )

Web 版 Vol.55( 通巻 700 号 ) 2017. 10.13 02 はどのように扱うのでしょうか? また 公務員共済組合と私学事業団の両方から退職共済年金を受給していた夫が死亡した場合は 先充て計算はどのような手順を踏んで行えばいいのでしょうか? 今回取りあげる事例は 一元化前に死亡されている事例ですが 一元化前に亡くなられている事例のほうが 共済組合の 年金額改定通知書 を見ただけでは 遺族共済年金の支給停止額を計算するのは難しいので この事例のしくみを理解しておけば 一元化後の先充て計算も容易に理解できると思います 先充て計算については 一元化前も一元化後も基本的な仕組みは変わりありません 一元化前に死亡している公務員の遺族年金の名称は? 退職共済年金を受給している地方公務員だった夫が 一元化前に死亡している場合 妻が受給する遺族年金の名称は 遺族共済年金です 年金証書上に 2 階部分と3 階部分は分かれて記載されていません 一元化後に死亡した場合は 2 階部分は遺族厚生年金であり 3 階部分は経過的職域加算額 ( 遺族共済年金 ) という名称になります 先充て計算の対象は 職域年金相当部分も含むのか? 一元前に亡くなった人の遺族共済年金の 年金額改定通知書 を見ると 年金額 支給停止額 年金支給額 の欄はありますが 厚生年金相当部分 職域年金相当部分 の記載欄はないので どの部分が支給停止になっているかがわかりません たとえば 1つの実施機関 ( 地方公務員共済組合 ) から遺族年金を受給する場合はともかく 2つの実施機関 ( 地方公務員共済組合と私学事業団 ) から遺族年金を受給する場合などは 併給調整の対象となる部分を理解しておかないと 先充て計算をしようにも 正確な支給停止額の計算が容易にできないということになります 有利な選択をする場合に 間違ってしまうかもしれません 次の事例を参考に 先充て計算を実際に行ってみましょう 妻の生年月日から老齢厚生年金と老齢基礎年金を算定妻の生年月日 平均標準報酬月額 加入期間等は 図表 1 の算定式のとおりですので 読み取ってください ( 年金額は平成 29 年度のもの ) 図表 1 妻が受給する老齢厚生年金と老齢基礎年金 妻の生年月日 : 昭和 15 年 10 月 10 日 妻の受給する老齢厚生年金 ( ア ) 報酬比例部分 180,000 円 7.771/1000 24 月 =33,570.72 円 33,571 円 ( イ ) 経過的差額加算 (*) 1,625 円 1.208 24 月ー 779,300 円 24 月 /468 月 =47,112 円ー 39,964 円 =7,148 円 ( ウ ) 合計 ( 老齢厚生年金 ) ( ア )+( イ )=40,719 円 (*) 経過的差額加算 とは 経過的加算 のことをいう < 本来水準で算定 >

Web 版 Vol.55( 通巻 700 号 ) 2017. 10.13 03 妻の受給する老齢基礎年金 ( ア ) 老齢基礎年金 779,300 円 (174 月 +24 月 )/468 月 =329,703.84 円 329,704 円 ( イ ) 振替加算 140,636 円 ( ウ ) 合計 ( 老齢基礎年金 ) ( ア )+( イ )=470,340 円 ( 事例はフィクションです ) 妻の遺族年金は? この妻の夫が 平成 19 年 4 月 29 日に死亡しました 妻が 66 歳のときでした 夫は昭和 8 年 3 月 15 日生まれで 74 歳での死亡で 退職共済年金を受給中でした 地方公務員 (360 月 ) と私学事業団 (120 月 ) の加入期間があり 地方公務員共済組合からは 配偶者加給年金額も加算されていました なお 地方公務員共済組合も私学事業団の加入期間も いずれも平成 15 年 3 月以前の期間でした 妻の受給する遺族共済年金は 図表 2 の算定式のとおりですので 平均給料月額などは 図表 2 よりお読み取りください ( 年金額は平成 29 年度のもの なお 経過的寡婦加算の金額については 本稿 2 月号を参照されたい ) http://kurassist.jp/nenkin-kouhou/vol47/pro-lecture/pro-lecture-01.html

Web 版 Vol.55( 通巻 700 号 ) 2017. 10.13 04 図表 2 妻が受給する遺族共済年金 遺族共済年金 ( 地方公務員共済組合 ) 1 厚生年金相当部分 440,000 円 8.712/1000 360 月 3/4=1,034,985.60 円 2 職域年金相当部分 440,000 円 0.874/1000 360 月 3/4= 103,831.20 円 3 1+2=1,138,816.80 円 =1,138,817 円 4 経過的寡婦加算額 304,751 円 5 遺族共済年金 3+4=1,443,568 円 * 年金額の算定は 本来水準による * 昭和 8 年 3 月生まれの場合 厚生年金相当部分の給付乗率は 8.712/1000 職域年金相当部分の給付乗率は 0.874/1000 となる ( 職域年金相当部分については加入期間 20 年以上で 本来水準で算定する場合 ) * 職域年金相当部分の給付乗率が厚生年金相当部分の 2 割というのは 昭和 21 年 4 月 2 日以後生まれの場合 ( 加入期間 20 年以上加入の場合 ) 遺族共済年金 ( 私学事業団 ) 6 厚生年金相当部分 550,000 円 9.170/1000 120 月 3/4 0.997=452,553.26 円 7 職域年金相当部分 550,000 円 0.460/1000 120 月 3/4 0.997= 22,701.69 円 8 6+7=475,254.95 円 =475,255 円 * 年金額の算定は 従前額保障による * 昭和 8 年 3 月生まれの場合 厚生年金相当部分の給付乗率は 9.170/1000 職域年金相当部分の給付乗率は 0.460/1000 となる ( 職域年金相当部分については加入期間 20 年未満で 従前額保障で算定する場合 ) * 職域年金相当部分の給付乗率が厚生年金相当部分の 1 割というのは 昭和 21 年 4 月 2 日以後生まれの場合 ( 加入期間 20 年未満の場合 ) ( 事例はフィクションです ) 図表 2 の事例は 加入していた期間の時期によって 地方公務員共済組合が支給する遺族共済年金は本来水準で 私学事業団の支給する遺族共済年金は従前額保障で決定されている事例です ( なお 共済組合の職域年金相当部分の給付乗率などは 拙著 被用者年金一元化ガイドシート ( 社会保険研究所 ) または本稿 2 月号 http://kurassist.jp/nenkin-kouhou/vol47/pro-lecture/pro-lecture-01.html をご参照ください 老齢厚生年金が優先受給となる妻の 先充て計算の対象となる遺族年金とは? 妻は 昭和 15 年 10 月 10 日生まれで 夫が死亡したのは平成 19 年 4 月 29 日です ということは 妻自身の老齢厚生年金と妻の受給する遺族年金の併給調整については 妻自身の老齢厚生年金を優先受給するということになります ( 図表 3 参照)

実務担当者のための 年金講座 Web版 Vol.55 通巻700号 2017. 10.13 05 なお 遺族共済年金の職域年相当部分 一元化後に死亡した場合は経過的職域加算額 旧3階部分 については 併給調整の 対象となりません そのまま支給されます この事例の場合 併給調整の対象 つまり支給停止の対象となるのは 地方公務員共済組合の支給する ①厚生年金相当部分 一元化後に死亡した場合は遺族厚生年金という名称になる 図表2 の① と ④経過的寡婦加算 の合計額と私学事業団の 支給する ⑥厚生年金相当部分 同様に 一元化後に死亡した場合は遺族厚生年金という名称になる 図表2 の⑥ の合算 額ということになります 図表3 遺族先充て計算のイメージ図 図表4 で遺族先充て計算のポイントを示します これを踏まえ 図表5 で支給停止額の算出方法を記載しておりますの で ご参照ください 図表4 遺族先充て計算のポイント X 遺族共済年金の職域年金相当部分 一元化後は 経過的職域加算額 旧3階部分 は支給停止の対象に含めない Y 経過的寡婦加算が支給される場合には 支給停止の対象に含める Z 遺族共済年金の厚生年金相当部分 一元化後は 遺族厚生年金 2階部分 は支給停止の対象となる 遺族共済年金額の支給停止額を算定するためには まず全体の支給停止額を求めます 図表5 ア 次いで 支給停止の対象となる遺族共済年金の合計額を求めます 図表5 イ 全体の支給停止額を各実施機関 ( この場合は 地方公務員共済組合および私学事業団 ) から支給される 支給停止の対象とな る遺族共済年金の支給額でもって按分し 支給停止額を算出します 図表5 ウ エ あとは 図表5 を見れば 一目瞭然でしょう 支給停止の対象となる遺族共済年金には 職域年金相当部分は含まれません

Web 版 Vol.55( 通巻 700 号 ) 2017. 10.13 06 一方 経過的寡婦加算が支給される場合は これを支給停止の対象額に含めます 図表 5 遺族先充て計算の具体的算定方法 ( ア ) 遺族共済年金の支給停止額妻自身の老齢厚生年金の年金額 =40,719 円 ( イ ) 支給停止の対象となる遺族共済年金の合計額 <1+4+6> 1,034,986 円 +304,751 円 +452,553 円 =1,792,290 円 ( ウ ) 支給停止となる地方公務員共済組合の遺族共済年金の年金額 <( ア ) (1+4)/( イ )> 40,719 円 1,339,737/1,792,290 円 =30,437.46 円 30,437 円 ( エ ) 支給停止となる私学事業団の遺族共済年金の年金額 <( ア ) ( 6 )/( イ )> 40,719 円 452,553 円 /1,792,290 円 =10,281.54 円 10,282 円 ( オ ) 地方公務員共済組合から支給される遺族共済年金の年金額 <1+2+4 ー ( ウ )> 1,034,986 円 +103,831 円 +304,751 円ー 30,437 円 =1,413,131 円 ( カ ) 私学事業団から支給される遺族共済年金の年金額 <6+7 ー ( エ )> 452,553 円 +22,702 円ー 10,282 円 =464,973 円 ( 端数処理は厳密ではありません ) セミナー開催のお知らせ被用者年金制度の一元化によって 制度改正がされた事項については その内容をあらたに理解する必要があります しかしながら 制度の内容が変わっておらず 年金の名称だけが変更になっている事項については 一元化前の知識を再確認するほうが重要だと筆者は認識しています あわせて 受給資格期間の短縮では 年金制度全般にわたる年金知識のフル稼働が求められています そういう意味で勉強になるセミナーが開催されますので お知らせします 平成 29 年 11 月 13 日 ( 月 ) に 武蔵小杉駅駅近くの ユニオンビル ( 富士通労働会館 ) という場所で 13 時 30 分から 16 時 30 分まで開催されます なお 詳細は 主催者にお尋ねください http://www.ken-nen.co.jp/down/academy201711.pdf 年金は 勉強をすればするほど いろいろな事例に遭遇して驚かされます 引き続き 研鑽を深めてまいりたいと存じます 興味深い事例がありましたら ぜひ ご紹介ください 多くのみなさんで 年金知識を共有化して年金相談に役立てていきたいと思います