国土技術政策総合研究所研究資料

Similar documents
エポキシ樹脂塗装鉄筋・ステンレス鉄筋

図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

鋼道路橋防食便覧 目次 A5 判 592 頁本体価格 7,500 円 平成 26 年 3 月 31 日初版第 1 刷発行平成 29 年 5 月 30 日第 3 刷発行 第 Ⅰ 編共通編 第 1 章総則 Ⅰ 総論 Ⅰ 適用の範囲 Ⅰ 用語 Ⅰ-4 第 2 章鋼

コンクリート構造物を長生きさせるための方策 1. コンクリート 鉄 表面保護 ( 樹脂 ) との出会い 2. コラボレーションによる構造物の長寿命化 3. 構造物の予防保全を目指して 2

Taro-通知文

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

第 7 章コンクリート部材の塩害対策 7.1 一 般 3-コ 適応範囲 3-コ 基本方針 3-コ 塩害の影響地域 3-コ 下部構造およびコンクリート上部構造に対する塩害対策 3-コ 路面凍結防止剤の散布による塩害および

複合構造レポート 09 FRP 部材の接合および鋼と FRP の接着接合に関する先端技術 目次 第 1 部 FRP 部材接合の設計思想と強度評価 第 1 章 FRP 構造物の接合部 FRP 材料 FRP 構造物における各種接合方法の分類と典型的な部位 接合方法

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

<4D F736F F D F88DB8E9D8AC7979D82C98AD682B782E9918A926B8E9697E1>

KEN0109_施工技術の動向-三.indd

<4D F736F F F696E74202D E838A815B83678D5C91A295A882CC90DD8C7682CC8AEE967B F A2E707074>

アルカリ骨材反応の概要

HP_GBRC-141, page Normalize_3 ( _GBRC-141.indb )

国土技術政策総合研究所資料

様式及び記入例 (3) 点検結果一覧表 ( その 1) 半田市橋梁点検 補修設計業務 橋梁諸元 定期点検結果 整理番号 橋梁 ID 橋梁名 橋梁形式 径間 長根橋 ( 上流側 ) PC 単純プレテンホロー桁橋 1 橋種 PC 橋 有効 橋長 幅員 橋面積 (m) (m) (m2) 供

強度のメカニズム コンクリートは 骨材同士をセメントペーストで結合したものです したがって コンクリート強度は セメントペーストの接着力に支配されます セメントペーストの接着力は 水セメント比 (W/C 質量比 ) によって決められます 水セメント比が小さいほど 高濃度のセメントペーストとなり 接着

コンクリート用塗料 ( 表面保護工法 ) の目的 1 コンクリート構造物の保護 2 コンクリート構造物の美観付与 3 コンクリート構造物の機能性付与

05設計編-標準_目次.indd

<4D F736F F F696E74202D C96CA8ADC905A8D A C CD93AF82B62E B8CDD8AB

の基準規制値などを参考に コンクリート構造物の長期的な耐久性を確保するために必要なフレッシュコンクリート中の塩化物量の規制値を主要な場合に対して示したものである 従って ここに示していない構造部材や製品に対する塩化物量規制値についてもここで示した値を参考に別途定めることが望ましい 第 3 測定 1.

<4D F736F F F696E74202D2090DD8C7695D E838A815B83678D5C91A295A882CC91CF8B7690AB8FC68DB8288E4F95FB90E690B6816A>

<4D F736F F F696E74202D20355F8CC389EA8FE390C88CA48B8688F CD90EC A837E B81698CC389EA816A5F E

生コンクリートに関する基本情報 ここでは 生コンクリートの製造 供給態勢 生コンを注文する際に必要となる基礎的知識 コンクリート施工の要点について概説します 白鳥生コン株式会社 記事の無断転載を禁じます Copyright SHIRATORI NAMAKON CORPORATION.

差替ファイル1


Microsoft Word - KSスラブ 論文.doc

最終版 ひずみプレスリリース案ver7 .doc

S28-1C1000Technical Information

作成 承認 簡単取扱説明書 ( シュミットハンマー :NR 型 ) (1.0)

国土技術政策総合研究所研究資料

< F2D BAD89BB E90AC8C608169>

Introduction

軟弱地盤対応 補修技術 寒地農業用水路の補修における FRPM 板ライニング工法 54

018QMR 品質計画書作成規程161101

_ARIC {..

1_平成30年度_第1回コンクリート委員会・第3回コンクリート常任委員会_議事録案(最終)

7-2 材料 (1) 材料一般 1. アンカーの材料は JIS などの公的機関の規格により保証されているものか もしくは所要の品質や性能を有していることを確認したものとする 2. アンカーの材料を組み立てる場合には 各材料は他の材料に悪影響を与えないことを確認したものを使用する 1) 材料に関する一

642/08-コンクリート.indd

スンサンレスイート49 ステンレスインサート ドブめっきインサート 安全にお使いいただくために SUS304 JISG4308,JISG3459,JISG4315 を使用することで高度な耐 久 耐食性が得られるインサートを各種製作いたしました 合板型枠 デッ キプレートに 軽天工事用から重設備用まで

50 写真 1 炭酸化養生槽 平衡水中のCaイオン濃度 mmol/l 20 OPC 長寿命化 コンクリート 15 標準養生 5 炭酸化養生 液固比 図 1 溶解試験における Ca 溶脱量 14 標準養生 13 ph 炭酸化養生 写真 2 長寿命化コンクリートプレ

Microsoft PowerPoint 塩害シンポジウム_配布資料.pptx

公共建築工事標準仕様書対応 日本ペイント製品塗装仕様書 平成22年度版

目次ページ 1 適用範囲 1 2 引用規格 1 3 用語及び定義 2 4 種類及び等級 2 5 品質 3 6 見本品 3 7 試験方法 サンプリング 試験用試料の検分及び調製 試験の一般条件 容器の中の状態 低温安定性 4 7.

( 第 10 刷まで反映 ) 擁壁工指針 ( 平成 24 年度版 ) の訂正 箇所修正前修正後 p.3 上から 9 行目と 10 行 目の間 地盤材料試験の方法と解説 なお, これらの基準 指針類が改定され, 地盤材料試験の方法と解説 舗装の構造に関する技術基準 同解説 ( 平成 13 年 ; 日本

水性さび安定化防錆処理剤 + 有機無機複合型コーティング剤 NK さび安定化防錆工法 LINE UP: シールコート 007R,NK-100 シールコート SERIES NETIS 登録番号 SK A 価値ある財を子供たちへ 株式会社日興

公共建築改修工事標準仕様書対応 日本ペイント製品塗装仕様書 平成22年度版

コンクリート工学年次論文集 Vol.25

Microsoft Word - 衝撃設計マニュアル案_Ver3-02.doc

硫化水素の 特集管路資器材腐食劣化の予防保全 図 -1 硫化水素による腐食のメカニズム 4+C(H)2 CS4 2H2( 水 ) C(H)2+4+C 2+2H2 C 2 CS4 2H2( トリン ト ) +2 4 硫 の H2 硫 化 度 に よる S4 2- S4 2- ム 硫化水素の 域 S4

SK (最終161108).xlsx

大学院維持管理工学特論 ローマンコンクリートと分析技術 芝浦工業大学伊代田岳史

本日の主な内容 1. はじめに 2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 塩害 中性化の劣化メカニズム 塩害 中性化の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 健康寿命を延ばすための着目点 3.ASR 補修の基本的な考え方 ASR の劣化メカニズム ASR の補修工法選定進展期 加速期 劣化期 健康

<4D F736F F D E90A792E88B4B8F8095D289FC92F98E9197BF5F76362E646F63>

V- リング 1 / 11 V- リンク の概要と機能について 概要フォーシェダ V- リングは回転軸用のユニークなゴムシールです 1960 年代に開発されて以来 世界中であらゆる業界の OEM や補修市場において幅広く使われてきました V- リングはベアリング内のグリースを保持したまま塵や埃 水ま

設計補修図面と着手前近撮は下記のとおりである 通路断面図 防錆保護 階段断面図 防錆保護 階段部蹴上げ詳細図 紫外線硬化型 FRP シート

<4D F736F F D E838A815B83678D5C91A295A882CC89968A5191CE8DF482C982A882AF82E E28BAD8DDE82C982C282A282C45F96688E4B8B5A8F708BA689EF8CB48D65816A95908EE133>

<4D F736F F D EBF8AC7979D8AEE8F BD90AC E A82CC89FC92E88A E646F63>

<4E6F2E C8E B8D DCF82DD5D2E6169>

研究報告61通し.indd

平成22年度事故情報収集調査結果について(概要速報)

Microsoft Word - 技術資料Vol.2.docx

5.1.2 気密材の種類と特長気密層は 室内と外気の境界部分に連続して設けなくてはならない 一口に気密層といっても 躯体工法 断熱工法の違いにより 必ずしも部材構成として新たに一層増えるわけではなく 従来のほかの目的を持つ部材 例えば防湿層 断熱材 防風層 あるいは構造躯体自体を気密層として考えるこ

Taro-070 強化プラスチック成形(H18改正)

第2章 長寿命化改修各論 ~耐久性向上編~(1)

Taro-094 鉄筋施工(H28改正)

Microsoft Word - 01_橋梁点検要領_付録-1.doc

8 章橋梁補修工 8.1 橋梁地覆補修工 ( 撤去 復旧 ) 8.2 支承取替工 8.3 沓座拡幅工 8.4 桁連結工 8.5 現場溶接鋼桁補強工 8.6 ひび割れ補修工 ( 充てん工法 ) 8.7 ひび割れ補修工 ( 低圧注入工法 ) 8.8 断面修復工 ( 左官工法 ) 8.9 表面被覆工 (

高性能 AE 減水剤を用いた流動化コンクリート 配合設定の手引き ( 案 ) - 改訂版 - 平成 21 年 6 月 国土交通省四国地方整備局

本日の主な内容 1. はじめに 2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 塩害の劣化メカニズム 塩害の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 3.ASR 補修の基本的な考え方 ASR の劣化メカニズム ASR の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 4. 劣化機構に応じた補修工法の選定の考え

平成 29 年度事業報告 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 平成 29 年度事業の概要 当会計年度における県内の経済は 公共投資では大型案件の増加等により 景気は回復基調にありましたが 県が行う土木事業については 減少傾向にありました 平成 29 年度の

日本機械学会 生産システム部門研究発表講演会 2015 資料

技術基準改訂による付着検討・付着割裂破壊検討の取り扱いについてわかりやすく解説

PPSカタログ

Microsoft Word - 土木学会西部支部発表本文 doc

電気防食の歴史について 日本を取り囲む海洋構造物に 塩害をうけているコンクリート構造物に 電気防食の起源は 1824 年イギリスが発祥です 日本では,1919 年に軍艦の防食が初採用となります 日本国内の鉄 ( 金属 ) を使用しているあらゆる施設で用いられています 大気中コンクリート構造物 ( 道

国土技術政策総合研究所 研究資料

コンクリート構造物のひび割れ と劣化について

インフラをめぐる状況 少子高齢化 人口減少 人材難 低経済成長 地球温暖化 異常気象と災害の巨大化 社会基盤の老朽化 長寿命化 維持管理 補修 補強 更新 廃棄 東日本大震災と南海トラフ地震 想定外 減災 国土強靭化 2

第2章 計 画

スライド 1

国土技術政策総合研究所 研究資料

国土技術政策総合研究所 研究資料

第 2 章コンクリートの品質 3- コ 2-1

国土技術政策総合研究所 研究資料

ハーフェクトハリア_H1-H4_ _cs2.ai

目次 1. 適用範囲 1 2. 引用規格 1 3. 種類 1 4. 性能 2 5. 構造 2 6. 形状 寸法 3 7. 材料 3 8. 特性 4 9. 試験方法 検査 6 ( 最終ページ :11)

Microsoft PowerPoint - 03_HP掲載資料(詳細).pptx

Microsoft PowerPoint - (四国電力)JASMiRT CV構造評価_r2.ppt [互換モード]

< F2D32362D C8E86816A E D815B>

附属書1

<4D F736F F D208D5C91A297CD8A7793FC96E591E6328FCD2E646F63>

< F2D E7B8D FC90B3816A2E>

p02.p65

溶接棒

補修標準図 ひびわれ補修工 ( 自動低圧低速注入工法 ) 断面修復工 ( 左官工 ) ( ポリマーセメントモルタル ) 注入器具 ( 鉄筋腐食がある場合 背面 0mm 程度まではつり出す ) ひびわれ注入材 シール材 下地処理 プライマー塗布 カッター切込み 0mm 程度 施工手順 施工手順 ポリマ

Microsoft PowerPoint 発表資料(PC) ppt [互換モード]

(Microsoft Word - \215\234\215\336\216\216\214\261.doc)

工法カタログ NETIS No.QS A ----Line up---- 落書き防止塗装工 トンネル内装塗装工 タイル 石材表面保護塗装工 テリオスコート美装防汚工法 は高耐久防汚材料 テリオスコート NP360 シリーズ を使用した環境に負荷をかけない建築 土木構造物用の無機質塗料に

参考資料 -1 補強リングの強度計算 1) 強度計算式 (2 点支持 ) * 参考文献土木学会昭和 56 年構造力学公式集 (p410) Mo = wr1 2 (1/2+cosψ+ψsinψ-πsinψ+sin 2 ψ) No = wr1 (sin 2 ψ-1/2) Ra = πr1w Rb = π

Transcription:

第 1 章 塗装鉄筋の性能に関する基礎的検討 1.1 はじめに 塗装鉄筋は鉄筋の防錆が本来求められる機能であり 各種試験によりその有効性 ( 性能 ) が確認されている 1) しかし その性能については 塗膜が健全であるという前提に立っ ており 例えば施工中に塗膜に大きな力を受けた場合 あるいは供用後に繰返し大きな荷重が作用した場合に 防食対策としての塗膜が健全であるかについては 十分な検討がなされていない ここでは 防食対策としての塗装鉄筋に求められる性能を整理した上で 一般的な道路橋のコンクリートの内部鋼材を対象に塗装鉄筋の製造から構造物の施工にかけて受ける外力 そして施工後 供用中の各種荷重を受けた時に受ける外力履歴を整理し どの段階における どんな外力が卓越するのか そして それらに対して 塗膜の抵抗力をどのように評価するのかを検討することを目的とする 1.2 塗装鉄筋の要求性能塗装鉄筋の要求性能は 図 1.2.1 に示す 5 段階のレベルに分類した性能規定の階層モデルを基本として整理する レベル 1 目的 レベル 2 機能的要求 レベル 3 要求性能 レベル 5 みなし規定 ( 仕様規定 ) レベル 4 性能照査 図 1.2.1 要求性能の階層モデル 表 1.2.1 に塗装鉄筋の要求性能の検討を示す 要求性能内容はレベル 1 の目的を 塩害環境下において設計で期待している橋の機能を供用期間中に維持する こと レベル 2 の機能的要求を 供用期間中において鋼材が腐食により劣化しない ことに設定する 鋼材腐食による劣化を防ぐために 基本的な腐食作用が成立しないように 酸素 水 塩化物イオンなどの腐食因子の制御 施工により実際的な取扱ができるかなどの施工性を有しているか 対策機能を維持していくための耐久性を有しているか 鋼材とコンクリートの一体性 繰り返し変動する要因 工法が原因で他の劣化作用を招いたりしないか 対策効果の短い場合などでは維持管理性を有しているかについて 設定する -1-

表 1.2.1 塗装鉄筋の要求性能の検討 レベル 1 レベル 2 レベル 3 項目 レベル 4 レベル 5 目的 機能的要 要求性能 性能照査 みなし規定 求 水素 水 塩化酸素の制御 性能試験 既往データによるみなし 物イオンの制御水の制御 ( エポキシ樹脂塗装鉄筋の品質規格 塩害環境下において設計で期待している橋の機能を供用期間中に維持する用期間中において鋼材腐食により劣化しない疲労耐力疲労供塩化物イオ ( JSCE-E 102-2003)) ンの制御 施工性 耐衝撃性 耐衝撃性試験エポキシ樹脂塗装鉄筋の耐衝撃性試験 ( JSCE-E518-2003) 耐荷重性 ( 積み重ね ) 耐摩耗性 曲げ加工性曲げ試験 エポキシ樹脂塗装鉄筋の曲げ試験 ( JSCE-E515-2003) 耐熱性 既往データによるみなし 硬度 硬化性試験 エポキシ樹脂塗装鉄筋の塗膜硬化試験方法 ( 案 )( JSCE-E519-2003) 組立精度 耐久性 耐候性 既往データによるみなし 耐アルカリ 既往データによるみなし 性 鋼材コンクリー付着 引抜き試験 エポキシ樹脂塗装鉄筋の付着強度試験 トの一体性 方法 ( JSCE-E516-2003) 現在のところ 酸素 水 塩化物イオンの制御については 塗膜内部への塩化物イオン が浸透したという報告は見あたらず 橋梁の耐久性として期待する期間では 機能すると考えられる これは昭和 55 年 ~ 60 年に施工され 平成 16 年に台風 18 号の影響により被 2) 3 災した大森大橋を解体調査した結果 鋼材腐食発錆限界 1.2kg/m を上回る位置においても健全であることが確認されたことからも判断される したがって現在の基準に従った材料を用いて 製作 施工がなされれば 実用上は問題とはならない ただし施工性は 局所的な塗膜損傷の欠陥が孔食などの問題を起こす可能性があること 施工時に受ける外力による塗膜の耐荷重性と耐磨耗性についての評価を適切に評価することが必要と考えられる また 鉄筋の組立て精度についての確認したデータがないことから ビニール被覆された鉄線などが塗装鉄筋を保持できる能力についての確認が必要と思われる さらに繰返し荷重の影響を直接受ける部材においては疲労耐久性の確認が必要と考えられる 1.3 塗装鉄筋の外力履歴の整理 1.2 の検討結果を念頭に 各段階を通じて 塗装鉄筋が受ける作用外力の履歴を表によ り整理し 作用外力モデルを抽出した 表 1.3.1 に塗装鉄筋の受ける外力の履歴を示す -2-

また 表 1.3.2 には 作用する外力ごとの品質試験方法を示す 表 1.3.1( a) 塗装鉄筋の受ける外力の履歴 ( その 1) 工程状態想定される外力 鉄筋 塗料の製造鉄筋製造製作 塗料製造製作 熱 鉄筋同士のこすれ ワイヤーによる変形 傷 塗装材料の異常 異物の混入 温 紫外線 異物の混入 温 紫外線 鉄筋への塗装工場塗装熱 温 紫外線 異物の混入 塗 出荷 装むら 塗装不良 鉄筋同士の圧迫 ワイヤーによる変形 傷 切断 曲げ加工工場受け入れ ワ 曲げ加工 切断 出荷 イヤーによる変形 傷 ローラーによるこすれ 曲げによる切れ 剥がれ カッターによるこすれ 剥がれ せん断変形 鉄筋同士の圧迫 ワイヤーによる変形 傷 現場現場受け入れ ワ イヤーによる変形 傷 ヤード内 ヤード内鉄筋同士のこすれ 引きずり 鉄筋同士の圧迫 吊り上げ 箇所のこすれ 配筋鉄筋同士のこすれ 鉄筋同士の圧迫 スペーサとのこすれ スペーサとの圧迫 結束線とのこすれ 結束線との圧迫 作業靴とのこすれ 作業靴との圧迫型枠脱型剤との化学反応 型枠の衝突 作業靴とのこすれ 作業靴との圧迫コンクリートコンクリートとの化学反応 コンクリート落下によるこす打設れ すり減り 作業靴とのこすれ 作業靴との圧迫 バイブレータとの衝突 バイブレータとのこすれ養生コンクリートとの化学反応 硬化熱による変質 水 塩分の浸入 アルカリ分の浸入施工継目熱 温 紫外線 -3-

表 1.3.1( b) 塗装鉄筋の受ける外力の履歴 ( その 2) 工程状態想定される外力 構造物の供用死荷重時コンクリートとの化学反応 鉄筋同士の圧迫 結束線との 圧迫 水 塩分の浸入 アルカリ分の浸入 ひびわれからの水 塩分の浸入 ひびわれからの紫外線活荷重作用時鉄筋同士のこすれ 結束線とのこすれ ひびわれ部のコンクリートとのこすれ繰り返し荷重疲労によるこすれ 疲労による結束線とのこすれ ひびわ作用時れ部付近の疲労によるコンクリートとのこすれ衝突荷重作用衝撃による塗膜の破れ ひびわれ部付近の衝撃による塗膜時の破れ地震時こすれによる熱の発生 圧迫による塗膜の破れ ひびわれ部付近のコンクリートとのこすれ 表 1.3.2 作用する外力ごとの品質試験方法 作用する外力 試 験 方 法 評価 具 体 例 アルカリの作用 塗膜の耐薬品性試験 ( JSCE-E528-2003) 打設時 こすれ こすれ試験がない 作業員の踏みつけ鉄筋同士のこすれ 圧迫 圧迫試験がない 結束線 異物の付着 塗装時の異物混入 塩分の作用 耐食性試験 ( JSCE-E518-2003) 供用後の塩害環境 暴露試験 ( JIS- Z 2381) 温度変化 硬化熱 暴露試験 ( JIS Z 2381) 熱劣化試験 硬化熱 乾湿の繰返し 水分耐食性試験 ( JSCE-E518-2003) 打設時の水分 暴露試験 ( JIS- Z 2381) 曲げ 付着強度試験 ( JSCE-E516-2003) 曲げ加工時 曲げ試験 ( JSCE-E515-2003) 紫外線 暴露試験 ( JIS Z 2381) ヤード時 サンシャインウエザーメータ試験 ( JIS A 6008) 衝撃 衝突 耐衝撃性試験 ( JSCE-E-2003) 時 振動 耐衝撃性試験 ( JSCE-E-2003) 時 疲労 疲労試験がない 繰り返し荷重時 塗装むら 塗装不良ピンホール試験 ( JSCE-E512) ピンホール : 現行の評価方法で評価できるもの : 評価手法がないもの 段階検査で容易に異変を検知でき かつ補修を行うことができる項目については 完成 -4-

品の要求性能にとして評価する必要性が少ないと考えられることから 表 ごとの塗装鉄筋の段階検査について整理した 1.3.3 で 工程 表 1.3.3 工程ごとの塗装鉄筋の段階検査 工 程 検 査 備 考 鉄筋 塗料の製造 製品検査 鉄筋 塗料ごと 鉄筋への塗装 搬入時検査 鉄筋 塗料ごと 製品検査 切断 曲げ加工 加工完了検査 現場 現場受け入れ 搬入時検査 配筋 配筋完了検査ただし鉄筋同士の接触面は検査不能 型枠 検査無し コンクリート打設検査無し 構造物の供用 検査無し 参考文献 1) 土木学会 : エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いる鉄筋コンクリートの設計施工指針, 2003.11. 2) 五十嵐義行, 西弘明, 沼澤一博, 三田村浩, 佐藤昌志 : 2004 年台風 18 号による大森大橋の被災状況について, 土木学会年次学術講演会講演概要集第 1 部 Vol60, pp.845-846,2005. -5-