泌尿器科救急

Similar documents
背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

当院における結石性腎盂腎炎 について

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

第 7 章 腎 泌尿器領域 (a) : すべての専門医が到達すべき知識 技術 (b) : すべての専門医が, さらに高度の専門性を獲得するために到達すべき知識 技術 (c) : 該当する領域において, 専門医が到達すべき知識 技術 (d) : 該当する領域において, 専門医がさらに高度の専門性を獲得

BMP7MS08_693.pdf

スライド 1

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

第10回 感染制御部勉強会 「症例から考える感染症診療」

<4D F736F F F696E74202D204E6F2E395F8FC78CF390AB AB490F58FC75F E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

耐性菌届出基準

前立腺の変化を知る

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

尿路結石が 突然増悪する強烈な側腹部痛で来院すると思い込んでいたのが一番の誤診の原因だったと思う 症状を説明できるような水腎が無いと一時点で思考停止してしまったのも良くなかった 夜間に腹痛が増悪し 来院時には軽減 ~ほぼ消失していることらから 繰り返し増悪するエピソードを説明できるような診断を付けな

Microsoft PowerPoint - 北摂(VCUG).ppt

Microsoft Word - 31荒川_尿路感染症.doc

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

<4D F736F F F696E74202D20368C8E323393FA8B7B94F690E690B A4F8F9D>

U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

< A815B B83578D E9197BF5F906697C38B40945C F92F18B9F91CC90A72E786C73>


(Microsoft Word - TUR-P\220\340\226\276\217\221\201i\215Z\220\263\214\343\201j.doc)

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

Microsoft Word - todaypdf doc

前立腺癌

3 尿意切迫感 : 急に起こり抑えられない強い尿意で我慢することができないという愁訴である. 水に触れたり, 流れる音を聞いたり, 水の流れを見たりすると誘発されることが多い. 正常者が感じる排尿を我慢していて徐々に増強する強い尿意とは異なり, 予測できない突然起こる強い尿意である. 4 切迫性尿失

はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

浜松地区における耐性菌調査の報告

Official Overhead Form for Marketing Division

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好


Microsoft Word - 届出基準

腹腔鏡補助下膀胱全摘除術の説明と同意 (2) 回腸導管小腸 ( 回腸 ) の一部を 導管として使う方法です 腸の蠕動運動を利用して尿を体外へ出します 尿はストーマから流れているため パウチという尿を溜める装具を皮膚に張りつけておく必要があります 手術手技が比較的簡単であることと合併症が少

全自動尿中有形成分分析装置 UF-1000i 非遠心尿を用いた尿中有形成分 ( 沈渣 ) の測定ができるので 遠心力の影響を受けない結果が期待できる 細菌の測定結果から 桿菌 球菌の推測ができる 尿中赤血球の変形有無が測定できる 1 検体 72 秒で測定できる 2


主な手術実績根治的前立腺全摘除術 85 ( ロボット支援手術 85) 膀胱全摘除術 12 ( 腹腔鏡下手術 12) 腎摘除術 23 ( 腹腔鏡下手術 21) 腎部分切除術 18 ( ロボット支援手術 18) 腎尿管全摘除術 26 ( 腹腔鏡下手術 26) ドナー腎摘出術 17 ( 腹腔鏡下手術 17

一般内科

インフルエンザ(成人)


糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

ヘルスケア・スクエア(仮称)設立に向けて

医療関連感染サーベイランス

<4D F736F F D E7396AF8CF68A4A8D758DC081698F9790AB82CC FE18A51816A>

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

1508目次.indd

スライド タイトルなし

ふくじゅおもて面1

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

Microsoft Word 高尿酸血症痛風の治療ガイドライン第3版主な変更点_最終

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

PowerPoint プレゼンテーション

共済だより.indd

消化性潰瘍(扉ページ)

Microsoft PowerPoint - komatsu 2

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

<4D F736F F D D8ACC8D6495CF8AB38ED282CC88E397C38AD698418AB490F58FC782C982A882A282C48D4C88E E B8

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

Microsoft Word - CDDP+VNR患者用パンフレット doc

スライド 1


エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

33 膀胱異物の三例 豊田精一 今井克忠 dl はじめに GPT 膀胱異物の症例は 日常臨床で稀なものではな く今日まで多数の文献的報告がなされている 我々も約2年間に 3例の膀胱異物の症例を経験 したので若1の文献的考察を加えて報告する Cr lo O 91mg dl 尿酸6 0mg dl u L

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

Transcription:

泌尿器科救急 2018.3.15 泌尿器科富永悠介

泌尿器科救急 ( 頻度順 ) 1. 尿路感染症 2. 尿路結石 3. 前立腺肥大症 4. 尿閉 排尿困難 5. 外傷 6. 尿路悪性腫瘍 7. 血尿 膀胱内出血 膀胱タンポナーデ 8. 水腎症 9. 腎瘻 膀胱瘻トラブル 10. 神経因性膀胱 11. 腎移植関連 12. 先天奇形 13. 急性陰嚢症 2009 年日本泌尿器科学会卒後教育テキストより引用

泌尿器科救急 1. 尿路結石 2. 尿路感染症 3. 急性陰嚢症 4. 外傷

尿路結石の分類 上部尿路結石 :96% ( 腎臓 尿管 ) 下部尿路結石 :4% ( 膀胱 前立腺 尿道 ) NCH Visuals Online HP

上部尿路結石の疫学 1 男 : 女 =2.4 : 1 男性は 40 歳代に好発年齢ピーク女性は 50 歳代に好発年齢ピーク 年上間部罹尿患路率結 ( 人石口 10 万人対 ) 尿路結石診療ガイドライン第 2 版 2013 年版

上部尿路結石の疫学 2 上部尿路結石の罹患者数は年々増加している 肥満 高血圧 糖尿病などとの関連あり 男性は 7 人に 1 人が 女性は 15 人に 1 人が生涯で罹患する 年間罹患率 ( 人口 10 万人対 ) 1.6 倍 1.3 倍 1.2 倍 1.2 倍 1965 1975 1985 1995 2005 上部尿管結石の年間罹患率 尿路結石診療ガイドライン第 2 版 2013 年版

尿路結石の原因 1 内分泌 代謝異常 2 薬 食事 3 長期臥床 4 飲水不足 5 尿路通過障害 6 尿路感染 副甲状腺機能亢進症 尿細管性アシドーシス (RTA) Cushing 症候群 痛風など 尿排泄促進薬 ステロイド アセタゾラミドなどの薬剤食生活の欧米化 ( 高蛋白食 高プリン体摂取 ) 長期臥床による骨吸収の促進 尿のうっ滞 尿路感染 体液量の減少 尿のうっ滞 尿のうっ滞 ウレアーゼ産生菌による尿のアルカリ化 病気がみえる腎 泌尿器

上部尿路結石の陥頓部位 生理的狭窄部位 1 腎盂尿管移行部 2 総腸骨血管交叉部 3 尿管膀胱移行部 結石が陥頓しやすい! ( 注意 ) 必ず CT は上腹部 ~ 骨盤でオーダーする 1 2 3 後期研修医が押さえておきたい泌尿器科疾患 TOP30

尿路結石の症状 ( 尿管結石 ) 急激に発症する上下腹部 腰背部の疝痛 ( 結石の移動に伴い 痛みの部位も変動する ) 肉眼的血尿 膀胱刺激症状 ( 頻尿 残尿感など ) 自律神経症状 ( 悪心 嘔吐 頻脈 冷感など ) ( 腎結石 ) 多くが無症状 腰背部痛 ( 鈍痛 ) 肉眼的血尿 疝痛発作で疼痛が生じる部位 腰背部 側腹部 上下腹部 こだいら泌尿器科 HP

尿路結石の検査 ( 尿検査 ) 顕微鏡的血尿 尿中白血球は通常は陰性 尿沈渣で結石の成分 ( シュウ酸 Ca リン酸 Ca 尿酸など ) が認められることがある ( 血液検査 ) 診断に必須ではない 疼痛反応で WBC は 10,000 程度まで上昇することがあるが CRP は上昇しないことが多い 腎後性腎不全を合併すると Cr 上昇

尿路結石の検査 ( 超音波検査 ) 音響陰影を伴う 高エコーとして描出される 小児 妊婦を含め全ての患者に施行できる 膀胱 腎臓 膀胱結石 腎結石 音響陰影

尿路結石の検査 (KUB) Kidney( 腎 ) Ureter( 尿管 ) Bladder( 膀胱 ) 全体が写るように撮影範囲を上下に広げた腹部単純 X 線撮影 結石の検出力は弱い 経過観察には有用 腎結石 尿管結石 膀胱結石

尿路結石の検査 (CT) 尿酸結石 シスチン結石など X 線陰性の尿路結石も検出できるため 第一選択の検査 ただし 放射線被曝が多いので頻回の検査は避ける 腎結石 尿管結石 膀胱結石

保存的治療 - 水分摂取 - コスパノン ( 結石排石促進 ) - ボルタレン坐薬 ( 鎮痛剤 ) 尿路結石の治療 手術 - 対外衝撃波破砕術 (ESWL) - 経尿道的尿管結石砕石術 (TUL) 岡山ろうさい病院 HP

泌尿器科救急 1. 尿路結石 2. 尿路感染症 3. 急性陰嚢症 4. 外傷

尿路感染症 腎 尿管 膀胱 尿道に生じる非特異的炎症 大部分は腸内細菌の上行性感染である 膀胱炎 腎盂腎炎 前立腺炎 精巣上体炎 発熱なし 発熱あり 単純性 : 基礎疾患なし 複雑性 : 基礎疾患あり http://onakasoudan.com/%e5%a5%b3%e6%80%a7%e3%81%a7%e4%b8%8 B%E8%85%B9%E9%83%A8%E3%81%8C%E7%97%9B%E3%81%84/

急性膀胱炎 ( 疫学 ) 10 代後半 ~30 代女性 ( 性的活動期 ) に好発 ( 症状 ) 頻尿 排尿時痛 ( 特に終末時 ) 尿混濁などがみられ 発熱は伴わない ( 発熱があれば腎盂腎炎を疑う ) ( 検査 ) 検尿 : 膿尿 細菌尿 血液検査 :WBC や CRP の上昇などは基本的に認めない 原因菌 :E. coli(90%) その他 P. mirabilis S. saprophyticus などが多い

急性膀胱炎 ( 治療 ) 安静 水分摂取 抗菌薬 LVFX 経口 1 回 500mg 1 日 1 回 3 日間 CFDN 経口 1 回 100mg 1 日 3 回 5~7 日間 CFPN-PI 経口 1 回 100mg 1 日 3 回 5~7 日間 ( 参考 : JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ) 高齢女性 ( 閉経後 ) の膀胱炎では E. coli におけるキノロン耐性率が高いことから第一選択としてキノロン系薬は推奨せず, セフェム系薬または BLI 配合ペニシリン系薬を推奨する (BⅡ)

急性腎盂腎炎 ( 疫学 ) 10 代後半 ~30 代女性 ( 性的活動期 ) に好発 ( 症状 ) 悪寒戦慄を伴う高熱 腎部の自発痛や叩打痛 嘔吐などの消化器症状 全身倦怠感 ( 検査 ) 尿検査 : 膿尿 細菌尿 血液検査 :WBC や CRP 値の上昇あり 原因菌 :E. coli がほとんど E. faecalis S. agalactiae なども多い 近年,ESBL 産生やキノロン耐性 E. coli が増加傾向

急性腎盂腎炎 ( 治療 ) 軽症 ~ 中等症 : 経口セフェム系薬 経口ニューキノロン系薬 LVFX 経口 1 回 500mg 1 日 1 回 7~14 日間 CFPN-PI 経口 1 回 150mg 1 日 3 回 14 日間 重症 : 第 2 世代以降セフェム系薬 BLI 配合ペニシリン系薬 アミノ配糖体薬の点滴静注 CTM 点滴静注 1 回 1~2g 1 日 3~4 回 CTRX 点滴静注 1 回 1~2g 1 日 1~2 回 CAZ 点滴静注 1 回 1~2g 1 日 3 回 ( 参考 : JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ) 注射薬から経口薬へスイッチするタイミングは, 解熱や腰背部痛など症状寛解を目安とし, 抗菌薬投与期間は合計で 14 日間とする

急性腎盂腎炎 上部尿路閉塞を伴う場合や 気腫性腎盂腎炎, 膿腎症, 腎膿瘍などの特殊な病態では 必要に応じた泌尿器科的処置 ( 尿管ステント留置 腎瘻など ) を行い 腎機能の保持に努める必要がある 複雑性尿路感染症の原因菌は, キノロン耐性菌,ESBL 産生菌やメタロ β ラクタマーゼ産生菌などの多剤耐性菌が増加傾向にあるので注意が必要

急性前立腺炎 ( 疫学 ) 青壮年男性 ( 感染経路 ) 尿路から前立腺内への細菌の逆行性感染 ( 症状 ) 発熱 全身倦怠感 排尿時痛 頻尿 会陰部痛 ( 検査 ) 検尿で膿尿と細菌尿 血液検査で WBC 増多 CRP 上昇 直腸診 : 圧痛 熱感のある腫大した前立腺を触知する 原因菌 :65~87% は E. coli で,P. aeruginosa が 3~13%, Klebsiella 属が 2~6%, グラム陽性球菌が 3~5%

急性前立腺炎 ( 治療 ) 軽症 ~ 中等症 : ニューキノロン系薬 ( 前立腺への組織移行性良い ) LVFX 経口 1 回 500mg 1 日 1 回 14 日間 STFX 経口 1 回 100mg 1 日 2 回 14 日間 重症 : 第 2 3 世代セフェム系薬,BLI 配合ペニシリン系薬など CTM 点滴静注 1 回 1g 1 日 2~4 回 3~7 日間 CAZ 点滴静注 1 回 1g 1 日 2~4 回 3~7 日間 FMOX 点滴静注 1 回 1g 1 日 2~4 回 3~7 日間 TAZ/PIPC 点滴静注 1 回 4.5g 1 日 3 回 3~7 日間 尿閉を来している場合, 膀胱瘻 ( 恥骨上 ) を造設するのが理想であるが, 無理な場合は尿道カテーテルを留置する

泌尿器科救急 1. 尿路結石 2. 尿路感染症 3. 急性陰嚢症 4. 外傷

急性陰嚢症 急激な陰嚢の疼痛をきたす症候群である 精巣捻転を見逃さないことが重要 精巣捻転症 精巣上体炎 精巣付属器捻転症 精巣炎 ( ムンプス ) Henoch-Schonlein 紫斑病

精巣捻転症 ( 疫学 ) 新生時期と思春期に多い ( 所見 ) 精巣は腫脹し 通常よりも高位 横位を呈する ( 症状 ) 急激な発症で 激しい疼痛 悪心 嘔吐を伴う場合もある 日本泌尿器科学会

精巣捻転症 ( 検査 ) 超音波カラードプラ法が有効だが 確定診断は困難 ( 治療 ) golden time は 6 時間 多くの場合が試験切開 ( 精巣温存が可能であれば精巣固定術 精巣壊死を認めた場合は精巣摘除術 ) 泌尿器科超音波を使いこなすメシ カルヒ ュー社

精巣付属器捻転症 ( 疫学 ) 10~14 歳に多い ( 症状 ) 精巣垂 精巣上体垂などの付属器が捻転をおこし 腫脹 疼痛を引き起こす 精巣捻転と比較して疼痛は軽度 ( 治療 ) 鎮痛剤投与 安静など保存的治療 a: 精巣垂 b: 精巣上体垂 c: 精巣傍体 d:vas aberrans of Haller 急性陰嚢症診療ガイドライン 2014 年版

精巣上体炎 ( 感染経路 ) 尿路から精管と通じての逆行性の細菌感染症 ( 疫学 ) 青壮年期の急性精巣上体炎では 尿道炎の原因微生物である N. gonorrhoeae,c. trachomatis が多い 中高年では尿道カテーテル留置に伴うものが多い ( 症状 ) 発熱 有痛性陰嚢腫大 ( 検査 ) 血液検査 :WBC CRP 上昇 尿中白血球増多 急性陰嚢症診療ガイドライン 2014 年版

精巣上体炎 ( 治療 ) 青壮年期は N. gonorrhoeae,c. trachomatis にも活性のある抗菌薬軽症 : ニューキノロン系薬 LVFX 経口 1 回 500mg 1 日 1 回 14 日間 STFX 経口 1 回 100mg 1 日 2 回 14 日間重症 : 第 2 3 世代セフェム系薬,BLI 配合ペニシリン系薬など CTRX 点滴静注 1 回 1~2g 1 日 1~2 回 3~7 日間 中高年の場合 empiric therapy を開始 尿培養検査に基づき 抗菌薬の継続あるいは変更を検討する

急性陰嚢症のまとめ 精巣捻転症 精巣付属器捻転症 急性精巣上体炎 発症 急激 急激 緩徐 疼痛の程度 強い 中程度 強い 全身症状 嘔吐 腹痛 なし 発熱 挙睾筋反射 消失 あり あり 精巣の位置 高位 横位 正常位 正常位 カラードップラー 血流消失 低下 変化なし 血流増加 視 触診 精巣の挙上 横位 全体の腫脹 blue dot sign 腫脹は軽度 精巣上体の硬結 検尿異常なし異常なし時に膿尿

泌尿器科救急 1. 尿路結石 2. 尿路感染症 3. 急性陰嚢症 4. 外傷

外傷 頻度の高い順に腎 尿道 膀胱 精巣 多くの腎外傷は保存的治療で管理できるが 開腹手術が必要なこともある 腎損傷 (45%) 尿道損傷 (39%) 膀胱損傷 (10%) 精巣損傷 (4%) NCH Visuals Online HP

腎損傷 ( 原因 ) 交通事故が最多 転倒 転落 スポーツ外傷も多い ほとんどが鈍的外傷 ( 症状 ) 側腹部痛 血尿 ショック 腹膜刺激症状 ( 合併損傷 ) 脾損傷 肝損傷 血気胸 骨折 ( 横突起 肋骨など ) 腎損傷のうち 30~40% に他臓器合併損傷を認める

腎損傷 ( 検査 ) ダイナミック CT にて 腎実質損傷の程度 血管損傷の有無 出血 尿漏の程度を評価する ( 治療 ) 初期対応が重要 出血 損傷の程度により 1 保存的治療 2 TAE 3 腎摘除術 単純 CT 造影 CT 腎周囲に血腫 尿溢流

尿道損傷 ( 原因 ) 交通事故などの鈍的外傷 骨盤骨折の合併も多い ( 分類 ) 完全断裂と不完全断裂に分類される http://www.dreb.info/2017/05/30/urethral-trauma-in-the-male-anderectile-dysfunction/

尿道損傷 ( 症状 ) 血尿 尿閉 会陰部痛 皮下出血 ( 検査 ) 逆行性尿道造影 CT 左坐骨骨折 尿道外への造影剤漏出 単純 CT 尿道造影 ( 治療 ) 完全断裂なら膀胱瘻を留置し 落ち着いてから手術 不完全断裂なら透視下に尿道カテーテル留置で保存的治療 知っておきたい泌尿器の CT MRI

膀胱損傷 ( 原因 ) 交通事故による鈍的外傷 転落などの労災 医原性損傷 放射線膀胱炎による自然破裂など ( 分類 ) 腹膜内損傷 腹膜外損傷 ( 症状 ) 肉眼的血尿 下腹部痛 排尿困難 腹膜刺激症状 https://www.taylorillustration.com/portfolio/master-s-project/

膀胱損傷 ( 検査 ) 画像診断は膀胱造影 CT(+ 膀胱造影 ) 尿路外造影剤漏出 CT 膀胱造影 ( 治療 ) 腹膜外破裂は尿道カテーテル留置 腹膜内破裂は開腹手術 急性腹症の CT 演習問題 HP

精巣損傷 ( 原因 ) スポーツや交通事故など 白膜に覆われており 破裂は稀 ( 症状 ) 陰嚢の疼痛 腫脹 下腹部痛 精巣破裂では皮下出血など ( 検査 ) 超音波検査 CT MRI など ( 治療 ) 軽度の損傷は保存的治療 高度の血腫 精巣破裂の場合は 血腫除去術 精巣摘出術

Take Home Messages ( 尿路結石 ) CT( 単純 ) を躊躇しない!* 必ず骨盤まで ( 尿路感染症 ) 複雑性が疑われる場合などは早めに consult! ( 急性陰嚢症 ) 小児の精巣捻転疑いは時間との争い すぐに consult! ( 外傷 ) 他臓器の外傷に隠れて見落としがち 血尿あれば注意!