第18期火災予防審議会地震対策部会

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第 3 号様式 ( 第 3 条関係 ) 不燃化推進特定整備地区整備プログラム 品川区 豊町 丁目 二葉 3 4 丁目及び西大井 6 丁目地区 平成 25 年 11 月第 1 回変更認定平成 27 年 10 月第 2 回変更認定平成 29 年 3 月 品川区

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世田谷区

第 Ⅱ ゾーンの地区計画にはこんな特徴があります 建築基準法のみによる一般的な建替えの場合 斜線制限により または 1.5 容積率の制限により 利用できない容積率 道路広い道路狭い道路 街並み誘導型地区計画による建替えのルール 容積率の最高限度が緩和されます 定住性の高い住宅等を設ける

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1 整備目標 方針 地区名大井五 七丁目 西大井二 三 四丁目地区位置東京都品川区大井五 七丁目 西大井二 三 四丁目の全域地区の現況 課題 現状 当地区は 品川区の南に位置しており 北側に滝王子通り 東側に補助 28 号線 ( 池上通り ) 西側にJR 東海道新幹線及びJR 横須賀線 南側に大田区

PowerPoint プレゼンテーション

目次 ( )

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1 整備目標 方針 地区名 大森中地区 ( 西糀谷 東蒲田 大森中 ) 西糀谷一丁目 西糀谷四丁目 北糀谷二丁目 東蒲田二丁目の全域位置大森中二丁目 大森中三丁目 西糀谷二丁目 西糀谷三丁目 東蒲田一丁目 南蒲田一丁目の各一部地区の現況 課題 現況 当地区の幹線道路沿いは商業 業務施設及び中高層の集

本町二・四・五・六丁目地区の地区計画に関する意見交換会

Microsoft Word - 法第43条第2項第2号許可基準

別記様式第4

都市計画変更素案に関する説明会 建築規制の変更に関する説明会 特定整備路線補助 29 号線 井 東 込区間 (JR 横須賀線 区界 ) 沿道 日時 : 平成 29 年 8 3 ( ) 場所 : 品川区 伊藤 学校 前方右側に手話通訳者を配置しております 必要な方はお近くの席にお移り願います 1 本日

不燃化推進特定整備地区整備プログラム/北区/志茂地区

1 整備目標 方針 地名 位置 地の現況 課題 羽田二 三 六丁目地 ( 大田 ) 東京都大田羽田二丁目 三丁目 六丁目 現状 独立住宅を中心に 集合住宅や併用住宅も含めた住居系の土地利用がほとんどを占めている 幅員 4m 未満の道路が大半を占めており 幅員 2.7m 未満の道路も多くなっている ま

(3) 東京都が掲げている目標を確実に達成するには 延焼遮断帯の形成やその主要な要素である特定整備路線の整備 老朽木造建築物の除去等の施策をより強制力をもって展開することが必要であり 一定の私権の制限もやむを得ないと考える その際 移転や住替えを余儀なくされる住民へ移転先をしっかりと確保するなど き

別紙 40 東京都市計画高度地区の変更 都市計画高度地区を次のように変更する 面積欄の ( ) 内は変更前を示す 種類面積建築物の高さの最高限度又は最低限度備考 第 1 種 約 ha 建築物の各部分の高さ ( 地盤面からの高さによる 以下同じ ) は 当該部分から前面道路の反対側の境界線 高度地区

序章 計画改定の背景 足立区では 昭和 57 年 3 月に 大地震による火災から区民の生命と財産を守る た め 足立区防災まちづくり基本計画 を策定し この計画に基づき各種事業を展開し てきました その後 平成 7 年 1 月 17 日に発生した阪神 淡路大震災では 密集市街地に被害が 集中し 改め

日影許可諮問(熊野小学校)

板橋区

立川市絶対高さを定める高度地区指定に関する検討方針 平成 26 年 5 月 立川市 0

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2 計画 ( 素案 ) からの主な変更点 1 はじめに頁主な変更点 1 これまでの経緯に 不燃化特区補助制度の指定 地区計画と都市防災不燃化促進事業の導入についての記載を追加 また 大和町中央通り沿道地区は 平成 26 年に不燃化特区補助制度 ( 平成 32 年度まで ) の対象区域に指定されるとと

(2) 路地街区 ア路地街区の内部で 防火性の向上と居住環境の改善を図るため 地区施設等に沿った建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定めることにより 道路斜線制限を緩和し 3 階建て耐火建築物の連続した街並みを形成する イ行き止まりの路地空間では 安全性の確保のため 2 方向の避難を目的とし

江東区

1 目的 建築基準法第 68 条の 5 の 5 第 1 項及び第 2 項に基づく認定に関する基準 ( 月島地区 ) 平成 26 年 6 月 9 日 26 中都建第 115 号 建築基準法 ( 昭和 25 年法律第 201 号 以下 法 という ) 第 68 条の 5 の 5 第 1 項 及び第 2

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⑴ 政策目的 市街地再開発事業の推進により 土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るとともに コンパクトシティの推進及び密集市街地の解消を図る 新設 拡充又は延長を必要とする理由 ⑵ 施策の必要性 以下の施策の推進のため 本措置の延長により 民間事業者による早期かつ着実な保留床の取得を促

目次 方針策定の背景 1-1. 用途地域指定の基本的な考え方 1-2. 住居系 [ 第一種低層住居専用地域 ] [ 第二種低層住居専用地域 ] [ 第一種中高層住居専用地域 ] [ 第二種中高層住居専用地域 ] [ 第一種住居地域 ] [ 第二種住居地域 ] [ 準住居地域 ] [ 田園住居地域 ]

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一団地認定の職権取消し手続きの明確化について < 参考 > 建築基準法第 86 条 ( 一団地認定 ) の実績件数 2,200 ( 件 ) 年度別 ( 住宅系のみ ) S29 年度 ~H26 年度 実績件数合計 16,250 件 用途 合計 ( 件 ) 全体 17,764 住宅系用途 16,250

葛飾区

建築基準法第 43 条第 2 項第 2 号の規定による許可の同意の取扱い基準 平成 18 年 6 月 1 日東広島市建築審査会 建築基準法 ( 以下 法 という ) 第 43 条第 2 項第 2 号の規定により許可を行う場合, 次 に定める基準のいずれかに該当する建築物の敷地については, 建築審査会

大阪市再開発地区計画にかかる

[2] 道路幅員による容積率制限 ( 基準容積率 ) 敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を 容積率 といい 用途地域ごとに容積率の上限 ( 指定容積率 ) が定められています しかし 前面道路の幅員が 12m 未満の場合 道路幅員に応じて計算される容積率 ( 基準容積率 ) が指定容積率を下回る

旧(現行)

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指定標準 適用区域 建ぺい率 容積率 建築物の高さの最高限度 m 用途地域の変更に あたり導入を検討 すべき事項 ( 注 2) 1. 環境良好な一般的な低層住宅地として将来ともその環境を保護すべき区域 2. 農地等が多く 道路等の都市基盤が未整備な区域及び良好な樹林地等の保全を図る区域 3. 地区計

大谷周辺地区 及び 役場周辺地区 地区計画について 木原市街地 国道 125 号バイパス 役場周辺地区 (43.7ha) 美駒市街地 大谷周辺地区 (11.8ha) 地区計画の概要 地区計画とは住民の身近な生活空間である地区や街区を対象とする都市計画で, 道路や公園などの公共施設の配置や, 建築物の

第2章

表1-表4-2

名前 第 1 日目 建築基準法 2 用途規制 1. 建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において 当該敷地の過半が工業地域内であると きは 共同住宅を建築することができる 2. 第一種低層住居専用地域内においては 高等学校を建築することができるが 高等専門学校を建築する ことはできない

建物の建築の基準についての 都市計画変更 案に関する説明会 大田区東馬込二丁目 ( 補助 29 号線沿道地区 ) 高度地区の変更 防火地域の変更 用途地域の変更 日時 : 平成 30 年 11 月 19 日 ( 月 ) 場所 : 大田区立馬込小学校 大田区 1 本日の説明項目 1 本説明会の主旨 2

Microsoft PowerPoint - 第3回勉強会プレゼン資料_

御意見募集中 平成 25 年 10 月 7 日 ( 月 )~11 月 7 日 ( 木 ) パブコメくん 歴史都市京都の町並みを継承しつつ, 細街路の安全を確保し, 建替え等を可能とする新たな制度について, 御意見を募集します ~ 細街路対策推進のための新たな制度の創設 ~ 建物の建替え等を行うために

東京都市計画高度地区変更(練馬区決定) 【原案(案)】

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建築基準法第 86 条第 1 項 第 2 項の規定に基づく一団地の総合的設計制度及び連担建築物設計制度等の運用について 建築基準法第 86 条第 1 項 第 2 項及び法第 86 条の2 第 1 項の規定に基づく認定の運用は 平成 11 年 4 月 28 日付け建設省住街発第 48 号局長通達による

計画的な再開発が必要な市街地 特に一体的かつ総合的に再開発を促進すべき地区 市町名 名称 再開発の目標 土地の合理的かつ健全な高度利用及び都市機能の更新に関する方針 特に整備課題の集中がみられる地域 ( 課題地域 ) 地区名 西宮市 C-4 浜脇 ( 約 175ha) 居住環境の向上 良好な都市景観

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Taro-03_H3009_ただし書同意基準

国土技術政策総合研究所 研究資料

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区域の整備 開発及び保全に関する方針 江戸川一丁目地区地区計画 計画書 計画決定 H 江戸川区告示第 433 号 計画変更 H 江戸川区告示第 27 号 計画変更 H 江戸川区告示第 482 号 名称江戸川一丁目地区地区計画 位置 江戸川区江戸川一丁目 江戸

2

区域の整備 開発及び保全の方針地区整備計画 久世荒内 寺田塚本地区地区計画 名称久世荒内 寺田塚本地区地区計画 位置城陽市久世荒内 寺田塚本及び平川広田 面積約 22.1ha 建 築 物 等 に 関 す る 事 項 地区計画の目標 土地利用の方針 地区施設の整備方針 建築物等の整備方針 地区の区分


Microsoft Word - 別添資料

足立区 足立区中南部一帯地区

エ建替え後の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影面積の合計は 現に存する建築物又は現に建築の工事中の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影面積の合計を超えないこと オ建替え後の建築物の絶対高さ制限を超える建築物の部分の水平投影部分の形状は 現に存する建築物又は現に建築の工事

環状第二号線沿道新橋地区街並み再生地区及び街並み再生方針について

防災まちづくりの具体的な方向性を示す 方針 は 防災まちづくりに関するキーワードごとに 以下の12 項目にまとめました 防災まちづくりの方針 防災( 安全 安心 ) 地域コミュニティ ひと 1 多様な世代の交流や地域活動への参加が 防災 減災活動を支えるまち ( 自助 共助の話し合いが活発に行われて

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国土技術政策総合研究所 研究資料

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(Microsoft Word - \201\2403-1\223y\222n\227\230\227p\201i\215\317\201j.doc)

第 7 章鹿児島県と連携した耐震改修促進法による指導及び助言等 国の基本方針では 所管行政庁はすべての特定建築物の所有者に対して法に基づく指導 助言を実施するよう努めるとともに 指導に従わない者に対しては必要な指示を行い その指示に従わなかったときは 公表すべきであるとしている なお 指示 公表や建

建築基準法第 43 条第 1 項ただし書による包括許可基準 平成 23 年 3 月 4 日 焼津市建築審査会承認 1 趣旨次の基準に適合するものは 建築基準法 ( 昭和 25 年法律第 201 号 以下 法 という ) 第 43 条第 1 項ただし書の規定に基づき 特定行政庁が交通上 安全上 防火上

不燃化推進特定整備地区整備プログラム【渋谷区】(本町二~六丁目地区)

東京都市計画高度地区の変更 都市計画高度地区を次のように変更する 2 建築物の各部分の高さは 当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水 資料 5 面積欄の ( ) 内は変更前を示す 種 類 面積 建築物の高さの最高限度又は最低限度 備考 約 ha 建築物の各部分の高さ (

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豊島区

[ 地区計画における地区施設道路等の整備効果に関する分析 ] まちづくりプログラム MJU09061 津田あゆみ はじめに 1-1 研究の目的と背景都市計画区域内においては地域地区制 ( ゾーニング ) による土地利用規制が行われている これらの土地利用規制は規制がなかった場合に用途や高さの混在によ

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1. 目的 本町の第 3 次総合計画において 本町の将来像である ( みんなが主役 やすらぎと健康福祉のまち ) の実現に寄与すべく 本町の市街化調整区域における地区計画の運用にかかる基本的な方針を示すため 市街化調整区域における地区計画運用指針 ( 以下 運用指針 という ) を策定しました この

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地区計画とは 地区計画とは 土地や建築物の所有者など地区の皆さんが合意を図りながら道路や公園などの配置 建築物の用途 容積率 高さ 色やデザイン等のルールをきめ細かく定め そのルールに基づいて建築行為等を行うことにより より良いまちづくりをすすめる手法のひとつです 地区の特性に応じて必要な項目を選択

Microsoft PowerPoint - プレゼン資料

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(100817)

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三鷹市耐震改修促進計画(改定素案)

平井二丁目付近地区地区計画の概要 平井二丁目付近地区地区計画の概要をお示しします 詳しくは 同封の 平井二丁目付近 地区計画書 計画図 をご確認ください 地区計画の区域地区計画の対象区域は 下図のとおりです 平井二丁目付近地区 ( 約 28.6ha) 江戸川区平井一丁目 平井二丁目及び 小松川三丁目

調布都市計画深大寺通り沿道観光関連産業保護育成地区の概要

建築基準法第 43 条第 2 項第 2 号の規定による許可の基準 ( 包括同意基準 ) 平成 30 年 9 月 28 日 加古川市都市計画部建築指導課

目次 Ⅰ 運用基準の策定にあたって P1 1 策定の目的 P1 2 運用基準の位置づけ P1 Ⅱ Ⅲ 土地利用のあり方 P1 地区計画の活用 P2 1 地区計画とは P2 2 地区計画の活用類型 P2 (a) 地域資源型 P3 (b) マスタープラン適合型 P3 (c) 街区環境整序型 P3 (d)

都市計画図 外神田二・三丁目地区(PDF)

用途地域変更の考え方 ( 素案 ) 1 駅 駅前広場 アクセス道路沿道の土地利用の促進 駅 北側沿道 25m 以内及び沿道南側街区を近隣商業地域へ変更 18

Microsoft Word - (新)滝川都市計画用途地域指定基準121019

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第 2 節木造住宅密集地域における震災対策の課題 1 木造住宅密集地域の特性山手線外周部を中心に存在する木密地域では 更新時期を迎えている老朽化した木造建築物が多く存在している しかし 居住者自身の高齢化や複雑な土地権利関係 狭小敷地等の問題に加え 道路そのものが尐ないだけでなく狭隘道路や行き止まりの道路が多く 接道条件が満たせない等の理由によって建替えが進みにくい状況にある 図 2-2-1 に木密地域の特性と課題を示す 木造住宅密集地域の特性 狭小敷地の連担 権利関係の複雑さ 狭隘道路や行き止まり の多さ 無接道敷地の存在 地区内主要道路の不足 公園等のオープンスペ ースや緑の不足 物理的問題 建物床面積の拡大困難 建物更新の困難 建物の老朽化 倒壊危険 建物の密集 災害時の延焼や避難危険 災害時の骨格 拠点的施設や延焼遅延機能の不足 社会的問題若年層の流出 高齢化の進行地域の活力や安全性の低下 密集市街地の整備課題 建物の更新 改修による耐震性 防火性の強化 建物周辺の空地の確保等による防災性の改善 住環境の改善 図 2-2-1 木造住宅密集地域の特性と課題 阪神 淡路大震災により被害を受けた建物の多くは新耐震基準が導入された昭和 56 年以前に建てられたものであり 木造建築物が建て詰まっている地域で大規模火災が発生した点が指摘されている また 木密地域で発生した火災については道路閉塞等の影響で消防隊や消防団が火災発生場所まで到達するのに時間を要することや 到達できても倒壊家屋の影響で防火水槽が使用できなくなる等 消火活動が困難となることが予想される 図 2-2-2 に木密地域の様子を示す 21

図 2-2-2 木造住宅密集地域 2 防災都市づくりにおける課題東京都における防災都市づくりは 都市防災施設基本計画 ( 昭和 56 年 ) において 一定規模の市街地の外周を延焼遮断帯で囲み 市街地火災の延焼を防止する 防災生活圏 の考え方が取り入れられ その形成を目指して防災生活圏促進事業や都市防災不燃化促進事業等の各種施策が展開されてきた しかし これらの施策は防災の観点から計画の優先度が示されなかったため それぞれの事業が計画的 体系的に実施されず 防災上の課題解決が進みにくい状況であった このため 既存の防災都市づくりに資する事業を体系化し 整備目標 整備の優先度等を明確にした 防災都市づくり推進計画 を平成 7 8 年度に策定後 平成 15 年度及び平成 21 年度に改定し 延焼遮断帯の整備や市街地の不燃化等に取り組んでいる ⑴ 防災都市づくり推進計画について現行の 防災都市づくり推進計画 における市街地整備の考え方では 震災に対する危険性に応じて市街地の優先的な整備を行うこととしており 市街地状況を考慮して整備地域及び重点整備地域を選定している 地域危険度が高く かつ 特に老朽化した木造建築物が集積するなど 震災時に甚大な被害が想定される 27 地域 約 6,500ha を整備地域に指定し この中から 基盤整備事業を重点的に展開し早期に防災性の向上を図ることにより波及効果が期待できる 11 地域 約 2,400ha を重点整備地域に指定している 整備地域においては 木密地域整備促進事業 不燃化促進事業などの修復型事業を進めるとともに 東京都建築安全条例による防火規制 防災街区整備地区計画などの規制 誘導策により防災性の高い建築物への建替え等に誘導している 重点整備地域については 整備地域で展開されている修復型事業 規制 誘導策に加えて 道路整備と一体的に進める沿道のまちづくり 街路事業などの基盤整備型事業を適切に組み合わせ重点化して展開することにより 防災性の早期向上を図っている 整備地域及び重点整備地域においては 市街地がほとんど焼失しない水準である不燃領域率 70% を目指すこととしている ここで挙げられている修復型事業とは スクラップアンドビルド型の再開発事業とは異 22

なり 個々の建築物の建替えを契機とし 事業実施が可能であるところから徐々に市街地整備を進めていく事業手法である 個々の建築物の耐震化 不燃化を可能なところから進め 尐しずつでも市街地の防災性を上げていくという現実的な手法である一方 建て替えは所有者によって任意の時期に行われるため 地域の防災性の向上が図られるには ある程度の時間を要することになる ⑵ 形態制限と接道規定木密地域において建替えが進まない一因として 建て替えることによって十分な建築面積 容積が失われるために建て替えられない という事情がある これは 建替えの際に建築基準法上の容積率 建ぺい率 斜線制限といった形態制限や二項道路の拡幅 接道規定等の要件を適用することにより 建て替え後に十分な居住面積や建物容積を確保できない場合や 敷地が道路に有効に接しておらず建替え自体が行えない場合があるというものである 図 2-2-3 に木密地域において建替え時に発生することの多い問題点をまとめる 木造住宅密集地域の特性 狭小敷地の連担 狭隘道路 建替え 建築基準法の適用 容積率 建ぺい率 斜線制限 二項道路の拡幅 十分な居住面積や建物容積が建替え後に確保できない 無接道敷地 接道規定 建替えが行えない 図 2-2-3 建て替え時に発生する問題 こうした要因による 建て替える意志はあるが建て替えられない といった状況の改善策として 規制誘導手法 を活用している事例が存在する 8) これは建替えの障害となっている形態制限等の建築基準法集団規定 ( 建築物の形態 用途 接道等について制限 ) の一部を置き換えたり緩和したりすることで住民が建て替えられる条件を整える一方で 建物の階数や高さ 壁面の位置 構造などに新たな制限を加えることで防災性や住環境の向上を図ることを目的とした制度の総称である 図 2-2-4 に規制誘導手法 ( 三項道路と街並み誘導型地区計画 ) の活用の有無による建替え前後のイメージを示す 23

既存の木造住宅密集地域 の分 後退が必要 集団規定の適用 は道路斜線 規制誘導手法の活用 の分だけ壁面線を後退 4m 二項道路の規定により 建替え時には道路中心線から 2m の後退が必要 4m セットバック 容積率 道路斜線によって十分な容積 面積が確保できない 2.7m 二項道路から三項道路に変更 街並み誘導型地区計画を併用 道路斜線制限と容積率を緩和 図 2-2-4 規制誘導手法の活用イメージ ( 三項道路と街並み誘導型地区計画の併用 ) しかし 二項道路の拡幅を行った場合よりも整備後の道路幅員が狭隘となることや 歴 史的な市街地環境の保全等の事情により建物の防災性能の強化が十分に行なわれない場合 もあることから 規制誘導手法を活用した際にはそうしたハード面に消火活動が困難とな る要素が残存する場合がある 表 2-2-1 規制誘導手法の例と求められる防災上の措置 制度 効果的なケースと制度概要 求められる防災上の措置 ( 例 ) 敷地が狭いが 二項道路や主要生活道路の整備を促 街並み誘 前面道路の幅員に応じて建進したい 前面道路に対する壁面の位置を制導型地区築物の防火措置を講じ 延焼限して一定の前面道路幅員を確保する代わりに 容計画危険を抑制すること 積率制限と道路斜線制限の適用を除外する 建ぺい率特例許可 敷地の狭さや建ぺい率の既存不適格により建て替えや二項道路の拡幅が進まない 建物背後に空地を確保するために隣地 ( 背面 ) 境界線から壁面線を後退させる代りに建ぺい率制限を緩和する 両隣建物への延焼防止を図ること ( 開口部の制限 防火設備の設置 開口部を対面させない等 ) 二項道路の拡幅を行うことが不可能 もしくは拡幅 建物の防火性能を高めるこ 三項道路 により地域資産が失われる 防火 安全上の性と 能の確保を図る代りに前面道路幅員を 2.7m 以上 火災時の消防活動の見通し 4m 未満にできる を立てること 袋路や旗竿敷地等 無接道のために建て替えができ 連担建築 区域内の建築物が火災となない 複数の敷地群を一つの敷地と見なし 物設計制った場合の延焼防止対策を接道義務や容積率 建ぺい率 斜線等の制限を複数度施すこと の建物が同一敷地内にあるものとして適用できる 43 条ただ し書き許 可 袋路や旗竿敷地等 無接道のために建て替えができない 敷地の周囲に広い空地を有する等の基準を満たし 交通 安全 防火 衛生上支障がない場合に建て替えを認めること 延焼火災の防止や円滑な消 防活動に配慮すること 24

そのため ハード ソフトを含めたいくつかの対策を組み合わせることで 全体として一定の防災水準を確保した形で地域のまちづくりを強化していくような発想が必要になってくる 表 2-2-1 に規制誘導手法の例と導入に際して求められる防災上の措置を示す このように 規制誘導手法を活用する際には 防災上の措置として 火災時の消防活動の見通しを立てること や 円滑な消防活動に配慮すること が求められる場合があることから 規制誘導手法を活用した地域における防災市民組織の結成や消火用資器材の配置等 住民による消防活動の能力の向上というソフト面の取組みによってハード面の不足をカバーし 一定水準の防災性能の確保を図っていく必要がある ハード面とソフト面の取り組みを融合した より防災性の高いまちづくりを進めていくためには まちづくりにおいて求められる防災上の措置という視点からも地域防災力の向上に目を向けていく必要がある 図 2-2-5 に地域における防災性能強化の基本的な考え方を示す 建物の防火性能の向上 防災市民組織の結成 ハード面の取組み ソフト面の取組み 道路等 周辺の基盤整備 消火用資機材の設置 一定水準の防災性能と 環境性能を実現する 体系的なまちづくり 図 2-2-5 地域における防災性能強化の基本的な考え方 東京消防庁においても 消防機関や防災市民組織の活動環境整備や住民の災害対応力向上といったソフト面の対策に関する様々な事業をこれまでにも展開しているが 原則的にいずれの対策についても管下全域において一律に推進が図られている ところが これまでに見てきたように 特に地震火災に関してはその危険性は地域によって大きく異なり 比較的短期間で被害軽減を図るためには 地域特性に応じた効果的な対策を選択し戦略的に集中して投入していく必要があると考えられる 地震防災戦略を受け減災目標として定められた 具体的な 数値目標を達成するためには 被害要因の分析を通じた効果的な対策を選択し 戦略的に集中して推進する 必要があることから 次節では 地震火災の被害拡大のプロセスから東京消防庁として関与すべき項目の頭出しを行い 効果的対策を選択するための検討方針について整理を行う 25