コシヒカリの上手な施肥

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窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

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山形県における 水稲直播栽培の実施状況 平成 28 年 8 月 26 日 ( 金 ) 山形県農業総合研究センター 1 1 山形県における水稲直播栽培の現状 1 (ha) 2,500 2,000 1,500 1, 乾田直播 湛水 ( 点播 ) 湛水 ( 条播 ) 湛水 ( 散播 )

目次 1. やまだわら の特性 _ 1 収量特性 1 2 品質 炊飯米特性 2 3 用途別適性 3 2. 生育の特徴 4 3. 収量 品質の目標 5 4. 各地域での主な作付スケジュール 6 5. 栽植密度 7 6. 肥培管理 1 施肥量 施肥時期 8 2 生育診断 9 7. 収穫適期

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

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機関名 ( 地独 ) 北海道立総合研究機構農業研究本部 部署名 企画調整部企画課 記入者氏名 山崎敬之 電話番号 レーザー式生育センサを活用した秋まき小麦に対する可変追肥技術 レーザー式の生育センサを使って秋まき小

麦 類 生 育 情 報

平成 26 年度補正予算 :200 億円 1

Ⅲ-3-(1)施設花き

失敗しない堆肥の使い方と施用効果


新梢では窒素や燐酸より吸収割合が約 2 分の1にまで低下している カルシウム : 窒素, 燐酸, カリとは異なり葉が52% で最も多く, ついで果実の22% で, 他の部位は著しく少ない マグネシウム : カルシウムと同様に葉が最も多く, ついで果実, 根の順で, 他の成分に比べて根の吸収割合が高い

2 穂の発育過程 (1) 穂の形態 イネの穂は 穂軸が枝分かれして し 1 次枝こう 2 次枝こうがつき それ にえい 花 ( 小穂 ) がつく 1 つのえい花 ( 小穂 ) は 1 花から成 っており その数は 1 次枝こうの先に 5~6 個 2 次枝こうに 2~4 個つき 1 穂全体では 80

水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル(改訂版)

「そらゆき」栽培マニュアル

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

研究成果報告書

29 Ⅵ-1-(1)(2)環境保全型農業

PC農法研究会

Ⅲ-2-(1)施設野菜

スライド 1

1. 取組の背景射水市大門地域は 10a 区画の未整備な湿田が多く 営農上の大きな障害となっていた 昭和 62 年に下条地区で県内初の大区画圃場整備が実施されたのを皮切りに 順次圃場整備が進んでいる 大区画圃場整備事業が現在の 経営体育成基盤整備事業 になってからは 農地集積に加えて法人化等の担い手

2 作物ごとの取組方針 (1) 主食用米本県産米は 県産 ヒノヒカリ が 平成 22 年から平成 27 年まで 米の食味ランキングで6 年連続特 Aの評価を獲得するなど 高品質米をアピールするブランド化を図りながら 生産数量目標に沿った作付けの推進を図る また 平成 30 年からの米政策改革の着実な

20 石川県農業総合研究センター研究報告第 28 号 (2008) Ⅰ はじめに家畜ふん尿処理施設では 収集 運搬された家畜ふん尿は固液分離機に搬入され 固形分は堆肥化処理後 農耕地へ還元利用されている 液状分は好気発酵処理 さらに生物処理等の工程の順に適切な浄化処理が行われ その後 放流されている

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分娩後の発情回帰と血液生化学値との関係(第2報)

レイアウト 1

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目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

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2 地温 : 15~25 の温度帯に緩効性効果が一番高い 30 を超えると ウレアーゼ抑制材の分解が加速する上 微生物の繁殖も速くなり 微生物の活性を抑える効果が低くなる 3 土壌 ph: 弱酸性土壌 (ph5.5) からアルカリ性土壌 (ph8.0) まで土壌 ph が高いほど緩効性効果も高くなる

まえがき 環境問題に対する国民の関心が高まる中で 国は新たな 食料 農業 農村基本計画 において 環境に配慮した生産活動の推進や生物多様性保全に効果の高い農業生産活動の促進 食品の安全性の確保など 環境保全型農業の取組みに向けた姿勢を示し 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律 や 有機農

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1 はじめに北海道の麦作には 二つの大きな目標があった 一つは 秋まき小麦の全道平均反収を一〇俵の大台に乗せること もう一つは E U 並みの反収一トンどりをめざすことである この数字は 決して夢のような話ではなかった 麦作農家のなかには 圃場の一部ではあるが一トンどりを実現したとの声があったし 実

附則この要領は 平成 4 年 1 月 16 日より施行する この要領は 平成 12 年 4 月 3 日より施行する この要領は 平成 30 年 4 月 1 日より施行する 2

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3 園芸作物 < 果菜類 > 1-1 トマト [ ハウス ] ア導入すべき持続性の高い農業生産方式の内容 トマトは主に道央 道南および道北の施設で栽培され 作型は促成 ( ハウス加温 マルチ ) 半促成 ( ハウス マルチ ) 抑制 ( ハウス ) などである 品種は 桃太郎 ハウス桃太郎 桃太郎

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主要産地における平成 29 年産水稲の収穫量及び作柄概況等について第 1 報 (8 月 31 日現在 ) 全国 道府県 全国 予想収穫量 (29 年 8 月 15 日現在 )1 収穫量 ( 早期栽培等 ) 予想収穫量 (28 年 8 月 15 日現在 )2 前年産との比較 (1-2) 作況 ( 早期

11月表紙

Ⅱ 枝物類

委託試験成績 ( 平成 25 年度 ) 担当機関名 部 室名 実施期間 大課題名 課題名 目的 担当者名 山口県農林総合技術センター 農業技術部土地利用作物研究室 資源循環研究室 平成 24~26 年度 Ⅰ 大規模水田営農を支える省力 低コスト技術の確立 うね立て同時条施肥機を利用した被覆尿素の深層

Ⅱ-3 環境負荷低減技術 ( 1) 土壌分析結果を生かした施肥量削減 1 技術の内容土壌分析により土壌養分の量を把握し 現況の養分量にあわせ施肥量を加減する方法である 2 期待される効果養分が過剰にある場合は施肥量を減らすことができ 肥料のコスト低減にもつながる 特に施設園芸や果樹園 茶園では土壌中

H26 中予地方局産業振興課普及だより 新技術情報 -1 いちご新品種 紅い雫 ( あかいしずく ) 1. 紅い雫 の来歴県農林水産研究所が育成したいちご新品種 紅い雫 は あまおとめ ( 母親 ) 紅ほっぺ ( 父親 ) の交配により誕生し 平成 26 年 6 月 25 日に品種登録出願されました

宮城県 競争力のある大規模土地利用型経営体の育成 活動期間 : 平成 27~29 年度 ( 継続中 ) 1. 取組の背景震災により多くの生産基盤が失われ, それに起因する離農や全体的な担い手の減少, 高齢化の進行による生産力の低下が懸念されており, 持続可能な農業生産の展開を可能にする 地域営農シス

JA越後さんとうにおける   高品質米生産の取り組み

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平成 30 年度夏期集落座談会次第 1. 平成 30 年 6 月末事業概況 1 2. 秋の農繁期に向けたお知らせ 平成 30 年産紙袋 ( 米 ) 記入の注意事項 2 強い稲体作りのための施肥設計 4 3. コンバイン事前点検チェックポイント 5 4. 貯金 ローン商品のお知らせ 6 5. 年金キャ


畜舎内から畜舎温度を下げる技術 換気扇 扇風機による送風 細霧装置による冷房 家畜への直接送風 散水等の技術が7 割半ば程度取り組まれ ほぼ全てにある程度以上の効果が認められるが 畜舎構造に合わせた効果的な送風技術の確立のための 技術改良 導入基準 ( の設定 ) 農家の設置費用と経済効果といった

果樹の生育概況

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1) トウモロコシの基本的特性 飼料用トウモロコシの根の生育特性 節 側芽 節間 葉 ( 第 n 葉 ) 一次根 シュートの構成要素の模式図 ( 馬場 2002 原図 ) 第 n 要素 中位要素の一次根は 出根後 斜下方向に伸長し 心土層との境界付近でほぼ直下方向に向きを変えて伸長し 土壌中深くまで

温度 平成 23 年平均平成 23 年最高平成 23 年最低平均気温 ( 平年値 ) 最高気温 ( 平年値 ) 最低気温 ( 平年値 ) 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 図 1 生育期間中の気温推移 ( 淡路農技内 ) 降水 3 量

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スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

北海道の米づくり 2011年版

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水稲の反射シート平置き出芽 & プール育苗 福島県須賀川市 藤田忠内さん 出芽は平置きした苗箱に反射シートをかけるだけ, 育苗管理はプールに水を張るだけ, 換気も灌水の心配もいらない マット形成, 揃いがよく, 茎が太くて葉幅も広く, 病気の出ない, 根張り抜群の健苗を育成 写真はすべて依田賢吾撮影

26 Ⅴ-1-(7)水田での有機物利用

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水稲調査結果の主な利活用 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 ( 平成 6 年法律第 113 号 ) に基づき毎年定めることとされている米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針及び米穀の需給見通しのための資料 食料 農業 農村基本計画における生産努力目標の策定及び達成状況検証のための資料 米

2 石川県農業総合研究センター研究報告第 26 号 (5) It reviewed relation between the number of days after the heading and the quality change. Also, about the index which es

リン酸過剰の施設キュウリほ場(灰色低地土)における基肥リン酸無施肥が収量に及ぼす影響

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資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

Microsoft PowerPoint - 11 新潟米戦略

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

平成 27 年 4 月 10 日 ( 第 1 号 ) 東北地方 1 ヶ月予報 ( 平成 26 年 4 月 9 日仙台管区気象台発表 ) 天気は数日の周期で変わりますが 平年に比べ晴れの日が多いでしょう 平均気温は 平年並及び平年より高い確率が 40% 降水量が高い確率が 50% 日照時間は 平年並ま

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2016 岩船米農作業カレンダー いよいよデビュー! 晩生新品種 新之助 昨年命名された 新之助 は 平成 28 年に県内で約 100ha 栽培される予定です 岩船地域では 2JA を含む 4 つの 新之助 栽培研究会 で栽培が行われます 稲株 玄米 新之助 の特徴 1 粒が大きく コクと甘さに特徴

現地ルポ はじめに 主食用米の消費量は 人口減少や高齢化 食生活の変化等によって国内で毎年約 8 万 tずつ減少しており こうした消費の減少に応じた主食用米の生産を進めていく必要があります 一方 畜産現場では輸入トウモロコシに依存する配合飼料原料の国産化を進めるため 飼料用米の需要は高まっています

農耕地からの窒素等の流出を低減する - 農業環境収支適正化確立事業の成果から - 平成 14 年 3 月 財団法人日本農業研究所

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森林航測72号

図 1. ブドウの鉄欠乏症 図 2. トマトの亜鉛欠乏症 2. 亜鉛 (Zn) の欠乏症と過剰症亜鉛は植物体内の各種酵素の構成成分である また 植物ホルモンの一種であるオーキシンの代謝 タンパク質の合成に関与する 亜鉛が不足すると 上位葉の生育が著しく阻害され 地上部の生長点あたりは節間が短縮し 小

農業気象技術対策資料

新品種育成の背景 経緯一般の良食味米 ( 中アミロース ) で作成した麺は ゆで麺の表面の粘りが強く 麺離れが悪いのに対し 高アミロース米は麺離れが良く 製麺適性が高いことから 北陸地域向けの 越のかおり 北海道向けの 北瑞穂 などがこれまでに育成され 米粉麺が製品化されています しかしながら これ

みどり の輪 7 No. 永平寺町農業協同組合 2017 月号 191 ~ 五領たまねぎの収穫風景 ~


2015 岩船米農作業カレンダー 今年の稲作計画を立ててみましょう 今年の経営目標 ( 前年の実績を踏まえ 収量 品質 売上の目標などを書き込みましょう ) 水稲作付計画 ( 新規需要米等も含む ) 品種名作付面積 ( アール ) 目標単収 (kg/10a) 栽培方法留意事項等 参考 平成 26 年

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総籾数 ( 千 / m2 ) 1 穂籾数 ( 粒 / 穂 ) わら重 (kg/a) 精籾重 (kg/a) 柴田ほか : 水稲新品種 ゆめおばこ の栽培特性 (2) 結果 ゆめおばこ と あきたこまち を比較すると ゆめおばこ は あきたこまち より全重 わら 重 精籾重 玄米重が多く 玄米千粒重が大

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隔年結果

Microsoft Word - 02_第1章稲作

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基肥一発肥料の上手な使い方 基肥一発肥料は 稲の生育に合わせて 4~6 回 必要な時期に必要量を施用す る分施体系をもとに 基肥として全量を施用する省力施肥体系として誕生しま した 1. 分施体系における各施肥チッソの役割 (1) 基肥 田植え前に全層にチッソ 4kg/10a を施用します 全層施肥では チッソの 利用率は 20% 程度ですが 側条施肥では 30% 程度に向上します (2) 早期追肥 田植え一週間後までに活着促進のため チッソ 1.5kg/10a を施用します! (3) 中間追肥 田植え後一か月程度後に 有効茎が必要量確保され その時点で葉色が淡 い場合に 1.5kg/10a 程度のチッソを施用します ( 葉色が淡くなりすぎると その後の回復は難しくなります ) (4) 穂肥 基肥と早期追肥は有効茎を確保するのに重要な肥料です 施用量が不足すると茎数が不足します 1 回目 : 出穂 15 日前にモミの退化を防ぐため 一回目の穂肥としてチッソ を 2kg/10a を施用します ( 一穂着粒数の確保 ) 2 回目 : 出穂 7 日前にモミの肥大を促進し 登熟期間の稲体活力を維持する ため 二回目の穂肥としてチッソ 2kg/10a を施用します ( モミの肥大促進 ) 3 回目 : 葉色が 4( 砂壌度 4.2) 以下の場合 出穂 3 日前までにチッソ 0.7 ~1.0kg/10a の追加穂肥を施用します ( 秋落ち防止 千粒重の増加 ) 基肥から穂肥までのチッソ施用量は 12kg/10a となります

2. 基肥一発肥料とは 米作りに必要な肥料の全量を基肥として一回で施用できるようにした省力的肥料のことです 窒素の基肥相当 ( 速効性 ) 地力補完相当(LP50 LP70 など ) 穂肥相当(LPS100 LPSS100 LPS110 など ) の肥料をバランスよく配合することにより 田植え時に全量施用しても分施体系と同じ肥効を得ることができます 分施体系は 出穂 15 日前に 2kg 8 日前に 2 kg 3 日前に葉色が4( 砂壌度 4.2) 以下の場合は 0.7~1.0kg/10a 施用する等 短期間に4~5 kg /10a 窒素を施用します しかし 一発肥料で穂肥の代わりに施用する LPSS100 は 肥料の効き初めが分施体系と同じであっても 短期間に窒素は溶出しません そのため 一回目穂肥前から極端に窒素の供給量が少なくならないように 地力相当の LP50 を入れてあります コシヒカリの分施体系と一発施肥体系のチッソ吸収量の推移 このグラフは 分施体系によるチッソ 12kg/10a 施用と一発肥料によるチッ ソ 9.45kg/10a 施用では ほぼ同様のチッソ吸収量の推移を示しています

しかし 食味向上対策や温暖化にともなう田植時期 (5 月上旬から中旬への ) の繰り下げから 田植え時の基肥一発肥料施用量を削減し 不足分を穂肥で施用する方法を採用する地域が登場してきました しかし 先にも示したとおり 穂肥が不足しているということは 基肥 つなぎ相当も不足し 茎数が確保できないだけではなく 穂揃い期以降の窒素供給も不足することから背白や 基白が増加することになります 一発肥料の施用量が少なすぎる場合の問題点 追肥を前提とした体系を導入することにより 基肥一発肥料の施用量を削減しすぎると 基肥 早期追肥 中間追肥相当も少なくなることから 茎数が少なくなるだけでなく 穂肥を施用しても 葉色の落ち込みが回復せず品質の低下や 着粒数が不足します 多量の穂肥追肥をおこなった場合の問題点 茎数が少ないうえに穂肥を追肥することにより 一穂着粒数が増加します 一穂着粒数が著しく増加した場合 乳白や芯白米が増加し 一等米比率を著しく下げる原因となります 以上のことから 一発肥料は あくまでも基肥として全量を施用するも ので 穂肥追肥は高温等で後半の稲の夏バテが懸念される異常気象年にや むを得ず施用する程度のものです

3. 一発肥料の種類と特徴 一発肥料は 最初はコシヒカリ用に作られ 土性の違いにより1 号と 2 号が さらに 有利販売を目指して有機肥料を含む3 号と 4 号が作られ さらに品種バランスを是正するため てんたかく 用 てんこもり 用 酒米用などの肥料が作られ 使い分けるようになっています 以下は それぞれの特徴と施肥量の目安についてです 水稲の品種構成による品質向上富山県のうるち米は てんたかく (10%) コシヒカリ(84%) てんこもり (2%) で構成されています コシヒカリ の作付比率が高く 田植作業や稲刈作業が一時期に集中して作業が遅れるなどの弊害や 猛暑による品質低下も目立っています そうしたなか てんたかく てんこもり は猛暑でも品質の低下がないことが知られています 高品質で 美味しい早生の てんたかく と晩生品種の てんこもり の作付比率を高めて 中生の コシヒカリ とのバランスの良い作付けを進め 作業の分散と適期刈取りを行って 品質の良い富山米の品揃えの充実をはかることが大切です

(1)LPSS コシヒカリ 1 号 砂質浅耕田 砂質 ~ 壌質で栽培するコシヒカリのための肥料です LPSS コシヒカリ 1 号の成分の内容 保証成分 (%) チッソ地力補完穂肥相当水溶性全内リン酸基肥地力補完穂肥相当肥料肥料カリチッソ速効性相当相当相当 21.0 7.1 14.0 14.0 7.1 2.2 11.7 LP50 LPSS100 幼穂形成期前にチッソが効きすぎると 下位節間長 (4,5 節 ) が伸びて倒伏しやすいのがコシヒカリの特徴です しかし 不足するとその後追肥しても葉色の回復が遅れ 生育不良となります 施用量の適正化に向けた課題コシヒカリの成熟期における全チッソ吸収量は 10kg/10a 程度 ( 収量 540kg/10a) で 肥料 ( 施肥チッソ ) と土壌 ( 地力チッソ ) から供給されます 一発施肥は 分施体系 ( 全層施肥 ) を基本としている ( 砂質乾田では 12kg/10a 施用 ) ので 全層施肥では 20% 程度減肥の 45kg/10a( チッソ成分で 9.45kg/10a) 施用が 側条施肥ではさらに 20% 程度減肥の 35kg/10a( チッソ成分で 7.4kg/10a) 施用が適量と考えられます しかし 実際の栽培では 25 ~ 30kg/10a ( チッソ成分で 5.25kg ~ 6.30kg/10a) を施用している地域もあり 茎数および着粒数の不足 品質の低下等が問題になっています 収量の減少 品質の低下には 施肥チッソの不足が大きく影響していると考えられます 不足が懸念される場合は 土壌条件により 肥料を 30kg/10a ~35kg/10a( チッソ成分で 6.3kg~7.4kg/10a) に増やしてください

(2)LPSS コシヒカリ 2 号 粘湿田 半湿田 洪積田で栽培するコシヒカリのための肥料です 表 6 LPSS コシヒカリ2 号の成分の内容 保証成分 (%) チッソ水溶性全内リン酸基肥地力補完穂肥カリチッソ速効性相当相当相当 地力補完 相当肥料 穂肥相当 肥料 21.0 8.6 14.0 14.0 8.6 0 12.4 - LPSS100 21.0 7.1 14.0 14.0 7.1 2.2 11.7 LP50 LPSS100 )LPSS コシヒカリ 1 号の成分内容本肥料は チッソ発現量が多い土壌を対象としているので 地力補完相当は入っていません 施用量の適正化に向けた課題 LPSS コシヒカリ 2 号は 沖積 壌質や粘質土壌および洪積土壌など比較的地力チッソ発現量の多い土壌用に作られた肥料で 地力補完用の LP50 が入っていません しかし 転作回数の増加により 壌質および粘質乾田での地力窒素の供給量不足も懸念されています 実際場面では 30kg/10a( チッソ成分として 5.25kg/10a) 以下の施用地域が多く 茎数および着粒数の不足 品質の低下や千粒重の減少が問題になっている場合があります こうした減少が見られたら LPSS コシヒカリ 2 号を増施 もしくは LPSS コシヒカリ 1 号へ変更しての増施も検討する必要があります

(3) 有機 LPSS コシヒカリ 3 号 砂質浅耕田 砂質 ~ 壌質田で栽培するコシヒカリのために作った有機入り一発肥料で LPSS コシヒカリ 1 号に有機ブリケット (18%) を加えたものです 表 9 有機 LPSS コシヒカリ 3 号の成分の内容 保証成分 (%) チッソ地力補完穂肥相当水溶性全内リン酸基肥地力補完穂肥相当肥料肥料カリチッソ速効性相当相当相当 18.0 5.6 12.0 12.0 6.7 1.4 9.9 LP50 LPSS100 21.0 7.1 14.0 14.0 7.1 2.2 11.7 LP50 LPSS100 )LPSS コシヒカリ 1 号の成分内容有機ブリケット (18%) には チッソ リン酸 カリがそれぞれ 1.1% 0.9% 2.5% 含まれており その中の有機態チッソは最初の 10 日間で 60% 以上が溶出したとの報告もあります 施用量の適正化に向けた課題コシヒカリのチッソ吸収量は 10kg/10a 程度 ( 収量 540kg/10a) で 肥料 ( 施肥チッソ ) と土壌 ( 地力チッソ ) から供給される 有機 LPSS コシヒカリ3 号は LPSS コシヒカリ 1 号に有機肥料 ( 有機ブリケット ) を 18% 添加したものです 有機肥料は有機物を粉砕し造粒したもので 肥効は速効性肥料に近く 基肥相当肥料として扱います 有機肥料に含まれるチッソは速効性肥料に近い肥効を示すので コシヒカリ1 号と同様な地力補完および穂肥相当のチッソを確保するためには2 割程度多く肥料を施用する必要があります

(4) 有機 LPSS コシヒカリ 4 号 粘湿田 半湿田 洪積田で栽培するコシヒカリのために作った有機入り一発肥料で LPSS コシヒカリ 2 号に有機ブリケット (18%) を加えたものです 表 12 有機 LPSS コシヒカリ 4 号の成分の内容 保証成分 (%) チッソ水溶性全内リン酸カリチッソ速効性 基肥 地力補完 穂肥 相当 相当 相当 地力補完 相当肥料 穂肥相当 肥料 18.0 6.2 12.0 12.0 7.4 0 10.6 - LPSS100 21.0 8.6 14.0 14.0 8.6 0 12.4 - LPSS100 )LPSS コシヒカリ2 号の成分内容 有機ブリケット (18%) には チッソ リン酸 カリがそれぞれ 1.2% 1.4% 2.2% 含まれており その中の有機体チッソは最初の 10 日間で 60% 以上が溶出し たとの報告があります 施用量の適正化に向けた課題コシヒカリのチッソ吸収量は 10kg/10a 程度 ( 収量 540kg/10a) で 肥料 ( 施肥チッソ ) と土壌 ( 地力チッソ ) から供給されます 有機 LPSS コシヒカリ4 号は LPSS コシヒカリ 2 号に有機肥料 ( 有機ブリケット ) を 18% 添加したものです 有機肥料は有機物を粉砕し造粒したもので 肥効は速効性肥料に近く 基肥相当肥料として扱います LPSS コシヒカリ 2 号と同程度施用すると穂肥相当肥料が 2 割程度不足します したがって 施用量は 2 割程度増施する必要があります

(5)LPS 早生専用 早生品種 てんたかく 用に作った一発肥料です 表 15 LPS 早生専用の成分の内容 保証成分 (%) チッソ 全 内 リン酸 チッソ 速効性 水溶性 カリ 基肥 地力 穂肥 相当 補完相当 相当 地力補完 相当肥料 穂肥相当 肥料 LP50 22.0 7.6 12.0 14.0 7.6 6.9 7.5 LPS100 LPS60 てんたかく はコシヒカリとは異なり 穂肥施用が早くても倒伏の心配は少ないので LPS60 を添加し 幼穂形成期前後の肥効を得る事により 着粒数を確保しています ( 増収につながる ) 施用量の適正化に向けた課題早生品種 てんたかく のチッソ吸収量は 12kg/10a 程度 ( 収量 600kg/10a) で 肥料 ( 施肥チッソ ) と土壌 ( 地力チッソ ) から供給される 本肥料は 当時の早生推奨品種 ハナエチゼン のために作られた肥料を現在の推奨品種 てんたかく 用に改良したものです 本品種はハナエチゼンに比べ収穫時期がよりコシヒカリに近くなりました しかし 4,5 節間伸長期と幼穂形成期が同調しないため 幼穂形成期前後に肥料を供給し着粒数を確保することができます 収量を確保するために コシヒカリよりは 20% 程度肥料を多めに施用します

(6)LPSS 晩生専用 晩生品種 てんこもり 用に作った一発肥料です 表 17 LPSS 晩生専用の成分の内容 保証成分 (%) チッソ水溶性全内リン酸基肥地力穂肥カリチッソ速効性相当補完相当相当 地力補完 相当肥料 穂肥相当 肥料 21.0 6.0 14.0 14.0 6.0 5.0 10.0 LPS60 LPSS100 施用量の適正化に向けた課題 てんこもり のチッソ吸収量は 13kg/10a 程度 ( 収量 610kg/10a) で 肥料 ( 施肥チッソ ) と土壌 ( 地力チッソ ) から供給される 本肥料は 肥料製造当初の晩生推奨品種である 日本晴 用に作られたものを てんこもり 用に改良したものです 本品種は 日本晴 に比べ 収穫時期は早く コシヒカリ により近くなっています 幼穂形成期と下位節間伸長期が同調しないため 幼穂形成期前後にチッソを供給し着粒数を確保するため地力補完を兼ねて LPS60 をブレンドしています