SWIM2012 年度第 4 回研究会 ビジネスモデルの記述に関する一考察 2013 年 2 月 20 日富士通研究所丸山文宏 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
目次 ビジネスモデル記述法の提案 ビジネスモデルの記述例 考察 まとめ 1 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
ビジネスモデルの記述 新しいビジネスモデルとは 顧客の潜在ニーズや社会の動向に対する創業者の深い洞察と強い信念から生まれるものであり 機械的な取扱いは難しい しかし ビジネスモデルの記述には以下のような利点がある 差異化ポイントが明確になる 自社にないリソースが明確になる 事業形態の分析 類型化に役立つ 特許化の可能性の判断に役立つ ビジネスモデルの記述法を提案し 具体的な記述例を示す 提案したビジネスモデル記述法のメリットとデメリットについて考察 特に 不足している要素について考察 本研究会のプロジェクト ビジネスモデルを科学する の議論に役立つことを期待 2 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
ビジネスモデル記述の利点と目的 ビジネスモデル記述の利点 差異化ポイントが明確になる 自社にないリソースが明確になる 事業形態の分析 類型化に役立つ 特許化の可能性の判断に役立つ ビジネスモデル記述の目的 ビジネスモデルの優位性を検証する 経営幹部を含む関係者の理解 合意を得る 他社との協業の構図を明確にする 競合他社に対する参入障壁を設計する 詳細なビジネスプランの出発点とする 3 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
提案する手法の記述要素 クレジットカードのプロセスの記述例に触発されて考案 サービス イノベーション の講義で利用 プレーヤーとプレーヤー間のサービスという観点で記述 サービスのトリガーとなる行為をイベントとして記述 サービスの提供によって得られるデータを活用したサービスを二次サービスとして記述 例えば XML による形式的記述に変換することは容易 プレーヤー サービス 二次サービス ( 基本サービスで得たデータを活用 ) モノと情報の流れ 金の流れ イベント 4 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
クレジットカードのビジネスモデル カード会員 ( 消費者 ) と加盟店の間の小売サービスに直接金の流れがなく, その間に仲介をするクレジットカード会社が入っているのが特徴 カード会員から加盟店に対するカードの提示というイベントが仲介のトリガー クレジットカード会社は, 入会時に提供された信用情報で審査をパスしたカード会員に対して信用供与のサービスを提供 年会費と分割払いやリボルビング払いからの金利収入を得る 加盟店に対しては売上債権の回収代行サービスを提供して手数料を得ている 信用供与 信用情報カード $( 年会費 ) $( 利用代金 )+$( 金利 ) カード会員 ( 消費者 ) クレジットカード会社 優待 特典 利用額に応じたプレゼント 債権回収代行売上債権 $( 売上金 ) $( 手数料 ) サ商ー品ビ ス ( 認カー証ド ) 提示 加盟店 小売 5 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
Amazon のビジネスモデル Amazon は利用者に小売サービス ( オンライン ) を提供 小売サービスを通して得られた購買履歴情報を活用して商品推薦 ( 二次サービス ) を提供 第三のプレーヤーとしてアフィリエイトサイト運用者が存在 アフィリエイトサイト運用者はそのホームページやブログで Amazon の商品へのリンクを張り 利用者がそれをクリックして購入に至ると Amazon から手数料が支払われる Amazon にとって販売チャネルの拡大に役立っている 小売購買情報商品 $( 代金 ) 利用者 Amazon 商品推薦 アソシエイト プログラム ( 提携 ) ( サイトコンテンツ ) 関連書籍等情報 $( 手数料 ) サイト情報 書籍等情報 ( ク書リ籍ッ等ク購 ) 入 アフィリエイトサイト運用者 情報提供 6 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
Google のビジネスモデル メインのサービスである検索サービスに伴う直接の金の流れがないのが特徴 検索に連動して表示する広告の広告主からの掲載料が Google の収益 第四のプレーヤーとして AdSense( 連携プログラム ) によるアフィリエイトサイトの運用者が存在 自身のサイトの内容に応じて関連した広告を貼り付け 利用者がその広告をクリックして閲覧すると手数料が支払われる仕組み 検索サービスを通して蓄積した検索キーワードと検索結果のペアの分析により 入力キーワードに連動した広告を表示するという二次サービス AdWords が成立 広告掲載 Google 広告 掲 $ 載料 ( ) 広告主 検索サービス 検索キーワード検索結果 検索連動広告 ( アドワーズ ) サイト情報 利用者 ( ク広リ告ッ閲ク覧 ) 広告 アドセンスサイト運用者 情報提供 7 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
Priceline.com の逆オークションのブロック図 売主インタフェース 売主インタフェース 売主インタフェース モデム モデム モデム 条件付き購入申込 条件付き購入申込 売主応答 中央制御装置 購入確認 条件付き購入申込 売主応答 条件付き購入申込 購入確認 モデム 買主インタフェース 8 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
Priceline.com のビジネスモデルのポイント 個々のオークションでは, ひとりの買主の条件付き購入申込に対して複数の売主が応答すること 潜在的な買主と売主は多数 個々のオークションでの ( 売主の数 ):( 買主の数 )=N:1 UML の多重度のような記述が可能 売主と買主のどちらがオークションを開始するか? プロセス的な観点 買主は条件付き購入申込によってその条件を満足するオファー ( の中でベストなもの ) で必ず購入し, そのための支払い能力を有していることをコミットしていること 9 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
対象限定特典情報仲介システム (WiseConsumer) WiseConsumer とは 企業 商店 会員制組織 自治体などがネットワークを通じて提供する商品 サービス イベント情報を 消費者が有効に利用できるよう仲介 支援するシステム 得意客 重要顧客 会員に対して特別に提供される お得意様バーゲン 会員向け特別企画 会員割引といった 対象が限定された有利な商品 / サービス情報の処理に特徴 インターネット普及後の世界に関する仮説 (1994 年頃 ) 限定された対象に対して発信される情報の重要性が増す 同じ商品 / サービスでも受け手によって価格が変わり得る 最初の提案書は 1995 年 通常の技術的な発明としては新規性なし あらためてビジネスモデル特許として出願 ( 2000 年 12 月 ) 2011 年 6 月に登録 10 Copyright 2012 Fujitsu Laboratories Ltd.
WiseConsumer のブロック図 利用者商品 / サービス提供 利用者情報の登録 利用者 ID の発行 特典検索条件 利用者 ID 特典情報 仲介コンピュータ 提供者情報の登録 対象限定特典情報の登録 商品 商品商品 / サービス提供者 / サービス提供サービス提供 システムが対象とする情報 ( 対象限定特典情報 ) と顧客との関係を規定する必要がある 上記の処理の流れをプロセスとして記述する必要がある 11 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
考察 典型的なビジネスモデルの特徴を簡潔に表現できる バリュープロポジションを適切に表現できる必要がある 顧客との関係性やチャネルをベースとして対象とする商品 サービスを規定できる必要がある 必要とされるリソースとケーパビリティを記述できる必要がある 特許化のために利用する場合には, フローチャートのようなプロセスを記述できる必要もある 12 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
まとめ ビジネスモデルの記述法を提案 典型的なビジネスモデルの具体的な記述例を示した ビジネスモデルの形式的記述の使用目的を考慮して考察 提案したビジネスモデル記述法のメリットとデメリット 提案したビジネスモデル記述法に不足している要素 13 Copyright 2013 Fujitsu Laboratories Ltd.
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