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A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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266 ウイルス分離は 発症後 5-6 日以内の血清試料とデングウイルスに感受性の高いヒトスジシマカ培養細胞株 C6/36 細胞を用いて行う ウイルス分離を行うには病原体の取り扱いが可能なバイオセーフティレベル (BSL)2 施設で行う必要がある また 細胞培養技術が必要となる ウイルス分離に用いる

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別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

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Research 2 Vol.81, No.12013

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本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

東京都インフルエンザ情報 第20巻 第20号

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目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

なお本研究は 東京大学 米国ウィスコンシン大学 国立感染症研究所 米国スクリプス研 究所 米国農務省 ニュージーランドオークランド大学 日本中央競馬会が共同で行ったもの です 本研究成果は 日本医療研究開発機構 (AMED) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 文部科学省新学術領

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日本脳炎不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した日本脳炎ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称日本脳炎ウイル


2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

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顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

Mouse IgG EIA Kit

論文の内容の要旨

モノクローナル抗体

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

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研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

シンポジウム Ⅰ 輸血 輸血検査試薬のメーカー特性と解釈 中島康裕 株式会社カイノス はじめに 輸血検査において従来から行われている試験管法に対し 近年 デキストランゲルやガラスビーズを担体としたマイクロカラム遠心凝集法が開発され 輸血検査の標準法の一つとして用いられています カイノスは グリフォル

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免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤


ポイント 微生物細胞から生える細い毛を 無傷のまま効率的に切断 回収する新手法を考案しました 新手法では 蛋白質を切断するプロテアーゼという酵素の一種を利用します 特殊なアミノ酸配列だけを認識して切断する特異性の高いプロテアーゼに着目し この酵素の認識 切断部位を毛の根元に導入するために 蛋白質の設

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

新たに定期接種ワクチンとされたことから 本邦における HPV ワクチンによる免疫獲得状況を把握 して 将来の子宮頸癌予防計画に役立つ基盤データを蓄積することを目的に 14 年度から本事業にて HPV16 抗体価の測定調査を実施することとなった 2. 感受性調査 (1) 調査目的ヒトの HPV16 に

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ウエストナイルウイルス 特異的血清検査法 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 動物疾病対策センター知的基盤管理室 清水眞也

West Nile Virus (WNV) WNV はフラビウイルス科フラビウイルス属に属する エンベロープを有する RNA ウイルスで 野鳥と蚊の間で維持および増幅される WNV 感染症は ヒト 産業動物および野生動物に被害をもたらす 世界的に重要な人獣共通感染症である From West Nile Virus in CDC web

West Nile Virus (WNV) WNV は南北アメリカ ヨーロッパ 中東 アフリカ ロシア オーストラリア等で広範囲に蔓延している WNV 粒子の電子顕微鏡像 ( 出典 : 国立感染症研究所 ) WNV および日本脳炎ウイルス (JEV) の分布図

西ナイルウイルスの粒子構造 ( 模式図 ) 直径約 50nm のエンベロープを持ったウイルスです エンベロープには E タンパクと M タンパクの 2 種類を有します その内部には C タンパクのカプシドがあり 中には約 11kb のプラス鎖 RNA が入っています 長さ約 11kb のウイルスゲノム RNA ( 内部のひも状のもの プラス鎖一本鎖 RNA) をカプシド ( 青 ) が取り囲みヌクレオカプシドを形成している これをさらに脂質二重膜 ( 緑色 ) が包み込んでいる 脂質二重膜には E タンパク M タンパクが存在している E タンパクはウイルスの抗原性やレセプターとの結合に関与している from: http://www.tmin.ac.jp/medical/11/virus3.html

West Nile Virus 流行地での被害例 (2012 年 ) アメリカでは 2012 年に 史上最悪の流行が観測された 48 州で 5387 例の WNV 感染が報告され うち 2734 例 (51%) が神経症状を発症し 243 人 (4.5%) が死亡した 2012 年のアメリカにおける WNV 発生地点 ( 出典 :CDC)

WNV 感染症の診断法の概要 WNV 感染症の診断には 1. ウイルス分離 2. ウイルス RNA 検出 3. ウイルス抗原検出 4. 抗 WNV 抗体の検出 の四つが用いられる WNV のウイルス血症の期間は通常 3 日程度と短い また 多くの場合 WNV 検出可能期間は症状発症前となる また ほとんど WNV 感染は不顕性に終わることが知られている このため人や馬などの生前診断は 抗 WNV 抗体の検出をもって行われている

WNV 感染に対する対処法 WNV 感染した動物および人に対する有効な治療薬は現在市販されていない WNV に対するワクチンが最も期待される対処法であるが 現在市販されているのは馬用ワクチンのみであり 人に用いることはできない アメリカなどの流行国では サーベイランスにより WNV 流行が疑われる地域を特定し 警報の発令 殺虫剤の散布などを行って 感染率を低下させる試みが行われている 野鳥における WNV 感染は 馬や人での流行よりも早いことが報告されている WNV 感染動物の検出が重要である

近年の日本周辺での West Nile Virus の動向 極東シベリアの野鳥において WNV が流行していることが 複数の研究において明らかにされている (Ternovoi 2006, Murata 2011) また 北海道 韓国 中国において抗 WNV 抗体陽性野鳥が報告されており 中国において抗 WNV 抗体陽性犬 猫が報告されている (Saito 2009,Murata 2011, Yeh 2011, Lan 2012) 2013 年現在までに日本国内で WNV の野外分離例は報告されていない 日本周辺の WNV 分布

既存の抗 WNV 抗体検出法の問題点 1. フラビウイルスの共通抗原性 WNV が属するフラビウイルス科フラビウイルス属には他にも 日本脳炎ウイルス (JEV) セントルイス脳炎ウイルス (SLEV) マレーバレー脳炎ウイルス (MVEV) などが属している これらのウイルスは 70% 以上のアミノ酸配列を共有している 中和法 IgM 捕捉 ELISA 間接 ELISA では交叉反応を生ずる 77-78 93 46-53 72-74 82 40-44 62 69 77 フラビウイルス属ウイルスの E 領域アミノ酸配列に基づく系統樹 日本周辺の主要なフラビウイルスの分布

日本脳炎ウイルス ウエストナイルウイルス 血清診断法では ウエストナイルウイルスと日本脳炎ウイルスでは 交叉反応があるため 区別が困難である 日本脳炎ウイルスとウエストナイルウイルスはうり二つ 抗体の特異性では 簡単には区別が付かない 日本は日本脳炎ウイルスが常在しているから 日本脳炎ウイルスのワクチンを打っておこう 周りの国でウエストナイルウイルスが流行っているから検査しましょう そんな馬鹿な? 日本は汚染国? ウエストナイルウイルス陽性です

抗 WNV 抗体検出法 抗 WNV 抗体の検出には一般的に 以下の 4 つの手法が用いられる 1. 中和法 WNV と血清を混合し 血清中の抗体が WNV を不活化するかどうかを判定する 指標診断法として用いられる 2. IgM 抗体捕捉 ELISA 血清中の IgM のみを固相化し この IgM と WNV との反応性を判定する 初期の WNV 感染の判定に用いられる 3. 競合 ELISA 血清中の抗体とモノクローナル抗体との競合を利用して WNV 特異的抗体を検出する 4. 間接 ELISA 固相化した WNV 抗原に対する 血清中の抗体の反応性を判定する

ウエストナイルウイルスの血清検査法およびその特性 ウイルス中和試験 ELISA 血球凝集阻止試験 西ナイルウイルスと日本脳炎ウイルスの区別 単独感染なら タイターの比較により可能 できない できない 長所 短所 生ウイルスの使用時間がかかる 短時間 高精度 時間がかかる 日本脳炎ウイルスで実施

既存の抗 WNV 抗体検出法の問題点 2. その他の問題点 代表的な血清診断法である中和法は 感染性のある WNV を取り扱う必要があるため P3 施設でしか診断を行う事ができない IgM 抗体捕捉 ELISA は比較的 WNV 特異的であり アメリカにおいても診断法の第一選択肢として用いられている しかし 1JEV ワクチン接種をした動物では抗 WNV IgM 抗体が産生されないことがある 2 抗 JEV IgM 抗体は交叉反応を示すため JEV 蔓延地域では JEV に対する IgM 抗体捕捉 ELISA も行う必要がある 3WNV に対する IgM 抗体は 500 日以上に渡って産生され続けることもあるため 近直の感染か確認するため 抗 WNV IgG 抗体の有無を確認する必要がある 等の問題点がある このため JEV 蔓延地域でも用いることができる より特異性の高い血清診断法が求められている

モノクローナル抗体とは 単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体分子であり 幅広い分野で利用されている WNV と JEV は 77% のアミノ酸配列が共通であるが 残りの 23% のアミノ酸配列を認識するモノクローナル抗体を確立すれば ウイルス種特異的な診断に用いる事ができる モノクローナル抗体の作成法 ( 出典 :Wikipedia)

モノクローナル抗体を用いた診断法 1. 血清診断法 競合 ELISA 又は Blocking ELISA ウマや鳥のサーベイランスに用いられている 市販キットは無い 2. 抗原検出法 免疫組織染色 死亡野鳥のサーベイランスやウマの診断に用いられている 市販の抗体は交叉性や感度の点で問題がある イムノクロマトグラフィー 蚊や死亡野鳥のサーベイランスに用いられている 市販のキットは特異性 感度等が確認されている

競合 ELISA とは 競合 ELISA は 感染血清中の WNV 特異抗体とモノクローナル抗体を競合させることで 動物の WNV 感染を特異的に検出する手法である アメリカなどでは野外サーベイランスなどに用いられてきた 現在アメリカで主流の競合 ELISA は オーストラリア株の WNV に対するモノクローナル抗体を用いており 検出可能な WNV 株に対する検証が詳細に行われていない JEV との交叉性は未検討である 従来の競合 ELISA の問題点 IgM モノクローナル抗体を用いており 抗体の安定性にも問題がある 試験に高濃度の血清が必要であり 野鳥などの小動物での試験が難しい 幅広い WNV 株に対する抗体を検出可能な 高感度競合 ELISA 法を開発した

開発した WNV 特異的競合 ELISA の特性 1. 各地の WNV 株および近縁ウイルスとの反応性 WNV NY99 株 WNV Kunjin 株 WNV eg101 株 WNV g2266 株 JEV Nakayama 株 JEV JaNAr0102 株 SLEV Parton 株 MVEV 1/51 株

開発した WNV 特異的競合 ELISA の特性 2. 陽転日数 ( 中和法との比較 ) 100 WNV 感染ニワトリ陽性率 (%) 80 60 40 20 SHW-29C2 系競合 ELISA SHW-31B2 系競合 ELISA SHW-31B2_x100 系競合 ELISA 中和法 (90% プラーク減少 ) 0 0 20 40 感染後経過日数

想定される用途 馬 人 野鳥での WNV 抗体検査 より迅速かつ特異的な検査を行う事が可能となるため 第一選択の一つとなりうる 抗体サーベイランス 高感度系であるため 少量の血清サンプルで診断可能である この特性は特に野鳥のサーベイランスにおいて重要である

WNV の免疫組織染色 ( その他のモノクロ - ナル抗体 ) WNV 感染動物の臓器中の WNV 抗原を検出することで WNV 感染を診断する 一般的な手法であるため 世界中で用いられている手法である アメリカなどでは死亡野鳥 馬サーベイランスなどに用いられてきた 従来の市販抗体の問題点 現在販売されている抗体のうち ポリクローナル抗体は近縁のウイルスにも反応するため 正確な診断ができない WNV 特異的なモノクローナル抗体も市販されていたが 感度が低いため 実用性に問題との論文が発表されている 現在のところ日本での入手はできない ポリクローナル抗体に匹敵する感度の WNV 特異的モノクローナル抗体を開発

開発した抗 WNV 抗体の免疫組織染色における特異性 WNV 感染野鳥 JEV 感染豚 SHW-32B1 抗体 SHW-7A11 抗体市販抗体 * なお 市販のモノクローナル抗体は図の WNV 感染野鳥切片には反応しなかった

実用化に向けた課題 より多くの WNV 感染動物血清での検証 組換えタンパク質抗原の作製と有用性の検討 キット化に向けた手順の簡素化

本技術に関する知的財産権 発明の名称 : ウエストナイルウイルス構造蛋白質特異的モノクローナル抗体 および該モノクローナル抗体を用いたウエストナイルウイルス感染の判定方法 出願番号 : 2011-066253 出願人 : 農業 食品産業技術総合研究機構 発明者 : 清水眞也 広田次郎

お問い合わせ先 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所企画管理部業務推進室企画チーム Tel/Fax 029-838-7895 E-mail niah-planning@ml.affrc.go.jp