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溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

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新潟県中越沖地震を踏まえた地下構造特性調査結果および駿河湾の地震で敷地内の揺れに違いが生じた要因の分析状況について

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地震活動概況 この期間 県内の震度観測点で震度 1 以上を観測した地震は1 回あり 最大震度は3でした 1 日 00 時 13 分長野県中部の地震 (M5.3 深さ 10km) により 長野県で震度 4を観測したほか 関東 東海 甲信越 北陸 滋賀県にかけて震度 3~1を観測しました この地震は地殻

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2018年11月の地震活動の評価(平成30年12月11日)

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目次 第 Ⅰ 編本編 第 1 章調査の目的 Ⅰ-1 第 2 章検討体制 Ⅰ-2 第 3 章自然 社会状況 Ⅰ-3 第 4 章想定地震 津波の選定条件等 Ⅰ-26 第 5 章被害想定の実施概要 Ⅰ-37 第 6 章被害想定結果の概要 Ⅰ-48 第 7 章防災 減災効果の評価 Ⅰ-151 第 8 章留意

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

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防災情報のページ

4:10 防災科学技術研究所第 2 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 9:34 防災科学技術研究所第 3 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 11:50 防災科学技術研究所職員が熊本県庁 ( 熊本県災害対策本部 ) に到着 16:00

Transcription:

平成 16 年新潟県中越地震被害調査報告 平成 16 年 11 月 5 日 株式会社建設企画コンサルタント

1. 調査目的 : 1 道路構造物 ( 擁壁 橋梁 斜面など ) の地震被害状況 2 土木構造物の地震被害状況 3EPS 構造物の地震被害状況 2. 調査員 : A 班 : 鳥居, 白子, 長谷川, 吉田 B 班 : 堀田, 西, 窪田 3. 地震被害調査行程 : 1 10/30( 土 ) A 班 : 主に土木構造物地震被害調査東京 - 越後湯沢 ( 新幹線 )-レンタカー湯沢 - 六日町市 - 小出町 - 川口町 - 小千谷市 - 長岡長岡にて宿泊 B 班 :EPS 構造物, 土木構造物地震被害調査東京 - 郡山 -レンタカー郡山 - 新潟市 - 見附市 - 栃尾市 - 長岡市新潟市にて宿泊 2 10/31( 日 ) A 班 : 主に土木構造物地震被害調査長岡市内 - 小千谷市 - 山古志村 - 川口町 - 十日町市 - 六日町市 - 越後湯沢 - 東京 ( 新幹線 ) B 班 :EPS 構造物, 土木構造物地震被害調査新潟市 - 長岡市内 - 小千谷市 - 山古志村 - 長岡市 - 新潟市 - 郡山 れている 信濃川に沿った低地帯の地下には 場所によって厚さ5,000mを超える新第三紀の地層が分布しており, それら軟弱な堆積層によって地震動が増幅されたことが予想される また,GPS 観測の結果によると今回の地震に伴い, 震源の南東側の新潟大和観測点 ( 新潟県南魚沼郡大和町 ) では北西方向に約 10cm, 北西側の柏崎 1 観測点 ( 同県柏崎市 ) では南東方向に約 6cm 移動するなど新潟県を中心に変動が観測されている これらの観測結果は本震の発震機構と調和的である 4. 地震諸元 2004 年 10 月 23 日 17 時 56 分に新潟県中越地方において M6.8の地震が発生, その後も震度 6 強を複数回発生しており活発な余震活動が継続している 独立行政法人防災科学技術研究所では, 一連の地震のメカニズムは北西- 南東圧縮の逆断層型であり, この地域における過去の地震のメカニズムと調和的である 余震は, 北東から南西方向に伸びる約 30kmの範囲に分布している と発表している 震源地近くのK-NET 小千谷観測点では, 最大 1500ガル,130カインを超える地震動が観測されており, 今回の余震は信濃川に沿って北東 南西方向に伸びる低地帯東縁部の魚沼丘陵に分布している この余震分布の直上には平成 14 年新潟県地域防災計画書においても活断層こそ明記されていないが, 本地域に発達する褶曲群の一部は活褶曲である可能性が指摘されており, 実際には未発見の活断層が伏在している可能性がある 周辺に分布する長岡平野西縁活断層帯の断層群や十日町断層はほとんどが北西傾斜の逆断層であり, 今回の地震断層もそれらと密接に関連した断層のひとつと考えら 図 -4.1 本震の震央位置ならびに震度分布また,10 月 27 日の10 時 40 分に, マグニチュード6.1の余震が発生しているが, この余震のメカニズムは本震や他の余震と同様の北西 南東に圧縮軸をもつ逆断層型であり, 震源位置はこれまでの余震活動域からは5kmほど東に離れており, 異なる断層で発生した地震であると考えられている - 1 -

表 -4.1 新潟県中越地震被害状況 死者 負傷者 避難者 電気 ガス 新潟県の地震被害 36 人 2,374 人 84,063 人 (10 万 3178 人 =26 日 ) 4,580 戸 (27 万 8000 戸 =23 日 ) 31,200 戸 (5 万 6000 戸 =24 日 ) 水道 18,503 戸 (11 万 772 戸 =25 日 ) 図 -4.2 本震発生当日の地震震央分布図 10 月 31 日午後 5 時現在 新潟県など調べ カッコ内は最大時 地表面加速度分布ならびに強震記録 図 -4.4 に本震の地表面最大加速度分布を示しており, 大きな揺れが新潟県中越地方一帯で生じていたことが確認される また,K-NETにて観測された本震の強震記録波形を図 -4.5 に示す 同記録は, ほぼ震央に位置する小千谷にて観測されたもので, 本震波形は東西成分が非常に卓越した地震動であり, 鉛直動も820gal 発生しているのが確認される 同地点では, 計測震度が7となっており, 地震動による被害が集中していたことが窺われる 図 -4.3 10 月 27 日発生の余震 (M6.1) 震央分布図 新潟県などの調べでは, 表 -4.1 に示すように10 月 31 日時点で死者 36 人, 負傷者 2,374 人となっている なお, この付近で発生している過去の地震としては, 表 -4.2に示すように1961 年の長岡市付近の地震 (M5.2) および 1998 年の新潟県中越地方の地震 (M5.2) があるが, 今回の地震は, それらに比べ格段に規模の大きなものである 今回の地震を気象庁では 平成 16 年新潟県中越地震 と命名している 図 -4.4 本震の地表面最大加速度分布 - 2 -

新潟県の過去の地震活動 新潟県の過去の地震活動を図 -4.6に示す 同図には歴史地震 被害地震 ( 理科年表, 丸善 被害地震総覧, 東大出版 ) を青六角で示しており, 黄星は本震, 赤丸は Hi-net 暫定処理結果による震央, 黒丸は気象庁一元化処理による震央を示している また, 青太線は活断層を示している 今回の地震は, 周辺部には過去にM6クラスの地震が発生しているが, 活断層がみられず, 地震活動が活発でない地域で発生しているのが確認される 図 -4.5 本震で観測された加速度波形 ( 小千谷 ) 図 -4.6 新潟県での過去の地震活動 表 -4.2 新潟県で過去に顕著な被害を及ぼした地震の履歴 日付 時刻 緯度 経度 深さ M 死者 負傷 被害 備考 863.07.10 越中 越後 7.0 多数 - 山崩れ 887.08.02 越後 京都 6.5 あり - 津波 1502.01.28 越後 会津 6.9 あり - 家屋倒壊 1614.11.26 越後 相模 紀伊 7.7 多数 津波 1666.02.01 越後高田 6.4 1,500 - 家屋焼失 1751.05.20 越後 越中 6.6 2,000 - 家屋焼失 1828.12.18 越後三条 長岡 見附 6.9 1,400 - 家屋倒壊 1833.12.07 函館 佐渡出羽 7.4 42 - 津波 1847.05.08 信濃 越後 7.4 12,000 - 家屋焼失 1927.10.27 10:53 37.50 138.80 10 5.2 家屋倒壊 関原地震 1961.02.02 03:39 37.45 138.85 20 5.2 5 30 家屋倒壊 長岡地震 1964.06.16 13:01 38.35 139.18 40 7.5 14 316 家屋倒壊 新潟地震 1995.04.01 12:49 37.90 139.25 16 5.6 82 家屋倒壊 1998.02.21 09:55 37.25 138.80 19 5.2 1 家屋損壊 2001.01.04 13:18 36.95 138.75 11 5.3 2 家屋損壊 - 3 -

5. 各地の地震被害状況我々がまず感じたのは, 当該地点の地形 地質の影響による被害が多く発生していたことである この中越地区は, 全国一の地すべり地帯であり, これらの山地を縫うように渓流が発達している このような状況で, 地震動による地すべり, 土石流等の土砂災害が多く発生している また, 地盤の液状化現象などでの地盤のゆるみによる斜面崩壊, 家屋倒壊が, 多くの被害を発生させたものと想定される 以下に各市町村の地震被害状況を示す 1 見附市見附市内では, 道路被害 237 箇所, 崖崩れ12 箇所にのぼり, 家屋の全壊は39 棟, 半壊 172 棟となっている 2 長岡市長岡市内にも多くの地震被害が発生しており, 道路被害 642 箇所, 崖崩れ13 箇所にのぼり, 家屋の全壊は47 棟, 半壊 49 棟となっている 特に道路盛土の崩壊, 斜面崩壊が顕著であった また, 市内のへら鮒池の堰堤崩壊箇所もあり, 同へら鮒池周辺には建屋が林立しており池周辺斜面の崩壊により建屋の倒壊が危惧される 同地区については早急に詳細な調査が必要と考えられる 写真 -5.4 長岡市内のへら鮒池堰堤の崩壊 写真 -5.1 見附市役所基礎の液状化, 建屋基部のクラック 写真 -5.5 へら鮒池周辺斜面のすべりによる崩壊 写真 -5.2 見附市内建屋背面斜面のすべりによる崩壊 写真 -5.6 道 351 号宮路町付近の道路切盛境界にて発生した道路盛土のすべりによる崩壊 写真 -5.3 見附市内の道路拡幅盛土部分のすべり崩壊 - 4 -

写真 -5.7 国道 351 号宮路町付近のすべりによる崩壊 写真 -5.11 主要地方道 72 号道路斜面の表層すべり 写真 -5.8 国道 351 号宮路町付近のすべりによる崩壊 写真 -5.12 国道 404 号越路町付近の道路盛土の崩壊 写真 -5.9 国道 351 号宮路町付近の道路斜面表層すべり 写真 -5.13 主要地方道 11 号塚山橋橋台背面盛土の崩壊 写真 -5.10 来迎寺ともえが丘跨線橋背面盛土の沈下 写真 -5.14 国道 291 号桜町トンネル坑口斜面の表層すべり - 5 -

写真 -5.15 液状化によるマンホールの浮上り : 最大 1.2m (JR 上越新幹線の脱線停止箇所付近 ) 写真 -5.18 長岡市 JR 上越線越後滝谷駅付近の液状化による軌道の変状 ( 凹凸の高低差 50~80cm) 3 小千谷市小千谷市内にも多くの地震被害が発生しており, 道路被害は38 箇所にのぼり, 家屋の全壊は21 棟, 半壊 16 棟となっている 特に道路盛土の崩壊, トンネルの崩壊および斜面崩壊などが顕著であった 写真 -5.16 長岡市内新幹線橋脚のコンクリート圧壊 ( 上 下部工打継ぎ目上部のコンクリート圧壊が顕著 ) 写真 -5.19 国道 117 号上片貝山辺橋の橋梁基礎斜面のすべりによる橋台背面盛土 橋台基礎 橋脚の変状 写真 -5.17 長岡市内新幹線橋脚と基礎地盤部の隙間 ( 震動によって橋脚が左右 ( 横断 ( 東西 ) 方向 ) に揺さぶられ, 基礎地盤との間に隙間が発生 ) 写真 -5.20 荒谷トンネル坑口部のせん断クラック - 6 -

4 川口町川口町町内にも多くの地震被害が発生しており, 道路被害は20 箇所にのぼり, 家屋の全壊は106 棟, 半壊 170 棟と今回の地震で最も住家被害が多い地区となっている また, 道路盛土の崩壊, 鉄道の被害が顕著であった 写真 -5.21 国道 117 号川口の道路盛土のすべり崩壊 写真 -5.25 JR 新幹線和南津地区橋梁の橋脚座屈 写真 -5.22 国道 117 号川口の道路斜面の擁壁崩壊 写真 -5.26JR 新幹線和南津地区橋梁の橋脚座屈 写真 -5.23 国道 17 号津山町付近の道路盛土の崩壊 写真 -5.27 JR 飯山線川口地区橋台盛土の沈下 浮き 写真 -5.24 JR 上越線のすべりによる崩壊 - 7 -

写真 -5.28 川口地区橋台背面盛土の沈下 写真 -5.32 民家下部斜面の崩壊 5 魚沼市 ( 旧堀之内町 ) 魚沼市 ( 旧堀之内町 ) 市内にも多くの地震被害が発生しており, 道路被害 13 箇所, 崖崩れ9 箇所にのぼり, 家屋の全壊は70 棟, 半壊 8 棟となっている 特に道路盛土の崩壊, 高速道路 ( 関越自動車道 ) の被害が顕著であった 写真 -5.29 川口地区の地すべりによる道路 家屋変状 写真 -5.33 関越道 : 液状化 のり肩からのすべりと BOX 背面盛土の沈下に伴う応急復旧 ( 擦り付け ) 写真 -5.30 切盛り境からの沈下 路面変状 写真 -5.31 道路盛土の崩壊 欠損 写真 -5.34 関越道 : 小段に認められる盛土すべり - 8 -

写真 -5.35 関越道 : 橋台パラペットと上部工が接触 写真 -5.39 橋梁取付け部の沈下と応急擦り付け状況 6 十日町市十日町市市内にも多くの地震被害が発生しており, 道路被害は301 箇所にのぼり, 家屋の全壊は1 棟, 半壊 2 棟となっている 特に道路盛土の被害が顕著であった 写真 -5.36 関越道 : 橋脚部の変状 ( シュウのずれ ) 写真 -5.40 なだれ予防柵への岩盤トップリング崩壊 写真 -5.37 関越道 : 隣接駐車場内の噴砂現象 写真 -5.38 液状化による堤体沈下と応急対策 6. まとめ今回の平成 16 年新潟県中越地震は, マグニチュード 6.8 にもかかわらず, 内陸でかつ震源深さ20kmと浅い地震であったことから地表面加速度値が非常に大きくなり, 地震被害が多く発生したと想定される また, 同地区は日本一の地すべり地帯で, かつ軟弱地盤地帯も広範囲に存在しており, 斜面の地すべり, 道路盛土のすべり崩壊, 液状化による構造物への影響など非常に多岐に亘る被害が発生していた 今回の地震被害調査は余震が心配される中, 小千谷地区にて交通規制が行われているとの情報より新潟県中越地区へのアプローチを越後湯沢側, 磐越自動車道経由の2 系統から実施した 短期間ではあったが, 道路構造物に設計に携わる技術者として, 直下型地震による被害状況を目で見て, 頭で考え考察し, 更なる耐震技術の設計 施工に活かしたいと考える 最後に地震被害にて亡くなられた方々のご冥福を祈ると共に, まだ避難生活をされている方々が一日も早く通常の生活に戻られんことを願います - 9 -

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