第 2 要望の理由 1 パキシル錠の概要 抗うつ剤パキシル錠 ( 一般名 : 塩酸パロキセチン ) は SSRI( 選択的セロトニン再取 り込み阻害薬 ) の一種であり 日本では 2000 年 11 月から販売され 現在抗うつ薬とし て広く使用されている 2007 年における売上高は国内抗うつ剤市場

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2. 改訂内容および改訂理由 2.1. その他の注意 [ 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づく改訂 ] 改訂後 ( 下線部 : 改訂部分 ) 10. その他の注意 (1)~(3) 省略 (4) 主に 50 歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において 選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

スライド 1

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

改訂後 ⑴ 依存性連用により薬物依存を生じることがあるので 観察を十分に行い 用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること また 連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により 痙攣発作 せん妄 振戦 不眠 不安 幻覚 妄想等の離脱症状があらわれることがあるので 投与を中止する場合には 徐々に

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

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Microsoft Word - 奈良県GQP-GVPガイドライン doc

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

Microsoft Word - 日薬連宛抗インフル薬通知(写).doc

スライド 1

添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

会社名

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

から (3) までの具体的な予定については添付 2 の図のとおりですので申し添 えます

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

2 抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の議論と今後の予定 平成 21 年に取りまとめられた報告書以降の知見を改めて報告書にまとめ 以下の議論がなされた 平成 21 年以降の非臨床研究及び 10 年に及ぶ疫学研究の科学的な知見を総括し 以下の事実から タミフル服用のみに異常行動と明確な因果関係がある

(別添様式)

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )


医薬品の添付文書等を調べる場合 最後に 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 特定の文書 ( 添付文書以外の文書 ) の記載内容から調べる場合 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 最後に 調べたい医薬品の名称を入力 ( 名称の一部のみの入力でも検索可能

審査結果 平成 25 年 9 月 27 日 [ 販売名 ] アナフラニール錠 10 mg 同錠 25 mg [ 一般名 ] クロミプラミン塩酸塩 [ 申請者名 ] アルフレッサファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 5 月 17 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 4 月 26 日開

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

Microsoft Word - 案1 (写).docx

生殖発生毒性試験の実施時期について

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

4 耐性ウイルス添付文書によれば, タミフルを投与した患者の1.4%( 小児では4.5 %) に耐性ウイルス, つまりタミフルが効かないウイルスが出現しています ( 1) また, 後述のように, 乳幼児の場合は18~33% と報告されています ( 4) 2 タミフルの副作用はタミフルが承認されるまで

用法 用量 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制 mg mg mg mg kg 30kg 40kg 20kg 30kg 10kg 20kg 5kg 10kg 1900mg mg mg mg

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精神療法の治療機序

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改訂後 4. 副作用本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない (1) 重大な副作用 ( 頻度不明 ) 1)~6) < 略 : 現行どおり> 7) 横紋筋融解症 : 横紋筋融解症があらわれることがあるので 観察を十分に行い 筋肉痛 脱力感 CK(CPK) 上昇 血中及び尿中

Microsoft Word - 薬食安発1128第9号

過去の医薬品等の健康被害から学ぶもの

医薬品の基礎研究から承認審査 市販後までの主なプロセス 基礎研究 非臨床試験 動物試験等 品質の評価安全性の評価有効性の評価 候補物質の合成方法等を確立 最適な剤型の設計 一定の品質を確保するための規格及び試験方法などの確立 有効期間等の設定 ( 長期安定性試験など ) 医薬品候補物質のスクリーニン

改訂後 ( 下線 : 薬食安通知による追加記載 ) ( 下線 : 自主改訂による追加記載 ) 4. 副作用 1) 重大な副作用 ( 頻度不明 ) (1)~(6) 現行のとおり (7) 横紋筋融解症横紋筋融解症があらわれることがあるので 観察を十分に行い 筋肉痛 脱力感 CK (CPK) 上昇 血中及

この薬を使う前に 確認すべきことは? 〇この薬を飲むと 前兆のない突発的睡眠 ( 前兆もなく突然眠る ) や傾眠 ( 眠気でぼんやりする ) があらわれることがあり この薬を飲んで自動車を運転し 突発的睡眠により自動車事故を起こした例が報告されています 突発的睡眠や傾眠などについて十分に理解できるま

(別添様式1)

Microsoft Word - 案9公益社団法人日本医師会長 .docx

添付 書の記載 それってどういう意味? ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構佐藤淳

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

日医発第437(法安23)

DRAFT#9 2011

301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

Microsoft Word - LIA RMP_概要ver2.docx

た 18 歳以上の AD/HD 患者を対象に 日本人を含むアジア人によるプラセボ対照二重盲検比較試験及びその長期継続投与試験が現在実施されており 本剤の製造販売者によれば これらの試験成績に基づき 本剤の成人期 AD/HD 患者への追加適応に関する承認事項一部変更承認申請が行われる予定とされている

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改訂後 (2) その他の副作用副作用の頻度頻度不明倦怠 ( 感 ) ほてり 無力症 疲労 全身症状発熱 悪寒傾眠 めまい 頭痛 不眠 振戦 神経過敏 知覚減退 躁病反応 感情鈍麻 錐体外路障害 あくび アカシジ精神神経系ア注 2) 味覚異常 異常な夢( 悪夢を含む ) 激越 健忘 失神 緊張亢進 離

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

安障害等の不安障害領域への適応拡大が行われている また 安全性が高く使いやすい 薬としてのイメージが医療現場で形成され 精神科専門医以外の一般臨床医による処方 が急拡大している (2) 販売状況 1) 海外 1988 年にイーライ リリー社が米国で承認を受けたプロザック ( 一般名 : フルオキセチ

審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

患者向医薬品ガイド フィコンパ錠 2mg フィコンパ錠 4mg 2016 年 5 月作成 この薬は? 販売名 フィコンパ錠 2mg フィコンパ錠 4mg Fycompa Tablets 2mg Fycompa Tablets 4mg 一般名 ペランパネル水和物 Perampanel Hydrate

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

資料3  農薬の気中濃度評価値の設定について(案)

鑑-H リンゼス錠他 留意事項通知の一部改正等について

クラリチンドライシロップ 1% クラリチン錠 10mg クラリチンレディタブ錠 10mg 第 1 部申請書等行政情報及び添付文書に関する情報 (7) 同種同効品一覧 シェリング プラウ株式会社

相互作用DB

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第 2 要望の理由 1 本剤の概要と重大な有害事象の存在 (1) チャンピックスの概要ファイザー社 ( 日本法人 ) の禁煙補助剤 チャンピックス ( 一般名 : バレニクリン酒石酸塩 ) は ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助 の効能 効果で 2008 年 1 月に販売承認 4 月に薬価収載

この薬は 体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり量を減らしたりすると病気が悪化することがあります 指示どおりに飲み続けることが重要です この薬を使う前に 確認すべきことは? 〇この薬を飲むと 前兆のない突発的睡眠 ( 前兆もなく突然眠る ) や傾眠 ( 眠気でぼんやりする ) があらわれるこ

( 別添 ) 御意見 該当箇所 一般用医薬品のリスク区分 ( 案 ) のうち イブプロフェン ( 高用量 )(No.4) について 意見内容 <イブプロフェン ( 高用量 )> 本剤は 低用量製剤 ( 最大 400mg/ 日 ) と比べても製造販売後調査では重篤な副作用の報告等はない 一方で 今まで

この薬を使う前に 確認すべきことは? この薬を飲むと 前兆のない突発的睡眠 ( 前兆もなく突然眠る ) や傾眠 ( 眠気でぼんやりする ) があらわれることがあり この薬を飲んで自動車を運転し 突発的睡眠により自動車事故を起こした例が報告されています 突発的睡眠や傾眠などについて十分に理解できるまで

アビガン錠 200mg に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 アビガン錠 200mg 有効成分 ファビピラビル 製造販売業者 富士フイルム富山化学株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全性検討事項 重要な特定されたリスク 頁 重要な潜在

医薬品たるコンビネーション製品の不具合報告等に関する Q&A [ 用いた略語 ] 法 : 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律 ( 昭和 35 年法律第 145 号 ) 施行規則 : 医薬品 医療機器等の品質 有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 ( 昭和 36 年

Microsoft Word - 資料1【決定(差し替え)】調査結果報告書 調査会後修正

この薬は 体調がよくなったと自己判断して使用を中止したり 量を加減したりすると病気が悪化することがあります 指示どおりに飲み続けることが重要です この薬を使う前に 確認すべきことは? 次の人は この薬を使用することはできません 過去にインチュニブ錠に含まれる成分で過敏な反応を経験したことがある人 妊

資料 2-4 イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策について 平成 23 年 6 月 23 日平成 23 年度薬事 食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 ( 第 2 回 ) 1. イソプロピルアンチピリン製剤の安全性に係る調査結果報告書 ( 別紙 ) 1 ページ

本日の内容 1. 未承認対照薬等の取り扱い別添の 4.(3) ウ.( ア ) 2. 対象疾患の悪化等を評価項目にする試験別添の 7.(3) イ.( ア ) 3. 承認取得者以外の治験国内管理人が治験 依頼者となる場合別添の7.(3) オ. 4. 医師主導治験との情報共有別添の7.(3) カ. 5.

平 成 17 年 3 月

レクタブル 2 mg 注腸フォーム 14 回に係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 レクタブル 2 mg 注腸フ 有効成分 ブデソニド ォーム14 回 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 29 年 10 月 1.1. 安全性検討事項 重要な特

4. 副作用 (2) その他の副作用 血液 改訂後改訂前 4. 副作用 (2) その他の副作用頻度不明頻度不明 白血球増多 ヘモグロビン減少 ヘマトクリット値増加又は減少 異常出血 ( 皮下溢血 紫斑 胃腸出血等 ) 赤血球減少 血液 白血球増多又は減少 ヘモグロビン減少 ヘマトクリット値増加又は減

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

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日本医薬品安全性学会 COI 開示 筆頭発表者 : 加藤祐太 演題発表に関連し 開示すべき COI 関連の企業などはありません

会長 日本製薬団体連合会会長 日本一般用医薬品連合会会長 米国研究製薬 工業協会会長 欧州製薬団体連合会会長及び一般社団法人日本医薬品卸業連合 会会長あてに発出することとしているので申し添えます

別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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改訂内容 ( 部追加 改訂 部削除 ) ビ シフロール 錠, ミラペックス LA 錠 共通 改 訂 後 改 訂 前 2. 重要な基本的注意 2. 重要な基本的注意 (5) レボドパ又はドパミン受容体作動薬の投与により 病的賭博 ( 個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず 持続的に

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

料 情報の提供に関する記録 を作成する方法 ( 作成する時期 記録の媒体 作成する研究者等の氏名 別に作成する書類による代用の有無等 ) 及び保管する方法 ( 場所 第 12 の1⑴の解説 5に規定する提供元の機関における義務 8 個人情報等の取扱い ( 匿名化する場合にはその方法等を含む ) 9

レキサルティに係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 ( 別紙様式 ) レキサルティ錠 1mg 販売名有効成分ブレクスピプラゾールレキサルティ錠 2mg 製造販売業者大塚製薬株式会社薬効分類 安全性検討事項 提出年月 重要な特定されたリスク 平成 30 年 5 月 錐

医療用医薬品 添付文書 の記載要領 ( 案 )( 局長通知 ) 別添 1 1 医療用医薬品添付文書の記載要領について ( 平成九年四月二五日付け薬発第六〇六号厚生省薬務局長通知 ) 2 医療用医薬品の使用上の注意記載要領について ( 平成九年四月二五日薬発第六〇七号厚生省薬務局長通知 ) 1 旧 添

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

Microsoft Word - 2-① 補償ガイドライン平成27年版(本文)Ver3.1.1.do

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医師主導治験取扱要覧

Transcription:

厚生労働大臣 長妻昭殿 2009 年 10 月 21 日 グラクソ スミスクライン株式会社代表取締役社長 マーク デュノワイエ 殿 薬害オンブズパースン会議代表鈴木利廣 160-0022 東京都新宿区新宿 1-14-4 AM ビル 4 階電話 03(3350)0607 FAX 03(5363)7080 E-mail: yakugai@t3.rim.or.jp URL: //www.yakugai.gr.jp 抗うつ剤パキシル錠の妊婦への使用に関する要望書 第 1 要望の趣旨 1 添付文書の改訂 患者向説明文書等による十分な注意喚起 抗うつ剤パキシルの添付文書の 警告 欄を 少なくとも下記の項目を含むよう改訂するとともに 新生児の先天異常に関する患者向説明文書を作成して医療機関で患者に交付するなどし 妊娠中の同剤の服用による出生児の心奇形発生について 十分な注意喚起を行うことを要望する (1) 妊娠中に本剤を投与された女性が出産した新生児は 先天異常 特に心血管系の異常 ( 主に心室中隔欠損及び心房中隔欠損 ) のリスク 新生児薬物離脱症候群のリスク 遷延性肺高血圧症のリスクが高まること (2) 本剤を投与中に患者が妊娠した場合には 投与継続が治療上妥当であると明らかに判断される場合以外は 投与を中止するか代替治療を実施すること (3) 妊娠可能な患者または妊婦には 原則として投与すべきではなく 代替治療を用い得ない場合に限り投与を開始すべきこと (4) また 本剤を使用する場合には 本剤の依存性と新生児に対する先天異常のリスクについて十分な説明を行い 同意を得ること 2 実態把握のための研究班設置 抗うつ剤パキシルの妊婦に対する使用実態および妊婦に対する本剤投与例における出 生児への心奇形発生等の実態を把握するための研究班設置を要望する - 1 -

第 2 要望の理由 1 パキシル錠の概要 抗うつ剤パキシル錠 ( 一般名 : 塩酸パロキセチン ) は SSRI( 選択的セロトニン再取 り込み阻害薬 ) の一種であり 日本では 2000 年 11 月から販売され 現在抗うつ薬とし て広く使用されている 2007 年における売上高は国内抗うつ剤市場の中でも最高額 (500 億円 ) である 1 国内製剤には 10mg 錠と 20mg 錠があり 効能 効果は うつ病 うつ状態 パニック障害 強迫性障害 である 2 2 催奇形性等の客観的根拠 パキシル錠 ( 以下 パキシル という ) については デーヴィド ヒーリー他の調査報告書 浜六郎論文 ( 別添 ) 及び 以下に述べるとおり 妊婦が服用した場合の胎児への 催奇形性 すなわち胎児に先天異常をおこす危険性 及び新生児が遷延性肺高血圧症を発症する危険性があることが明らかとなっている (1) 疫学調査の結果等 1)FDA は 2つの非公表の疫学調査を分析し 2005 年 12 月 以下のとおり パキシルの催奇形性に関する指摘を行った 3 1 スウェーデンの全国登録データを用いた研究では 妊娠初期にパキシルを服用した女性は 登録人口全体と比較して約 2 倍の割合で 心奇形を持つ児を出産していた ( 心奇形のリスクは 登録新生児全体では 1% であるのに対し パキシル服用群では約 2%) 2 米国保険請求データベースを用いた別の研究では 妊娠第 1 三半期 ( 第 14 週まで ) にパキシルを服用した女性の児は 他の抗うつ剤を服用した女性の児と比較して心奇形について約 1.5 倍及び先天奇形一般について約 1.8 倍のリスクを有していた 心奇形のリスクは パキシル服用群では 1.5% であるのに対し 他の抗うつ剤では 1% であった 3 心奇形の大半は心房中隔欠損ないし心室中隔欠損であった 2) パキシルの製造販売企業であるグラクソ スミスクライン社の臨床試験登録システムには 妊娠第 1 三半期にパキシルを使用した場合の先天奇形リスクに関する疫学研究データのメタアナリシスが公開されている その結果によると 12 のコホート研究 ( うち 2 つは上記の1と2) 3 つのケース コントロール研究 計 15 研究を統合した場合の先天奇形発生のリスクは パキシル使用によって 1.3 倍 心奇形では 1.5 倍に増加することが示されている 4 3) 持続性の新生児肺高血圧症の児の母親 377 人と対照群 836 人の母親の薬剤服用歴な - 2 -

どを調査した症例対象群研究では 妊娠 20 週以降に本剤を含む選択的セロトニン再 取り込み阻害剤を投与された女性が出産した新生児において新生児遷延性肺高血 圧症のリスクが増加することが示されている 5 (2) 国内の審査報告書における指摘 日本におけるパキシルの審査報告書 6 に添付された資料 7 においても パキシルの胎児への影響を示す結果が記載されている すなわち 生殖発生毒性試験のうち ラットにおける受胎能及び一般生殖能試験において パキシルを使用した場合の親動物の死亡率の増加 交尾不能率 妊娠不能率 不受胎率の増加 着床後死亡率の増加 胎児の低体重 新生児の4 日以内の死亡が用量依存的にみられ また 追加実験において 雄へのパキシルの使用による不妊増加傾向や雄生殖機能の器質的傷害 障害がみられた 浜論文 ( 別添 ) が示すように 承認審査段階において パキシルには生殖発生毒性が確認されていた しかしながら 審査報告書においては 本薬の生殖発生毒性プロファイル ( ニ項参照 ) を踏まえ 使用上の注意には 治療上の有益性が危険性を上回ると判断されたときのみ投与すること ( 妊娠中の投与に関する安全性は確立していない ) と記載された と記されているのみで 上記の結果に基づき パキシルの無毒性量について十分な検討がなされたとはいえないものであった (3) 国内の副作用症例報告 日本国内では (1) に記載したような疫学調査はなされていないが 厚生労働省に対し 2000 年度から 2008 年度までに パキシルの副作用症例として心房中隔欠損症が 4 例 心室中隔欠損症 3 例が報告されている 8 パキシル錠の添付文書においては 海外の疫学調査の結果 新生児への先天異常 とりわけ心血管系異常のリスクが増加した旨記載されているが 上記の副作用報告にみられるように 実際には国内でも新生児への心血管系異常が発生していることが明らかになっている ( ちなみに 他の SSRI であるフルボキサミン ( 販売名 : ルボックス デプロメール ) や SNRI であるミルナシブラン ( 販売名トレドミン ) 等においては 同様の副作用症例報告はない ) 3 離脱症状の客観的根拠 また パキシル錠を含む SSRI については 依存性があり 中止時の離脱症状が指摘 されており このことは 妊婦だけでなく 妊娠可能な患者に対するパキシルの使用のあ り方を検討するに当たり重要な点である (1) 審査報告書における記載 - 3 -

離脱症状について まず 承認審査の結果を記載した審査報告書 6 では 審査センターにおける審査の概要 2) 安全性について において 5 投与中止の影響 : 投与中止の影響に関するデータは本邦では得られていないが 本薬を含む SSRI の急激な中止が めまい 頭痛 不眠 倦怠感 不安増強 激越 嘔気及び感覚障害等の退薬症候群を引き起こすことが稀にあることが知られている ( 海外文献 ) これらを受け 使用上の注意には投与中止時の症状及び処置が記載された と記載されている また 審査報告 (2) には ト. 臨床試験の試験成績に関する資料 において (4) 本薬の依存性及び離脱症状に関する情報の収集を求めたところ 前臨床及び臨床における安全性データベースの解析から 主たる症状はめまいで 投与期間に関わらず離脱症状の種類に差はなく 程度は軽度から中等度であったこと また徐々に減量することで防止できること等が回答された と記載されている 審査報告書には 上記以外に 特に離脱症状が問題となる点の指摘はなされていない (2) 国内添付文書の記載 一方 パキシルの国内添付文書の 重要な基本的注意 の項 8には 投与中止 ( 特に突然の中止 ) 又は減量により めまい 知覚障害 ( 錯感覚 電気ショック様感覚 耳鳴等 ) 睡眠障害 ( 悪夢を含む ) 不安 焦燥 興奮 嘔気 振戦 錯乱 発汗 頭痛 下痢等があらわれることがある 症状の多くは投与中止後数日以内にあらわれ 軽症から中等症であり 2 週間程で軽快するが 患者によっては重症であったり また 回復までに 2 3 ヶ月以上かかる場合もある と記載されている 添付文書では これまでに得られた情報からはこれらの症状は薬物依存によるものではないと考えられている と記載されているが これらの症状は依存性のある薬物を中止した場合に生じる離脱症状の典型的な症状に他ならない また 対応としては 本剤の減量又は投与中止に際しては 以下の点に注意すること (1) 突然の投与中止を避けること 投与を中止する際は 患者の状態を見ながら数週間又は数ヶ月かけて徐々に減量すること (2) 減量又は投与中止後に耐えられない症状が発現した場合には 減量又は中止前の用量にて投与を再開し より緩やかに減量することを検討すること (3) 患者の判断で本剤の服用を中止することのないよう十分な服薬指導をすること また 飲み忘れにより上記のめまい 知覚障害等の症状が発現することがあるため 患者に必ず指示されたとおりに服用するよう指導すること と記されている この記載は 他の SSRI( 塩酸セルトラリン マレイン酸フルボキサミン ) の添付文書における離脱症状に関する記載 ( マレイン酸フルボキサミン添付文書の場合 : 投与量の急激な減少ないし投与の中止により 頭痛 嘔気 めまい 不安感 不眠 集中力低下等があらわれることが報告されているので 投与を中止する場合には徐々に減量するなど慎重に行うこと ) に比較して パキシルでは特に離脱症状が問題となることを示唆している (3) 医学論文での報告 - 4 -

本橋による SSRI に関するレビュー論文 9 では SSRI の副作用の項に SSRI は安全性の高い薬物であるが 副作用がないわけではない ( 中略 )paroxetine に多いものとして鎮静 振戦 発汗 性機能障害と離脱症状がある と指摘されている また 審査報告書 6 やデーヴィド ヒーリーらによる調査報告書 ( 別添 ) でも言及されているように パキシルの離脱症状を報告する複数の海外文献が公表されている フランスの自発報告データを用いた研究では SSRI には離脱症状の報告が多く 特にベンラファキシン (venlafaxine 国内未承認) とパロキセチン (paroxetine パキシル) で高いリスクが認められたとされている 10 さらに デーヴィド ヒーリーらによる調査報告書 ( 別添 ) 浜論文( 別添 ) においては 妊婦のパキシル服用により 新生児薬物離脱症候群が発生する可能性があることも指摘されている (4) 国内の副作用報告 実際 2000 年度から 2008 年度の厚生労働省に対する新生児薬物離脱症候群の副作用症 例報告は 21 例存在する 8 4 新生児の先天異常を防ぐために必要な対応 (1) 妊婦への使用の原則禁止 上記 2で述べたとおり 妊婦がパキシルを服用した場合 新生児の先天異常 特に心血管系の異常 ( 主に心室中隔欠損及び心房中隔欠損 ) のリスクが高まることは明らかであるから 妊婦に対する使用は原則として禁止すべきであり その使用は代替治療を用い得ない場合に限られるべきである この点 FDA は 2005 年 12 月 上記 2(1) 記載の疫学調査を分析した結果 パロキセチンを妊娠初期に服用した場合 先天性奇形とりわけ心奇形のリスクが増加すると指摘し パキシルの妊婦への使用について 医薬品の胎児に対する危険度を示す分類において カテゴリー C から D に変更した 11 ( カテゴリー D は 市販後の調査あるいは人における研究によって胎児へのリスクを示す明らかなエビデンスがあるが 治療上の利益によっては妊婦への使用が正当化されることがありうる場合を指す これに対し カテゴリー C は 動物実験では胎児への有害作用が示されているが 適切で対照のある妊婦への研究が存在しない場合で 治療上の利益によっては妊婦への使用が正当化されることがありうるものを言う ) また 添付文書の警告欄への記載を求めた (2) 妊娠可能な患者への使用制限 このように パキシルの催奇形性リスクは高いものであるが 他方で 女性が妊娠に 気付くまでには時間がかかり 妊娠前からパキシルを服用している場合には 妊娠を知 - 5 -

ったときには 既に催奇形性のリスクの高い妊娠初期をある程度経過していることになる しかも 胎児への影響を可能な限り小さくするため使用を中止しようとしても 上記 3で述べたとおり パキシルの離脱症状を考慮すると直ちに中止することができないという困難な状況におかれる したがって 新生児の先天異常を回避するには 単に妊婦への使用を制限するだけでは足りず 妊娠可能な患者に対する投与も同様に制限することが必要となる (3) 患者への説明と同意 前述のとおり パキシルの妊婦及び妊娠可能な患者への使用は原則として禁止すべきであり その使用は代替治療を用い得ない場合に限るべきであるが やむを得ずパキシルを用いる場合であっても パキシルの依存性と新生児に対する先天異常のリスクや新生児薬物離脱症候群 新生児遷延性肺高血圧症に関する正確な情報を提供し 使用に際しては これらについての患者の同意を得るべきである ( 東京高裁平成 17 年 1 月 27 日判決 12 も 子をもうける際に子に生じうる疾病についての両親に対するインフォームドコンセントの重要性を指摘している ) (4) 上記 (1) ないし (3) の対応を実効的なものとするため 以下の措置が必要であ る 5 添付文書改訂の必要性 (1) 米国添付文書の記載等 4(1) で述べたとおり FDA からの指摘を受け パキシルの米国版添付文書の記載は 現在では以下のとおり変更されている すなわち 警告 欄に 1 妊娠第 1 三半期にパロキセチンを服用した女性から生まれた新生児は 心血管系の異常 主に心室中隔欠損及び心房中隔欠損のリスクが高まること 2パロキセチンを投与中に患者が妊娠した場合には 投与継続が治療上妥当と判断される場合以外は 投与を中止するか代替治療を検討すべきこと 3 妊娠を希望する場合または妊娠第 1 三半期の場合は 代替治療を検討した後に限り投与を開始すべきこと等が記載されており 妊婦への使用はカテゴリー Dに分類されている 13 (2) 国内添付文書の記載 他方で 日本では 重要な基本的注意 欄に 本剤を投与された婦人が出産した新生児では先天異常のリスクが増加するとの報告があるので 妊婦または妊娠している可能性のある婦人には 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ本剤の投与を開始すること ( 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 欄参照) と記載し 妊 - 6 -

婦 産婦 授乳婦への投与 欄では [ ] 内に 海外の疫学調査において 妊娠第 1 三半期に本剤を投与された婦人が出産した新生児では先天異常 特に心血管系異常 ( 心室又は心房中隔欠損等 ) のリスクが増加した 旨とその調査内容が紹介されているが 警告 欄には何ら記載がない また 新生児薬物離脱症候群及び新生児遷延性肺高血圧症については 添付文書の後半 4 頁の 6. 妊婦 産婦 授乳婦等への投与 妊婦等 の欄に 妊娠末期に本剤を投与された婦人が出産した新生児において 呼吸抑制 無呼吸 チアノーゼ 多呼吸 てんかん様発作 振戦 筋緊張低下又は亢進 反射亢進 ぴくつき 易刺激性 持続的な泣き 嗜眠 傾眠 発熱 低体温 哺乳障害 嘔吐 低血糖等の症状があらわれたとの報告があり これらの多くは出産直後又は出産後 24 時間までに発現していた なお これらの症状は 新生児仮死あるいは薬物離脱症状として報告された場合もある 海外の疫学調査において 妊娠 20 週以降に本剤を含む選択的セロトニン再取り込み阻害剤を投与された婦人が出産した新生児において新生児遷延性肺高血圧症のリスクが増加したとの報告がある1) と記載があるのみで 警告 欄はもとより 重要な基本的注意 事項欄にさえ記載がない (3) 記載内容の改訂 4(1) ないし (3) で述べたとおり 新生児の先天異常 新生児離脱症候群 新生児遷延性肺高血圧症を防ぐためには 1 新生児への先天異常等の重大性に鑑み パキシルの妊婦に対する使用は原則として禁止すべきであり 代替治療を行い得ない場合に限り使用すべきであること 2パキシルの催奇形性のみならず 依存性と中止した場合の離脱症状を考慮すれば 妊婦や妊娠している可能性のある婦人に限らず 妊娠可能な患者への使用を制限すべきであること 3やむを得ず使用する場合であっても 十分なインフォームドコンセントがなされることが必要であり これを 明確に添付文書に記載すべきである (4) 記載欄の変更 14 ソリブジン事件を契機として 医薬品添付文書の見直し等に関する研究班 が設置され その検討結果 15 を踏まえて改訂された添付文書の記載要領 ( 平成 9 年 4 月 医療用医薬品の使用上の注意記載要領について 薬発第 607 号通知 16 ) においては 致死的又は極めて重篤かつ非可逆的な副作用が発現する場合 又は副作用が発現する結果極めて重大な事故につながる可能性があって 特に注意を喚起する必要がある場合 には 添付文書冒頭の 警告 欄に 赤字で目立つように記載して注意喚起をすることが求められている 催奇形性等の重大性 とりわけ 本剤による心奇形の中には 新生児期に心臓手術を要する例も見られることに照らせば パキシルの催奇形性等の危険性とこれを回避するための措置が 上記記載要領の警告欄に記載すべき場合に該当することは明らかである (5) 小括 - 7 -

よって 1 妊娠中に本剤を投与された女性が出産した新生児は 先天異常 特に心臓血管の奇形 ( 主に心室中隔欠損及び心房中隔欠損 ) のリスク 新生児薬物離脱症候群のリスク 遷延性肺高血圧症のリスクが高まること 2 本剤を投与中に患者が妊娠した場合には 投与継続が明らかに治療上妥当と判断される場合以外は 投与を中止するか代替治療を実施すること 3 妊娠可能な患者または妊婦には 原則として本剤を投与せず 代替治療を検討した後に限り投与を開始すべきこと 4 やむをえず 本剤を使用する場合には 本剤の依存性と新生児の先天異常のリスクについて十分な説明を行い同意を得ることを添付文書の警告欄に記載するべきである 6 患者への注意喚起 現在 重大な副作用の記載がある医療用医薬品については 患者向医薬品ガイドの作成が推奨されており ( 薬食発第 0630001 号 患者向医薬品ガイド の作成要領について 薬食安発第 0228001 号 薬食監麻発第 0228002 号 患者向医薬品ガイドの運用について ) パキシルについても 衝動性亢進に関しては 患者向医薬品ガイドが作成されている しかしながら パキシルによる新生児の先天異常等については 同ガイドには何ら記載されていない 少なくとも 患者向医薬品ガイドを作成すべきである また 現在の患者向医薬品ガイドは 真に患者の疑問に応えるような分かりやすい記載内容となっていない ( パキシルによる新生児の先天異常についてもFDAやEMEA と比較するとその違いは明白である ) また 情報提供手段もインターネットに限られており限界がある ついては 妊婦および妊娠可能な患者に向けた分かり安いQ&A 形式の情報提供や 薬局での患者向の説明文書の交付など 内容と方法を工夫して 患者への注意喚起を充分に行うべきである 7 実態調査の必要性 前記のとおりパキシルについては 海外における疫学調査の結果 妊娠初期の投与が胎児に及ぼす危険性が明らかとなっており 厚生労働省に対し パキシルによる新生児の先天異常 とりわけ心房中隔欠損及び心室中隔欠損が報告されている しかし 添付文書による危険性の警告が不十分で 危険性が周知徹底していないために パキシルによって生じた新生児の先天異常等との関連性が見過ごされ 報告されていない可能性や 妊婦や妊娠可能な女性に安易に使用されている可能性もある したがって 適切な安全対策を実施するためにも 妊婦に対するパキシルの使用実態調査及び疫学調査をすみやかに行うべきであり そのための研究班設置は不可欠である - 8 -

8 まとめ 以上により 要望の趣旨記載のとおりの添付文書の改訂 患者向説明文書等による注意 喚起と実態調査を求める ( 添付書類 ) David Healy, Derelie Mangin; Safety of Antidepressants in Pregnancy With Particular Reference to Paroxetine (Paxil) ( July 21, 2009) 浜六郎 ; パロキセチン ( パキシル ) の生殖毒性に関する調査研究 胎児 新生児への毒 性, とくに新生児離脱症候群および新生児持続性肺高血圧症について,NPO 法人医薬ビジ ランスセンター ( 薬のチェック ) インターネット速報 No135 (209.10.21 ) および 正し い治療と薬の情報 誌 (209 年 10 月号掲載予定 ) ( 参考文献等 ) 1 2 3 4 薬事ハンドブック 2009 パキシル錠 10mg パキシル錠 20mg 添付文書 2009 年 5 月改訂 ( 第 16 版 ) http://www.fda.gov/cder/drug/advisory/paroxetine200512.htm GSK Clinical Study Register Study No. WEUSRTP2280; Paroxetine Use in First Trimester of Pregnancy and the Prevalence of Congenital, Specifically Cardiac, Malformations: Systematic Review and Meta-Analysis of Epidemiological Data. http://www.gsk-clinicalstudyregister.com/files/pdf/24089.pdf (accessed 22 July 2009). 5 Chambers CD, Hernandez-Diaz S, Van Marter LJ, Werler MM, Louik C, Jones KL, Mitchell AA. Selective serotonin-reuptake inhibitors and risk of persistent pulmonary hypertension of the newborn. N Engl J Med. 2006 Feb 9;354(6):579-87. 6 国立医薬品食品衛生研究所長 審査報告書 ( 衛研発第 2706 号 )( 平成 12 年 7 月 19 日 ) 7 スミスクライン ビーチャム製薬株式会社 塩酸パロキセチン水和物及びパキシル錠 10mg, パキシル錠 20mg に関する資料 8 http://www.info.pmda.go.jp/fukusayou/menu_fukusayou_attention.html 9 本橋伸高 治療抗うつ薬の種類 薬理特性 臨床効果 選択的セロトニン再取り込み 阻害薬 ( 日本臨床 59 巻 8 号 1519 頁 )(2001( 平成 13) 年 8 月 ) 10 Trenque T, Piednoir D, Frances C, Millart H, Germain ML. Reports of withdrawal syndrome with the use of SSRIs: a case/non-case study in the French Pharmacovigilance database. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2002; 11(4): 281-3. - 9 -

11 http://www.fda.gov/newsevents/newsroom/pressannouncements/2005/ucm108527.htm 12 東京高等裁判所平成 17 年 1 月 21 日判決 ( 判例時報 1953 号 132 頁 ) 13 PAXIL PRESCRIBING INFORMATION ( 2009, GlaxoSmithKline.) 14 厚生省薬務局 ソリブジンによる副作用に関する調査結果 (1994( 平成 6) 年 9 月 ) 15 平成 7 年度厚生科学研究 医薬品添付文書の見直し等に関する研究 報告書 (1996( 平 成 8) 年 3 月 22 日 ) 16 薬発第 607 号 医療用医薬品の使用上の注意記載要領について (1997( 平成 9) 年 4 月 25 日 ) - 10 -