4 社会とあなたを支える - 税金と社会保険制度 労働安全衛生 - 社会では お互いに支えあって さまざまな制度や仕組みが成り立っています その 支えあい として 税金を納めること と 社会保険へ加入すること があります 税金 1 所得税国に納める税金で個人の所得に対してかかります 労働者の所得税は 毎月の賃金や賞与から引かれます これを源泉徴収といいます その年の最後の給与 ( または賞与 ) の支給時に精算されます これを年末調整といいます 2 住民税 都道府県や市町村に納める税金です 前年の収入に対してかかります 税金と社会保険料は 毎月の給料から引かれ 事業主を通じて納められます 所属氏名 所属社員番号氏名 様 給与支給明細書 年 月分 勤怠他 支 出勤休出特休有休欠勤有給残出勤時間早退時間時間時間時間時間時間基本給勤務地手当役職手当財形手当家族手当住宅手当営業手当通勤手当時間外勤務手当 給 控 健康保険厚生年金雇用保険 所得税 住民税社宅賃貸料前払金仮払旅費 除 貸付金生命保険財形貯蓄 総支給金額控除合計額差引支給額銀行 1 振込額銀行 2 振込額現金支給額翌月繰越額前月繰越額 給与支給明細書の例 形式や項目は会社によって違います 労働基準法には給与明細書を必ず渡さなければいけないという決まりはありませんが 所得税法において 給与を支払う者は給与の支払いを受ける者に支給明細書を交付しな ければならないと定められています 所得税法第 231 条 24
社会保険制度 ふたん労働者 事業主がそれぞれに保険料を負担し 労働者のケガ 病気 失業 老後の生 活などに備え 助け合う制度です 就職した人は 社会保険 ( 健康保険 年金保険 ) 労働保険 ( 雇用保険 労災保険 ) に 加入する必要があります ( パート アルバイト 派遣などで働く人も一定の条件を満た す場合は加入する必要があります ) P51 P54 参照 また すべての法人事業所 ( 株式会社など ) と常時 5 人以上の従業員を使用する個人 事業所 ( サービス業の一部 農業 漁業等を除く ) は 社会保険に加入しなければなり ません 1 健康保険ふよう被保険者やその扶養家族が 仕事以外でのケガや病気をしたり あるいは出産をした 場合などに その医療費または手当金等を給付する制度です 保険料は 給料の額に応 じて算定された額を 労働者 ( 被保険者 ) と事業主で半額ずつ負担します 会社等に勤める人以外 ( 自営業者など ) は 国民健康保険に加入することになります 2 年金保険加入者の老後の生活のためや ケガや病気で障がいが残ったとき あるいは亡くなってしまったときに請求することにより 年金や一時金が本人またはその家族に支給される制度です 年金には 日本に住所を有する 20 歳以上 60 歳未満のすべての人が加入する国民年金 ( 基礎年金 ) と 会社に勤務する原則 70 歳未満の人が加入する厚生年金保険があります 国民年金からは すべての国民に共通する基礎年金が支給され 厚生年金保険からは 基礎年金に上乗せする報酬比例の年金が支給される 2 階建ての年金給付の仕組みになっています 厚生年金保険の保険料負担については 健康保険と同様に 被保険者と事業主で半額ずつ負担します 25
< 公的年金の種類 > 厚生年金基金 国民年金基金 厚生年金保険 国民年金 ( 基礎年金 ) 自営業者とその配偶者 会社員 公務員等の 会社員 公務員等 20 歳以上の学生 無職の人など 被扶養配偶者 第 1 号被保険者第 3 号被保険者第 2 号被保険者 厚生年金保険に加入している人は 同時に国民年金 ( 基礎年金 ) にも加入しているこ とになり 別途手続きや追加の保険料は必要ありません 通常 厚生年金保険と健康保険は セットで加入します ここがポイント! - 若者にも無縁ではない公的年金 - 若い人にとって年金は 今は関係ない まだまだ先のことだ と思われがちですが 決してそうではありません 公的年金 ( 国民年金 厚生年金保険 ) には老後の生活を支えるだけでなく 障がいの状態になったときの生活や 自分が死亡した場合の遺族の生活を支える役目もあります また 自分が負担している保険料が親の世代の老後の生活を支えることにもつながっています 具体的には 国民生活の安定 維持 向上を目的とした国民年金制度及び会社員等 及びその遺族の生活の安定や福祉の向上を目的とした厚生年金制度には 老齢 ろうれいになっ たときのために老齢年金 障がいの状態になったときのために障害年金 死亡したときのために遺族年金が用意されています 次ページに続く 26
前ページから続く 公的年金の加入手続きや保険料の納付を怠った場合 年金を受ける資格を得られない恐れがあります ( 経済的な理由等で国民年金保険料を納めることが困難なときは 申請めんじょにより納付が免除される場合があります ) 20 歳になったときや会社を退職したとき等の国民年金第 1 号被保険者の加入手続きは自動的に行われるのではなく 本人が住所地の市区町村の窓口で行わなければなりません 会社員等になったときの厚生年金保険の加入手続きや 会社員等に扶養されている配偶者の国民年金第 3 号被保険者の加入手続きは事業主が行います 自分がどの公的年金に加入しているかを常に知っておくことが大切です 公的年金は世代と世代の支え合いによって成り立つ制度です 正しい理解と自覚を持って加入の義務を果たしましょう 3 雇用保険労働者が退職または解雇等で失業したとき 育児 介護休業等により賃金が低下したとき 自ら職業に関する教育訓練を受けたときなどに 必要な給付を行い 労働者の生活や雇用の安定を図る制度です 一部の例外を除いて 労働者を一人でも雇用した事業主は 雇用保険に加入しなければならず また パート 派遣社員などの呼び名にかかわらず 次の 2 つの要件を満たす労働者に適用されます 11 週間の所定労働時間が 20 時間以上である 231 日以上の雇用見込みがある 失業等給付 ( 基本手当 ) を受けるためには 就職しようとする意思といつでも就職できる能力があり 積極的に求職活動を行じゅきゅうしかくっているにもかかわらず職業に就くことができない状態 で 受給資格 (P47 参照 ) を満たしていることが必要です また 基本手当を受給できる期間 ( 受給期間 ) は りしょく原則として離職した日の翌日から 1 年間です 詳しくは 最寄りのハローワークへ P64 27
4 労災保険業務上のこと又は通勤が原因で ケガや病気等になることを労働災害といいます 労働災害にあったときには 労働者災害補償保険 ( 労災保険 ) の適用により 補償給付が受けられます 労働者災害補償保険法 労災保険は 原則として一人でも労働者を雇っている事業場にすべて適用されます また パート アルバイトも含むすべての労働者が対象となり 給付が受けられます なお 保険料は全額事業主負担ですが 保険給付の請求は原則として本人が行う必要があります 労働安全衛生 - 働く人の健康と安全な職場 - 1 事業者の責務事業者は 労働安全衛生法で定める労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく 快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場での労働者の安全と健康を確保するようにしなければなりません 労働安全衛生法第 3 条 2 事業者の安全配慮義務 事業者には 労働者が仕事上の原因で 事故にあったり 病気になったりしないよう にする安全配慮義務があります 労働契約法第 5 条 3 健康診断事業者は 労働者に対し 健康診断を実施する義務があります 労働者を採用したとき その後 1 年以内ごと ( 深夜業等の特定業務に従事するものについては 6 か月以内ごと ) に 1 回 医師による健康診断を実施しなければなりません ほうしゃせん ゆうきようざい また 特に有害な業務 ( 放射線業務 有機溶剤業務 鉛業務等 ) に就いている人に は 特殊健康診断 ( 初めて有害業務に就く時と その後 6 か月以内ごとに 1 回など ) を実施することになっています 労働安全衛生法第 66 条 なまり 28
ここがポイント! - 労働災害の認定を受けると 労災保険の給付が受けられます - 病気やケガになり 診療を受けたとき しんりょうひ 労災保険の指定病院にかかれば 診療費 ( 治療 入院 ) は原則として無料です 指定されていない病院にかかれば 立替分が後で支払われます 病気やケガを治すために仕事を休み 賃金がもらえないとき 休業 4 日目より 給付基礎日額 ( 平均賃金に相当する額 ) の約 8 割が支給されます 病気やケガは治ったが 体に障がいが残ったとき 障がいの程度に応じて 年金または一時金が支給されます 亡くなったとき ほしょう その遺族に対し 遺族 ( 補償 ) 給付金が支給されます 労災保険の保険料は すべて事業主が負担します かんかつ 労災保険の給付を受けるときは 働いている事業場を管轄する労働基準監督署に本人または遺族が ( 事業主が協力して ) 申請します しょうびょうてあてきん - 傷病手当金 ( 健康保険 )- ししょうびょう労働災害ではない病気やケガ ( 私傷病といいます ) により 4 日以上休業し 賃金がもらえない場合 または一部減額された場合 健康保険から傷病手当金として 直近 12 ヵ月間の標準報酬月額を平均した額の 30 分の1に相当する額の 3 分の2 程度が支給開始日から 1 年 6 か月の期間内で支給されます 傷病手当金に関する問い合わせ等は 全国健康保険協会大阪支部 (P82) まで 29