1 血中アンモニア高値 : 新生児 >120μmol/L(200μg/dl) 乳児期以降 >60μmol/L(100μ g/dl) 以上 2アニオンギャップ正常 (<20) であることが多い 3 血糖が正常範囲である ( 新生児期 >40mg/dl) 4BUN が低下していることが多い 5OTC 欠

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尿素サイクル異常症 小児期に発症する高アンモニア血症の原因は 尿素サイクル異常症をはじめとする先天代謝異常症以外にも 先天的脈管形成異常 重症感染症や薬物など多岐にわたる 尿素サイクル異常症の診療では これらの疾患の鑑別を進める必要がある 先天代謝異常症では 血中アンモニアが上昇しアニオンギャップが正常で低血糖がない場合には尿素サイクル異常症の存在が強く疑われる 本診断指針の対象となる疾患は CPSI 欠損症 OTC 欠損症 シトルリン血症 I 型 アルギニノコハク酸尿症 高アルギニン血症 NAGS 欠損症 シトリン欠損症 HHH 症候群 オルニチンアミノ基転移酵素欠損症 リジン尿性タンパク不耐症である 1. 尿素サイクル異常症の臨床病型 1 発症前型家族解析やスクリーニング検査等で発見された無症状例を指す タンパク負荷や 感染 嘔吐下痢といった異化の亢進によって高アンモニア血症を発症する可能性がある 2 新生児期発症型新生児期 ( 通常生後数日 ) に 頻回におこる嘔吐 哺乳力低下 多呼吸 痙攣 意識障害などで急性に発症し 高アンモニア血症を呈する 3 遅発型乳児期以降に神経症状が現れ 徐々に もしくは感染や飢餓などを契機に高アンモニア血症と症状の悪化がみられる 行動異常 嘔吐 発達障害 痙攣などの症状を呈する 2. 主要症状および臨床所見 1 発症前型早期に発見され治療介入された症例は比較的安定に経過することも多い しかし 感染 嘔吐下痢といった異化の亢進やタンパク過剰摂取などで急性発作をきたすことが多い 2 新生児期発症型激しい嘔吐 活力低下 嗜眠 易興奮性 痙攣 などを引き起こし 速やかにアンモニアを除去できなければ死に至る いったん急性期を離脱した後は 異化亢進した際 タンパク過剰摂取時に再発することがある 4 遅発型行動異常 失見当識 などの精神症状を呈する 3. 検査所見 1

1 血中アンモニア高値 : 新生児 >120μmol/L(200μg/dl) 乳児期以降 >60μmol/L(100μ g/dl) 以上 2アニオンギャップ正常 (<20) であることが多い 3 血糖が正常範囲である ( 新生児期 >40mg/dl) 4BUN が低下していることが多い 5OTC 欠損症の女児例は肝機能障害を契機に発見されることがある 4. 診断の根拠となる特殊検査 1 血中 尿中アミノ酸分析の異常高値あるは低値血中 尿中アミノ酸分析は最も重要な鑑別のための検査であり シトルリン血症 1 型 アルギニノコハク酸尿症 アルギニン血症 HHH 症候群はこの結果をもとにほぼ診断できる シトルリンの低値はCPS I 欠損症 NAGS, OTC 欠損症の診断に重要である 2 尿有機酸分析における尿中オロト酸測定尿中オロト酸が高値の場合 OTC 欠損症 ASS 欠損症 ASL 欠損症 HHH 症候群が疑われる 症状の悪化に伴って尿中オロト酸は増加する OTC 欠損症の女性患者あるいは保因者の診断にオロト酸の測定が有用である アロプリノール負荷試験において尿中のオロト酸排泄が増加することが多い 3 酵素診断あるいは遺伝子解析 OTC 欠損症 CPS1 欠損症においては遺伝子診断が有用である シトリン欠損症では遺伝子解 析が確定診断に利用される 4タンデムマス検査新生児マススクリーニングにおいて用いられている検査である シトルリン血症 I 型 アルギニノコハク酸尿症ではシトルリンの アルギニン血症ではアルギニンの増加を認める また 高アンモニア血症をきたす有機酸血症の鑑別に有用である 5. 鑑別診断 有機酸血症 ウイルス性肝炎 門脈体循環シャント 胆道閉鎖症 肝不全などによる高ア ンモニア血症の鑑別を行う 6. 診断基準 2

(1) 臨床症状 家族歴 1 嘔気 嘔吐 意識障害 痙攣など非特異的な臨床症状 23 親等内の尿素サイクル異常症の存在 3 新生児期における同胞の突然死 (2) 検査データ 1 血中アンモニア高値新生児 >120μmol/L(200μg/dl) 乳児期以降 >60μmol/L(100μ g/dl) 以上が持続してみられる 2アニオンギャップ正常 (<20) である 3 血糖が正常範囲である ( 新生児期 >40mg/dl) (3) 特異的検査 1 血中 尿中アミノ酸分析 尿有機酸分析 ( オロト酸 ) の特徴的高値あるは低値 ( 表 1) 2 酵素活性あるいは遺伝子解析における異常 鑑別診断 ウイルス性肝炎 門脈体循環シャント 胆道閉鎖症 他の代謝異常症による高アンモニア血症 (1) のうち 1 項目かつ (2) の1を含めた 2 項目以上を満たす場合 尿素サイクル異常症が疑われ 確定診断のための検査を行う 確定診断 : 診断の根拠となる (3)1もしくは2で疾患特異的所見を認めるとき確定診断とする シトリン欠損症 オルニチンアミノ基転移酵素欠損症 リジン尿性タンパク不耐症は別項 を参照 3

リジン尿性蛋白不耐症診断指針案 二塩基性アミノ酸輸送タンパクのy+LAT-1の異常によって リジン アルギニン オルニチンの象徴上皮での吸収障害 腎尿細管上皮での再吸収障害をきたす その結果 これらのアミノ酸の欠乏 タンパク合成の低下 高アンモニア血症のほか 全身における多彩な症状をきたす 高アンモニア血症は尿素サイクルの基質であるアルギニン オルニチンの欠乏によって生じると考えられている 診断指針 1つ以上 臨床所見に合致するものがあり かつ主要な検査所見の3 項目を満たすもの ( カッコ内の % は調査時の陽性率 ) < 臨床所見 > 低身長 (64%) 体重増加不良(56%) 肝腫大(72%) 脾腫大(50%) 蛋白摂取後の嘔吐 腹痛 高蛋白食品 ' 肉 魚 卵 乳製品 ( を嫌う (84%) ( 参考所見 ) ウイルス感染の重症化 (13%) 免疫異常(24%) 自己免疫疾患(21%) 骨粗鬆症 (44%) 筋力低下 (13%) 易疲労 < 検査所見 > 尿中アミノ酸分析で リジン ( 症例によりアルギニン オルニチンも ) の排泄亢進 (100% 必須項目) 高アンモニア血症の既往 (90%) 血清 LDH(84%) フェリチン値(80%) の上昇 'SLC7A7 遺伝子変異の確定 ( 参考所見 ) 血中アミノ酸分析で リジン (86%) アルギニン (82%) オルニチン(86%) のいずれかまたは3 者の低値 (3 つとも低値は62% 3つとも正常は0%) 末梢白血球 (40%) 血小板減少(39%) 貧血(21%) ( 厚労省班研究より ) 4

オルニチンアミノ基転移酵素欠損症 ( 脳回転状脈絡膜網膜萎縮症 ) 脳回転 (gyrus) を思わせる特異な眼底所見と高オルニチン血症が特徴的である オルニチンの主要な異化反応を触媒するオルニチン-δ-アミノトランスフェラーゼ (OAT) の欠損によって発症する この反応は新生児期にはオルニチン合成に それ以降はオルニチンの異化に働いていると考えられている 特徴的な眼底所見から本症を疑われることが多いが 新生児の高アンモニア血症の鑑別診断としても考慮されるべきである 幼少時から視力低下をきたし 緩徐に進行して通常 45-65 歳で失明に至る 診断に必要な検査 1 特異な眼底所見から本症が疑われる 2 血中オルニチンは高値である :400-1,400μmol/L (5.3-18.4mg/dl) オルニチン高値をきたす HHH( 高オルニチン- 高アンモニア-ホモシトルリン尿症 ) 症候群との鑑別が必要となる HHH 症候群では 眼底所見を認めず 血中グルタミンの上昇 尿中ホモシトルリン 尿中オロト酸の増加を認める 3 遺伝子解析も有用である 診断基準 1 と 2 をみたし HHH 症候群の鑑別診断が行われていれば本症と診断される 新生児期には 1 が明らかではない場合があり 3 が必要となることがある 5