る 眼発作が頻発する症例では 通常はコルヒチンの内服から開始し 効果不十分であればシクロスポリンの内服への変更又はインフリキシマブの点滴静注による治療を行う 副作用などのためシクロスポリンの導入が難しい症例や 視機能障害が懸念される重症例には インフリキシマブの早期導入を行う 2 皮膚粘膜症状 :

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056 ベーチェット病

社会保障 介護認定 1. 要介護 2. 要支援 3. なし要介護度 生活状況 移動の程度 身の回りの管理 ふだんの活動 1. 歩き回るのに問題はない 3. 寝たきりである 1. 洗面や着替えに問題はない 3. 自分でできない 1. 問題はない 3. 行うことができない 2. いく

皮膚症状 下腿伸側や前腕に結節性紅斑様皮疹がみられます 病変部は紅くなり 皮下に硬結を触れ 痛みを伴います 座瘡様皮疹は にきび に似た皮疹が顔 頸 胸部などにできます 下腿などの皮膚表面に近い血管に血栓性静脈炎がみられることもあります 皮膚は過敏になり かみそりまけ を起こしやすかったり 注射や採

赤沈の上昇 補体価の上昇などみられますが これらは様々な疾患で生じる全身の炎症を示す数値です 前述した HLA-B51 抗原については ベーチェット病患者では 50~70% で陽性となりますが 日本人では健常者でも 15% 程度で陽性になりますので これだけでも診断することはできません 診断は から

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

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血管炎 / C. その他の類縁疾患 175 こううんはくたいあることも多い. 紅暈を伴う直径 3 5 mm 前後の白苔を付ける潰瘍が単発ないし多発する. 疼痛を伴い, 約 10 日で瘢痕を残さず治癒するが再発する. 5 外陰部潰瘍 : 陰囊や大小陰唇に好発する. 境界鮮明な深い潰瘍を形成し, 治癒後

性の症例や 関節炎の激しい症例に推奨されるが 副作用 ( 肝障害 骨髄抑制 間質性肺炎など ) に留意し 十分なインフォームドコンセントに配慮する必要がある 妊娠までの最低限の薬剤中止期間は エトレチナートでは女性 2 年間 男性 6か月 メトトレキサートでは男女とも3か月とされている TNFα 阻

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

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膿疱性乾癬の効能追加 ( 承認事項の 部変更承認 ) に伴う改訂 改訂内容 ( 該当部のみ抜粋 ) 警告 1.~3. 4. 関節リウマチ患者では, 本剤の治療を行う前に, 少なくとも 1 剤の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること. また, 本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 6255 人 2. 発病の機構不明 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根治療法なし ) 4. 長期の療養必要 ( 身体機能低下の進行抑制を目標に治療が必要である ) 5. 診断基準あり 6. 重症度分類悪性関節リウマ

「             」  説明および同意書

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己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

023プリオン病

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2017 年 4 月 27 日放送 第 67 回日本皮膚科学会中部支部学術大会 3 教育講演 2 血管炎の診かた 中京病院皮膚科部長小寺雅也 血管炎を疑うべき症例の問診のポイント血管炎の診かたについてお話し致します 最初に 血管炎を疑うべき症例の問診のポイントとしては 原因不明の発熱 体重減少 全身

呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス

161 家族性良性慢性天疱瘡

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Immunology & Dermatology Franchise 自己炎症性疾患 ノバルティスファーマ株式会社 2016 年 12 月 患者調査 Collaboration with 自己炎症疾患友の会

Case  A 50 Year Old Man with Back Pain,Fatigue,Weight Loss,and Knee Sweling

ステロイド療法薬物療法としてはステロイド薬の全身療法が基本になります 発症早期すなわち発症後 7 日前後までに開始することが治療効果 副作用抑制の観点から望ましいと考えられす 表皮剥離が全身に及んだ段階でのステロイド薬開始は敗血症等感染症を引き起こす可能性が高まります プレドニゾロンまたはベタメタゾ

2019 年 4 月 1 日放送 第 42 回日本小児皮膚科学会 1 教育講演 2 自己炎症性疾患アップデート 和歌山県立医科大学皮膚科准教授金澤伸雄はじめに自己炎症性疾患は 狭義には 炎症シグナルや自然免疫系の遺伝子異常による希少疾患を指します 臨床的に感染症 アレルギー 自己免疫疾患に似ますが

5. 予後我が国のコホート研究に登録された新規患者 33 名の6か月後の寛解導入率は 97% であった 一般に 副腎皮質ステロイドの副作用軽減のためには速やかな減量が必要である一方 減量速度が速すぎると再燃の頻度が高くなる 疾患活動性の指標として臨床症状 尿所見 PR3-ANCA 及び CRP など

018 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)

301128_課_薬生薬審発1128第1号_ニボルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドラインの一部改正について

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

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日産婦誌58巻9号研修コーナー

適応病名とレセプト病名とのリンクDB

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くは不育症プラス特異的自己抗体をもって APS と定義するシンプルな構造になっているこ と 続発性または二次性という用語は使用せず それぞれに合併した APS と表現すること を推奨している点です APS の症状 APS の頻度の高い症状として 脳 心臓 肺などの動静脈血栓症 習慣流産 血小板減少

肝逸脱酵素の上昇 血小板減少といった先天感染症 (TORCH 症候群 ) 類似の症状の他 易刺激性 間欠的な無菌性発熱 てんかんや発達退行を中心とした進行性重症脳症の臨床像を呈する 血小板減少 肝脾腫 肝逸脱酵素上昇 間欠的発熱などから不明熱として精査を受けることも多く 手指 足趾 耳などの凍瘡様皮

耐性菌届出基準


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166 弾性線維性仮性黄色腫

ン病 虚血性視神経症など 4. 治療法続発性の APS では 原疾患に対する治療とともに抗凝固療法を行う 原発性の場合には抗凝固療法が主体となる 抗凝固療法は 抗血小板剤 ( 低容量アスピリン 塩酸チクロピジン ジピリダモール シロスタゾール PG 製剤など ) 抗凝固剤( ヘパリン ワルファリンな

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

なくて 脳以外の場所で起きている感染が 例えばサイトカインやケモカイン 酸化ストレスなどによって間接的に脳の障害を起こすもの これにはインフルエンザ脳症やH HV-6による脳症などが含まれます 三つ目には 例えば感染の後 自己免疫によって起きてくる 感染後の自己免疫性の脳症 脳炎がありますが これは

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はじめに 全身性エリテマトーデス (SLE) は患者数が少なく 治療法の確立が難しいことから 難病 に指定されています かつては命にかかわることも少なくない病気でしたが 現在では治療法が進歩して 長く付き合うことになる病気に変わってきています この冊子では SLE の病態とその治療法をまとめました

My DIARY ベンリスタをご使用の患者さんへ

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 そもそも 膠原病って何? 本来であれば自分を守ってくれるはずの免疫が 自分自身を攻撃するようになり 体のあちこちに炎 症を引き起こす病気の総称です 全身のあらゆる臓器に存在する血管や結合組織 ( 結合組織 : 体内の組織と組織 器官と器官

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

クローン病の内科治療を受ける患者さまへ

188-189

2017 年 12 月 28 日放送 第 116 回日本皮膚科学会総会 8 教育講演 14-5 血管性浮腫の診断と治療 横浜市立大学大学院環境免疫病態皮膚科学 准教授猪又直子 はじめに血管性浮腫は 皮膚や粘膜の限局した範囲に生じる深部浮腫で 蕁麻疹の類縁疾患です 近年 国際ガイドラインが発表され メ

どく拡張する ( 中毒性巨大結腸症 ) こともあります. このような場合には緊急に手術が必要です. また 大腸癌になった場合にも手術が必要になります. 内科的治療が効きにくい難治例や重症例の場合にも 内科的治療のバランスの点から手術を選択することがあります. 手術の方法は 大腸全摘ですが 肛門を残す

330 先天性気管狭窄症 / 先天性声門下狭窄症 概要 1. 概要気道は上気道 ( 鼻咽頭腔から喉頭 ) と下気道 ( 気管 気管支 ) に大別される 指定難病の対象となるものは声門下腔や気管に先天的な狭窄や閉塞症状を来す疾患で その中でも先天性気管狭窄症や先天性声門下狭窄症が代表的な疾病である 多

249 グルタル酸血症1型

多形紅斑・Stevens-Jonhnsons症候群なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

情報提供の例

スライド 1

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2015 年 8 月 27 日放送 第 78 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 3 シンポジウム2 基調講演薬疹の最新動向と今後の展望 昭和大学皮膚科教授末木博彦 はじめに本日は薬疹の最新情報と今後の展望についてお話しさせていただきます 最初に薬疹の概念が変遷しボーダレス化が進んでいるというお話 続

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

日本内科学会雑誌第98巻第12号

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

39 中毒性表皮壊死症 概要 1. 概要中毒性表皮壊死症 (Toxic epidermal necrolysis:ten) は 高熱や全身倦怠感などの症状を伴って 口唇 口腔 眼 外陰部などを含む全身に紅斑 びらんが広範囲に出現する重篤な疾患である TEN は スティーヴンス ジョンソン症候群 (S

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

5. 予後病状は数十年にわたり徐々に進行し 広範囲の激しい疼痛に加え 脊椎や四肢関節の運動制限により日常生活動作は著しく制限されるようになる 約 1/3 の患者が全脊椎の強直 ( 竹様脊椎.bamboo spine.1 本の棒のようになる ) に進展する 併発する臓器病変や長期の薬物治療の影響も加わ

臨床調査個人票 新規 更新 108 TNF 受容体関連周期性症候群 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1. 男 2. 女 出生市区町

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

262 原発性高カイロミクロン血症

59: 炎様皮疹または痤瘡様皮疹は顔面, 頸部, 胸部, 背部などに好発し, 表皮下の水疱, 膿疱, 真皮での単核球浸潤などがみられる. 皮下の表在性血栓性静脈炎は下腿に好発し, 静脈内血栓と血管周囲への好中球 単核球の浸潤がみられる. 皮膚には過敏性の亢進があり, かみそ

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

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TTP 治療ガイド ( 第二版 ) 作成厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班 ( 主任研究者村田満 ) 血栓性血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic purpura:ttp) は 緊急に治療を必要とする致死的疾患である

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

063 特発性血小板減少性紫斑病

目次 第 1 章ガイドライン作成にあたって [1] 背景 目的 [2] ガイドラインの特徴 [3] エビデンスレベルと推奨度 同意度の決定基準 [4] フォーマルコンセンサスの形成法 [5] 資金源と利益相反 [6] 公開方法 [7] 改定 ( パブリックコメント 検証委員会 患者の声 ) 第 2

130724放射線治療説明書.pptx

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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56 ベーチェット病 概要 1. 概要口腔粘膜のアフタ性潰瘍 皮膚症状 眼のぶどう膜炎 外陰部潰瘍を主症状とし 急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とする 2. 原因病因はいまだ不明であるが 本病は特定の内的遺伝要因のもとに何らかの外的環境要因が作用して発症する多因子疾患と考えられている 本病は人種を超えて HLA-B51 抗原と顕著に相関することが知られており 本病の疾患感受性を規定している遺伝要因の少なくとも一つは HLA-B51 対立遺伝子であると考えられる 3. 症状 (1) 主症状ア口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍境界鮮明な浅い有痛性潰瘍で 口唇粘膜 頬粘膜 舌 更に歯肉などの口腔粘膜に出現する 初発症状のことが多く 再発を繰り返し ほぼ必発である イ皮膚症状下腿に好発する結節性紅斑 皮下の血栓性静脈炎 顔面 頚部 背部などにみられる毛嚢炎様皮疹又は痤瘡様皮疹など ウ眼症状両眼性に侵されるぶどう膜炎が主体 症状は再発性 発作性に生じ 結膜充血 眼痛 視力低下 視野障害などを来す エ外陰部潰瘍有痛性の境界鮮明なアフタ性潰瘍で 男性では陰嚢 陰茎 女性では大小陰唇に好発する (2) 副症状関節炎以外の副症状の出現頻度は多くないものの 特に腸管型 血管型 神経型ベーチェット病は生命に脅威をもたらしうる警戒すべきものであり 特殊病型に分類されている 関節炎 副睾丸炎 消化器病変 血管病変及び中枢神経病変がある 消化器病変は典型的には回盲部潰瘍で 炎症性腸疾患との鑑別がしばしば問題になる 血管病変は動静脈系 肺血管系に分布し 動脈瘤や静脈血栓を来す 中枢神経病変は 髄膜炎 脳幹脳炎を発症する急性型と 進行性の小脳症状や認知症などの精神症状をきたす慢性進行型に大別される 4. 治療法 (1) 生活指導齲歯予防などの口腔内ケア 疲労 ストレスの回避 (2) 薬物治療 1 眼症状 : 軽度の前眼部発作時は副腎皮質ステロイドと散瞳薬の点眼を用いる 重度の前眼部発作時には点眼治療に加え 副腎皮質ステロイドの結膜下注射を行う 網膜ぶどう膜炎型には 水溶性ステロイド又はステロイド懸濁液の後部テノン囊下注射を行う また ステロイドの全身投与を行う場合もあ

る 眼発作が頻発する症例では 通常はコルヒチンの内服から開始し 効果不十分であればシクロスポリンの内服への変更又はインフリキシマブの点滴静注による治療を行う 副作用などのためシクロスポリンの導入が難しい症例や 視機能障害が懸念される重症例には インフリキシマブの早期導入を行う 2 皮膚粘膜症状 : 口腔内アフタ性潰瘍 陰部潰瘍には副腎ステロイド局所軟膏 コルヒチンなどの内服 3 関節炎 : コルヒチン 非ステロイド性消炎薬による対症療法 効果がない場合には 副腎皮質ステロイド投与 4 血管病変 : 副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を主体とするが 下半身の静脈血栓症を併発した場合にはワルファリンなどの抗凝固療法を併用する 難治性の場合はインフリキシマブを使用する 5 腸管病変 : 副腎皮質ステロイドとメサラジンなどを使用し 難治性の場合はアダリムマブやインフリキシマブなどの TNF 阻害薬を使用する 腸管穿孔 出血は手術適応 6 中枢神経病変 : 脳幹脳炎 髄膜炎などの急性期の炎症は副腎皮質ステロイド治療に反応し 改善することが多い 一方 精神症状 人格変化などを主体とした慢性進行型には 副腎皮質ステロイドは無効で メトトレキサートが生命予後を改善するため メトトレキサート ( 関節リウマチと同様の用法用量 ) を速やかに開始する 難治性の場合はインフリキシマブを使用する 5. 予後眼症状や特殊病型がない場合は 一般に予後は悪くない 眼病変は かつては中途失明に至る主要な疾患の一つであったが インフリキシマブが使用されるようにより 大きく改善している 腸管型 血管型 神経型に対しても TNF 阻害薬が保険適用となり 今後 これらの難治性病態の治療成績の向上が期待される 要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 26 年度医療受給者証保持者数 ) 20,035 人 2. 発病の機構不明 ( 遺伝素因と環境因子 ( 外因 ) の関連が示唆されている ) 3. 効果的な治療方法未確立 4. 長期の療養必要 ( 各種臓器合併症を有する ) 5. 診断基準あり 6. 重症度分類ベーチェット病の重症度基準を用いて II 度以上を対象とする 情報提供元 難治性疾患政策研究事業 ベーチェット病に関する調査研究 研究代表者横浜市立大学教授水木信久

< 診断基準 > 厚生労働省ベーチェット病診断基準 (2010 年小改訂 ) 完全型 不全型及び特殊病変を対象とする 1. 主要項目 (1) 主症状 1 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍 2 皮膚症状 (a) 結節性紅斑様皮疹 (b) 皮下の血栓性静脈炎 (c) 毛嚢炎様皮疹 痤瘡様皮疹参考所見 : 皮膚の被刺激性亢進 ( 針反応 ) 3 眼症状 (a) 虹彩毛様体炎 (b) 網膜ぶどう膜炎 ( 網脈絡膜炎 ) (c) 以下の所見があれば (a) (b) に準じる (a) (b) を経過したと思われる虹彩後癒着 水晶体上色素沈着 網脈絡膜萎縮 視神経萎縮 併発白内障 続発緑内障 眼球癆 4 外陰部潰瘍 (2) 副症状 1 変形や硬直を伴わない関節炎 2 副睾丸炎 3 回盲部潰瘍で代表される消化器病変 4 血管病変 5 中等度以上の中枢神経病変 (3) 病型診断のカテゴリー 1 完全型 : 経過中に (1) 主症状のうち4 項目が出現したもの 2 不全型 : (a) 経過中に (1) 主症状のうち3 項目 あるいは (1) 主症状のうち2 項目と (2) 副症状のうち2 項目が出現したもの (b) 経過中に定型的眼症状とその他の (1) 主症状のうち1 項目 あるいは (2) 副症状のうち2 項目が出現したもの 3 疑い : 主症状の一部が出現するが 不全型の条件を満たさないもの 及び定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの 4 特殊型 : 完全型又は不全型の基準を満たし 下のいずれかの病変を伴う場合を特殊型と定義し 以下のように分類する

(a) 腸管 ( 型 ) ベーチェット病 内視鏡で病変部位を確認する (b) 血管 ( 型 ) ベーチェット病 動脈瘤 動脈閉塞 深部静脈血栓症 肺塞栓のいずれかを確認する (c) 神経 ( 型 ) ベーチェット病 髄膜炎 脳幹脳炎など急激な炎症性病態を呈する急性型と体幹失調 精神症状が緩徐に進行する慢性進行型のいずれかを確認する 2. 検査所見 参考となる検査所見 ( 必須ではない ) (1) 皮膚の針反応の陰 陽性 20~22G の比較的太い注射針を用いること (2) 炎症反応赤沈値の亢進 血清 CRPの陽性化 末梢血白血球数の増加 補体価の上昇 (3)HLA-B51の陽性( 約 60%) A26( 約 30%) (4) 病理所見急性期の結節性紅斑様皮疹では 中隔性脂肪組織炎で 浸潤細胞は多核白血球と単核球である 初期に多核球が多いが 単核球の浸潤が中心で いわゆるリンパ球性血管炎の像をとる 全身的血管炎の可能性を示唆する壊死性血管炎を伴うこともあるので その有無をみる (5) 神経型の診断においては 髄液検査における細胞増多 IL-6 増加 MRIの画像所見 ( フレア画像での高信号域や脳幹の萎縮像 ) を参考とする 3. 参考事項 (1) 主症状 副症状とも 非典型例は取り上げない (2) 皮膚症状の (a) (b) (c) はいずれでも多発すれば1 項目でもよく 眼症状も (a) (b) どちらでもよい (3) 眼症状について虹彩毛様体炎 網膜ぶどう膜炎を経過したことが確実である虹彩後癒着 水晶体上色素沈着 網脈絡膜萎縮 視神経萎縮 併発白内障 続発緑内障 眼球癆は主症状として取り上げてよいが 病変の由来が不確実であれば参考所見とする (4) 副症状について副症状には鑑別すべき対象疾患が非常に多いことに留意せねばならない ( 鑑別診断の項参照 ) 鑑別診断が不十分な場合は参考所見とする (5) 炎症反応の全くないものは ベーチェット病として疑わしい また ベーチェット病では補体価の高値を伴うことが多いが γグロブリンの著しい増量や 自己抗体陽性は むしろ膠原病などを疑う (6) 主要鑑別対象疾患 (a) 粘膜 皮膚 眼を侵す疾患多型滲出性紅斑 急性薬物中毒 ライター (Reiter) 病 (b) ベーチェット病の主症状の1つを持つ疾患口腔粘膜症状 : 慢性再発性アフタ症 急性外陰部潰瘍 (Lipschutz 潰瘍 ) 皮膚症状 : 化膿性毛嚢炎 尋常性痤瘡 結節性紅斑 遊走性血栓性静脈炎 単発性血栓性静脈炎

スイート (Sweet) 病眼症状 : サルコイドーシス 細菌性および真菌性眼内炎 急性網膜壊死 サイトメガロウイルス網膜炎 HTLV-1 関連ぶどう膜炎 トキソプラズマ網膜炎 結核性ぶどう膜炎 梅毒性ぶどう膜炎 ヘルペス性虹彩炎 糖尿病虹彩炎 HLA-B27 関連ぶどう膜炎 仮面症候群 (c) ベーチェット病の主症状及び副症状とまぎらわしい疾患口腔粘膜症状 : ヘルペス口唇 口内炎 ( 単純ヘルペスウイルス1 型感染症 ) 外陰部潰瘍 : 単純ヘルペスウイルス2 型感染症結節性紅斑様皮疹 : 結節性紅斑 バザン硬結性紅斑 サルコイドーシス Sweet 病関節炎症状 : 関節リウマチ 全身性エリテマトーデス 強皮症などの膠原病 痛風 乾癬性関節症消化器症状 : 急性虫垂炎 感染性腸炎 クローン病 薬剤性腸炎 腸結核副睾丸炎 : 結核血管系症状 : 高安動脈炎 バージャー (Buerger) 病 動脈硬化性動脈瘤中枢神経症状 : 感染症 アレルギー性の髄膜 脳 脊髄炎 全身性エリテマトーデス 脳 脊髄の腫瘍 血管障害 梅毒 多発性硬化症 精神疾患 サルコイドーシス

< 重症度分類 > II 度以上を医療費助成の対象とする ベーチェット病の重症度基準 Stage 内容眼症状以外の主症状 ( 口腔粘膜のアフタ性潰瘍 皮膚症状 外陰部潰瘍 ) のみられるも I の StageⅠの症状に眼症状として虹彩毛様体炎が加わったもの II StageⅠの症状に関節炎や副睾丸炎が加わったもの III 網脈絡膜炎がみられるもの失明の可能性があるか 失明に至った網脈絡膜炎及びその他の眼合併症を有するもの IV 活動性 ないし重度の後遺症を残す特殊病型 ( 腸管ベーチェット病 血管ベーチェット病 神経ベーチェット病 ) である生命予後に危険のある特殊病型ベーチェット病である V 慢性進行型神経ベーチェット病である 注 1 StageI II については活動期 ( 下記参照 ) 病変が 1 年間以上みられなければ 固定期 ( 寛解 ) と判定するが 判定基準に合わなくなった場合には固定期から外す 2 失明とは 両眼の視力の和が 0.12 以下又は両眼の視野がそれぞれ 10 度以内のものをいう 3 ぶどう膜炎 皮下血栓性静脈炎 結節性紅斑様皮疹 外陰部潰瘍 ( 女性の性周期に連動したものは除く ) 関節炎症状 腸管潰瘍 進行性の中枢神経病変 進行性の血管病変 副睾丸炎のいずれかがみられ 理学所見 ( 眼科的診察所見を含む ) あるいは検査所見 ( 血清 CRP 血清補体価 髄液所見 腸管内視鏡所見など ) から炎症兆候が明らかなもの 診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1. 病名診断に用いる臨床症状 検査所見等に関して 診断基準上に特段の規定がない場合には いずれの時期のものを用いても差し支えない ( ただし 当該疾病の経過を示す臨床症状等であって 確認可能なものに限る ) 2. 治療開始後における重症度分類については 適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって 直近 6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする 3. なお 症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが 高額な医療を継続することが必要なものについては 医療費助成の対象とする