膨張弁膨張弁の概要 温度膨張弁は凝縮器から出た高温 高圧の液冷媒を蒸発しやすい状態に減圧し 蒸発器内部の最適流量を確保します 冷却負荷の増減によって変化する圧縮機の容量に合わせて冷媒ガスの過熱度を一定範囲内に保持し 異常加熱と液戻りを防止します ご注文時の指定事項 1. 標準形の場合はをご指定ください 2. 標準形以外の特殊仕様は 次のような点をご指定ください 常用圧力 最小 最大圧力 ( 凝縮圧力 蒸発圧力 ) 用途 封入方式 常用温度 最低 最高温度 ( 凝縮温度 ) 取付け場所 ( 本体及び感温筒取付部温度等 ) 冷凍能力 ( 凝縮温度及びと共に ) キャピラリチューブの長さ 装置冷媒名 継手形状 ( フレア ろう付 ) b f h 関連用語の説明 膨張弁と冷凍サイクルの関係 1. 凝縮温度 (CT) 冷媒サイクルの中で一番温度の高い冷媒液状態の部分の温度です ( 膨張弁入口冷媒飽和液温度 ) 2. (ET) 水 空気負荷等を冷却するための冷媒液ガスの混合状態の部分の温度です ( 膨張弁出口冷媒飽和蒸気温度 ) 3. 過冷却度 (SC) 冷媒液温度相当圧力に対して 圧力は変化せず 温度だけ低下した度合 ( 膨張弁入口温度と圧力相当温度との差 ) 4. 過熱度 (SH) 冷媒ガス温度相当圧力に対して 圧力は変化せず 温度だけ上昇した度合 ( 膨張弁感温部温度と均圧部圧力相当温度との温度差 ) 5. 凝縮圧力 1. の温度相当圧力 6. 蒸発圧力 2. の温度相当圧力 7. 冷凍能力冷却熱量を kw で表したもの 1 米国冷凍トン :3.52kW 8. 圧力損失配管内の摩擦抵抗が主な圧力損失の原因です 高圧側での発生は過冷却度の減少 またはフラッシュガスの発生となり 低圧側での発生は蒸発器内での温度バラツキ 能力ダウン傾向となります 内部均圧形膨張弁では運転過熱度の増加につながります 9. 最高使用圧力通常の使用条件下で膨張弁が支障なく機能する最高圧力 ( 設計圧力 ) です 10. 気密試験圧力膨張弁の外部への漏れを検査する時の圧力で設計圧力以上です 11. 耐圧試験圧力膨張弁の耐圧性能を検査する時の圧力で設計圧力の 1.5 倍です 8
張弁( ) 付の封入方式については 特殊な封入方式になります 膨感温筒封入方式封入方式は装置冷媒の種類 使用 デフロストによる熱影響 取付部の周囲温度等により最適な選択が必要です Maabs Maabs Maabs 0.2 0.1 0.9 0.9 M.O.. R22 1 7 5 4 0 10 20 GL M.O.. R22 1 3 2.5 0 10 20 S R22 1 0 1 5 20 10 0 C TB ガス封入式 (G) 装置の使用冷媒と同種類の冷媒を封入したもので 一定の温度の上昇で封入液が過熱ガスになるポイントがあります このポイントを Maximum Operating ressure(m.o..) と呼んでいます 主に冷房装置用 M.O.. の規制の結果 始動時の液戻り防止 圧縮機モータの過負荷防止が可能 液封入式 (L) ガス封入式と同等の圧力特性で 常に封入液が感温筒に存在するようにしたものです 主に冷房装置用 感温筒温度と本体周囲温度の高低に関係なく正しく制御できる 但し 耐熱温度に注意が必要 特殊封入式 (S)(SA)(SL) 異種ガスを混合して封入したもので (G) (L) 封入に比べて運転過熱度を小さくでき M.O.. を規制することもできます 適用範囲と M.O.. の違いによって記号を変えています 主に冷房装置( 施設園芸 ) ヒートポンプ装置 低温装置用 特殊封入式 (C)(CL)(CY) 吸着材と特殊ガスを封入したものです 高温脱着 低温吸着による圧力変化を利用 低温で運転過熱度を小さくすることができます また感温筒温度と本体周囲温度の高低に関係なく正しく制御できます M.O.. 規制は有りませんが 過負荷防止効果が期待できます 適用範囲の違いによって記号を変えています 主に低温装置 極低温装置用 封入方式対象装置 TS とTB の関係 G L S (SA) (SL) C (CL) (CY) TS>TB TSTB TS TB TS TB TS TB TSTB TSTB TSTB M.O.. 規制 ( 過負荷防止 ) 運転 TS 冷房装置への適用 2 TS とはエレメント部温度 TB とは感温筒温度 ( 制御温度 ) 低温装置への適用 1 2 極低温装置への適用 1 2 ヒートポンプ装置への適用 2 1はAEX 形のみ使用可能です 2はM.O.. の設定によって使用可否が異なります 9
膨張弁均圧方式蒸発器の圧力損失と圧力変動幅の大きい装置には外部均圧式 圧力損失の小さい装置には内部均圧式を選択します 例えば低圧側に 0.088Ma の圧力損失が有る場合 内部均圧式の膨張弁では運転過熱度が約 5 増加します 冷媒 R22 A 点 88Ma abs(5 ) B 点 Ma abs(0 ) ばね圧力 0.088Ma に設定 外部均圧方式の場合 内部均圧方式の場合 1 88Ma abs Ma abs A 88Ma abs 5 1 76Ma abs 88Ma abs A 88Ma abs 5 0.088Ma 0.088Ma 88Ma abs 5 B Ma abs 76Ma abs 10 B Ma abs 感温筒内部の圧力 (1) = + 0.088 = 88Ma abs の飽和温度運転過熱度は 5 0 = 5 となります 感温筒内部の圧力 (1) = 88 + 0.088 = 76Ma abs の飽和温度運転過熱度は 10 0 = 10 となります 低圧配管の圧力損失圧力損失相当分が運転過熱度の増加現象となり 吸入配管の圧力低下や冷凍能力の減少につながるため 過大な運転過熱度の増加は注意が必要です 1 温度差に相当する圧力差程度が均圧方式の選択の目安といわれています 右記表内の値以上の圧力差が有る場合は外部均圧方式が効果的です 1 温度相当圧力差 (Ma) 冷媒 10 5 0 5 10 20 30 40 50 60 R22 0.024 0.02 0.018 0.016 0.014 0.011 0.008 0.006 0.004 0.003 R134a 0.014 0.012 0.011 0.009 0.008 0.006 0.004 0.003 0.025 0.022 0.019 0.017 0.015 0.012 0.008 0.006 0.004 0.003 R407C 0.021 0.018 0.016 0.014 0.012 0.009 0.006 0.004 0.003 0.002 R410A 0.033 0.029 0.026 0.023 0.020 0.015 0.011 0.008 0.006 0.004 過熱度冷媒の飽和蒸気温度に対して 圧力が変化せず温度だけが上昇した度合いです 膨張弁の過熱度には静止過熱度と過熱度変化があり この和が作動過熱度で 蒸発器出口部分で発生する過熱度に相当します 過熱度の作動原理 温度膨張弁 A 飽和液 飽和蒸気 蒸発器 感温筒 B C' 1 C 過熱度変化 作動過熱度 過熱蒸気 静止過熱度 静止過熱度 (SSH): 弁が閉止から開き始めるまでの過熱度過熱度変化 (SHC): 弁が開き始めから必要流量開度までの過熱度作動過熱度 (OSH): 静止過熱度 + 過熱度変化 静止過熱度調整過熱度の調整とは静止過熱度の調整をいいます 特別な理由がない限り 装置の安全を計るために 静止過熱度を設けるようにしてください 静止過熱度調整範囲 スピンドル 1 回転あたりの変化量 (Ma) QCX RCX 1 5 SCX 1 ~ 7(R134a ) 1 ~ 5(R407C R410A) 約 0.045 VX WX 1 7 約 0.025 WHX 1 7 約 0.035 AEX 0 20 約 0.05 S:0 8 C:0 10 ATX CY:0 13 約 0.007 他 :3 13 ATX(R410A) C:1 7 CL:1 7 10
膨張弁 圧 圧力 (Ma) 圧 圧力 (Ma)能力に影響する補正要素高圧側液管の圧力損失高圧側の圧力損失は冷凍能力の低下となります 凝縮器から膨張弁までに発生する圧力損失はフラッシュガスの発生につながり 膨張弁の能力低下となりますので通常 1 3 程度の過冷却を考慮する必要があります 低圧側配管の圧力損失補正係分配器や蒸発器内部の圧力損失は温度の不均衡や能力低下の原因となり また内部均圧式膨張弁では静止過熱度の増加につながります 分配器及び蒸発器中にて圧力損失が変化した場合の補正係です 20 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 R22 圧 圧力 (Ma) R407C 20 R134a 圧 圧力 (Ma) R410A 0 0.05 0.1 0.15 0.25 20 圧 圧力 (Ma) 20 20 過冷却度による補正係通常二段圧縮装置の低段側高圧液冷媒や ヒートエクスチェンジ付属装置等で考えられる過冷却の度合いによる能力変化を表したものです 大きな過冷却度のある装置については 能力表内の値に下表の係を乗じた値が膨張弁の能力となります 能力補正係 力補 正係 R22 能力補正係 R134a R407C R410A 力補 正係 力補 正係 11
膨張弁冷媒名 温度条過熱度 TC C 相当 T 13 8 7 圧力条選定例 C TC T TB B A TA S ( アキュムレータ ) ( 蒸発器 ) 装置 二段圧縮一段膨張サイクル 単段圧縮サイクル 条件 低温冷凍倉庫低温冷蔵庫冷蔵庫 件過冷却度 A 相当 T TA 50 10 0 弁入口温度 TA 10 28 38 TB 50 30 10 凝縮圧力 A 3Ma abs(40 相当 ) 1.74Ma abs(38 相当 ) 1.74Ma abs(38 相当 ) B +C 蒸発圧力 0.084Ma abs( 50 相当 ) 0.201Ma abs( 30 相当 ) 38Ma abs( 10 相当 ) 件2 低温側圧損 B C 0.001Ma 0.049Ma 0.008Ma 能力 1kW 4.6kW 1kW 項目 低圧側配管の圧力損失補正係値 検討機種 過冷却度による補正係値 感温筒封入方式の決定 均圧方式の決定 例 (1) ATX 形での選定 0.001Ma のためほとんど無視し と見ます T 50 凝縮温度 40 では 1 25 60 に該当 USL に決定 TX 形は外均式標準のため外均に決定 例 (2) VX/WX 形での選定 0.049Ma 40 では 0.98 と見ます T 10 凝縮温度 38 では 2 0 40 に該当 UC に決定圧力損失 0.049Ma は 1 相当温度以上のため WX に決定 例 (3) VX/WX 形での選定 0.008Ma 10 では 0.997 であり 1 と見ます 0 のため 1 0 40 に該当 UC に決定圧力損失 0.008Ma は 1 相当温度以下のため VX に決定 表中の選択能力 1kW 5.77kW 1 (1) 能力表で ET 50 より能力 5.68kW 34045 選定 4.6kW 0.98 2 3.85kW (2) 能力表で ET 30 より能力 3.9kW 3415 選定 (3) 能力表で ET 10 より能力 2.99kW 3408 選定 静止過熱度の調整 表中能力 10 SHC から表中能力 4 5 過熱度変化から 5.77kW 10 5.68kW 10.2 3.85kW 5 として 4.9 3.9kW 目標過熱度 13 10.2 = の静止過熱度となり 調整範囲内にあります 目標過熱度 8 4.9 = 3.1 の静止過熱度となり 調整範囲内にあります 表中能力 4 5 過熱度変化から 1kW 5 2.99kW 4.7 目標過熱度 7 4.7 = 2.3 の静止過熱度となり 調整範囲内にあります の決定 ATX 34045B(D)USL MO-20 付を選択します WX 3415B(D)UC を選定します VX 3408B(D)UC を選定します (1) SL 封入 25 60 (2) 0 40 ATX 34045BUSL 34045DUSL 25 1 1 1 30 9.88 9.23 8.98 40 8.02 7.40 7.17 50 6.22 5.68 5.49 60 4.53 4.10 3.95 WX 3415BUC 3415DUC 過熱度変化 4 5 0 5.92 5.92 5.86 5 6.11 6.01 5.93 10 5.85 5.62 5.52 20 5.07 4.47 4.69 30 4.15 3.90 3.79 40 3.42 3.16 6 (3) 0 40 VX 3408BUC 3408DUC 過熱度変化 4 5 0 3.16 3.15 3.12 5 3.26 3.20 3.16 10 3.11 2.99 2.94 20 2.70 2.55 9 30 2.21 8 2 40 3 8 3 単段圧縮サイクルでも過冷却( エコノマイザー ) 装置があり 過冷却が付く場合は過冷却補正後の能力で選定が必要です 異なる条件の装置選定については 弊社へお問い合わせください 12