保育施設の防火防災対策 東京消防庁予防部防火管理課 東京消防庁管内の火災状況 ( 平成 28 年中 ) 火災件数 3,982 件 (-451) 焼損床面積 17,529 m2 ( -3,221) 火災による死者 83 名 ( -12) 火災による負傷者 853 名 (+26) ( ) 内は平成 27 年との比較 1
東京消防庁管内の出火原因別火災件数 ( 平成 28 年中 ) 火災原因上位 10 位の構成比 社会福祉施設等の火災状況 ( 平成 19 年 ~ 平成 28 年過去 10 年間 ) 2
Ⅰ 災害事例 本日の演題 1 不適切な事例 2 推奨事例 Ⅱ 火災について 1 火炎や煙の性質 フラッシュオーバー現象 煙の拡大状況 2 スプリンクラー設備作動状況と奏功事例 3 電気設備機器火災 4 ガス設備機器火災 5 防火管理者が行うべきこと 消防計画の作成 自衛消防訓練の実施 6 火災時の対応 ~ 自衛消防訓練を実施しよう ~ (1) 通報 (2) 消火 (3) 避難誘導 (4) シミュレーション Ⅲ 地震について 1 震災に対する事前の備え家具類等の転倒落下防止対策 2 震災後の対応計画帰宅困難者対策等 Ⅰ-1 災害事例 不適切な事例 電気コンセントと電源プラグのトラッキング現象により出火した事例 用途等 (16) 項イ ( 特定用途 ( 飲食店やホテルや保育所等 ) が複合した建物 ) 耐火造地上 54 階 / 地下 6 階 出火場所 6 階ベビーホテル 焼損程度 ぼや ( 内壁若干 1 壁付きコンセント 1 テーブルタップ 1 等 ) 出火した時間帯 朝 出火原因 壁付きコンセントに差し込まれたテーブルタップのプラグが差込み部分で緩み プラグ部分で接触部過熱が発生し 出火したもの 飲食店から出火した火災 3
自衛消防活動の状況と問題点 自衛消防活動状況 発見初期消火 通報 従業員が発見し コンセントからプラグを抜いた 従業員から防災センターへ連絡し 防災センター勤務員及びビル管理会社社員が現場を確認後 従業員が 119 番通報を実施した 避難誘導なし ( すぐに火が消し止められたため ) 問題点 1 テーブルタップのプラグが経年劣化で差込み口で緩んでいたにも関わらず 継続して使用していた 2 電気配線の自主検査が不足していた テーブルタップのプラグが経年劣化で差込み口で緩んでいた 清掃もしておらず ほこりがたまっていた そんな状態で継続して使用すると トラッキング火災発生! 壁付きコンセントとプラグが焼損した状況 ( イメージ ) 4
自分のところは自分で守る 日常的に自主検査を行うことがとても大切です 消防計画に定められた自主検査チェック表を用いて 火気関係 ( 火災発生の要因となる項目 ) をチェックし 出火防止に努めてください 自主検査チェック表 ( 例 ) 未来を担う幼い命を守るため 真摯に取り組んでください Ⅰ-2 災害事例 推奨事例 資材置場の廃材等から火災が発生し 近隣保育園の自衛消防隊が活動した事例 用途等廃材置場出火場所屋外 焼損程度廃材 1 出火時間帯昼 出火原因 たばこの吸い殻が廃材に着火し 出火したもの 5
自衛消防活動の状況と推奨点 自衛消防活動状況 発見 通報 初期消火 避難誘導 資材置場に隣接する園舎にいた保育士 A が白煙を発見し 園長 B に報告した 園長 B は保育士 3 名と共に消火器を持って現場に向かった 園長 B は消火器による消火が困難と判断し 同行した保育士 C に園舎に戻って 119 番通報するよう指示した 保育士 C は園舎の電話から 119 番通報を実施した 園長 B と保育士 3 名は消火器 1 本で初期消火したが 効果がなかったため 向かいの事業所から水道ホースを延ばし 消火するとともに 応援に来た保育士 8 名とバケツリレー ( バケツ 10 個使用 ) により消火した 園舎に残った保育士が園児の安全を確認し いつでも避難できる態勢で待機した 推奨点 1 園長の指示に基づき 通報 初期消火を迅速に実施したことで 被害の拡大を阻止した 2 保育園では定期的に自衛消防訓練を実施しており その訓練が活かされた活動だった Ⅱ ー 1 火災や煙の性質 フラッシュオーバー現象 火通災報発生 自衛消防活動記号 約 10 分 活消動防開始隊 爆発的燃焼 火災発生から概ね 5~15 分 F.O. 前に食い止める = 被害の最小化 初期対応 ( 自衛消防 ) の重要性!! 6
Ⅱ ー 1 火災や煙の性質 煙の拡大状況実験 煙の発生状況に注目! Ⅱ ー 2 スプリンクラー設備 作動状況 スプリンクラー設備が作動するには 過信はモラルハザードにつながる 7
Ⅱ ー 2 スプリンクラー設備 SP 奏功率 (H19~H28 の 10 年間 ) 奏功状況 スプリンクラー設備の義務あり & 設置ありの対象物から出火した火災件数 3,502 件 作動件数奏功件数奏功率 175 157 89.7% 不作動件数 52 を含めると 69.2% 不奏功事由 散水障害ポンプの故障止水弁の閉鎖 不作動事由 ダクト内出火ヘッド緩和箇所からの出火止水弁の閉鎖 Ⅱ ー 3 電気設備機器火災 社会福祉施設等の火災の出火原因の 4 割は電気関連です!! 社会福祉施設等の火災状況 ( 平成 19 年 ~ 平成 28 年 ) 主な出火原因別の発生状況 合計ご 213 件 電気設備機器が 4 割 8
Ⅱ ー 3 電気設備機器火災 原因例その 1: 短絡 ( ショート ) 平成 28 年は 233 件発生しました Ⅱ ー 3 電気設備機器火災 原因例その 2: トラッキング トラッキング 平成 28 年 96 件 3.7 日に 1 件週に約 2 件 9
Ⅱ ー 4 ガス設備機器火災 社会福祉施設等の火災の出火原因の 2 割はガス関連です!! 社会福祉施設等の火災状況 ( 平成 19 年 ~ 平成 28 年 ) 主な出火原因別の発生状況 合計 213 件 Ⅱ ー 4 ガス設備機器火災 原因例 : 油かすに着火 清掃不適により コンロの火が油かすに着火し出火するケースが多いのです! 油かすの堆積状況 ガスコンロの周りやダクト内などを定期的に清掃しましょう ガスコンロからの火災発生原因を経過別に見ると圧倒的に多いのは 忘れる 放置する です! ガスコンロの火をつけている時にはその場を離れないようにしましょう 10
Ⅱ ー 5 防火管理者が行うべきこと ( 消防法第 8 条 ) 一定規模以上の建物の管理権原者は防火管理者を選任し 防火管理上必要な業務を行わせなければなりません 社会福祉施設等の場合は 建物全体の収容人員が 30 人以上の場合に 防火管理者の選任が義務となります 防火管理者は 定期的に 自衛消防訓練を行わなければなりません 社会福祉施設等の場合は 消火及び避難訓練を年 2 回以上実施しなければなりません 自衛消防訓練を実施する場合には あらかじめ消防機関に通報しなければなりません 自衛消防訓練通知書 を管轄消防署に届出してください 防火管理者 作成 消防計画 実行! 訓練を実施 結果の検証 改善 東京消防庁ホームページなどで提供している消防計画はあくまで作成例です 各事業所の実態に合うように加筆修正等して 生きた消防計画を作成してください 訓練実施後は 自衛消防訓練結果記録書 に結果を記録し 3 年間保存しなければなりません Ⅱ ー 6 火災時の対応 通報 以下のような文例を 電話の近くに貼っておく 119 番通報要領 ( 火災版 ) 火事です 区 町 1 丁目 1 番 1 号 ビル1 階の ( 保育所名 ) で が燃えています この他 必要に応じて 逃げ遅れている園児等はいるのかいないのか 目標となる建物例 : 寺 ヒルズ の隣です 11
Ⅱ ー 6 火災時の対応 通報 内線電話で模擬通報訓練 通報者役 通報者役 通報要領 消防役 1119 番をかける 2 消防庁 火事ですか? 救急ですか? 3 火事です 4 そこは 何区何町何丁目何番ですか? 消防役 5 区 町 丁目 番 号 ビル 階の 保育園です 7 厨房の が燃えています 6 何が燃えていますか? 8 わかりました 消防車が向かいます Ⅱ ー 6 火災時の対応 消火 消火器搬送 消火 1: 安全栓 ( 黄色いレバー ) を引き抜く 2 2: ノズルを火元に向ける 3: レバーを握る 4: 掃くように放射 燃えている物に向けて放射すること 自分が勤務する保育所に 何本の消火器がどこに置いてあるのかをまず確認してください 消火器の初期消火の限界 : 火が天井に達するまで 1 3 12
Ⅱ ー 6 火災時の対応 避難 避難の原則 : 合言葉は お か し も お押さないか駆けない ししゃべらない も戻らない 避難の呼びかけは肯定形で! 落ち着いて! 慌てないで! Ⅱ ー 6 火災時の対応 避難 保育所での実験 2 階建て ( 単独 ) ビルの 8 階に入居 階段の降下速度 年齢 平均速度 (m/ 秒 ) 3 歳児 0.32 4 歳児 0.58 5 歳児 0.67 年齢 平均速度 (m/ 秒 ) 3 歳児 0.15 4 歳児 0.42 5 歳児 0.5 1/2~2/3 に速度が落ちる 13
Ⅱ ー 6 火災時の対応 保育所での実験から見えてくること 階段の降下速度の違い日常使用の有無による慣れの違い 年長層から避難した方がスムーズ例 :5 歳 4 歳 3 歳 歩行速度が違うため 避難 近隣応援者の対応を事前に立てる応援者の不慣れ 子供の人見知り等 かえって時間がかかる場合がある Ⅱ ー 6 火災時の対応 やってみよう自衛消防訓練 1 消火 2 通報 3 避難 同時並行! 扉閉鎖 煙を防ぐ シミュレーション 危険ゾーン 火事だー! E 火事だー! C D 消火実施 A さんは消火にあたってください! A B 事務室 厨房 B さん 119 番してください! 残りの人は子供たちの避難誘導にあたってください 避難は A 階段と B 階段を使用してください! 避難ルートの選定 119 実施 14
Ⅱ ー 6 火災時の対応 やってみよう自衛消防訓練 シミュレーション 1 事前に作戦を立てる 本番で体が動くようになる イメージトレーニング 訓練で実践 基本戦略 炎と反対方向の出口から避難 直接屋外への避難ができない場合は 室内で一番安全と思われる所へ一時避難 屋外へ Ⅱ ー 6 火災時の対応 やってみよう自衛消防訓練 シミュレーション 2 課題が見えてくる 本番で起こるであろう問題を事前に解消しておける たとえば 搬送方法はどうすれば お昼寝の時間ならどうすれば 子供の行動を制御するには 避難後の人員整理はどうすれば 15
Ⅲ ー 1 震災に対する事前の備え チェックリストは次頁に 家具類等の転倒落下防止対策 Ⅲ ー 1 震災に対する事前の備え 家具類等の転倒落下防止チェックリスト 項 目 項 目 1 背の高い家具を単独で置かない 2 安定の悪い家具は背合わせに連結 3 壁面収納は壁 床に固定 4 二段重ね家具は上下連結 5 ローパーテーションは コの字型 H 型 に配置 6 OA 機器に落下防止対策 7 引出し 扉に開き防止対策 8 時計 額縁 掲示板等は固定 9 ガラスに飛散防止フィルム 10 床につまずき防止対策 ( 障害物等 ) 11 避難路に物を置かない 12 避難路に倒れやすいものを置かない 13 避難出口は見えやすく 14 非常用進入口に障害物を置かない 15 家具類の天板上に物を置かない 16 収納物のはみ出し 重心が高くなる収納方法は NG 17 危険物品 ( 薬品 可燃物等 ) を収納しない 18 デスクの下に物を置かない 19 引出し 扉は必ず閉める 20 ガラス窓の前に倒れやすいものを置かない 16
Ⅲ ー 2 震災後の対応計画 東京都帰宅困難者対策条例 一斉帰宅の抑制 子供の引き取りまで時間がかかる 保護者との連絡手段の確保を 施行 : 平成 25 年 4 月 1 日 帰宅困難者対策等 連絡手段の例 メール 災害用伝言ダイヤル SNS 等 複数の手段を確保 訓練の実施 最後に 繰り返し継続することが 力となります! 17