設例 [ 設例 1] 法定実効税率の算定方法 [ 設例 2] 改正地方税法等が決算日以前に成立し 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定 本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正 -2-

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改正法人税法により平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については法人税率が 30% から 25.5% に引き下げられ また 復興財源確保法により平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の 10% が復興特別法人

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税 35 外国法人税 36 適用時期等 38-2-

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

会計処理 29 当事業年度の所得等に対する法人税 住民税及び事業税等 29 更正等による追徴及び還付 30 追徴税額について課税を不服として法的手段を取る場合の取扱い 34 開示 36 当事業年度の所得等に対する法人税 住民税及び事業税等 37 受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税 38 外

その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

特集 : 税効果会計の見直しについて 企業会計基準適用指針第 26 号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 の公表について PwCあらた監査法人第 3 製造 流通 サービス部パートナー加藤達也 はじめに 2015 年 12 月 28 日 企業会計基準委員会 ( 以下 ASBJ という ) より

目的 1. 本会計基準は 企業会計審議会が平成 10 年 10 月に公表した 税効果会計に係る会計基準 ( 以下 税効果会計基準 という ) 及び 税効果会計に係る会計基準注解 ( 以下 税効果会計基準注解 という ) のうち開示に関する事項を改正することを目的とする 会計基準 開示表示 2. 税効

税されるときは 給与等課税事由が生じた日 ( 権利行使日 ) に 法人において 当該役務提供に係る費用の額が損金に算入されますので ( 法人税法第 54 条第 1 項 ) ストック オプションの付与時において将来減算一時差異に該当し 税効果会計の対象となります Q3: 削除 Ⅱ 中間財務諸表等におけ

公開草案なお 重要性が乏しい場合には当該注記を省略できる 現行 適用時期等 平成 XX 年改正の本適用指針 ( 以下 平成 XX 年改正適用指針 という ) は 公表日以後適用する 適用時期等 結論の背景経緯 平成 24 年 1 月 31 日付で 厚生労働省通知 厚生年金基金

用者の予測とは大きく異なった内容で突然開示されることがあり 繰延税金資産の回収可能性について事前に予測を行う観点からは 現行の税効果会計基準における繰延税金資産に関して開示されている情報では不十分である (3) 回収可能性に係る監査の指針を会計の指針に移管することから 会計処理だけでなく 開示につい

目次 1. 回収可能性適用指針の公表について (1) 公表の経緯 (2) 税効果会計プロジェクトの全体像 (3) 適用時期 2. 回収可能性適用指針の概要 (1) 繰延税金資産の回収可能性の基本的な考え方 (2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得 (3) 企業の分類に応じた取扱い総論 (4) 各

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

各項目における一時差異の取扱い 35 解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い 35 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い 36 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の取扱い 37 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い 38 退職給付に係る負債に関する一時差異の取

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解消見込年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い 35 固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い 36 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の取扱い 37 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い 38 退職給付に係る負債に関する一時差異の取扱い 43 繰延ヘッジ損益に係る一時差

業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑧・連結税効果実務指針(その3)

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

企業会計基準第 16 号持分法に関する会計基準 平成 20 年 3 月 10 日改正平成 20 年 12 月 26 日企業会計基準委員会 本会計基準は 平成 27 年 3 月 26 日までに公表された次の会計基準等による修正が反映されている 実務対応報告第 18 号 連結財務諸表作成における在外子会

実務対応報告第 7 号 連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い ( その 2) 平成 15 年 2 月 6 日改正平成 22 年 6 月 30 日最終改正平成 27 年 1 月 16 日企業会計基準委員会 目的 実務対応報告第 5 号 連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関す

固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い 36 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の取扱い 37 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い 38 退職給付に係る負債に関する一時差異の取扱い 43 繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い 46 繰越外国税額控除に係る繰延税金資産 47

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

税効果会計.docx

第 314 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (4)-1 DT 年 6 月 29 日 プロジェクト 項目 税効果会計 検討の進め方について 本資料の目的 1. 企業会計基準委員会及び税効果会計専門委員会 ( 以下 専門委員会 という ) では 日本公認会計士協

Report

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図表 1 将来減算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに加算され 将来解消するときに減算されるものです 税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です 貸倒引当金の損金算入限度超過額 賞与引当金及び退職給付引当金の額 減価償却費の損金算入限度超過額 棚卸資産等に係

本実務対応報告の概要 以下の概要は 本実務対応報告の内容を要約したものです 範囲 ( 本実務対応報告第 3 項 ) 本実務対応報告は 資金決済法に規定する仮想通貨を対象とする ただし 自己 ( 自己の関係会社を含む ) の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は除く 仮想通貨交換業者又はが保有する仮想

四半期決算の会計処理に関する留意事項

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第 3 章内部統制報告制度 第 3 節 全社的な決算 財務報告プロセスの評価について 1 総論 ⑴ 決算 財務報告プロセスとは決算 財務報告プロセスは 実務上の取扱いにおいて 以下のように定義づけされています 決算 財務報告プロセスは 主として経理部門が担当する月次の合計残高試算表の作成 個別財務諸

有償ストック・オプションの会計処理が確定

税効果会計シリーズ(7)_「個別財務諸表における繰延税金資産及び繰延税金負債の計上」

実務対応報告第 36 号従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い 目的 平成 30 年 1 月 12 日企業会計基準委員会 1. 本実務対応報告は 企業がその従業員等 1 に対して権利確定条件 2 が付されている新株予約権を付与する場合に 当該新株予約権の付与に伴い

平成29年3月決算の会計処理に関する留意事項

( 注 ) ( 注 ) リスク分担型企業年金では 標準掛金額に相当する額 特別掛金額に相当する額及びリスク対応掛金額に相当する額を合算した額が掛金として規約に定められるため 本実務対応報告では 規約に定められる掛金の内訳として 標準掛金相当額 特別掛金相当額 及び リスク対応掛金相当額 という用語を

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

Microsoft Word - 247_資本連結実務指針等の改正

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

税額控除限度額の計算この制度による税額控除限度額は 次の算式により計算します ( 措法 42 の 112) 税額控除限度額 = 特定機械装置等の取得価額 税額控除割合 ( 当期の法人税額の 20% 相当額を限度 ) 上記算式の税額控除割合は 次に掲げる区分に応じ それぞれ次の割合となります 特定機械

平成28年3月期決算の留意事項

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リース取引に関する会計基準

ことが見込まれる当期末に存在する将来加算 ( 減算 ) 一時差異の額 ( 及び該当する場合は 当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額 ) を除いた額のことです ( 下記図表 1 参照 ) 例えば 図表 1 の X2 期の場合 将来の事業年度における課税所得

具体的な組替調整額の内容は以下のとおりです その他の包括利益その他有価証券評価差額金繰延ヘッジ損益為替換算調整勘定 組替調整額 その他有価証券の売却及び減損に伴って当期に計上された売却損益及び評価損等 当期純利益に含められた金額 ヘッジ対象に係る損益が認識されたこと等に伴って当期純利益に含められた金

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法人税 住民税及び事業税等に関する会計基準 ( 案 ) について PwC あらた有限責任監査法人第 3 製造 流通 サービス部パートナー市原順二 はじめに 2016 年 11 月 9 日 企業会計基準委員会は企業会計基準公開草案第 59 号 法人税 住民税及び事業税等に関する会計基準 ( 案 )(

平成30年公認会計士試験

収益認識に関する会計基準

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

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変更の内容 変更の理由 原則的な遡及適用の場合 原則的な遡及適用が実務上不可能な場合 変更の内容 変更の理由 変更による影響額 ( 注 1) 変更による影響額 ( 注 2) 原則的な遡及適用が実務上不可能な理由 会計方針の変更の適用方法 会計方針の変更の適用開始時期 ( 注 1) 原則的な遡及適用に

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

④企業会計基準適用指針第8号

9 試験研究費の額に係る法人税額の特別控除額 2 10 還付法人税額等の控除額 3 11 退職年金等積立金に係る法人税額 4 12 課税標準となる法人税額又は個別帰属法人税額及びその法人税割額 の5の欄 ) リース特別控除取戻税額( 別表 1(2) の5の欄又は別表 1(3)

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

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第 352 回企業会計基準委員会 資料番号審議事項 (4)-5 日付 2017 年 1 月 10 日 プロジェクト 項目 税効果会計 米国会計基準における法人所得税に関する開示の動向 本資料の目的 1. 本資料では 今後の開示に関する項目を検討するにあたり 2016 年 7 月に米国財務会計基準審議

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税効果会計の対象となる税金及び適用する税率 積立金方式による諸準備金等の取扱い 繰延税金資産の回収可能性と控除額 繰越外国税額控除の税効果 表示方法 45 税務申告上の取扱い 46 Ⅲ 設例による解説設例 1 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算設例 2

公開草案 (2) その他利益剰余金 積立金繰越利益剰余金利益剰余金合計 5 自己株式 5 自己株式 6 自己株式申込証拠金 6 自己株式申込証拠金株主資本合計株主資本合計 Ⅱ 評価 換算差額等 Ⅱその他の包括利益累計額 1 その他有価証券評価差額金 1 その他有価証券評価差額金 2 繰延ヘッジ損益

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

目次 1. はじめに はじめに ドキュメントの見方 回収可能性の判断 はじめに システム全体像 基本情報登録 シミュレーション入力 シートの取得

2. 本適用指針は 退職給付会計基準が前提とする確定給付型の退職給付制度について 退職給付制度間の移行等により退職給付債務が増加又は減少した場合に適用される 用語の定義退職給付制度間の移行又は退職給付制度の改訂 3. 退職給付制度間の移行には 確定給付型の退職給付制度から他の確定給付型の退職給付制度

有形固定資産シリーズ(7)_資産除去債務②

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基準.doc

第28期貸借対照表

従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

2. 訂正箇所 (1)36ページ 4. 連結財務諸表 (9) 連結財務諸表に関する注記事項 ( 税効果会計関係 ) 訂正前 前連結会計年度 当連結会計年度 繰越欠損金賞与引当金たな卸資産評価損未実現損益未払事業税退職金その他の合計 8,077 千円 37,550 千円 63,409 千円 11,94


実務対応報告第 18 号連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い 平成 18 年 5 月 17 日改正平成 22 年 2 月 19 日改正平成 27 年 3 月 26 日改正平成 29 年 3 月 29 日最終改正平成 30 年 9 月 14 日企業会計基準委員会 目的 本

平成28年3月決算の会計処理に関する留意事項

粉飾決算と過年度損益修正 1. 概要 経営上の諸般の事情により やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります 前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は 会計上は当期の期首で修正できます ただし 過年度の損失を当期に損金算入すれば その事業年度に損金計上すべきであり 過年度の損失は

認した その内容は 会計処理 に関する改正及び 繰延税金資産及び繰延税金負債の表示 に係る改正と 評価性引当額等の注記事項 の追加である 繰延税金資産及び繰延税金負債の表示 に係る改正と 注記事項 の追加については 平成 30 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

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はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

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包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

「資産除去債務に関する会計基準(案)」及び

第 21 期貸借対照表 平成 29 年 6 月 15 日 東京都千代田区一番町 29 番地 2 さわかみ投信株式会社 代表取締役社長澤上龍 流動資産 現金及び預金 直販顧客分別金信託 未収委託者報酬 前払費用 繰延税金資産 その他 固定資産 ( 有形固定資産 ) 建物 器具備品 リース資産 ( 無形

退職給付制度の終了 4. 退職給付制度の 終了 とは 退職金規程の廃止 厚生年金基金の解散 基金型確定給付企業年金の解散又は規約型確定給付企業年金の終了のように退職給付制度が廃止される場合や 退職給付制度間の移行又は制度の改訂により退職給付債務がその減少分相当額の支払等を伴って減少する場合をいう な

表紙 EDINET 提出書類 寺崎電気産業株式会社 (E0176 訂正有価証券報告書 提出書類 根拠条文 提出先 提出日 有価証券報告書の訂正報告書金融商品取引法第 24 条の2 第 1 項近畿財務局長平成 30 年 9 月 21 日 事業年度 第 38 期 ( 自平成 29 年 4 月 1 日至平

7. 我が国の場合 第 4 項に示される政府が企業に課す賦課金の例としては 固定資産税 特別土地保有税 自動車取得税などが挙げられる 8. 日本基準において諸税金に関する会計処理については 監査 保証委員会実務指針第 63 号 諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取り扱い があるが ここでは

「中小企業の会計に関する指針《新旧対照表

平成20年2月

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企業会計基準適用指針第 27 号税効果会計に適用する税率に関する適用指針 平成 28 年 3 月 14 日企業会計基準委員会 目次項 目的 1 適用指針 2 範囲 2 用語の定義 3 税効果会計に適用する税率 4 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率 4 連結子会社の決算日が連結決算日と異なる場合の取扱い 9 開示 10 決算日後に税率が変更された場合の取扱い 10 適用時期等 11 議決 13 結論の背景 14 経緯 14 税効果会計に適用する税率 16 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率 16 法人税 地方法人税及び地方法人特別税に関する税率 16 住民税等に関する税率 18 決算日後に税率が変更された場合の取扱い 22 開示 23-1-

設例 [ 設例 1] 法定実効税率の算定方法 [ 設例 2] 改正地方税法等が決算日以前に成立し 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定 本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正 -2-

目的 1. 本適用指針は 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率について 企業会計審議会が平成 10 年 10 月に公表した 税効果会計に係る会計基準 ( 以下 税効果会計基準 という ) を適用する際の指針を定めるものである 適用指針 範囲 2. 本適用指針は 税効果会計基準が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表について適用する 用語の定義 3. 本適用指針における用語の定義は次のとおりとする (1) 標準税率 とは 地方公共団体が課税する場合に地方税法で通常よるべきとされている税率をいう (2) 超過課税による税率 とは 標準税率を超える税率で 地方公共団体が課税することが地方税法で認められているものをいう (3) 制限税率 とは 地方公共団体が超過課税による税率で課税する場合においても超えることのできない税率で 地方税法に規定されているものをいう (4) 法定実効税率 とは 連結納税制度を適用する場合を除き 次の算式によるものをいう なお 次の算式の 事業税率 については地方法人特別税の税率を含めるものとする ([ 設例 1]) 法定実効税率 = 法人税率 (1+ 地方法人税率 + 住民税率 )+ 事業税率 1+ 事業税率 税効果会計に適用する税率繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率 4. 税効果会計基準では 繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は 回収又は支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとされている ( 税効果会計基準第二二 2) 5. 法人税 地方法人税及び地方法人特別税について 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は 決算日において国会で成立している税法 ( 法人税 地方法人 -3-

税及び地方法人特別税の税率が規定されているもの ( 以下 法人税法等 という )) に規定されている税率による なお 決算日において国会で成立している法人税法等とは 決算日以前に成立した法人税法等を改正するための法律を反映した後の法人税法等をいう 6. 住民税 ( 法人税割 ) 及び事業税 ( 所得割 )( 以下合わせて 住民税等 という ) について 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は 決算日において国会で成立している税法 ( 住民税等の税率が規定されているもの ( 以下 地方税法等 という )) に基づく税率による なお 決算日において国会で成立している地方税法等とは 決算日以前に成立した地方税法等を改正するための法律を反映した後の地方税法等をいう 7. 第 6 項に定める決算日において国会で成立している地方税法等に基づく税率とは 次の税率をいう (1) 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立していない場合 ( 地方税法等を改正するための法案が国会に提出されていない場合を含む ) 決算日において国会で成立している地方税法等を受けた条例に規定されている税率 ( 標準税率又は超過課税による税率 ) (2) 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している場合 1 改正された地方税法等 ( 以下 改正地方税法等 という ) を受けて改正された条例 ( 以下 改正条例 という ) が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立している場合決算日において成立している条例に規定されている税率 ( 標準税率又は超過課税による税率 ) なお 決算日において成立している条例とは 決算日以前に成立した条例を改正するための条例を反映した後の条例をいう 2 改正地方税法等を受けた改正条例が決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立していない場合ア決算日において成立している条例に標準税率で課税することが規定されているとき改正地方税法等に規定されている標準税率イ決算日において成立している条例に超過課税による税率で課税することが規定されているとき改正地方税法等に規定されている標準税率に 決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える差分を考慮する税率 8. 第 7 項 (2)2イに定める差分を考慮する税率を算定するにあたっては 例えば 次の方法がある ([ 設例 2]) -4-

(1) 改正地方税法等に規定されている標準税率に 決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える数値を加えて算定する なお この結果として得られた税率が 改正地方税法等に規定されている制限税率を超える場合は 当該制限税率とする (2) 改正地方税法等に規定されている標準税率に 決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率における改正直前の地方税法等の標準税率に対する割合を乗じて算定する なお この結果として得られた税率が 改正地方税法等に規定されている制限税率を超える場合は 当該制限税率とする 連結子会社の決算日が連結決算日と異なる場合の取扱い 9. 連結財務諸表を作成するにあたって 連結子会社の決算日が連結決算日と異なる場合で かつ 当該連結子会社が連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行う場合 ( 企業会計基準第 22 号 連結財務諸表に関する会計基準 ( 以下 連結会計基準 という ) 第 16 項 ) 当該連結子会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は 第 5 項から第 8 項の 決算日 を 連結決算日 と読み替えた税率によるものとする また 連結子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行う場合 ( 連結会計基準 ( 注 4)) 当該連結子会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は 第 5 項から第 8 項の 決算日 を 連結子会社の決算日 と読み替えた税率によるものとする 開示決算日後に税率が変更された場合の取扱い 10. 第 4 項から第 9 項による税率を用いて決算を行い かつ 決算日後に当該税率の変更を伴う法律が成立した場合 税効果会計基準第四 4 に従って その内容及び影響を注記する 適用時期等 11. 本適用指針は 平成 28 年 3 月 31 日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用する 12. 日本公認会計士協会においては 日本公認会計士協会会計制度委員会報告第 6 号 連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針 ( 以下 連結税効果実務指針 という ) 同会計制度委員会報告第 10 号 個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針 ( 以下 個別税効果実務指針 という ) 同会計制度委員会報告第 11 号 中間 -5-

財務諸表等における税効果会計に関する実務指針 等の改正を検討されることが適当である 議決 13. 本適用指針は 第 331 回企業会計基準委員会に出席した委員 12 名全員の賛成により承認された -6-

結論の背景 経緯 14. 平成 25 年 12 月に開催された第 277 回企業会計基準委員会において 公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より 日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針 ( 会計処理に関する部分 ) について当委員会で審議を行うことが提言された この提言を受けて 当委員会は 税効果会計専門委員会を設置して 平成 26 年 2 月から審議を開始した その後 当委員会は 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針を先行して開発することとし 平成 27 年 12 月に 企業会計基準適用指針第 26 号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 ( 以下 回収可能性適用指針 という ) を公表した 15. 当委員会では 回収可能性適用指針の公開草案を平成 27 年 5 月に公表した後 日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のうち回収可能性適用指針に含まれないものについて 当委員会に移管すべく審議を行っている ただし このうち税効果会計に適用する税率の取扱いについては 実務上の課題があるため 税効果会計に関する実務指針全体の移管作業から切り離して早急に対応を図るべきとの意見が聞かれたことから 他に先行して関連する適用指針を開発することとした 具体的には 連結税効果実務指針及び個別税効果実務指針のうち税効果会計に適用する税率に関する部分について 基本的にその内容を本適用指針に引き継いだ上で 必要と考えられる見直しを行い 平成 27 年 12 月に企業会計基準適用指針公開草案第 55 号 税効果会計に適用する税率に関する適用指針 ( 案 ) を公表して広く意見を求めた 本適用指針は 公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い 公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである なお 本適用指針は 今後 税効果会計に関する実務指針全体の移管作業において税効果会計に関する適用指針が開発される時に 当該適用指針に統合されることを予定している 税効果会計に適用する税率繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率 法人税 地方法人税及び地方法人特別税に関する税率 16. 税効果会計基準及び同注解では 繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は 回収又は支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとする ( 税効果会計基準第二二 2) と定められており 当該税率の変更があった場合の取扱いについて 法人税等について税率の変更があった場合には 過年度に計上された繰延税 -7-

金資産及び繰延税金負債を新たな税率に基づき再計算するものとする ( 税効果会計基準注解 ( 注 6)) とされている この具体的な取扱いとして 個別税効果実務指針第 18 項においては 税効果会計上で適用する税率は決算日現在における税法規定に基づく税率による したがって 改正税法が当該決算日までに公布されており 将来の適用税率が確定している場合は改正後の税率を適用する と記載されており 税効果会計に適用する税率は 決算日において公布されている税法に規定されている税率によることとされていた 17. この公布日を基準とする取扱いについては 3 月末日を決算日とする企業において 当事業年度に税法を改正するための法律が当該決算日前までに国会で成立していても 官報による公布が当該決算日間際までなされないことが多く 決算手続や業績予測等の実務的な対応に困難を伴うとの意見が聞かれた また 決算日以前に税法を改正するための法律が国会で成立していても 公布が当該決算日以前になされていない場合 改正直前の税率により計算される繰延税金資産及び繰延税金負債の額は有用な情報とはいえないとの意見も聞かれた このため 実務を安定的に行うことができるようにする観点から 本適用指針では 法人税 地方法人税及び地方法人特別税について 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は 決算日において公布されている法人税法等に規定されている税率に代えて 決算日において国会で成立している法人税法等に規定されている税率によることとした ( 第 5 項参照 ) 住民税等に関する税率 18. 住民税等の税率は 国会で成立した改正地方税法等に規定された標準税率及び制限税率を基に 法人に適用する税率 すなわち住民税等の標準税率又は超過課税による税率を規定した改正条例が地方公共団体の議会等で成立することにより変更される ここで 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が決算日以前に成立し かつ 当該法律を含む改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立していない場合の取扱いを明確にすべきとの意見が聞かれた このため 本適用指針では 法人税 地方法人税及び地方法人特別税に関する税率の取扱いとは別に住民税等に関する税率の取扱いを定め 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している場合の取扱いを明らかにしている 19. 具体的には 当事業年度において地方税法等を改正するための法律が成立している場合 すなわち改正地方税法等が決算日以前に国会で成立している場合 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立しているときに 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる住民税等の税率は 当該決算日において各地方公共団体の議会等で成立している条例に規定されている税率 ( 標 -8-

準税率又は超過課税による税率 ) によることとした ( 第 7 項 (2)1 参照 ) 20. 一方で 改正地方税法等が決算日以前に国会で成立し かつ 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日以前に各地方公共団体の議会等で成立していない場合 仮に当該決算日において成立している条例に規定されている税率 ( 標準税率又は超過課税による税率 ) によるとすれば 改正直前の地方税法等に規定されていた標準税率及び制限税率に基づいて決定された税率を用いることとなる この場合 毎年度の税制改正において 通常 法人税法等を改正するための法律及び地方税法等を改正するための法律が同日に成立していることを踏まえると 当該税制改正の内容の一部しか繰延税金資産及び繰延税金負債の額に反映されず 結果として税制改正の趣旨が反映されない可能性がある このため 決算日において成立している条例に標準税率で課税することが規定されている場合 本適用指針では 税制改正の趣旨を反映させる観点から 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる住民税等の税率は 改正地方税法等に規定されている標準税率によることとした ( 第 7 項 (2)2ア参照) また 決算日において成立している条例に超過課税による税率で課税することが規定されている場合 従来から行われている実務を踏まえ 改正地方税法等に規定されている標準税率に 当該決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える差分を考慮する税率によることとした ( 第 7 項 (2)2イ参照) 21. 第 7 項 (2)2イに定める差分を考慮する税率を算定する方法として 第 8 項において 2 つの方法を示している ただし 税制改正の趣旨等を勘案して 他の合理的な方法があれば当該方法により算定することを妨げるものではないため 例えば としている 決算日後に税率が変更された場合の取扱い 22. 税効果会計基準では 決算日後に税率の変更があった場合には その内容及びその影響 を注記する ( 税効果会計基準第四 4) とされており 決算日後に税率が変更された場合 当該変更された税率により計算した繰延税金資産及び繰延税金負債の額を当該決算日における財務諸表に反映しないこととされている 審議の過程では 税効果会計に適用する税率は繰延税金資産及び繰延税金負債の見積りの一部であると考えられることから 決算日後に税率の変更を伴う法律又は条例が成立した場合には財務諸表を修正すべき後発事象 ( 以下 修正後発事象 という ) として取り扱い 改正された税法又は改正条例に規定された税率により計算した繰延税金資産及び繰延税金負債を当該決算日における財務諸表に反映することが情報としてより有用であるとの意見が聞かれた この点 仮に決算日後の税率の変更を修正後発事象として取り扱う場合 決算発表日や監査報告書日等の直前に税率の変更を伴う法律又は条例が成立するときには実務 -9-

上の手続が煩雑となり 例えば 2 月末日を決算日とする企業においては 実務を安定的に行うことが難しくなるものと考えられる また 例えば 上場株式の減損において用いられる株価や固定資産の減損会計において使用価値を算定する際に用いられる割引率のように 既存の会計基準では見積計算に用いる情報は期末日現在のものが用いられ 期末日後の変更は必ずしも財務諸表に反映されていない なお 国際財務報告基準 (IFRS) においても 決算日後の税率の変更は 当該変更された税率により計算した繰延税金資産及び繰延税金負債の額を当該決算日における財務諸表に反映しないことを前提としているものと考えられる 開示 23. 第 22 項を踏まえ 決算日後に税率が変更された場合 当該変更された税率により計算した繰延税金資産及び繰延税金負債の額を当該決算日における財務諸表に反映しない現行の取扱いを踏襲している この結果 第 4 項から第 9 項による税率を用いて決算を行い かつ 決算日後に当該税率の変更を伴う法律が成立した場合 税効果会計基準に従って その内容及び影響を注記することとなる ( 第 10 項参照 ) なお 改正地方税法等が決算日以前に成立し かつ 決算日後に当該改正地方税法等を受けた改正条例が成立し超過課税による税率が変更された場合であっても 第 7 項 (2)2イ及び第 8 項に定める差分を考慮する税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債が計算されていることを踏まえると 通常 その影響は質的及び金額的な重要性が乏しいと考えられる そのため 第 10 項では 決算日後に税率の変更を伴う条例が成立した場合は含めないこととした -10-

設例 次の設例は 税効果会計基準及び本適用指針で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり 仮定として示された前提条件の記載内容は 経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある [ 設例 1] 法定実効税率の算定方法 1. 前提条件 (1) 企業 A は 3 月末日を決算日とする企業である (2) 企業 A は 複数の事業所を有するが 主な所得源泉地である本社所在地に適用されて いる税率を基に法定実効税率を算定している 当該所在地における地方公共団体では 超過課税による税率により住民税及び事業税を課している (3) X1 年 3 月 31 日において成立している法律又は条例に規定されている税率であって X1 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の法定実効税率の算定に関連する税率は ( 表 1) のとおりである ( 表 1) 根拠となる法律及び条例 X1 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の税率 法人税 法人税法 23.9 % 地方法人税 地方法人税法 4.4 % 地方法人特別税 地方法人特別税等に関する暫定措置法 93.5 % (*2) 住民税 ( 法人税割 )(*1) ( 超過課税による税率 ) 条例 16.3 % 事業税 ( 所得割 ) ( 標準税率 ) ( 超過課税による税率 ) 地方税法条例 6.0 % (*2) 3.1 % (*2) 3.4 % (*1) 簡便的に 都道府県民税及び市町村民税の法人税割の税率を合わせて示している (*2) 事業税 ( 所得割 ) の標準税率の上段は 地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示している 下段は 地方法人特別税等に関する暫定措置法において 当該措置法が適用されることにより読 み替えられている地方税法の税率を示している なお 当該税率 (3.1%) は 地方法人特別税の 税率を含めた事業税率 (6.0%) から 事業税の税率 ( 標準税率 ) に地方法人特別税等に関する暫 定措置法に規定されている税率を乗じた数値 (2.9%=3.1% 93.5%( 小数点以下第 2 位を四捨五入 している )) を控除して算定した数値と一致する 2. 法定実効税率の計算式 地方法人税及び住民税 ( 法人税割 ) の税率は法人税額を課税標準として定められている また 地方法人特別税の税率は 事業税 ( 所得割 ) の標準税率による税額を課税標準とし -11-

て定められており 本適用指針では事業税率に含まれることとしている 当該事項を考慮すると 法人税 地方法人税 地方法人特別税及び住民税等の税額 ( 以下 合計税額 という ) 並びに課税所得に対する合計税額の割合 ( 以下 合計税率 という ) は 次のとおり算定される 法人税額 = 課税所得 法人税率地方法人税額 = 課税所得 法人税率 地方法人税率住民税額 ( 法人税割 ) = 課税所得 法人税率 住民税率事業税額 ( 所得割 )+ 地方法人特別税額 = 課税所得 事業税率合計税額 = 課税所得 { 法人税率 (1+ 地方法人税率 + 住民税率 )+ 事業税率 } 合計税率 = 合計税額 課税所得 = 法人税率 (1+ 地方法人税率 + 住民税率 )+ 事業税率 また 事業税 ( 所得割 ) 及び地方法人特別税は その支払事業年度の課税所得又は税務上の欠損金の計算上 損金に算入されることを勘案すると 法定実効税率は 合計税率から 事業税率に法定実効税率を乗じた数値を控除して求められる 法定実効税率 = 合計税率 - 事業税率 法定実効税率 (1+ 事業税率 ) 法定実効税率 = 合計税率合計税率法定実効税率 = (1+ 事業税率 ) 上記の算式に 合計税率の算式を当てはめると 第 3 項 (4) に示した次の算式が求められ る 法定実効税率 = 法人税率 (1+ 地方法人税率 + 住民税率 )+ 事業税率 1+ 事業税率 3. 法定実効税率の算定企業 A の X1 年 3 月期における決算において X1 年 4 月 1 日以後開始する事業年度に解消される将来減算一時差異に係る繰延税金資産及び将来加算一時差異に係る繰延税金負債の計算に用いる法定実効税率は 次のとおり算定される なお 法定実効税率は 小数点以下第 2 位を四捨五入している 法定実効税率 33.1%= 23.9% (1+4.4%+16.3%)+(2.9%+3.4%) 1+(2.9%+3.4%) ( 参考 ) 事業税率に地方法人特別税の税率を含めない場合の法定実効税率の計算式本適用指針における法定実効税率の算式における 事業税率 には地方法人特別税の税 -12-

率が含まれているため 事業税率に地方法人特別税の税率を含めない場合の法定実効税率の計算式を実務の参考として示すと 次のとおりである 法定実効税率 = 法人税率 (1+ 地方法人税率 + 住民税率 (*3))+ 地方法人特別税率 事業税の税率 (*1)+ 事業税の税率 (*2) 1+ 地方法人特別税率 事業税の税率 (*1)+ 事業税の税率 (*2) (*1) 事業税 ( 所得割 ) の標準税率 (*2) 各地方公共団体が条例で定めた事業税 ( 所得割 ) の税率 ( 標準税率又は超過課税による税率 ) (*3) 各地方公共団体が条例で定めた住民税 ( 法人税割 ) の税率 ( 標準税率又は超過課税による税率 ) -13-

[ 設例 2] 改正地方税法等が決算日以前に成立し 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定 1. 前提条件 (1) 企業 A は 3 月末日を決算日とする企業である (2) 企業 A は 複数の事業所を有するが 主な所得源泉地である本社所在地に適用されている税率を基に法定実効税率を算定している 当該所在地における地方公共団体では 超過課税による税率により住民税及び事業税を課している (3) X2 年 3 月 31 日に 改正地方税法等が国会で成立し X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の事業税 ( 所得割 ) の標準税率が改正された (4) X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の超過課税による税率を定めた改正条例は X2 年 3 月 31 日において成立していない (5) 事業税 ( 所得割 ) の制限税率は 標準税率に 1.2 を乗じた税率である (6) X2 年 3 月 31 日において成立している X1 年 4 月 1 日から X2 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度 ( 当期 ) 及び X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の法定実効税率の算定に関連する税率は ( 表 2) のとおりである ( 表 2) 根拠となる法律及び条例 X1 年 4 月 1 日から X2 年 4 月 1 日 X2 年 3 月 31 日までの以後開始する間に開始する事業事業年度の税率年度 ( 当期 ) の税率 法人税 法人税法 23.9 % 23.9 % 地方法人税 地方法人税法 4.4 % 4.4 % 地方法人特別税 地方法人特別税等に関する暫定措置法 (*2) 93.5 % 152.6 % 住民税 ( 法人税割 )(*1) ( 超過課税による税率 ) 条例 16.3 % 16.3 % 事業税 ( 所得割 ) ( 標準税率 ) ( 超過課税による税率 ) 地方税法 (*2) 条例 ( ア )6.0 % (*3) ( イ )3.1 % (*3) ( ウ )3.4 % ( エ )4.8 % (*3) ( オ )1.9 % (*3) ( 未定 )(*4) (*1) 簡便的に 都道府県民税及び市町村民税の法人税割の税率を合わせて示している (*2) X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の税率は 改正地方税法等に規定されている税率である (*3) 事業税 ( 所得割 ) の標準税率の上段は 地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示している 下段は 地方法人特別税等に関する暫定措置法において 当該措置法が適用されることにより読 み替えられている地方税法の税率を示している なお 当期 ( イ ) の当該税率 (3.1%) は 地方 法人特別税の税率を含めた事業税率 (6.0%) から 事業税の税率 ( 標準税率 ) に地方法人特別税 等に関する暫定措置法に規定されている税率を乗じた数値 (2.9%=3.1% 93.5%( 小数点以下第 2 位を四捨五入している )) を控除して算定した数値と一致する 同様に 翌期以降 ( オ ) の当該税率 (1.9%) は 地方法人特別税の税率を含めた事業税率 (4.8%) -14-

から 事業税の税率 ( 標準税率 ) に地方法人特別税等に関する暫定措置法に規定されている税率を乗じた数値 (2.9%=1.9% 152.6%( 小数点以下第 2 位を四捨五入している )) を控除して算定した数値と一致する (*4) X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度の税率は 改正地方税法等を受けた改正条例が成立していないため 未定である 2. X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度における事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率の算定当事業年度において地方税法等が改正され かつ 当該改正地方税法等を受けた改正条例が決算日以前に成立していない場合 当該決算日において成立している条例に超過課税による税率で課税することが規定されているときは 改正地方税法等に規定されている標準税率に 当該決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率が改正直前の地方税法等の標準税率を超える差分を考慮する税率による ( 第 7 項 (2)2イ参照) 当該差分を考慮する税率については次の 2 つの方法が考えられることから それぞれの方法で法定実効税率を算定する (1) 第 8 項 (1) による方法 (2) 第 8 項 (2) による方法 (1) 第 8 項 (1) による方法により超過課税による税率を算定する場合の法定実効税率 1 X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度における事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率の算定第 8 項 (1) の方法によると 超過課税による税率を算定する場合 改正地方税法等に規定されている標準税率 (( 表 2) の ( オ )) に 決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率 (( 表 2) の ( ウ )) が改正直前の地方税法等の標準税率 (( 表 2) の ( イ )) を超える数値を加えて算定する したがって 第 8 項 (1) による方法により X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度における事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率は 次のように 2.2% と算定される 2.2%=1.9%+(3.4%-3.1%) なお この結果として得られた税率 2.2% は 改正地方税法に規定されている事業税 ( 所得割 ) の制限税率 (2.28%=1.9% 1.2) を超えない税率である 2 X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度に解消する一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる法定実効税率の算定 1で算定した事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率を前提とすると X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度に解消する一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債 -15-

の計算に用いる法定実効税率は 次のとおり算定される 法定実効税率 32.3%= 23.9% (1+4.4%+16.3%)+(2.9%+2.2%) 1+(2.9%+2.2%) (2) 第 8 項 (2) による方法により超過課税による税率を算定する場合の法定実効税率 1 地方法人特別税の税率が含まれていない事業税の税率に基づいて割合を算定する方法により超過課税による税率を算定する場合の法定実効税率第 8 項 (2) の方法によると 超過課税による税率を算定する場合 改正地方税法等に規定されている標準税率 (( 表 2) の ( オ )) に 決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率 (( 表 2) の ( ウ )) における改正直前の地方税法等の標準税率 (( 表 2) の ( イ )) に対する割合を乗じて算定する したがって 第 8 項 (2) による方法により X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度における事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率は 次のように 2.08% と算定される 当該税率は 小数点以下第 3 位を四捨五入している 2.08%=1.9% (3.4% 3.1%) なお この結果として得られた税率 2.08% は 改正地方税法に規定されている事業税 ( 所得割 ) の制限税率 (2.28%=1.9% 1.2) を超えない税率である 上記で算定した事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率を前提とすると X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度に解消される一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる法定実効税率は 次のとおり算定される なお 法定実効税率は 小数点以下第 2 位を四捨五入している 法定実効税率 32.2%= 23.9% (1+4.4%+16.3%)+(2.9%+2.08%) 1+(2.9%+2.08%) 2 地方法人特別税の税率が含まれている事業税率に基づいて割合を算定する方法により超過課税による税率を算定する場合の法定実効税率地方公共団体によっては 過年度から継続的に地方法人特別税の税率を考慮して超過課税による税率を決定している場合がある このことから 第 8 項 (2) による方法で超過課税による税率を算定する場合 改正地方税法等に規定されている標準税率 (( 表 2) の ( エ )) に 決算日において成立している条例に規定されている超過課税による税率 (( 表 2) の ( ウ )+2.9%) における改正直前の地方税法等の標準税率 (( 表 2) の ( ア )) に対する割合を乗じて算定する方法も考えられる したがって 第 8 項 (2) による方法により X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度における事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率は 次のように 2.14% と算定される -16-

2.14%=4.8% (6.3% 6.0%)-2.9% なお この結果として得られた税率 2.14% は 改正地方税法に規定されている事業税 ( 所得割 ) の制限税率 (2.28%=1.9% 1.2) を超えない税率である 上記で算定した事業税 ( 所得割 ) の超過課税による税率を前提とすると X2 年 4 月 1 日以後開始する事業年度に解消される一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる法定実効税率は 次のとおり算定される なお 法定実効税率は 小数点以下第 2 位を四捨五入している 法定実効税率 32.3%= 23.9% (1+4.4%+16.3%)+(2.9%+2.14%) 1+(2.9%+2.14%) -17-

本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正 本適用指針により 当委員会が公表した会計基準等については 次の修正を行う ( 下線は追加部分 取消線は削除部分を示す ) (1) 実務対応報告第 7 号 連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い ( その 2) 1 Q2 A (1) 財務諸表上の一時差異として認識される金額は 連結納税制度を適用した場合であっても 法人税 地方法人税 住民税及び事業税について基本的に共通であるため 利益に関連する金額を課税標準とする税金の種類 ( 以下 税金の種類 という ) ごとに区分して計算する必要はない したがって 一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の金額は 従来どおり 法定実効税率 ( 個別実務指針第 17 項 ) を適用して計算する ただし 繰延税金資産の回収可能性の判断にあたっては 税金の種類ごとに行う必要がある (Q3 参照 ) 以上 -18-