糖尿病市民公開講座 糖尿病で透析にならないために 獨協医大越谷病院腎臓内科川本進也 平成 27 年 3 月 1 日ふれあいキューブ
何からやるか いつからやるか! 今でしょ! Q: もし 皆さんが生活習慣を変えるとしたら何からはじめますか? ひとつ選んでみて下さい 食生活を変える 運動量を増やす 体重をコントロールする アルコールを減らす 出典 : 目で見てわかる糖尿病 1~ もしも 100 人の糖尿病村があったら ~ ( 診断と治療社 ) 坂根直樹著
皆さんに質問です 腎臓が悪くならない方法はあるか? 腎臓病といってもいろいろ 糖尿病 高血圧から腎臓が悪くなる場合 原因が生活習慣と関連の無い場合 腎臓を長持ちさせる方法はある
腎臓内科通院後の腎機能の推移 50 腎機能 40 30-11.1 ml/min/1.73m 2 20-4.8 ml/min/1.73m 2 10 0-24M -12M 初診時 12M
村田英雄さんの生き方から学ぶ 40 代で糖尿病 高血圧を指摘 60 代に心筋梗塞 心臓バイパス手術 右足を膝の下から切断する 左足も切断 白内障の手術も受ける 網膜症の手術も受ける 71 歳で再婚する 73 歳で肺炎で永眠される 透析は受けなかったが腎臓も悪かった 6
糖尿病治療の目標は合併症抑制による健康寿命の確保 健康な人と変わらない日常生活の質 (QOL) の維持 健康な人と変わらない寿命の確保 糖尿病性細小血管合併症 ( 網膜症 腎症 神経障害 ) および動脈硬化性疾患 ( 虚血性心疾患 脳血管障害 閉塞性動脈硬化症 ) の発症 進展の阻止 血糖 体重 血圧 血清脂質の良好なコントロール状態の維持 日本糖尿病学会編 : 糖尿病治療ガイド 2006-2007,p21
合併症は しめじ と覚えましょう! 糖尿病に特有な合併症は 頭文字をとって しめじ と覚えましょう! 1. 神経障害 ( し ) 2. 眼 ( め ) 3. 腎臓 ( じ ) 8
腎臓について 場所 働き 腎臓の力 の測り方と分類 クレアチニン値と糸球体濾過値 (egfr) 糖尿病性腎症における治療の三原則 - 血糖管理 血圧管理 タンパク質制限 腎臓の力 に応じた治療 - 重み付け 中断しない 放置しない
ミネラル アルカリの調節 ろ過 いらないものを捨てる 水 貧血改善ホルモン分泌 水
腎臓の働き 水の調節 からだの腫れ ( 浮腫 ) 毒素を捨てる 塩分を捨てる 食欲不振尿毒症 高血圧 血圧上昇ホルモン分泌 高血圧 ミネラルの調節 (Na K Ca P) 骨を強くするホルモン ( ビタミン D) 骨折 造血ホルモン分泌 (EPO) 貧血 アルカリ性を保つ バランスが崩れる
腎臓の力の測りかたと分類 血液中のクレアチニン値 腎機能を反映する性別 年齢 筋肉量によって個人差がある 糸球体ろ過量 (GFR)= 真の腎機能測定方法が複雑で 入院が必要 推定糸球体ろ過量 (egfr) クレアチニン値を年齢 性別 人種を考慮して計算する
糖尿病性腎症の経過 (1 型糖尿病 ) 糸球体濾過量 腎機能 (ml/ 分 ) (GFR) 100 50 発症 第 1 期第 2 期第 3 期 第 4 期第 5 期 腎症前期 早期腎症 顕性腎症透析療法期腎不全期 高網血膜腎透圧症症析 クレアチニンクリアランス (GFR) 蛋白尿 蛋白尿 0 5 10 15 20 25 年 臨床的蛋白尿 微量アルブミン尿
CKD の重症度分類 CKD 診療ガイド 2012 原疾患蛋白尿区分 A1 A2 A3 糖尿病 高血圧, 腎炎, 多発性嚢胞腎, 移植腎, 不明, その他 GRF 区分 (ml/ 分 / 1.73m 2 ) G1 G2 G3a G3b 尿アルブミン定量 (mg/ 日 ) 尿アルブミン /Cr 比 (mg/gcr) 尿蛋白定量 (g/ 日 ) 尿蛋白 /Cr 比 (g/gcr) 正常または高値 正常または軽度低下 軽度 ~ 中等度低下 中等度 ~ 高度低下 90 60~89 45~59 30~44 G4 高度低下 15~29 G5 末期腎不全 (ESKD) <15 正常微量アルブミン尿顕性アルブミン尿 30 未満 30~299 300 以上 正常軽度蛋白尿高度蛋白尿 0.15 未満 0.15~0.49 0.50 以上 1 2 重症度は原疾患 GFR 区分 蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する.CKD の重症度は死亡, 末期腎不全, 心血管死亡発症のリスクを緑 のステージを基準に, 黄, オレンジ, 赤 の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する. 3A 3B 4 (KDIGO CKD guideline 2012 を日本人用に改変 )
糖尿病患者における糖尿病性腎症の合併頻度 ( 日本 ) 顕性蛋白尿 ( 第 3 期 ) 7% 腎不全 ( 第 4 期 ) 2.6% 微量アルブミン尿 ( 第 2 期 ) 32% 正常アルブミン尿 ( 第 1 期 ) 58% Yokoyama et al: Diabetes Care 30:989-992, 2007
糖尿病性腎症の場合進行が早い
糖尿病性腎症は, 高血糖のため腎臓のろ過機能が弱まって起こります 腎臓の仕組み 血液 血液 糸球体 腎臓の位置 腎臓の断面図 尿細管へ 糸球体の細小血管が硬くなったり狭くなったりして 血液をろ過する能力が弱くなり 腎症が進行していきます 22
糖尿病性腎症で人工透析を受ける患者さんは年々増加しています
糖尿病性腎症で透析に入ると 5年後には約半数が 原疾患別 生存率の推移 100 90 80 85.0 83.9 79.0 慢性糸球体腎炎 嚢胞腎 慢性腎盂腎炎 腎硬化症 93.6 89.4 75.5 69.8 64.6 70 累 60 積 生 50 存 40 率 30 糖尿病性腎症 55.0 47.9 53.3 48.6 44.8 41.7 40.8 36.1 23.6 20 10 23.2 12.6 11.5 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 年 25 [日本透析医学会]
糖尿病性腎症の診断 確定診断 : 腎生検 ( 他の腎疾患を疑う時 ) 蛋白尿主体 ( 血尿は少ない ) の尿検査の異常 5 年以上の糖尿病期間網膜症あり 早期診断 : 微量アルブミン尿 ほんの少し蛋白尿が出ている
早期発見, 早期治療のために定期的な検査を受けましょう 糖尿病性腎症は, あまり自覚症状がないまま進行しますので定期的な検査が大切です 27
糖尿病性腎症における治療の 3 原則 血糖管理 血圧管理 蛋白質制限食 28
糖尿病性腎症の進行を防ぐために 1 血糖コントロールを徹底しましょう 30
HbA1C 7% 以下で腎症の発症 進展が低下 -Kumamoto Study- 血糖コントロール指標と腎症悪化の関係 (6 年間追跡 ) (/ 患者 100 人 年 ) HbA1c 空腹時血糖 食後血糖 16 14 腎症の進行率 12 10 8 6 4 2 0 5 6 7 8 9 10 11 HbA1c(%) 曲線は対数線形ポアゾン回帰分析曲線 80 100 120 140 160 180 200 空腹時血糖 (mg/dl) 140 180 220 260 300 食後 2 時間血糖値 (mg/dl) [Ohkubo Y, et al.:diabetes Res Clin Pract 28, 103-117(1995)]
血糖コントロールを改善すると (HbA1c 値を 1% 低下させる ) 合併症は改善します 大血管障害 ( 腎臓 ) BMJ 2000; 321:405
糖尿病性腎症における治療の 3 原則 血糖管理 血圧管理 蛋白質制限食 39
糖尿病性腎症の進行を防ぐために 2 血圧の管理に注意しましょう 40
高血圧と糖尿病は密接に関連 高血圧 糖尿病の合併頻度 ( 端野 壮瞥町研究 ) (%) 糖代謝異常者中の高血圧 (%) 高血圧者中の糖代謝異常 100 100 658 67.6% 465 53.0% 46 38.0% 正常血圧 658 56.3% 136 38.5% 179 39.7% 正常糖代謝 50 0 136 14.0% 179 18.4% 正常糖代謝 190 21.6% 223 25.4% 境界型糖尿病 27 22.3% 48 39.7% 糖尿病 境界域高血圧 高血圧 p<0.001 X 2 検定 50 0 465 39.8% 46 3.9% 正常血圧 190 53.8% 27 7.6% 境界域高血圧 223 49.5% 48 10.7% 高血圧 境界型糖尿病 糖尿病 p<0.001 X 2 検定 [Iimura O:Hypertens Res 19(Suppl 1), S1-S8(1996)]
高血圧を有する 2 型糖尿病患者では 厳格な血圧コントロールが 合併症を予防します リスク軽減 厳密な降圧 144/82 vs 154/87 mmhg -24-32 -37 ( 腎臓 ) -44-37 -56
糖尿病性腎症における降圧療法 糖尿病性腎症に対する治療の 3 本柱のうち 血圧コントロールは 患者の予後を左右する心血管系障害に最も大きな影響を及ぼす 厳格な降圧療法が必要
家庭血圧を測りましょう 家庭血圧は上腕で測る血圧計で測定します 家庭血圧の測り方 測定朝 : 起床後 1 時間以内排尿後 朝の服薬前 朝食前晩 : 就寝前座って 1~2 分安静にした後 測定する 測定回数 1 機会 1~3 回測定期間できるだけ長い期間記録全ての測定値を記録する 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン 2009(JSH2009) より作成
血圧は常に変動しています 血圧は 1 日を通して変動します (mmhg) 200 血圧はさまざまな要因で変動します 150 収縮期血圧 寒さ 血圧 100 50 拡張期血圧 排便 激しい運動 9 12 15 18 21 24 3 6 9 ( 時 ) 時間 基本的には起床とともに上昇し 夜間睡眠中は低い値を示します 46
降圧目標 (mmhg) 診察室血圧 家庭血圧 若年者 中年者 130/85 未満 125/80 未満 高齢者 140/90 未満 135/85 未満 糖尿病患者 腎臓病患者 心筋梗塞後 130/80 未満 125/75 未満 脳卒中 140/90 未満 135/85 未満 47
自動調節能の破綻 直接全身血圧が伝達される 糸球体障害の進行 過剰ろ過 蛋白尿 49
降圧薬によるコントロ - ル すでに高血圧を有する場合は 生活習慣の改善に加えて薬による治療が必要となることもあります すでに薬を服用中の方で 検査値が良くなってきたり 自覚症状がなくなってもご自分の判断で服用を中止してはいけません 薬には飲み合わせがあります お薬手帳を活用して ご自分が飲んでいる薬がわかるようにしておきましょう
降圧薬療法が糖尿病性腎症進展を抑制 (%) 100 末期 80 73% 腎不全 60 の累 40 31% 積発症 20 率 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 ( 年 ) 腎症発症後の観察期間 16 年間の累積発症率 降圧薬 (-) 降圧薬 (+) [Parving HH, et al: Kidney Int 49, 1778-1782(1996)] 51 [Krolewski AS, et al: Am J Med 78, 785-794(1985)]
目標降圧値を達成するには複数の降圧薬が必要! 降圧薬の数 0 1 2 3 4 UKPDS ABCD MDRD HOT AASK 52
糖尿病性腎症における治療の 3 原則 血糖管理 血圧管理 蛋白質制限食 54
糖尿病性腎症の進行を防ぐために 3 たんぱく質や塩分を摂り過ぎないようにしましょう 55
たんぱく質制限の必要性
塩味ではない味を楽しむ
腎臓の力 に応じた食事療法
腎臓の力 に応じた食事療法
腎臓の力 に応じた治療のまとめ 第 1 期 ( 腎症前期 ) 第 2 期 ( 早期腎症期 ) 第 3 期 A ( 顕性腎症前期 ) 第 3 期 B ( 顕性腎症後期 ) 第 4 期 ( 腎不全期 ) 第 5 期 ( 透析療法期 ) 血糖管理 降圧治療 蛋白制限食 減塩 降圧薬の重要性
透析が始まった人のつぶやき 出典 : 目で見てわかる糖尿病 1~ もしも 100 人の糖尿病村があったら ~ ( 診断と治療社 ) 坂根直樹著
糖尿病治療の ABC A A1c を 7% 以下にコントロール B BP( 血圧 ) を 130/80 mmhg 家庭血圧測定 BMI ( 体重 / 身長 2 ) 25 以下 C 中断しない 放置しない 検査は受ける
チーム医療で腎臓を糖尿病から守りましょう
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