装具 1 装具の定義 装具とは外傷 疾病等による変形や機能障害に対して 変形の予防 矯正 患部の保護 失われた機能 の代償や補助等を目的として 四肢 体幹の機能障害を軽減するために使用する補助装置である 2 装具の機能的分類 装具は機能的に次のように分類される (1) 固定用装具 一定の角度に身体の一部を固定するために使用する装具 (2) 支持装具 一定の姿勢を維持するために使用する装具 (3) 矯正用装具 変形を矯正するために使用する装具 (4) 免荷装具 下肢の一定の部分にかかる体重を免荷または減少させるために使用する装具 (5) 歩行用装具 歩行の際に使用する装具 (6) 立位保持用装具起立のために使用する装具 (7) 夜間装具 変形の予防や矯正のために夜間就寝時またはベッドでの安静時に使用する装具 (8) 牽引装具 牽引を目的に使用する装具 3 装具の身体部位別分類 装具は装着する身体部位により大別すると 下肢装具 体幹装具 上肢装具に分類される 4 下肢装具下肢の機能障害に対して 1 立位の保持 ( 関節固定 )2 変形の予防及び矯正 3 不随意運動の抑制 4 体重の支持 及び免荷等を目的として用いられる 次の種類があり 材質等の違いにより基本構造の型式として金属枠 硬性 両側支柱 軟性等がある ( 靴型装具 足底装具には別な型式があり それについては それぞれの項で説明する ) (1) 下肢装具の種類ア股装具骨盤から大腿下部におよび 股関節の動きを制御する装具 金属枠硬性軟性
イ長下肢装具基本的には 大腿上部より足底におよぶもので 膝関節と足関節の動きを制御する装具 障害の状態により膝関節と足関節に加えて 股関節の動きを制御することもあり この場合体幹装具付長下肢装具が用いられる 足部おおい 足底板 両側支柱片側支柱硬性骨盤帯付両側支柱 ウ膝装具 大腿から下腿におよぶもので 膝関節の動きを制御する装具 反張膝 ( 膝関節が過伸展する状態 ) 用装具としてスウェーデン式がある 両側支柱硬性スウェーデン式軟性 ( 支柱なし ) 軟性 ( 支柱付 ) エ短下肢装具下腿上部より足底におよび 足関節の動きを制御する装具 他の装具と比較して種類が多いため 型式について簡単に説明する ( ア ) 両側支柱両側に金属支柱を持つもの 短下肢装具の中で 最も多く交付される ( イ ) 片側支柱片側のみに金属支柱を持つもの ( ウ ) S 型支柱 S 型のらせん状の支柱を持つもの ( エ ) 鋼線支柱足関節の高さ付近で円形に曲げられたコイルバネの機能の支柱を持つもの
( オ ) 板バネ金属またはプラスチックスの板バネ支柱を持つもの ( カ ) 硬性石膏で作られた陽性モデルにより成形されて作られたもの 材質はプラスチックスや皮革等 金属支柱があるものと金属支柱が無いものとがある ( キ ) 軟性ゴムひもを用いて足関節を背屈位に保つもの 両側支柱片側支柱鋼線支柱 S 型支柱板ばね式 硬性支柱なし ( シューホン ) 硬性支柱なし ( 遊動継手 ) 硬性支柱付き軟性 オツイスター 骨盤帯と足部を布ひも ゴムひもまたは鋼製ケーブルによって結び 下肢の内外旋を制御するもの 軟性 鋼製ケーブル カ足底装具足部の変形や疼痛の除去 下肢の短縮の補正や体重支持面の矯正等に用いられるもの ただし靴型装具は除く ( ア ) アーチサポート ( ふまず支え ) 足部の縦アーチを支えるもので 扁平足や凹足等 足部の縦アーチの補正に用いられる ( イ ) メタタルザルサポート ( 中足支え ) 足部の横のアーチを支えるもので 扇足や中足骨部の痛み等 足部の横のアーチの補正に用いられる
( ウ ) 補高左右の下肢長差を補正するもの 足底板 ( 簡易型 ) による補正方法と足部おおいによる補正方法とがある 基本時には 補正数が少なく踵部分のみで補正する場合は簡易型だが 補正数が多く足底全体で補正する場合は足部おおい型が用いられる ( エ ) 内側楔 外側楔楔状で足底の一部を傾斜させることによって足部の内側にかかる体重を外側に移すもの または足部の外側にかかる体重を内側に移すもので 軽度の内外反足 O 脚やⅩ 脚等に用いられる アーチサポート メタタルザルサポート 補高 ( 簡易型 皮革小 ) 補高 ( 足部おおい型 皮革大 ) 外側楔 キ靴型装具足部の変形や疼痛の除去 下肢の短縮の補正や体重支持面の矯正等に用いられる靴の形をした装具 ( ア ) 靴型装具の制作方法による分類整形靴 : 標準木型に皮革 フェルト等を張って作られる靴 特殊靴 : 陽性モデルから作成した特殊木型によって作られる靴 木型 ( イ ) 靴型装具の形状による分類 種 類 具体的内容 短 靴側革が果部より低い靴 チャッカ靴側革の高さが果部に及ぶ靴 半 長 靴側革の高さが果部より高い靴 長 靴側革の高さが下腿の 2/3 以上に及ぶ靴
( ウ ) 付属品等の加算要素靴型装具ではヒールや足底などの補正を行うことができるが ここでは補高について説明する 補高とは左右に脚長差がある場合や尖足変形等がある場合に 長さを合わせたり安定を図るために行う補正 敷き革式 ( 靴の内側 ) での補正と靴底での補正による組合せで行う 短 靴 チャッカ靴 半長靴長靴 補高 ( 敷き革式 ) 補高 ( 靴底式 ) (2) 下肢装具の主な部品と付属品股装具 長下肢装具 膝装具 短下肢装具の主な部品と付属品について説明する 継手等の完成用部品については 完成用部品の項で説明する ア半月下肢装具の支柱に取付け 下肢の後面または前面を半周する半円状の帯板部品 装具を肢体に固定すると共に 支柱の位置決めの機能や装具の強度を高める機能を持つ部品 イカフバンド上肢または下肢の一部を一周するように被覆する部品で 皮革等で作られた固定用のバンド ウ支柱義肢 装具に用いる金属またはプラスチック製の柱状棒材で 義肢の外力負担 装具の外力もしくは変形矯正 予防の力を負担し また 継手等の部品や付属品を取付ける土台となる部品
エ継手股継手 膝継手 足継手があり それぞれ股関節 膝関節 足関節の動きを制御する部品 完成用部品と完成用部品でないものとがある ここでは完成用部品でない継手 ( 製作要素のみの継手 ) について説明する 遊動継手と固定継手とがあり 遊動継手は材質の弾性を利用した継手であり 固定継手は一本棒状の金属支柱をもった全く動きのない継手である 完成用部品でない継手は足継手に用いられることが多いので 以下 足継手のみ図示する オ Tストラップ Yストラップ足関節の内反 外反変形を矯正する目的で支柱に向かって引きよせる T 型または Y 型の帯状のもの カあぶみ足継手と足部を連結するもので 支柱の足継手以下の部分 半月 カフバンド 支柱 Y ストラップ 足継手 あぶみ 短下肢装具の構成部品 継手 継手 継手 完成用部品でない継手 ( 遊動継手 ) 継手 完成用部品でない継手 ( 固定継手 )
5 体幹装具 (1) 体幹 ( 脊椎 ) の部位的分類 体幹 ( 脊椎 ) は部位により次のように分類される 頸椎 胸椎 胸郭 脊椎 腰椎 腸骨 仙骨 恥骨 骨盤 坐骨 (2) 体幹装具の種類体幹装具は 体幹の機能障害に対して 1 変形の防止 2 変形の矯正 3 体重の支持 4 不随意運動の抑制等を目的として用いられる 次の種類があり 基本構造の形式として金属枠 硬性 軟性等がある ア頸椎装具基本的には肩甲から頭蓋におよび 頸椎の動きを制御する装具 金属枠硬性カラー ( あご受けあり ) カラー ( あご受けなし ) イ胸椎装具 骨盤から胸背部におよび 胸椎 腰椎 仙腸関節の動きを制御する装具 金属枠硬性軟性
ウ腰椎装具 骨盤から腰部におよび 腰椎と仙腸関節を制御する装具 金属枠 ( ナイトブレース ) 硬性軟性 エ仙腸装具 骨盤をつつみ 仙腸関節の動きを制御する装具 金属枠硬性軟性骨盤帯 ( 芯あり ) 骨盤帯 ( 芯なし ) オ側弯矯正用装具側弯の矯正に用いられる装具で 構造的に骨盤から頭部におよぶもの ( ミルウォーキーブレース ) と 頭部におよばないものとがある 頭部におよばないものの型式としては 金属枠 硬性 軟性がある ミルウォーキーブレース 硬性
6 上肢装具上肢の機能障害に対して 1 機能を失った筋または起動力の代用 2 弱筋または関節の補助 3 固定 保持及び矯正等を目的として用いられる (1) 上肢装具の種類ア肩装具肩関節の動きを制御する装具 肩関節を外転位に保持し 骨盤から前腕に及ぶものを基本とする イ肘装具上腕から前腕に及ぶもので肘関節の動きを制御する装具 肩装具 肘装具 ウ手背屈装具前腕から手部におよび 手関節を背屈位に保持する装具で 主として手関節 手指に障害がある者に用いられる 次のような種類がある ( ア ) バネル型前腕部と手部を板ばねによって結ぶもの ( イ ) トーマス型ゴムによって手関節を背屈位に 母指を外転位に保つもの ( ウ ) オッペンハイマー型鋼線を主材料として手関節を背屈位 M P( 指の基節部 ) 伸展 母指外転位をとらせるもの ( エ ) 硬性プラスチックス 皮等硬性材料で作られたもの 手背屈装具 ( 硬性 )
エ長対立装具前腕から手部におよび 手関節を背屈位に保持し 母指を対立位に保つ装具 手関節 手指に障害があり 母指と示指との摘み動作ができない者に用いられる オ短対立装具母指を対立位に保つ装具 手指の機能障害で 母指と示指との摘み動作ができない者に用いられる 長対立装具 短対立装具 カ把持装具前腕から手部におよび 母指と示指 中指間でつまみを可能にする装具 手関節駆動式と ハーネス駆動式とがある キ M P 屈曲装置 ( ナックルベンダー ) M P 伸展装置 ( 逆ナックルベンダー ) 手部から母指を除く他指の基節におよび M P 関節を屈曲または伸展させる装具で 手指の変形の矯正に用いられる 基準では使用材料等によりバネル型 プラスチックス 軟性等に分けられている ク指装具 ( 指用ナックルベンダー 指用逆ナックルベンダー ) PIP( 末節 ) 及び DIP( 中節 ) 関節を伸展位 または屈曲位 あるいは内外位に保持する装具で 指一本ごとの変形矯正等に用いられる ケ B F O( 食事動作補助器 ) 前腕を平衡をとった状態で支え ボールベアリングを利用してわずかな力で運動を可能にする装置 上肢の機能がほぼ全廃に近い者に用いられる