LS1061HR101BZ 01 60 ねずみの 娘を1まうけて 天下に並びなき婿むこをとらん と 2おほけなく思ひ企くはだてて 日につ天てん子し3こそ世を照らしたまふ徳とくめでたけれ と思ひて 朝日の出で給ふに 娘を持ちて4候さうらふ みめかたちなだらかに候ふ 5まゐらせん と申すに 我は世間を照らす徳あれども 雲に会ひぬれば光もなくなるなり 雲を婿にとれ とおほせ6られければ まことに と思ひて 黒き雲の7見ゆるに会ひてこのよし申すに 我は日の光をも隠す徳あれども 風に吹ふき立てられぬれば 何にてもなし 風を婿にせよ と言ふ ねずみが 娘を授かって 天下に並ぶものがない(ほどにすばらしい)婿を取ろう と ずうずうしく思いもくろんで 太陽こそ世の中をお照らしになる能力がすばらしい と思って 朝日がお出になるのに(向かって) 娘を持っております 姿や顔立ちはほどよく(美しく)てございます (娘を)差し上げましょう と申し上げると 私は世の中を照らす能力があるけれども 雲に会ってしまうと光もなくなるのだ 雲を婿に取りなさい とおっしゃられたので ほんとうに(そのとおりだ) と思って 黒い雲が見えるのに会って このいきさつを申し上げると 私は日の光をも隠す能力があるけれども 風に吹いてこられてしまうと どうしようもない 風を婿にしなさい と言う 全訳 沙石集 ねずみの婿取り⑴
6おほせられければ られ は助動詞 らる の連用形 助動詞 る らる は意味の識別に注意する ここでの られ は 尊敬の意味である 言ふ の尊敬語 おほす とともに 主語である日天子への敬意を表している すぐ上に に がある 受身 れる られる 心情を表す動詞の下についている 自発 つい てしまう 下に打消 ず を伴っている 可能 することができる 身分の高い人が主語 尊敬 なさる 7見ゆる上一段活用動詞 見る と混同しないこと 見ゆる は 下二段活用動詞 見ゆ の連体形で 見える の意 黒き雲を見る のではなく 黒き雲が見える と解釈する 1まうけて歴史的仮名遣いの まうけて は 現代仮名遣いでは もうけて と直す ア段の音に う ふ が続いた場合 オ段音+ー (現代仮名遣いの表記は う )2おほけなく歴史的仮名遣いの おほけなく は 現代仮名遣いでは おおけなく と直す は ひ ふ へ ほ (語頭以外) ワ イ ウ エ オ 3日天子こそ めでたけれ係り結びの法則 係助詞 こそ の意味 強調 結びの語 形容詞 めでたし の已然形 めでたけれ である 結びの語を 過去の助動詞 けり の已然形 けれ と解釈しないよう注意すること 4候ふ1と同様 さう は そう らふ は ろう となり さうらふ は そうろう と読む 候ふ は丁寧の補助動詞で です ます でございます と訳す 5まゐらせん歴史的仮名遣いの まゐらせん は 現代仮名遣いでは まいらせん と直す ゐ ゑ を ぢ づ イ エ オ ジ ズ まゐらせ は 下二段活用動詞 まゐらす の未然形 与ふ 授く の謙譲語で 差し上げる の意 助動詞 ん(む) はここでは意志の意味ととり 差し上げましょう と訳す 重要単語チェック おほけなし=1ずうずうしい2おそれ多い めでたし=1すばらしい2立派だ3すぐれている かたち=1姿2顔立ち まゐらす=差し上げる おほす=1命令する2おっしゃる 文法チェックLS1061HR101BZ 02 61 沙石集
62 LS1061HR101BZ 03 さも と思ひて 山風の吹け1るに向かひてこのよし申すに 我は雲をも吹き 木草をも吹きなびかす徳あれども 2築つい地ぢに会ひぬれば3力なきなり 築地を婿に4せよ と言ふ げに と思ひて 築地にこのよしを言ふに 我は風にて動か5ぬ徳あれども ねずみに掘ほら6るるとき 耐たへがたきなり と言ひければ さてはねずみは何にもすぐれたるとて ねずみを婿にとり7けり ほんとうに(そのとおりだ) と思って 山風(=山から吹く風)が吹いているのに向かって このいきさつを申し上げると 私は雲をも吹き 木や草をも吹きなびかせる能力があるけれども 土ど塀べいに会ってしまうとどうしようもないのだ 土塀を婿にしなさい と言う まったく(そのとおりだ) と思って 土塀にこのいきさつを言うと 私は風では動かない能力があるけれども ねずみに掘られるときは こらえがたい(=つらい)のだ と言ったので それならばねずみは何においても優れていると思って ねずみを婿に取ったということだ 全訳 沙石集 ねずみの婿取り⑵
63 LS1061HR101BZ 04 沙石集6掘らるる直前に ねずみに とあることに着目 このように すぐ上に に がある場合 助動詞 る らる は受身の意味を表すことが多い この るる (助動詞 る の連体形)は受身 れる られる の意で ねずみに掘られる と訳す 7婿にとりけり けり は過去の意味の助動詞 けり の終止形 同じ過去の意を表す助動詞 き との違いに気をつけること この文章は作者の直接体験ではなく フィクションの物語なので たということだ の意の けり が用いられているのである き 話し手自身の直接体験を回想する場合に用いられる けり 間接的に知った過去の出来事を述べる場合に用いられる1吹ける 吹け は四段活用動詞 吹く の命令(已然)形 四段の命令(已然)形に接続する る は 完了 存続の意味を持つ助動詞 り の連体形である ここは存続の意味で 吹いている と訳す 2築地歴史的仮名遣いの ついぢ は 現代仮名遣いでは ついじ と直す ゐ ゑ を ぢ づ イ エ オ ジ ズ 3力なきなり 力なき は 形容詞 力なし の連体形 形容詞の活用の種類を見分けるには 動詞 なる を付け 連用形に直して考える 力なし に動詞 なる をつけて連用形に直すと 力なくなる となり し の音が消えているのでク活用である なり は連体形に接続しているので 断定の助動詞 なり の終止形である し の音が消えている ク活用(例 高し 高くなる) し の音が残っている シク活用(例 美し 美しくなる)4婿にせよ せよ はサ行変格活用動詞 す の命令形で 婿にしなさい と訳す せ の部分をサ変動詞 す の未然形と解釈してしまわないよう 気を付けること 5動かぬ助動詞 ぬ を識別する場合は 接続している語の活用形に着目する 動か は四段活用動詞 動く の未然形 よって この ぬ は打消の助動詞 ず の連体形である 未然形に接続 打消の助動詞 ず の連体形 連用形に接続 完了の助動詞 ぬ の終止形 重要単語チェック さも=1そのようにも2ほんとうに げに=まったく 耐へがたし=がまんしにくい こらえがたい さては=1それならば2それからまた3そうして 文法チェック
64 LS1061HR102BZ 01 ある山寺の坊主 慳けん貪どんなりけるが 飴あめを治してただ一人食ひけり よくしたためて 棚たなに置き置き1しけるを 一人2ありける小こ児ちごに食はせずして これは人3の食ひつれ4ば5死ぬる物ぞ と言ひけるを この児 6あはれ食は7ばや食はばやと思ひけるに 坊主他行の隙ひまに 棚より取りおろしけるほどに うちこぼして 小こ袖そでにも髪にも付けたりけり 日ごろ8欲しと思ひければ 二三杯よくよく食ひて 坊主が秘蔵の水みづ瓶がめを 雨だりの石に打ち当てて 打ち破わりておきつ ある山寺の僧は けちであったが 飴を作ってただ一人で食べた しっかり管理して 棚に置いていたが 一人いた小さい児には食べさせずに これは人が食べてしまうと必ず死ぬ物だよ と言ったのを この児は ああ食べたいものだ 食べたいものだと思っていたが 僧が外出した間に (飴を)棚から下ろしたときに こぼして 小袖にも髪にも付けてしまった 普段欲しいと思っていたので 二三杯たっぷり食べて 僧が大事にしている水瓶を 軒先の雨だりの石に当てて 割っておいた 全訳 沙石集 児の知恵⑴
65 LS1061HR102BZ 026あはれこの あはれ は ああ などと訳す感動詞 趣深い かわいい といった意味の形容動詞 あはれなり とは異なる 7食はばや ばや は終助詞 あはれ食はばや食はばや は 児の思った心の内の言葉である 未然形+ばや 自ら実現できる願望 したい 8欲し形容詞 欲し の終止形 形容詞の活用の種類は 動詞 なる を付けて 連用形に直して考える 欲しくなる なのでシク活用 し の音が消えている ク活用(例 高い 高くなる) し の音が残っている シク活用(例 美し 美しくなる)1しけるこの し は 置き置きする という意味で用いられているので サ行変格活用動詞 す の連用形である サ変動詞の活用 せ し す する すれ せよ 2ありける あり はラ行変格活用動詞 ラ変動詞は連用形と終止形が同形だが ここは 連用形接続の助動詞 けり の連体形 ける に上接しているので 連用形である ラ変動詞の活用 ら り り る れ れ ラ変に属する語 あり をり 侍り いまそかり(いまそがり いますがり) の四語のみ 3人の食ひつれば の は主格の格助詞 人が食べてしまうと と訳す 冒頭の 山寺の坊主 の の は連体修飾格の働きをしている 主格 が 主語を示す 連体修飾格 の 下の体言を修飾することを示す 同格 であって 上下の語が同じものであることを示す 4食ひつれば ば は接続助詞 直前の つれ は完了の意味を表す助動詞 つ の已然形 したがって この ば は順接の確定条件 未然形+ば 順接の仮定条件 もし ならば 已然形+ば 順接の確定条件 なので すると 5死ぬるナ行変格活用動詞 死ぬ の連体形 死 + ぬる (完了の助動詞 ぬ の連体形)ではないので注意すること ナ変動詞の活用 な に ぬ ぬる ぬれ ね ナ変に属する語 死ぬ と 往いぬ(去ぬ) の二語のみ 重要単語チェック したたむ=1片付ける2管理する3用意する 隙=1すきま2あいま3都合のよい機会 日ごろ=1数日間2このところ3普段 文法チェック沙石集
66 LS1061HR102BZ 03 坊主帰りたりければ この児さめほろと泣く 何事に泣くぞ と問へば 大事の御水瓶を あやまちに打ち破りて1さうらふときに いかなる御勘当2かあらんずらんと 口惜しくおぼえて 命生きてもよしなしと思ひて 人の食へば死ぬ と仰せられさうらふ物を 一杯食へども死なず 二三杯まで食べてさうらへども3おほかた死なず はては小袖に付け 髪に付けてはべれ4ども いまだ死にさうらはず と5ぞ言ひける 飴は食はれて 水瓶は6破られぬ 慳貪の坊主7得るところなし 児の知恵ゆゆしく8こそ 学問の器量も 無む下げには9あらじかし 僧が帰ってきたところ この児がさめざめと泣いている どうして泣くのか と尋ねると 大事な御水瓶を あやまって割りましたときに どんなおしかりがあるのだろうかと 情けなく思われて 生きていても仕方がないと思って 人が食べると死ぬ とおっしゃっています物を 一杯食べても死なず 二三杯も食べましたがさっぱり死なない 最後には小袖に付け 髪に付けましたが まだ死にません と言った 飴は食べられ 水瓶は割られた けちな僧には何もよいことがない 児の賢さは相当なものだ 学問の才能も はなはだ劣ってはいないだろうよ 全訳 沙石集 児の知恵⑵
67 LS1061HR102BZ 047得るア行下二段動詞 得う の連体形 得る は現代語のように終止形でなく 連体形である 読みも える ではなく うる なお 古語において ア行で活用する動詞は 得 心こころ得う の二語のみ 8ゆゆしくこそ こそ は係助詞 本来なら文末を已然形で結ぶが ここでは結びの語( あれ あらめ など)が省略されている 9あらじかし あら はラ変動詞 あり の未然形 じ は打消推量 ないだろう の助動詞の終止形 かし は念押し 強調 だぞ の終助詞 助動詞 じ が推量の意味を含んでいる点に注意する 1さうらふ歴史的仮名遣いの さうらふ は そうろう と読む さうらふ は丁寧の補助動詞で でございます の意 ここは会話文なので 話し手である児から 聞き手である坊主への敬意を表す ア段の音に う ふ が続いた場合 オ段音+ー (現代仮名遣いの表記は う )2いかなる御勘当かあらんずらん係り結びの法則 係助詞 か の意味 疑問 反語 ここでは疑問の意味 結びの語 現在推量の助動詞 らん(らむ) の連体形 らん 3おほかた死なず おほかた は 呼応(叙述)の副詞 ここでは打消の助動詞 ず の終止形と呼応している おほかた 打消語 完全否定 まったく(決して 少しも) ない 4はべれども ども は接続助詞 活用語の已然形に接続し(ここでは 四段活用動詞 はべる の已然形) 逆接の確定条件を表す 已然形+ども 逆接の確定条件 だが けれども 5ぞ言ひける係り結びの法則 係助詞 ぞ の意味 強調 結びの語 文末にある過去の助動詞 けり の連体形 ける 6破られぬ 破ら は四段活用動詞 破る の未然形 れ は受身の助動詞 る の連用形 ぬ は完了の助動詞の終止形である この ぬ は打消の意味ではないので 割られない と訳さないように 重要単語チェック 口惜し=1残念だ2物足りない3情けない4つまらない おぼゆ=1自然に思われてくる2思い出される3似る よしなし=1理由がない2方法や手段がない3無駄である ゆゆし=1おそれ多い2不吉だ3並々ではない4気味が悪い 無下なり=1劣っている2身分が低い3程度がはなはだしい 文法チェック沙石集
LS1061HR103BZ 01 68 唐もろ土こしにいやしき夫婦あり 餅もちを売りて世を渡りけり 夫 道のほとりにして餅を売りけるに 人の袋を落としたりけるを取りて見れ1ば 銀しろかねの軟なん挺てい六つありけり 家に持ちて帰りぬ 妻 心素直に欲なき者にて 我らは2商うて過ぐれば ことも欠けず この主ぬしいかばかり嘆き求むらむ いとほしきことなり 主をたづねて返し給へ と言ひければ まことに とて あまねく触れけるに 主といふ者出で来て これを得てあまりにうれしくて 三つをば3奉らむ と言ひて すでに4分かつべかりけるとき 思ひ返して 煩わづらひを出ださむために 七つ5こそありしに 六つあるこそ不審なれ 一つをば隠されたるに6や と言ふ さることなし もとより六つなり と論ずるほどに 果ては国くにの守かみのもとにして これを7ことわらしむ 中国に身分の低い夫婦がいた 餅を売って生計を立てていた 夫が 道ばたで餅を売っていたところ 人が袋を落としたのを取って見ると 銀の軟挺(=上質の銀)が六つあった (それを)家に持って帰った 妻は 心がまっすぐで欲がない者で 私達は商売をして暮らしを立てているので 足りないものもない この(銀の軟挺の)持ち主はどれほど嘆いて探しているだろう 気の毒なことだ 持ち主を探してお返しください と言ったので 本当に(そのとおりだ) と思って (人々)すべてに知らせたところ 持ち主という者が出てきて これを手に入れてひどくうれしくて (持ち主は) (軟挺を)三つを差し上げよう と言って まさに(軟挺を)分配しようとしたとき (やはり)思い直して 言いがかりをつけたいがために (軟挺は)七つあったが (今ここに)六つあるのは疑わしい 一つはお隠しになったのか と言う そのようなことはない もともと(軟挺は)六つである と言い争ううちに しまいには国守(=国司)のもとで これを判断させる(こととなった) 全訳いみじき成敗⑴ 沙石集
LS1061HR103BZ 02 69 の已然形 不審なれ で結ばれ 係り結びが成立している 6隠されたるにや係り結びの法則 係助詞 や の意味 疑問 結びの語 ここでは あとに続く語( あらむ など)が省略され 係助詞 や で文が終止している これを 結びの語の省略という 7ことわらしむ ことわら は四段活用動詞 ことわる の未然形 助動詞 しむ は ここでは使役の意味を表している よって 判断させる と訳す 1取りて見れば ば は接続助詞 見れ は上一段活用動詞 見る の已然形 したがって この ば は順接の確定条件である 未然形+ば 順接の仮定条件 もし ならば 已然形+ば 順接の確定条件 なので すると 2商うて 商う は 四段活用動詞 商ふ の連用形 商ひ のウ音便形である 現代語の 商う に引きずられて 四段活用動詞 商う の終止形と解釈しないこと 3奉らむ 奉ら は四段活用動詞 奉る の未然形 ここでは 与ふ 授く の謙譲語で 差し上げる の意 む は意志の意味を表す助動詞の終止形で 差し上げよう と訳す たてまつ + らむ (現在推量の助動詞)と解釈しないこと 4分かつべかりける 分かつ は四段活用動詞の終止形 べかり は意志の助動詞 べし の連用形 ける は過去の助動詞 けり の連体形 分配しようとした と訳す 5七つこそありしに係り結びの法則 係助詞 こそ の意味 強調 結びの語 ここは本来なら 係助詞 こそ の結びとして 助動詞 き が 已然形 しか に変化して文が終止するはずである しかし 実際は接続助詞 に を伴った連体形 し となり 係り結びが成立しないまま文が続いている このように 接続助詞などを伴って係り結びが成立せずに文が続くことを 結びの語の消滅という なお 直後の 六つあるこそ不審なれ は 文末が形容動詞 重要単語チェック いやし=1身分が低い2粗野である3みっともない 過ぐ=1通過する2経過する3死ぬ4暮らしを立てる いとほし=1気の毒だ2嫌だ3かわいい すでに=1すっかり2もう3まさに4まぎれもなく5実際に ことわる=1道理に基づき判断する2筋道を立てて説明する 文法チェック沙石集
LS1061HR103BZ 03 70 国守 眼まなこさかしくして この主は不実の者 この男は正直の者と見1ながら なほ不審なりければ かの妻を召して 別の所にして ことの子し細さいをたづぬるに 夫が申し状に少しもたがはず この妻はきはめたる正直の者と見て かの主不実のこと2確かなりければ 国守の判にいはく このこと確かの証拠なければ 判じ難し ただし ともに正直の者と3見えたり 夫妻また言葉たがはず 主の言葉も正直に4聞こゆれば 七つあらむ軟挺をたづねて5取るべし これは六つあれば 別の人のに6こそ とて 六つながら夫妻にたびけり 宋そう朝てうの人 いみじき成敗と7ぞ あまねく8ほめののしりける 国守は 眼力がすぐれていて この(軟挺の)持ち主は不実の者 この(軟挺を拾った)男は正直の者と見たけれども やはり疑わしかったので その(軟挺を拾った男の)妻をお呼びになって 別の場所で ことの詳しい事情を問いただすと 夫の言い分と少しも違わない この妻はこの上ない正直の者と見て あの持ち主は不実であることが確かであるので 国守の判決が言うには このことは確実な証拠がないので 判定するのがむずかしい ただし (持ち主も拾った男も)ともに正直の者と思われた 夫妻はやはり言葉(=証言)に相違がない 持ち主の言葉も正直に聞こえるので (持ち主は)七つあるという軟挺を探して取る(=取り戻す)のがよい これは六つあるので 別の人のものであろう と言って 六つすべてを夫妻にお与えになった 宋朝の人は すばらしい裁きと 広く大声をあげてほめた 全訳いみじき成敗⑵ 沙石集
LS1061HR103BZ 04 71 6別の人のにこそ係り結びの法則 係助詞 こそ の意味 強調 結びの語 こそ のあとには あらめ など結びとなる語が省略されていると考えられる 7いみじき成敗とぞ ののしりける係り結びの法則 係助詞 ぞ の意味 強調 結びの語 過去の助動詞 けり の連体形 ける である 8ほめののしり ののしる(ののしり) が動詞の連用形の下につく場合 大声をあげて という意味になる ほめ は下二段活用動詞 ほむ の連用形 1見ながら ながら は接続助詞 ここは 逆接の確定条件で 見たけれども と訳す 同時進行 しながら 逆接の確定条件 けれども 2確かなりナリ活用形容動詞 確かなり の連用形である なり(なら なる なれ) は 識別に注意が必要 物事の変化を表している 四段活用動詞 なる 終止形接続(ラ変型を除く) 伝聞 推定の助動詞 なり 体言 連体形に接続 断定の助動詞 なり 性質や状態を表す語につく 形容動詞の活用語尾3見えたり 見え は下二段活用動詞 見ゆ の連用形 上一段活用動詞 見る と混同しないこと ここでは 思われる 感じられる という意味で用いられている たり は連用形に接続しているので 完了の意の助動詞の終止形 4聞こゆれば 聞こゆれ は下二段活用動詞 聞こゆ の已然形 四段活用動詞 聞く と混同しないこと ば は接続助詞 已然形 聞こゆれ に接続しているので 順接の確定条件 なので すると である 5取るべし 取る は四段活用動詞の終止形 べし は終止形に接続する助動詞 ここでは 適当 するのがよい の意にとって 取るのがよい と訳す 重要単語チェック さかし=1頭脳の働きが優れている2上手である3しっかりしている4こざかしい なほ=1やはり2さらに3なんといっても たがふ=1違う2そむく いみじ=1非常に2すばらしい3ひどい ののしる=1声高く言い騒ぐ2有名である3威勢がよくなる 文法チェック沙石集