第 118 回北陸肝胆膵勉強会 平成 22 年年度末大会記録集 ( 平成 22 年 12 月 4 日 ) 共催 : 北陸肝胆膵勉強会 エーザイ株式会社 事務局 : 金沢大学消化器 乳腺 移植再生外科 1
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目次 1. 肝内胆管腺扁平上皮癌の 1 切除例 金沢医科大学一般 消化器外科 上田順彦ほか... 4 2. C 型慢性肝炎の経過中に異時性に発生し 多彩な病理像を示した肝腫瘍の一例 厚生連高岡病院外科 堀口雄大ほか... 6 3. 膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除 113 ヶ月後に多発肝腫瘤が出現し診断に苦慮した 1 例 石川県立中央病院消化器内科 中西宏佳ほか... 8 4. 神経内分泌癌と診断された多発性肝腫瘤の一例厚生連高岡病院消化器科 國谷 等ほか... 10 5. S-1 単剤が著効した非機能性膵内泌腫瘍の 1 手術例 : 術後経過を含めて 金沢医科大学腫瘍内科学 中谷直喜ほか... 12 6. 悪性十二指腸狭窄に対し内視鏡的ステント留置を施行した 2 例 高岡市民病院消化器内科 大澤幸治ほか... 14 7. 膵 solid serous adenoma の1 例 石川県済生会金沢病院外科 今井哲也ほか... 16 8. 膵炎を併発した IPMN に対し腹腔鏡下膵体尾部切除を施行した1 例 金沢大 消化器 乳腺 移植再生外科 中川原寿俊ほか... 18 9. 腹腔鏡補助下脾温存膵体尾部切除術を施行した膵体部 IPMA の 1 例 黒部市民病院外科 中沼伸一ほか... 20 10. 胆嚢管と下部胆管に狭窄をきたした広範囲胆道癌の 1 例 福井済生会病院 寺田卓郎ほか... 22 11. 経口胆道鏡検査が切除範囲決定に有用であった胆管内乳頭状腫瘍 (IPNB) の 1 例 金沢大学附属病院がん高度先進治療センター 大坪公士郎ほか... 24 3
1. 肝内胆管腺扁平上皮癌の 1 切除例 金沢医科大学一般 消化器外科上田順彦 大西敏雄 富田泰斗 大野由夏子 横井美樹 舟木洋 木南伸一 表和彦 中野泰治 小坂健夫金沢大学大学院がん局所制御学消化器 乳腺 移植再生外科高村博之 症例 79 歳 男性 主訴 肝腫瘍の精査 加療 現病歴 近医での採血で肝機能異常と画像で肝腫瘍を認め切除の判定に当科紹介となる 画像 1 CT: 肝臓の内側区域から前腹側区域の肝門部に進展する約 6cm 大の腫瘍を認め 左肝内胆管は拡張していた 肝門部に張り出した部分で門脈は圧排され左枝は閉塞していた 右肝動脈は腫瘍に接して走行し圧排されていた 腫大したリンパ節なし 2 DIC-CT; 右肝内胆管から右肝管までは描出されるが 左右胆管合流部から胆嚢管合流部までの肝管および左枝胆管は描出されなかった 以上より内側区と前腹側領域の一部を占拠する肝内胆管と診断した 手術 右肝動脈は腫瘍と癒着していたが剥離温存が可能であった 拡大肝左葉切除 尾状葉合併切除を施行した 門脈は肝門部で腫瘍との剥離が困難で同部位で切除し吻合した 病理 腫瘍は 7.3 6.5 6.0cm 腫瘤形成型 腫瘍の 90 ~ 95% は異常角化の目立つ高 ~ 中分化型扁平上皮癌で一部に腺癌成分の移行像も見られた sm(+) pt3, pn0, M0 pstageiii と判定された 予後 術後 7 カ月再発の兆候なく生存中である 4
術前診断と進展範囲 診断 : 肝内胆管癌 ( 腫瘤形成型 ) T3, N0, M0 Stage Ⅲ 進展範囲 :H2, St-MA, 6.5 5.0cm B3: 左肝管閉塞 右肝管の一部から総肝管にかけて高度狭窄 Vp4: 門脈左枝閉塞 右枝 ~ 本幹にかけて浸潤疑い Vv2: 中 左肝静脈の閉塞 Va0: ただし右肝動脈は圧排されている 5
2.C 型慢性肝炎の経過中に異時性に発生し 多彩な病理像を示した肝腫瘍の一例 厚生連高岡病院外科 堀口雄大 三輪武史 渡辺和英 伊藤朋子 吉田周平 加藤洋介 奥田俊之 太田尚宏 尾山佳永子 原拓央 同 消化器科 澤崎拓郎 國谷等 西田泰之 平井信之 寺田光宏 同 病理科 増田信二 同 放射線科 野畠浩司 川森康博 堀地悌 北川清秀 富山大学医学薬学研究部病理診断学講座 常山幸一 症例 症例は 62 歳 男性で 56 歳より C 型慢性肝炎にて経過観察されていた 2004 年 1 月の CT にて S7 に 15mm の SOL を指摘され 血管造影 MRI にて造影後期にリング状に造影効果を認めた 肝細胞癌に典型的な所見でないことから胆管癌が疑われ 肝部分切除を施行した 免疫染色を含め病理学的に高分化の肝細胞癌と診断された 2006 年 8 月に S4 に 17mm 大の SOL を指摘され 画像上内部壊死を伴う肝細胞癌が疑われた 肝部分切除術を施行し 病理学的に高分化から中分化の肝細胞癌と診断された 2007 年 10 月に S6 に 23mm 大の SOL を指摘された 造影早期にリング状に濃染し 後期かけて内部が濃染される腫瘤であり 画像上は肝細胞癌を疑う所見に乏しく胆管細胞癌が疑われた 肝部分切除を施行したところ 病理学的には様々な分化傾向を示す細胞塊からなる腫瘍で 肝芽腫に類似した腫瘍と考えられた 一部の細胞は種々の免疫染色にて染色されない細胞塊が存在していた 2008 年 9 月には手術適応とならない多発肝腫瘍を認め化学療法を施行するも効果なく 初回手術時より 6 年後に肝不全にて永眠された 考察 免疫染色にて 肝細胞 胆管細胞への分化を示す細胞 免疫染色にて染色されず特定の分化傾向を示さない細胞が混在する腫瘍であり 多分化能を持つ細胞が腫瘍化したことが示唆された 現時点では腫瘍の分類が困難であり 近年提唱されている肝芽腫様肝癌 中間型肝癌 stem cell cancer と呼ばれる疾患概念に属する可能性があると考えられる 肉眼的には腫瘍は被膜を有し 出血が所々に見られた 腫瘍の内部は多くが壊死しており 画像で CCC が疑われた原因と考えられた 肝細胞のマーカーである HepPer1 が陽性 腫瘍は肉眼的に被膜を有していた ほとんどが高分化な肝細胞癌であり 脂肪を含む領域を認めた 6
肉眼では今までの腫瘍と比較し 被膜は明らかでなかった 病理学的にも被膜は認めず 背景肝との境界は不明瞭であった 7
3. 膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除 113 ヶ月後に多発肝腫瘤が出現し診断に苦慮した 1 例 中西宏佳 1) 木藤陽介 1) 伊藤錬磨 1) 辻国広 1) 吉田尚弘 1) 冨永桂 1) 辻重継 竹村健一 1) 山田真也 1) 金子佳史 1) 土山寿志 1) 黒川勝 2) 小林健 3) 車谷宏 1) 石川県立中央病院消化器内科 2) 同消化器外科 3) 同放射線診断科 4) 同病理診断科 1) 4) 症例は 60 歳男性 2001 年 3 月 当院にて膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術が施行された ( 中分化型管状腺癌 3.5 1.7cm ly1 v1 ne2 CH(+) DPM(-) pt3n0m0 Stage Ⅲ R0) 術後 4 年間 UFT の投与が行われその後も無再発であった 2008 年 10 月 急性混合型白血病を発症し化学療法にて寛解が得られた 2010 年 8 月 16 日 右側腹部痛が出現し腹部 CT にて肝多発腫瘤 残膵腫瘤を指摘された 同年 3 月の PET CA 19-9 は異常なく 採血での炎症反応上昇から炎症性腫瘤が疑われたが肝転移は否定できず肝生検施行したところ膵癌肝転移と診断された ゲムシタビンによる化学療法開始となったが DIC 発症や脳転移による意識障害出現など急速に全身状態が悪化し 肝腫瘤判明後 34 日目に永眠された 剖検は得られず膵体部腫瘤に対する病理組織学的裏付けは得られていない 本例は初回手術結果や経過から膵異時性多発癌と考えたが再発と明確に鑑別することは困難であった 8
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4. 神経内分泌癌と診断された多発性肝腫瘤の一例 厚生連高岡病院消化器科同放射線科同病理診断部富山大学病理診断学講座 國谷等 澤崎拓郎 西田泰之 平井信行 寺田光宏川森康博 北川清秀増田信二常山幸一 症例は 40 歳女性 無月経 体重減少 心窩部違和感などを訴え受診 画像検査では全肝に血流豊富な腫瘤の多発を認め 肝左葉はほとんどが腫瘤により占拠されていた 膵体尾部にも血流豊富な小腫瘤を認めた 肝生検病理組織は 腫瘍細胞の索状からコード状の浸潤増殖を認め 核分裂像は比較的目立たず CD56 synaptophysin NSE クロモグラニン A が陽性 MIB-1 陽性核が 30% 以上の部分を認めた 腫瘍マーカーでは NSE と ProGRP が高値を呈した セロトニンの高値を認めたが 明らかなホルモン過剰症状は認めなかった 膵原発の神経内分泌癌の肝転移であり 臨床的には低分化型の病態と考え CPT11/CDDP の全身化学療法を開始した 経過中めざましい腫瘍抑制効果はなく 補助的にオクトヌレオチドの投与も行った CPT11/CDDP 6 コースの化学療法後 NSE ProGRP セロトニンの低減効果を認め 8 ヶ月を経過し存命中であるが 腫瘍縮小効果は限定的であった 入院時 CT 入院時 CT を見返すと 膵体尾部の 1cm 大の濃染する腫瘤があり 末梢の膵萎縮と主膵管拡張を認める 肝生検病理組織像 比較的広い胞体を有し 核の濃染腫大 不整を示す腫瘍細胞の索状からコード状の浸潤増殖を認め 部分的に管腔形成を思わせる像も見られる mitosis はあまり目立たない 10
免疫組織化学染色では 神経内分泌細胞のマーカーである CD56(Neural Cell Adhesion Molecule:NCAM) synaptophysin NSE クロモグラニン A が陽性となった その他 AE1/3 CK7 CK19 CK20 が陽性で Factor Ⅲ CD34 S-100 TTF-1 HepPar1 は陰性 一方 NET の細胞増殖能 腫瘍の悪性度の指標となる MIB-1 指数は 部位よって異なるが 多いところで 30% 以上であり 悪性度の高い部分があることが示唆された 血液検査 (2) 治療経過 腫瘍マーカーを検討すると CEA が軽度上昇 NSE と ProGRP が高値を呈し 神経内分泌腫瘍に一致した所見であり ホルモンではセロトニンと尿中 5HIAA ヒドロキシインドール酢酸 ) が高値を呈し 頭痛 嘔吐 めまい 振戦など神経症状はなく ホルモン過剰症状は認めないが 一定の機能性を有する可能性があった 肝病変は全肝に多発しており 腫瘍量も多く 切除不能で TACE の適応もないと判断した 肝血管造影時に アイエーコール動注を行った後 肺小細胞癌のレジメンに準じて トポテシン+シスプラチンの全身化学療法を 6 コース施行した また SSTR2( ソマトスタチン 1 レセプター 2) の検索は未施行であったが 腫瘍安定化作用を期待してオクトヌレオチド製剤 ( 皮下注 2 週間後 LAR に変更 ) の投与を行った 11
5. S-1 単剤が著効した非機能性膵内泌腫瘍の 1 手術例 : 術後経過を含めて 中谷直喜 *¹ 佐藤到 *¹ 島崎猛夫 *¹ 中島日出夫 *¹ 元雄良治 *¹ 上田順彦 *² 白枝久和 * 3 金沢医科大学 *¹ 腫瘍内科学 *² 一般 消化器外科治療学 *³ 消化器内科 73 歳男性 2008 年 11 月心窩部痛を主訴に近医受診 US CT にて多発性肝転移を伴う膵体尾部癌と診断 当院に紹介受診 PET-CT では膵体部腫瘍と肝に多発する FDG 集積を認め 当初切除不能の膵体尾部癌と診断 患者より経口薬での治療希望があったため S-1 4 週間投与 2 週間休薬を1クールとし 80mg / 日にて治療を開始した 有害事象を認めず 1 クール 2 週目から 120mg / 日 2 クール目より 150 mg / 日に増量した 4 クール終了後の CT-AP で肝転移巣が消失し 原発巣も不明瞭化したため 十分な IC のもと 膵体尾部切除術を施行した 切除標本の病理組織で膵体部 ~ 尾部の主膵管周囲主体に広範囲で線維化がみられ体部に 1.3 1.2 1.8cmの範囲で腫瘍細胞の残存を認め 尾側膵は閉塞性膵炎による線維化がみられた 腫瘍組織の免疫組織化学マーカーで synaptophysin 陽性 CD56 が陽性であり 非機能性膵内分泌腫瘍 ( 癌 ) と診断した (ly0, ne1, mpd(-), ps(-), prp(-), ppcm(-), PDPM(-), ppvsp(+), pasp(-), pplx, s00(-), CY(-), pt4, N(-), sp0, sh0, N0, M0) S-1 80mg/ 日による術後化学療法を 9 カ月実施後 経過観察中であったが 肝 S5 に 2cm 大の単発の肝転移が出現 同部位に対し RFA を施行 術後 17 カ月現在存命中である 膵内分泌腫瘍 ( 癌 ) は比較的稀な疾患であり標準レジメンは存在しないが 治療薬の一つとして S-1 を考慮する価値が示唆された キーワード 膵内分泌腫瘍 肝転移 S-1 12 月 9 日より 120mg 2 月 26 日より 150mg へ増量 腹部造影 CT による比較 4クール終了後の CT-AP では画像上肝転移巣が消失しており 原発巣も不明瞭化していました 手術による根治術の可能性も出てきたと考え 当院消化器外科へ紹介 十分な IC のもと 2009 年 6 月 26 日膵体尾部切除術を施行しました 12
腫瘍細胞は索状 リボン状の管腔構造を認め膵内泌腫瘍に特徴的な像を呈していました 既存の腺房細胞は脱落 化学療法に伴う変性と考えられる好酸性で大型異型核を有する腫瘍細胞と微小石灰化が部分的に認められます 脾静脈内に壊死した腫瘍組織 マクロファージの小集族が認められ 脾静脈への浸潤を認めておりました 免疫組織化学マーカーで synaptophysin 陽性 CD56 が陽性であり また免疫染色ではインスリン グルカゴン ソマトスタチン セロトニンはいずれも陰性でした 13
6. 悪性十二指腸狭窄に対し内視鏡的ステント留置を施行した 2 例 高岡市民病院消化器内科 同外科 同放射線科 大澤幸治 芳尾幸松 伊藤博行 清水幸裕 七澤洋堀川直樹 宮永章平 神山公希 小林隆司 月岡雄治 藪下和久 野手雅之 澤崎邦廣坊小百合 小林佳子 寺山昇 上村良一 症例 1 68 歳男性 膵頭部癌の十二指腸下行脚直接浸潤による高度の不整狭窄を認めた 閉塞性黄疸を合併したが 内視鏡的胆道ドレナージが不可であり PTCD 施行後に内瘻化を行った さらに消化管通過障害に対し内視鏡的十二指腸ステント留置術を行い経口摂取可能となり外来化学療法施行に移行しえた 症例 2 50 歳女性 卵巣癌に対し手術療法 化学療法を施行したが肝門部 膵頭部周囲のリンパ行性転移をきたし十二指腸下行脚の狭窄を合併した 内視鏡的十二指腸ステント留置術を施行し さらに後日合併した閉塞性黄疸に対し PTCD を行い外瘻状態で外来通院が可能となった 考察 悪性十二指腸狭窄は 膵頭部癌 下部胆管癌 乳頭部癌などが進行してもたらされる病態で 著しい患者の QOL 低下をきたす 平成 22 年 4 月より悪性消化管狭窄に対する内視鏡的十二指腸ステント留置術が保険適応となった 本法は低侵襲で安全かつ患者の QOL 向上に有用な治療法と考えられた 14
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7. 膵 solid serous adenoma の 1 例 石川県済生会金沢病院外科同消化器科大野内科医院金沢医科大学病理病態学 今井哲也 戸田有宣 藤森秀希 大和太郎 龍沢泰彦玉井利克 原泰将 代田幸博 若林時夫大野秀棋佐藤勝明 症例は 70 歳女性 平成 21 年 9 月 腹部 CT にて造影効果があり内部に少数の囊胞様不染域を有する境界明瞭な3cm 大の膵尾部腫瘤を指摘された 3 年前の CT でも存在し 増大傾向はなかった Dynamic CT では早期相 後期相共に強く染まった MRI では T1 低信号 T2 では高 低信号が混在するが全体的に信号は高くなかった MRCP では数 mm 大の高信号 2 個と微細な高信号多数を認め 大小 cyst の集簇の様であり serous cyst adenoma も疑われたが 高信号域の分布が不均一な点 全体像でそれ程高信号ではない点から否定的と考えた 各種血中ホルモン値に有意な上昇はなかったが 画像から神経内分泌腫瘍を疑い膵体尾部切除 D1 を施行した 腫瘍割面の肉眼像では大部分が充実成分だが 数 mm 大の cystic な部分も散見された 充実部分の組織像では小型核と淡明な細胞質の立方状腫瘍細胞が管状 胞巣状に増殖 内部に微細な囊胞様構造が認められた 肉眼的 cyst の部分にも同様の細胞が認められた Cytokeratin は陽性 神経内分泌マーカーは陰性だった PAS 染色に不染であったが 総合的に判断して solid serous adenoma と診断した solid serous adenoma は serous cystadenoma の非常にまれな亜型であるが 術前診断に難渋し 特に神経内分泌腫瘍との鑑別が困難であったので報告した Dynamic CT ですが plane で低吸収の腫瘤は早期相よりよく造影され 後期相においても強い染まりが持続しております 先の造影 CT と同様に内部に小さな不染域が認められます 以上の所見より 多血性でごく少数の cystic area を伴う充実性腫瘍が疑われました また 3 年間で大きさに変化がないことから 低悪性度もしくは良性の腫瘍と考えられました 第一に神経内分泌腫瘍を疑い その他には solidpseudopapillary neoplasm の可能性も考えました MRI では T1 で低信号 T2 では高信号と低信号の混在が認められますが 全体として信号はそれ程高くありません Dynamic MRI ではCTの場合と同様に早期 後期ともによく染まる多血性の腫瘍と考えられました 16
MRCP では 腫瘍部分に数 mm 大の高信号域が 2 箇所と 不均一に分布する細かい高信号域が多数認められました これらは大小の cyst の集簇の様にも思われ serous cyst adenoma の可能性も疑われましたが これらの分布が腫瘍全体に均一でないことや 腫瘍全体として見るとそれ程高信号ではないことから serous cyst adenoma は否定的と考えました HE 染色のルーペ像ですが 中心部に充実成分を認め 辺縁に cystic な領域が認められます 右は充実部分の弱拡大です 充実部分を強拡大すると 小型核と clear な細胞質をもつ立方状の腫瘍細胞が管状もしくは胞巣状に増殖しており 肉眼的には認識できない極めて微細な囊胞様構造が認められました 肉眼的に cyst と認識された部分においても同様の細胞の配列が認められました 17
8. 膵炎を併発した IPMN に対し腹腔鏡下膵体尾部切除を施行した 1 例 金沢大 消化器 乳腺 移植再生外科中川原寿俊 廣瀬淳史 北川裕久 牧野勇 林泰寛 田島秀浩 大西一朗 高村博之 谷卓 藤村隆 太田哲生日本医科大学中村慶春 教室では 2009 年 11 月膵臓内視鏡外科研究会の施設会員となり 鏡視下膵手術導入を計画した 今回 膵炎を併発した IPMN に対し 安全に腹腔鏡下膵体尾部切除を施行し得た1 例を経験したので報告する 患者は 76 歳 男性 72 歳時より前立腺癌に対しホルモン療法中であった 経過観察の CT 検査で 2006 年に膵体部の IPMN を指摘され 経過観察されていた 2010 年 9 月の CT 検査にて主膵管拡張の増悪を指摘され 精査 加療目的に当科受診となった 超音波内視鏡検査で 主膵管が拡張し 5mm 大の結節性病変を指摘された 主膵管型の IPMN の診断で腹腔鏡下膵体尾部切除を施行した 膵は全体に膵炎の程度が強く手術に難渋した 腹腔鏡手術用スポンジ ( セクレア ) を用い 組織の副損傷なく術野を展開し 術前の MDCT による解剖に関する詳細な情報を元に 血管処理 膵切離を行い 安全に手術を行った 鏡視下膵手術は 膵炎を併発していることが多く 安全に手術を行うためには 術前の解剖の把握 デバイスの工夫が重要であると考えられた 18
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9. 腹腔鏡補助下脾温存膵体尾部切除術を施行した膵体部 IPMA の 1 例 黒部市民病院外科 中沼伸一, 森和弘, 蕪木友則, 岩田啓子, 経田淳, 竹山茂 はじめに 近年, 脾摘の影響による易感染性, 血小板増加を含めた血液学的異常, 腫瘍免疫学的側面から脾温存の重要性が報告されている また, 膵切除において腹腔鏡下手術の報告例が現在増えてきている 我々は, 腹腔鏡補助下脾温存膵体尾部切除術 (Lap SPDP) の 1 例を経験したので報告する 症例 58 歳 女性 現病歴 画像検査にて増大傾向を認める径 30mm の IPMN 分枝型と診断され, 手術目的に当科に紹介された 手術 Lap SPDP を施行した 網嚢腔を開放し, 胃脾間膜を切離, 膵体尾部を後腹膜から剥離後 脾動静脈から遊離した 小開腹 (5cm, 上腹部正中 ) にて膵切離後 標本を摘出した 手術時間は 398 分, 出血量 95g であった 病理結果 IPMA,3.5cm, 切除断端は陰性であった 結語 今後 症例数を増やし, 腹腔鏡下膵体尾部切除の問題点, 術後疼痛や患者の満足度評価を含め, 開腹手術と比較した治療成績の検討が必要と考えられた Laproscopic SPDP の手術手技を説明します 体位は開脚位 右側斜位にて行いました トロッカー挿入部位は図の通りです 20
膵体尾部の IPMN に対して Lap SPDP 脾合併切除を伴う Lap DP 開腹下 DP を 1 例ずつではありますが経験しましたので 比較検討してみました手術時間は Lap SPDP は長いですが LAP DP と Open DPでは変わりがありませんでした 出血量は Open DP で多い傾向にありました 術後血小板数ですが 脾温存した SPDP が 脾合併の DP と比較し 血小板数は低値であることが解りました 術後腹部所見ですが 開腹の DP と比較し 腹腔鏡下の SPDP や DP は創部が明らかに小さく 腹腔鏡下手術の最大のメリットと考えられました 21
10. 胆嚢管と下部胆管に狭窄をきたした広範囲胆道癌の 1 例 福井済生会病院外科 寺田卓郎 三井毅 加藤嘉一郎 藤本大裕 斎藤健一郎 天谷奨 高嶋吉浩 土田 敬 宗本義則 藤澤克憲 飯田義郎 三浦將司 同内科 渡邊弘之 同放射線科 山城正司 宮山士朗 同病理部 須藤嘉子 症例 68 歳 女性 現病歴 白色便を自覚し近医を受診 肝機能障害と黄疸を指摘され紹介となる 血液生化学検査 GOT67U/l GPT48U/l ALP 1,397U/l R-GTP492U/l T-Bil 17.2mg/dl D-Bil 13.1mg/dl CEA6.3ng/nl CA19-9 1,546U/ml DUPAN2 707U/ml 減黄前の MDCT 後期動脈相で肝内胆管は拡張し下部胆管に壁肥厚と狭窄を認めた 胆嚢は緊満し胆嚢管に壁肥厚と濃染像を認めた 下部胆管狭窄部の肝側胆管はわずかに壁肥厚を認めたが総肝管 肝内胆管に形態学的異常は認めなかった ERC では下部胆管にv 字状の狭窄を認めた 胆嚢は描出されず 3 管合流部の壁硬化像を認めた 胆道癌 ( 下部胆管と胆嚢管に狭窄 両者の連続性は不明 水平方向進展は下部胆管から 3 管合流部やや肝側胆管まで 垂直方向進展は胆管壁内 ) と診断し減黄後に手術を施行した 手術所見 亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行 総肝管で胆管を切離し術中迅速診に提出したところ上皮内と壁内に癌浸潤を認めた 肝側胆管を肝門部まで追加切除し再度迅速診に提出したところ上皮内癌のみ陽性であった 左右肝内胆管への病変進展程度が不明であるためこれ以上の胆管追求は困難でありこの部で胆道再建を行った 病理組織所見 乳頭 ~ 高分化型管状腺癌で胆嚢管から vater 乳頭部 総肝管切離断端まで連続した上皮内進展を認めた 胆嚢管で胆管内腔への増殖が強かったがこれ以外の胆管上皮は一様に上皮置換性の増殖であった 胆嚢には病変の進展を認めなかった 胆嚢管および下部胆管には胆管壁内浸潤による線維化と狭窄を認めたが 壁肥厚のない胆管壁にも軽度の神経叢浸潤を認めた リンパ節転移は認めなかった 考察 広範囲の上皮内進展にくわえて不均一な壁内浸潤による異なる部位での胆管狭窄がみられ特異的であった 胆管内腔への増殖程度などを考えると胆嚢管原発と考えるのが妥当と思われた 22
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11. 経口胆道鏡検査が切除範囲決定に有用であった胆管内乳頭状腫瘍 (IPNB) の 1 例 大坪公士郎 1) 竹内伸司 1) 山田忠明 1) 毛利久継 1) 山下要 1) 安本和生 1) 倉田徹 2) 大西一朗 北川裕久 2) 太田哲生 2) 蒲田敏文 3) 松井修 3) 北村星子 4) 池田博子 4) 中沼安二 5) 矢野聖二 2) 1) 1) 金沢大学附属病院がん高度先進治療センター 2) 同消化器 乳腺外科 3) 同放射線科 4) 同病理部 5) 金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理学 症例は 60 歳 男性 2008 年から近医にて肝障害を指摘されていた 2010 年 4 月近医にて粘液産生胆管腫瘍が疑われたため 当院外科に紹介され 精査目的に当科紹介となった CT, MRI では総肝管から総胆管 左肝管にかけて腫瘍性病変が疑われた ENBD 造影では総肝管 ~ 総胆管に陰影欠損を認め 胆管内の粘液除去後に施行した ERCP では総肝管に陰影欠損を認めた IDUS では同部位に高エコーの乳頭状腫瘍を認め 経口胆道鏡では乳頭状腫瘍が確認され 生検にて low grade IPNB (intraductal papillary neoplasm of bile duct) が疑われた 6 月外科にて肝外胆管切除術が施行されたが 肉眼的に腫瘍は総肝管に限局しており 病理結果は IPNB (well differentiated adenocarcinoma) であり 断端陰性が確認された IPNB は 胆管乳頭腫 胆管内発育型肝内胆管癌 乳頭型胆道癌の総称であり 膵 IPMN のカウンターパートと考えられている また 粘液産生胆管腫瘍は IPNB のスペクトルムに含まれると考えられている 本症例は術前の経口胆道鏡検査にて胆管腫瘍の進展範囲が正確に診断され 胆管切除で断端陰性の手術が可能であった 本症例のように胆管腫瘍の進展範囲が他の画像所見のみで不明瞭な場合には 経口胆道鏡検査を積極的に行うべきと考えられた 24
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