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2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

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平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

図-2 土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4による 図-3 傾斜区分と土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4に よる の関係 根谷川 AMeDAS三入観測点 太田川 可部東地区 広島市安佐北区 八木地区 緑井地区 広島市安佐南区 地質区分 産業技術総合研究所シームレス地質図より関 図-4

ハザードマップポータルサイト広報用資料

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある


重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

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2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

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Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

スライド 1

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国土技術政策総合研究所 研究資料

3. 安佐南区八木 3 丁目地区における被害概要 (a) 標準地図 (1) に加筆 ) (b) 正射画像 (8/28) 1) 図 2 調査箇所の地図 ( 八木 3 丁目地区 ) 2

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土砂災害防止法よくある質問と回答 土砂災害防止法 ( 正式名称 : 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関 する法律 ) について よくいただく質問をまとめたものです Ⅰ. 土砂災害防止法について Q1. 土砂災害は年間どれくらい発生しているのですか? A. 全国では 年間約 1,00

(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

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~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

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Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

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1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

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鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

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73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

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【論文】

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21m 車両の検証項目 ダブル連結トラック実験 高速道路 3 交通流への影響 4 道路構造への影響 合流部 : 本線 合流部 : ランプ 追越時 車線変更部 検証項目 分析視点 データ等 1 省人化 同一量輸送時のドライバー数 乗務記録表 環境負荷 同一量輸送時のCO2 排出量 2 走行 カーブ (

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4 正しい位置を持った 数値地図 25000( 空間データ基盤 ) の上に カラー空中写真 が読み込まれます この状態では カラー空中写真画像 は位置のデータを持っていないので 正しい位置に読み込まれていません ここから 画像位置合せ の作業を行います 地図画像は色調を変えることができます 薄くする

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豪雨災害対策のための情報提供の推進について

目 次 最上小国川 赤倉地区の 2015 年 9 月洪水の実態から 被害防止には河道改 修が最も効果的であることが あらためて明らかになった 1,2015 年 9 月 10 日赤倉雨量は1/50 年確率に近い豪雨であったが 洪水流量は1/11 年確率流量だった 2, 赤倉地区では外水被害と内水被害が

地区概況 5-1 湿津小学校 大字 久々津 潤井戸 うるいど南 1 丁目 ~7 丁目 下野 喜多 犬成 大作 滝口 勝間 葉木 小田部 荻作 神崎 概要地区北部は村田川沿いの低地 その他の地域は台地からなる 地区の東側を支川村田川が 西側を神崎川が南北に流れる これらの河川に沿って地区の中央部を主要

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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実施概要 平成 5 年度第 回災害対策等緊急事業推進費 ( 主な対策の ). 梅雨前線に伴う豪雨により被害を受けた地域における対策 5 件 674 百万円 ( 国費 ) 具体的には ()~(5) のとおり () 河川 ( 補助 ) (5) 国道 ( 直轄 ) よどがわすいけいふるかわ 平成 5 年

平成31年度予算概算決定額 森林整備事業 治山事業 林野公共事業 (平成30年度1次補正予算額5,199百万円 182, ,049 百万円 平成30年度第2次補正予算額 32,528百万円) 臨時 特別の措置 として31年度概算決定額44,128百万円を別途措置 対策のポイント 林業の成

目次 1. 概要 操作方法 わがまちハザードマップを見る 地図で選ぶ 都道府県 市区町村を選択する わがまちハザードマップを使う 地図から選択する 地図上から直接選択..

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土砂災害防止法制定の背景 土砂災害は毎年のように全国各地で発生しており 私たちの暮らしに大きな影響を与えています また その一方で 新たな宅地開発が進み それに伴って土砂災害の発生するおそれのある危険な箇所も年々増加し続けています そのような全ての危険箇所を対策工事により安全な状態にしていくには 膨

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目次 1. 概要 地図の操作 重ねるハザードマップの表示方法 重ねるハザードマップをみる 災害種別を選択する すぐにみる 住所を検索する すべての情報から選択する..

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9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

土砂災害警戒情報って何? 土砂災害警戒情報とは 大雨警報が発表されている状況でさらに土砂災害の危険性が高まったときに, 市町村長が避難勧告等を発令する際の判断や住民の方々が自主避難をする際の参考となるよう, 宮城県と仙台管区気象台が共同で発表する防災情報です 気象庁 HP より :

8. ピンポイント渋滞対策について 資料 8

第 4 章特定産業廃棄物に起因する支障除去等の内容に関する事項 4.1 特定支障除去等事業の実施に関する計画 (1) 廃棄物の飛散流出防止ア廃棄物の飛散流出防止対策当該地内への雨水浸透を抑制し 処分場からの汚染地下水の拡散防止を図るとともに 露出廃棄物の飛散流出防止を図るため 覆土工対策を実施する

〇労働保険料の納付の猶予平成 30 年 7 月豪雨により被害を受け 次の要件を満たす事業場については 労働保険料 一般拠出金の納付が 原則として 1 年以内の期間猶予されます 対象地域 すべての地域で申請可能 要件 事業財産に相当の損失 ( おおむね 20% 以上 ) を受けたこと 1 保険料を免除

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SABO 建設省河川局砂防部

砂防堰堤設計計算 透過型砂防堰堤

新潟県連続災害の検証と復興への視点

7 制御不能な二次災害を発生させない 7-1) 市街地での大規模火災の発生 7-2) 海上 臨海部の広域複合災害の発生 7-3) 沿線 沿道の建物倒壊による直接的な被害及び交通麻痺 7-4) ため池 ダム 防災施設 天然ダム等の損壊 機能不全による二次災害の発生 7-5) 有害物質の大規模拡散 流出

今後の進め方について

4. 堆砂

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

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Microsoft Word - RM最前線 doc

Microsoft PowerPoint - 2_「ゾーン30」の推進状況について

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第 2 回調査報告会 2018 年 9 月 6 日 土石流 土砂災害班の報告 広島大学 土田孝 橋本涼太 Hiroshima Univ. Geotechnical Engineering lab. 1

1. 基礎調査で想定した流出土砂量と実際に発生した土砂量の関係 2. 昭和入口交差点上流からの土砂流出の全体像と同様の危険がある道路の条件 Hiroshima Univ. Geotechnical Engineering lab. 2

Mt. Abusan E A B C D F A: Stream over Midori-i 7-Chome B: Stream over Midori-i 8-Chome C: Stream over Midorigaoka prefectural apartments ( Yagi 3-Chome) D: Stream over Mitsuhiro Shrine (Yagi 3-Chome) E: Stream over Abu-no-Sato Housing Complex (Yagi 3-Chome) F: Stream over Yagigaoka Housing Complex (Yagi 4-Chome) Hiroshima Univ. Geotechnical Engineering lab. 3

2014 年の土石流で発生した土量と危険渓流の基礎調査で想定されていた土量の関係 ( 安佐南区緑井 八木地区 ) 今回の土砂発生量 * (m 3 ) 40,000 35,000 30,000 県営緑丘住宅 25,000 阿武の里団地 20,000 15,000 10,000 5,000 光廣神社裏 八木 8 丁目緑井 7 丁目八木 6 丁目緑井 8 丁目八木が丘団地 緑井 八木地区 0 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 広島県の渓流基礎調査で想定している土砂発生量 (m 3 ) * 注意 : 中国地方整備局の調査による概算値であり 今後修正される可能性もある 緑井 八木地区の 16 の渓流のうち 12 の渓流で調査時の想定を上まわる量の土砂が流下した 特に被害が大きかった八木 3 丁目の渓流は 想定量の 3~5 倍発生している 4

浸食幅 (m) 浸食幅と浸食深さの検証 ( 被災前後の GIS データ ) と見直し広島県土砂災害警戒区域等法指定検討委員 (2014) 平均 5.3m 災害前の調査結果と 標高データから求めた浸食断面の比較 * 広島県土砂災害警戒区域等法指定検討委員会資料より 30 25 20 15 10 5 0 集水面積と浸食幅の関係 集水面積 (km 2 ) 0 5 10 15 20 25m 2014 年以前の方法では 浸食幅を平均 4.5m 程度に設定していた しかし 災害前後の標高データから浸食幅を求めると 概ね 10m 以上の渓流が多かった ( 浸食深さは大きな差はなかった ) 新たな推奨算定式 浸食幅 (m)=10.7+53.2 ( 集水面積,km 2 ) 2014 年以降の基礎調査に適用 算定される土量が大幅に増加し 特別警戒区域の面積が拡大 5

今回の土石流で発生した土量と危険渓流の基礎調査で想定されていた土量の関係 ( 広島市 呉市 東広島市 三原市区 ) 発生した土量 呉市天応だけは 計算方法改定前の 2012 年の基礎調査による数字である 発生量は 4~10 倍となっている 呉市天応を除くと 発生量と想定量の相違は小さい ただし 熊野町川角だけは発生量は想定量の 2 倍以上となっている 2015 年以前の基礎調査による想定量は過小の可能性が高い 2015 年以降は土砂量の差は縮小している ( 熊野町川角を除く ) 50000 45000 40000 35000 30000 25000 20000 15000 10000 * 呉市天応 5000 0 熊野町川角 坂町小屋浦 口田南 3 丁目矢野東 7 丁目口田南 5 丁目 坂町小屋浦 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 50000 基礎調査による発生土量 土量がほぼ一致しても被害状況は一致しない! 6

矢野東 7 丁目梅河ハイツにおける土石流と区域図 ( 予定 ) の関係 特別警戒区域 土砂災害警戒区域および特別警戒区域の区域予定図 2018 年 5 月 17 日指定前の公開 ( 広島県 ) 広島県が指定前に公開した基礎調査の結果による特別警戒区域 ( 予定 ) を大きく超える範囲で甚大な被害が発生している 予測発生土砂は 6,030m 3 ( 治山ダム建設前 ) ( 算定時の浸食幅は 10.8~12.6m) 氾濫開始点に注目する必要がある 7

家屋の被災状況 8

治山ダム背後の渓流 国土地理院の航空写真 治山ダム背後からは二つの渓流で土石流 が発生していた 警戒区域の設定時に考慮 されていたのは左の渓流のみである 先に右側の土石流によって治山ダムがほ ど満たされた後に左側の渓流の土砂がその 上を流下した形跡があった 谷出口から100m程度 進むと急な崖 上方か ら大量の水が流出 不 安定な巨石もあった 約25.4m 9

2014 年広島土砂災害における県営緑が丘住宅の上の渓流における土砂の流出 Hiroshima Univ. Geotechnical Engineering lab. 10

矢野東 7 丁目梅河ハイツにおける土石流と区域図 ( 予定 ) の関係 特別警戒区域 土砂災害警戒区域および特別警戒区域の区域予定図 2018 年 5 月 17 日指定前の公開 ( 広島県 ) 広島県が指定前に公開した基礎調査の結果による特別警戒区域 ( 予定 ) を大きく超える範囲で甚大な被害が発生している 予測発生土砂は 6,030m 3 ( 治山ダム建設前 ) ( 算定時の浸食幅は 10.8~12.6m) 氾濫開始点に注目する必要がある 11

熊野町川角 5 丁目大原ハイツにおける土石流と区域図の関係 特別警戒区域 土砂災害警戒区域および特別警戒区域の区域図 2017 年 3 月 9 日広島県告示 国土地理院 http://www.gsi.go.jp/common/000000044.gif 想定しない渓流からの土砂の流入があったことが差の原因 12

危険渓流の基礎調査の問題と限界 1.2014 年の広島災害後に危険渓流から流出する土砂の計算法を改定した この改定により 基礎調査で予測した土砂流出量と発生量の差は縮小したと考えられる 2. 改定前の予測土砂流出量が過小であることが確認できた 2014 年以前の基礎調査の数字については 見直しが必要ではないか 3. 矢野東 7 丁目の梅河団地の渓流では 土量の差は小さいが 甚大な被害を与える範囲は拡大した この原因は 氾濫開始点の差であり その原因として土石流が複数回に分けて発生し 後続の土石流の氾濫開始点が下流に移動した可能性がある 4. 土石流の氾濫開始点のずれ さらに熊野町川角団地のように 複数の渓流の土砂の合流で予測を大きく超える土砂が発生するなど 基礎調査の問題と限界にどう対処するかを今後検討する 13

昭和入口上流からの土砂流出の全体像と同様の危険がある道路の条件 14

調査箇所県道 34 号線昭和入口近くで発生した土石流 矢野 県道 34 号線 広島熊野道路 ( 高架 ) 県道 34 号線被災地点熊野町 7 月 6 日の午後 7 時頃 浅田病院近くの昭和入口交差点で信号待ちをしていた複数台の車に大量の土砂が流れ込んだ さらに付近を走行していた車などおよそ 10 台も土砂崩れに巻き込まれた 7 月 14 日に被災現場の調査を行った 広島県庁 広島駅 呉市焼山 浅田病院 広島市役所 土石流 土石流 被災現場と発生した土石流の方向 被災個所 15

土石流によって襲われてた状況の痕跡 ガード下まで 流木等と一緒 に押し流され た車両 カーブをした先に も流木や車両が流 されていた 広島熊野道路(高架) 土石流 県道34号線 折れたコンク リート製電柱 に衝突して大 破した車両 県道34号線 焼山方面道路に流出した土 石流による車両の被害 浅田病院 土石流 土石流 上流からの土石流と 西から直行した土石 流により一変した浅 田病院駐車場 浅田病院方向の 左側は川であり 吸い出されて陥 没した路面 ガードレールは 大きく川側に大 きく変形 16

土砂の流出状況 2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会 被災前 7 月 11 日時点の航空写真 ( 国土地理院 ) 被災箇所 被災箇所 50m Google マップより 17

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会土砂災害警戒区域 特別警戒区域との関係 7 月 11 日時点の航空写真 ( 国土地理院 ) 1 被災箇所 2 4 3 広島県防災 Web より 18

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会昭和入口交差点周辺の土砂の流れ 交差点には大きく分けて二つの流れがあったと推察される. A. 渓流 2 の土砂が焼山方面の道を流下 B. 渓流 34 の土砂が矢部川沿いに流下 昭和入口 昭和入口 渓流 2 呉市焼山方面 呉市焼山方面 19

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会 A. 焼山方面の道路上の土砂の流れ 渓流 2 土石流が防音壁を破壊しているの と同時に土砂が道路沿いを下った 跡が見られた. 20

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会 A. 焼山方面の道路上の土砂の流れ 渓流 2 流下した先には土砂で埋まった車両も見られた. そのまま交差点を通過し北へ下ったと考えられる. 21

2018.09.09 砂防学会 平成30年7月西日本豪雨災害 中国地方 調査報告会 B. 矢野川沿いの土砂の流れ 交差点から上流を見ると付近の病院の駐車場一面に上流から土砂が堆積していた 7月14日撮影 病院 病院の駐車場 22

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会 B. 矢野川沿いの土砂の流れ 実際には, 元々存在していた深さ 5m 程度の河道が完全に土砂で閉塞していた. 結果的に数千 m 3 程度補足されていたと推察される. 8 月 3 日撮影 23

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会 B. 矢野川沿いの土砂の流れ 川は交差点で道路の下のカルバートを通って流れていた. 災害当時は閉塞して, 流入する水や後続の土砂は道路上へ溢れ出たと推測される. 上流側から見た写真 溢流 閉塞 24

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会推定される被災メカニズム 車を押し流しながら県道に沿って流下 道路の陥没 道沿いに流下 閉塞 氾濫 防音壁に衝突 土石流 上流からの土石流 25

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会参考 下流 ( 矢野東方面 ) の水路 ほぼ直角に曲げて道路の下を 通している. 26

2018.09.09 砂防学会 平成30年7月西日本豪雨災害 中国地方 調査報告会 参考 下流 矢野東方面 の水路 撮影位置 ② 2 1 ① 既に土砂は一部撤去されていたが ここでも水路が埋まっていた跡が 見られた 27

2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会参考 下流 ( 矢野東方面 ) の水路 撮影位置 ここでも道路の下を通る管路の入口で土砂の閉塞が生じたと推察される. カルバートなど地下に設置した水路は, 土石流の発生により閉塞しやすい 河道が閉塞すると, 土砂を含む水は道路上を流下する 28

まとめ 2018.09.09 砂防学会 平成 30 年 7 月西日本豪雨災害 ( 中国地方 ) 調査報告会 本サイトは土石流によって ( 直接的か間接的かは別として ) 道路上の車両が被災するという, これまでに例のない事例である. 道路上を土砂 濁流が流れた要因として土石流の道路への流出に加え, 河道が道路と交差する際のカルバート部の閉塞による土砂の溢流および洪水氾濫があったと推察される. 山あいで中小河川と道路が並行して位置する地区では同様のリスクを抱えていると考えられる. 土砂流出と洪水の相乗作用による被害の拡大 ( 相乗型豪雨災害 ) に ついて他の事例と合わせて分析し, 今後の防災計画にて考慮するための 方法論を議論する必要がある. 29