3 上部尿路閉塞 腎後性腎不全景知識2. 上部尿路閉塞の原因上部尿路閉塞の原因としては結石, 悪性腫瘍, 放射線治療による炎症性狭窄などがあるが, 神経因性膀胱や前立腺肥大症などの下部尿路通過障害による尿閉状態か らでも腎後性腎不全は起こりうる 上部尿路の尿流を直接閉塞する可能性のある悪性腫瘍として

Similar documents
背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

問 85 慢性腎不全による透析導入基準について正しいのは次のうちどれか 1 透析導入基準の点数が 60 点以上になれば透析導入の判断となる 2 腎機能評価ではクレアチニンが評価項目である 3 血管合併症があれば基準点に加算される 4 視力障害は透析導入基準の評価には含まれない 5 日常生活の障害に関

第 7 章 腎 泌尿器領域 (a) : すべての専門医が到達すべき知識 技術 (b) : すべての専門医が, さらに高度の専門性を獲得するために到達すべき知識 技術 (c) : 該当する領域において, 専門医が到達すべき知識 技術 (d) : 該当する領域において, 専門医がさらに高度の専門性を獲得

質問ページ 泌尿器領域の超音波検査について知りたいこと 疑問に思っていることがございましたら枠内 に記入し 当日の受付時にご提出ください 講義の後半で 回答させて頂きます

Clinical Guidelines for Urological Symptoms in Cancer Patients edited by Japanese Society for Palliative Medicine 2016 All right reserved. KANEHARA &

< A815B B83578D E9197BF5F906697C38B40945C F92F18B9F91CC90A72E786C73>

腹腔鏡補助下膀胱全摘除術の説明と同意 (2) 回腸導管小腸 ( 回腸 ) の一部を 導管として使う方法です 腸の蠕動運動を利用して尿を体外へ出します 尿はストーマから流れているため パウチという尿を溜める装具を皮膚に張りつけておく必要があります 手術手技が比較的簡単であることと合併症が少

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

頭頚部がん1部[ ].indd

1)表紙14年v0

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

Ⅰ 章はじめに Ⅰ 章はじめに 2 ガイドラインの使用上の注意 本ガイドラインでは, 人工的水分 栄養補給として多く用いられているものは輸液療法であることから, 輸液療法を中心に扱うこととした 1 対象患者 生命予後が約 1 カ月以内と考えられる注 1, 成人の固形癌患者 ( 頭頸部癌, 食道 癌,

2 ている人に膀胱がん膀胱がんが好発することがあります 好発することがあります 一方 ワラビ ゼンマイなどの食べ物や抗がん剤など一部の医薬品も膀胱がんと関係があるといわれています 中東や北アフリカなどの中東や北アフリカなどの発展途上国で発展途上国では住血吸虫症が膀胱がんを引きおこす膀胱がんを引きおこ

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

206 年実施卒後教育プログラム ( 日泌総会 ) 領域等タイトル日時単位 日泌総会卒後 日泌総会卒後 2 日泌総会卒後 3 日泌総会卒後 4 日泌総会卒後 8 日泌総会卒後 9 日泌総会卒後 0 日泌総会卒後 日泌総会卒後 2 日泌総会卒後 3 日泌総会卒後 4 日泌総会卒後 5 日泌総会卒後 6

虎ノ門医学セミナー

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

ヘルスケア・スクエア(仮称)設立に向けて

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

PowerPoint プレゼンテーション

3 尿意切迫感 : 急に起こり抑えられない強い尿意で我慢することができないという愁訴である. 水に触れたり, 流れる音を聞いたり, 水の流れを見たりすると誘発されることが多い. 正常者が感じる排尿を我慢していて徐々に増強する強い尿意とは異なり, 予測できない突然起こる強い尿意である. 4 切迫性尿失

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

ふくじゅおもて面1

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

本文/開催および演題募集のお知らせ

配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

がん登録実務について

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

(Microsoft Word - TUR-P\220\340\226\276\217\221\201i\215Z\220\263\214\343\201j.doc)

Module10.ec8


Microsoft PowerPoint - komatsu 2

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

外来在宅化学療法の実際

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

Microsoft PowerPoint - 北摂(VCUG).ppt

一般内科

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

前立腺の変化を知る

腫瘍センターの稼働実績 ( 平成 29 年 9 月 ) 最終版 H28 年 9 月 H29 年 9 月 H29 年度累 H28 年 9 月 H29 年 9 月 H29 年度累 H28 年 9 月 H98 年 9 月 H29 年度累

本文/開催および演題募集のお知らせ

国際医療福祉大学 診療情報管理学科

スライド 1

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

泌尿器科領域講習 2015 年実施卒後教育プログラム 日泌総会卒後 1 日泌総会卒後 2 日泌総会卒後 3 日泌総会卒後 4 日泌総会卒後 5 日泌総会卒後 6 日泌総会卒後 7 日泌総会卒後 8 日泌総会卒後 9 日泌総会卒後 10 日泌総会卒後 11 日泌総会卒後 12 日泌総会卒後 13 日泌

e 治癒困難な腸瘻 ( 注 3) があり かつ 腸瘻における腸内容の排泄処理が著しく困難な状 態 ( 注 4) 又は高度の排尿機能障害 ( 注 2) があるもの f 高度の排尿機能障害 ( 注 2) があり かつ 高度の排便機能障害 ( 注 5) があるもの 3 等級表 4 級に該当する障害は 次の

前立腺癌

手術の概要 尿道 膀胱 精嚢 前立腺 直腸 手術の目的は前立腺と付随する精囊を一緒に全部とることです 前立腺を摘出した後に膀胱と尿道をつなげます また 前立腺の近くにあるリンパ節を取ることもあります 高リスクの前立腺がんでは出来るだけ広い範囲のリンパ節をとることもあります 摘出部位 麻酔方法 : 全


2 4 診断推論講座 各論 腹痛 1 腹痛の主な原因 表 1 症例 70 2 numeric rating scale NRS mmHg X 2 重篤な血管性疾患 表

「             」  説明および同意書

腫瘍センターの稼働実績 ( 平成 29 年 8 月 ) 最終版 H28 年 8 月 H29 年 8 月 H29 年度累 H28 年 8 月 H29 年 8 月 H29 年度累 H28 年 8 月 H98 年 8 月 H29 年度累

胃を切除した場合の取扱い(案)


はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

Title 尿管ステント長期交換例での臨床的検討 Author(s) 坂元, 宏匡 ; 松田, 歩 ; 寒野, 徹 ; 山田, 仁 Citation 泌尿器科紀要 (2012), 58(6): Issue Date URL

NCCN2010.xls

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

Microsoft Word - 2-10急性腎不全.doc

第1 総 括 的 事 項

<4D F736F F F696E74202D20358C8E313293FA E690B6914F97A EC91E58FC7205B8CDD8AB B83685D>

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

領域等タイトル日時単位 卒後 卒後 2 卒後 3 卒後 4 卒後 8 卒後 9 卒後 0 卒後 卒後 2 卒後 3 卒後 4 卒後 5 卒後 6 卒後 7 卒後 8 卒後 9 尿路感染症 性感染症ガイドライン 4 月 23 日 ( 土 )8:20-9:50.5 VUR の診断と治療 4 月 23 日

PowerPoint プレゼンテーション

検討結果は 参考資料 3-3 Ⅱ 本検討会での検討事項等 MOCA の特殊健康診断に関し 下記の事項について検討等を行う 特殊健康診断の項目について 1 業務従事者健診の項目 2 配転後健診の項目 1 現行の特化則で規定されている MOCA の健診項目には 膀胱がんに関する項 目が含まれておらず ま

<4D F736F F F696E74202D204E6F2E395F8FC78CF390AB AB490F58FC75F E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

地域公開講演会 2007.3.24

販売名 : アドバンテージ ( 承認番号 : 22300BZX ) 別紙 改訂箇所を _ 下線で示しております < 新記載第 5 版 > 適切な項目へ記載した < 旧記載第 4 版 > 警告 1. 適応対象 ( 患者 ) 以下の患者には TVT 術を実施する際のリスクと利点を慎重に検討

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

表 Ⅲ 46 診療記録調査 対象患者背景 n % n % 性別 1) 専門的緩和ケアの診療日数 男性 % 平均 ± 標準偏差 79.5 ± 女性 % 緩和ケア病棟入院回数 年齢 1 回 % 平均 (± 標準偏差 ) 70.4 ± 12

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

7. 脊髄腫瘍 : 専門とするがん : グループ指定により対応しているがん : 診療を実施していないがん 別紙 に入力したが反映されています 治療の実施 ( : 実施可 / : 実施不可 ) / 昨年の ( / ) 集学的治療 標準的治療の提供体制 : : グループ指定により対応 ( 地域がん診療病

共済だより.indd

4 移植手術について原則として右下腹部を切開し 腎移植をします 血管は腎動静脈を足に行く血管に吻合し 尿管は膀胱に吻合します 通常は 輸血はしませんが 必要であれば輸血をすることもあります 術後は 2 日間のベッド上安静を要しその後は歩行も可能となります 通常 4~6 日目に膀胱のチューブを その翌

1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

図 1 緩和ケアチーム情報共有データベースの患者情報画面 1 患者氏名, 生年月日, 性別, 緩和ケアチームへの依頼内容について,2 入退院記録, 3カンファレンス ラウンド実施一覧,4 問題点のリスト,5 介入内容の記録. 図 2 緩和ケアチームカンファレンス ラウンドによる患者評価入力画面 (

Microsoft Word - 1,2002

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

TOHOKU UNIVERSITY HOSPITAL 今回はすこし長文です このミニコラムを読んでいただいているみなさんにとって 救命救急センターは 文字どおり 命 を救うところ という印象が強いことと思います もちろん われわれ救急医と看護師は 患者さんの救命を第一に考え どんな絶望の状況でも 他

<4D F736F F F696E74202D B E58DE381408DDD91EE88E397C381458AC58CEC82F08D6C82A682E989EF>

腎がん はじめに 腎臓は 背部の肋骨下端の高さにある臓器で 尿を作ったり 血圧を調節するホルモンや造血に関係するホルモンを産生したりしています 腎がんは主に腎臓の近位尿細管上皮を由来とするがんで 50 歳代から70 歳代で発生することが多く 女性よりも男性に多く見られます その危険因子としては肥満や

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

10050 WS2-3 ワークショップ P-129 一般演題ポスター症例 ( 感染症 ) P-050 一般演題ポスター症例 ( 合併症 )9 11 月 28 日 ( 土 ) 18:40~19:10 6 分ポスター会場 2F 桜 P-251 一般演題ポスター療

福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

Transcription:

3 上部尿路閉塞 腎後性腎不全 はじめに上部尿路閉塞は, 両側性に出現すれば腎不全を来す可能性の高い疾患である 片側性でも疼痛や発熱の原因となり, がん患者では生活の質 (QOL) を障害する因子となりうる また特に急性腎不全のうち腎後性腎不全が原因である場合にはその閉塞を解除して尿流を確保することにより QOL ならびに予後を改善することが可能であり, オンコロジーエマージェンシーの一つであるとされている 1. 病態生理急性腎不全はその成因において腎前性, 腎性, 腎後性に分類されるが, いずれも急速な腎機能低下により体液の恒常性が維持できなくなり, 高クレアチニン (Cr) 血症, 高窒素血症, 高カリウム血症などの異常や尿毒症様症状を示す疾患である 乏尿 (1 日 400 ml 以下 ) や無尿などで気づかれることが多いが, 検査値異常や CT, 超音波検査などで偶然発見されることもある 以下腎前性, 腎性腎不全も含めて解説する 1 腎前性腎不全腎臓そのものの異常ではなく, 心拍出量あるいは循環血液量の急速な低下のために腎血流が著しく減少して尿の産生が行えず腎不全に至る状態である 心原性ショック, エンドトキシンショック, 高度の出血や脱水などが原因となる 2 腎性腎不全腎性の急性腎不全には急速進行性糸球体腎炎のような糸球体病変によるもの, 抗生物質, 抗がん剤 ( シスプラチンなど ) の腎毒性物質による尿細管障害, 抗生物質や消炎鎮痛薬などによる過敏反応由来の間質障害などがある ネフロンでの濾過や再吸収が行われなくなった状態である *: 尿管ステント膀胱内から尿管内を経て腎盂まで挿入することにより, 通過障害に起因する腎機能低下や感染の治療に用いられるカテーテル 3 腎後性腎不全腎からの尿流が体外に排泄されず水腎症を来し, 水腎症による腎盂内圧の上昇のため尿が産生されなくなった状態である 上部尿路閉塞による腎後性腎不全は, 腎機能に関しては比較的可逆性の疾患であり, 多くは急性あるいは亜急性の状態で発見される しかし, 時に慢性腎不全から尿毒症状態となり回復に至らないこともある 悪性腫瘍に起因する場合は, その腫瘍が未治療であれば治療により改善することも多いが, 治療を繰り返したうえに腎後性腎不全に至った場合は泌尿器科的処置 ( 尿管ステント * 留置, 腎ろう造設など :Ⅱ 7 尿路カテーテル管理の図 5,6 参照 ) を必要とすることが多い 36

3 上部尿路閉塞 腎後性腎不全景知識2. 上部尿路閉塞の原因上部尿路閉塞の原因としては結石, 悪性腫瘍, 放射線治療による炎症性狭窄などがあるが, 神経因性膀胱や前立腺肥大症などの下部尿路通過障害による尿閉状態か らでも腎後性腎不全は起こりうる 上部尿路の尿流を直接閉塞する可能性のある悪性腫瘍としては腎盂尿管がんと稀に腎がんがあるが, そのほとんどは片側性である 一方, 膀胱がんや前立腺がんの浸潤による尿管口閉塞による水腎症があるが, これは両側性のこともある 上部尿路閉塞を来す泌尿器科以外の悪性腫瘍は婦人科系腫瘍 ( 子宮がん, 卵巣がん ) や消化器系がん ( 胃がん, 膵がん, 大腸がん, 直腸がん ) に多く認められ, 直接浸潤, リンパ節転移, 後腹膜への播種, ダグラス窩転移などが原因として挙げられる また進行した下腹部の腫瘍の圧迫による尿流障害や放射線照射後の炎症性狭窄も上部尿路閉塞の一因となりうる その他, 神経因性膀胱や前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞も上部尿路の圧が高まり腎後性腎不全を来す原因になりうる 腎後性腎不全の発見の契機は尿量減少, 体重増加, 閉塞性の腎盂腎炎による発熱, 側腹部痛などであるが, 腎機能低下 血中尿素窒素 (BUN),Cr の上昇 や CT 超音波検査で偶然水腎症を認めることによって発見されることもある 腎機能低下 (BUN,Cr 上昇 ) が血液検査で確認された時は,CT や超音波検査で水腎症の有無を確認する 通常は両側性水腎症があれば腎後性腎不全と判断してよい 水腎症を認めなければ腎前性あるいは腎性腎不全だが, 終末期の場合は両側性水腎症を認めてもさらに脱水などにより腎前性腎不全を合併していることもあり, 注意が必要である 水腎症を認めた場合には, まずその原因を明らかにすることが必要であり, 悪性腫瘍による浸潤や圧迫は常に考慮すべきである その他に良性疾患として片側性水腎症の場合には結石や, 腎盂尿管移行部狭窄症などの上部尿路疾患を, 両側性水腎症の場合には膀胱機能障害や前立腺肥大症などの下部尿路閉塞疾患も考慮しなければならない 下部尿路閉塞では残尿が多くなるので, 残尿量を確認することが必要である 残尿は排尿後に導尿をすることにより評価できるが, 膀胱を超音波で確認することによっても判定は可能である 最近は簡便な残尿測定用超音波装置を備えている施設も多くなっている 残尿が多い場合は, まず膀胱からの尿流を確保することが必要である 多くは下部尿路閉塞に対する処置, 治療 ( 自己導尿, カテーテル留置 ) で水腎症や腎機能は改善する (P22,Ⅱ 2 下部尿路症状,P58,Ⅱ 7 尿路カテーテル管理の項参照 ) 下部尿路閉塞を認めない片側性で無症状の水腎症では総腎機能の低下は軽度であり,QOL にはほとんど影響がないため経過観察とすることが多い これは尿管ステント挿入などの処置を行うと定期的な交換が必要であり, またステントによる膀胱刺激症状に悩まされるなどかえって QOL が低下することが多いからである ただし, 保存的治療で改善しない, 発熱や痛みを伴う腎盂腎炎を合併した片側性水腎症の場合は尿管ステント挿入が必要となる 一方, 無症状の片側性水腎症で尿管ステ 37 3. 評価と検査 Ⅱ章背

ントや腎ろう造設が必要となるのは, 腎毒性の強い化学療法が予定されており, 腎機能温存の必要性が高い場合や, 総腎機能を改善することで手術が可能になる場合などである 片側性水腎症を認めるが無症状で経過観察が選択された時には, 尿量減少や体重増加に注意するよう説明を行い,4~8 週に一度は超音波検査や腎機能検査をチェックし健常側の腎に水腎症を来していないか, 腎機能低下を来していないかのフォローが必要であるし, 尿量減少や側腹部痛, 発熱などの症状に注意するよう説明しておく必要がある そのうえで両側性水腎症では尿量減少や体重増加, 総腎機能低下に留意しつつではあるが, いつでも尿管ステント挿入あるいは腎ろう造設に対応できる準備が必要となる また腎機能低下が進行した症例では, その Cr 値が予後に影響を与えるという報告もある 1,2) ので, 原因疾患が進行性である場合は, 総腎機能や自覚症状に緊急性がなくても尿管ステント挿入あるいは腎ろう造設を早期に行うこともある 4. 治療方法上部尿路閉塞から腎後性腎不全を来した場合の治療については, まず尿流を確保することが必要である 原因疾患が悪性腫瘍で治療に時間がかかる, あるいは治療困難である場合には, 緊急的に尿流を確保するためには内視鏡的 ( 経膀胱的 ) に尿管ステントを留置するか, 経皮的に超音波下に腎ろうを造設するかの 2 つの方法のどちらかが選択される 尿管ステント, 腎ろうとも両側性水腎症の患者に対して行われることが多いが, そのほとんどは一側の腎機能がより良いと判断された側の腎に行われることが多い 両側に行う時は両側に症状を認める場合, あるいは将来化学療法が考慮されている場合などである その他長期の予後が予測され, しかも膀胱からの自然排尿に伴う不快な症状が強く出現することも予測される, あるいは出現した場合には回腸導管や両側尿管皮膚ろうも選択肢の一つである 逆に予後が極めて短いと判断された場合には尿流の確保を行わず自然経過をみるという考え方もある 以下にそれぞれの方法と長所, 短所について述べる 1 尿管ステント尿管ステントは膀胱鏡を用いて水腎症のある側の尿管口にガイドワイヤーを挿入し, 尿管ステント先端を腎盂に到達させ, 腎盂と膀胱間に留置する 腎ろうが先に留置されていれば, 腎ろうからガイドワイヤーを下降させて膀胱鏡を使用せずに留置することも可能である [ 長所 ] 尿管ステントは体内留置であるため体外にカテーテルが見えず, また膀胱機能も正常であれば蓄尿バッグも必要としないため, ボディーイメージを損なわない ステントはある一定期間を経過すると閉塞することがあり, 最長 6 カ月で交換が必要であるが, 一般的には 3~4 カ月で交換することが多い しかし, 腎ろうよりは交換の期間は長い 体内留置であるため自然抜去, 自己抜去, 事故抜去の可能性は極めて低い 約 3 カ月で交換することが一般的とされていたが, 金属ステント 3) が使用可能と 38

3 上部尿路閉塞 腎後性腎不全景知識なり,10~12 カ月に 1 回の交換でよい症例も増加してくるものと思われる [ 短所 ] 前述のように膀胱鏡操作が必要であり, 特に男性では尿道粘膜麻酔のみではかな Ⅱり強い痛みも伴い, 仙骨麻酔や腰椎麻酔を必要とすることがある 尿管の閉塞を伴った状態でステントを挿入するため, 軟性膀胱鏡では挿入が困難であることが多い 硬性膀胱鏡を使用する場合は多少下肢の開排ができないと困難である 前立腺がんや直腸がんなどの直接浸潤あるいは膀胱がんの存在などで尿管口の確認ができない場合や, 尿管の狭窄が強度の場合, ステント挿入ができないことがある ステントの閉塞の判定は体内留置であるため腎ろうに比較して困難であり, また内孔が狭いため閉塞することが比較的多い ステントは体内留置であり, 忘れられやすいことも 1 つの欠点である 長期留置例ではステントへの結石形成も報告されている ステントは異物であり, 感染の原因となったり, ステントが膀胱を刺激して痛みや不快感を伴うことがある 2 腎ろう腎ろうの挿入は経皮的に超音波下で行われる 一般に腹臥位で行われるが, 腹臥位をとることが困難な場合, 側臥位での挿入も不可能ではない [ 長所 ] 腎ろうは初回挿入後 2 週間以上経過し, ろう孔が安定していればベッドサイドでも交換は可能である 尿管ステントと比較して交換の際の痛みは軽度である 閉塞の判定は腎ろうから直接洗浄したり造影することで容易に判断できる [ 短所 ] 体外にカテーテルが存在し蓄尿バッグも必要であり,QOLが低下するといわれている 留置時の合併症として出血や感染がある 特に出血に関しては腎盂に凝血塊が充満し, 尿流を妨げて速やかな腎機能の改善につながらないこともある 体外にカテーテルが出ているため自然抜去の可能性もあり, せん妄などによる自己抜去, 蓄尿バッグを引っ掛けての抜去もありうる カテーテル交換の期間は 2~4 週間と比較的短い 3 回腸導管, 尿管皮膚ろう もし尿管口の閉塞があり, 腎ろうを必要とする症例で長期の予後が見込まれれば ( 例えば前立腺がんや大腸がんなど ), いったん腎ろうを造設した後に尿管皮膚ろうを造設するという選択もある また, 他臓器のがんの膀胱への浸潤や膀胱がんの増大で血尿による膀胱タンポナーデを来す可能性が高い場合も, あらかじめ回腸導管や尿管皮膚ろうを造設しておくという選択もある しかし, ストーマが必要となることや腎ろう造設と比較すると全身麻酔下の侵襲の大きい手術となるため, 関係者や患者 家族と十分な相談のうえで選択を決定する必要がある 章背39

4 尿路閉塞解除をしないで対症療法のみで経過をみるという選択超高齢者,performance status(ps) の悪い症例, 予後の短い症例 ( 例えば日単位, 週単位など ), 在宅症例などでは, 治療のための入院が必要で負担のかかる治療なら, 治療を行わないという選択も考えられる ただし, その場合には患者本人または責任をもって選択を決定する家族 ( 代理意思決定者 ) と相談しなければならない 予後の判定には Palliative Prognostic Index 4) や Palliative Prognostic Score 5) などが用いられる まとめ以上, 尿路変向の方法について述べたが, 前述したように主として用いられているのは, 尿管ステント挿入と腎ろう造設である 前に述べたように尿管ステントは不成功に終わる症例が存在し, 腎ろうのほうが安定して尿流を確保できる しかし, ボディーイメージの変化は尿管ステントのほうが少なく,QOL に関しても尿管ステントのほうが優れているという意見もある 尿管ステント不成功に関してはいくつかの後ろ向きの比較検討がなされている Chung ら 1) は Cr 1.3 以上, 近位尿管に狭窄のある症例,Ganatra ら 2) は膀胱鏡下で膀胱浸潤の所見がある症例が, 尿管ステントの不成功の予測因子であるとしている 逆に腎ろうが必要な症例としては, Kanou ら 6) が骨盤内疾患では初回から腎ろうの選択例が多く, またステントからの変更例も多いと述べている 患者個々の疾患や状態, 検査値, 閉塞の所見なども考慮し, またそれぞれの方法の長所や短所も説明したうえではあるが, どちらの方法を選択するかは最終的には専門医の判断に委ねていただきたい ( 入江伸 ) 文献 1)Chung SY, Stein RJ, Landsittel D, et al. 15 year experience with the management of extrinsic ureteral obstruction with indwelling ureteral stents. J Urol 2004; 172: 592 5 2)Ganatra AM, Loughlin KR. The management of malignant ureteral obstruction treated with ureteral stents. J Urol 2005; 174: 2125 8 3) 前田雄司, 栗林正人, 泉浩二, 他. 腫瘍性尿管閉塞に対する全長型金属尿管ステントの治療成績.Jpn J Endourol ESWL 2010; 23: 244 99 4)Morita T, Tsunoda J, Inoue S, et al. The Palliative Prognostic Index: a scoring system for survival prediction of terminally ill cancer patients. Support Care Cancer 1999; 7: 128 33 5)Maltoni M, Nanni O, Pirovano M, et al. Successful validation of the palliative prognostic score in terminally ill cancer patients. Italian Multicenter Study Group on Palliative Care. J Pain Symptom Manage 1999; 17: 240 7 6)Kanou T, Fujiyama C, Nishimura K. Management of extrinsic malignant ureteral obstruction with urinary diversion. Int J Urol 2007; 14: 689 92 40