金融市場2018年12月号

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金融市場2017年11月号

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

今月の経済金融情勢2018年12月25日号

今月の経済金融情勢2018年11月30日号

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平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

脆弱なセクターを中心にバランスシート調整を招く懸念が挙げられる 前者は あまりに も非伝統的なトランプ政権の通商政策の波及効果が読み切れないことに伴うリスク 後者 は過去の景気後退において FRB による金融引き締めが先行するケースがほとんどであっ たという経験則に基づくリスク認識である - - -

金融市場2019年01月号

1. トピック : 米国金融政策と通商政策は 次の ステージへ 6 月 FOMC は 0.25% 利上げ フォワードガイダンスを大幅変更漸進的とは言え 利上げ一直線のみの方針に長期水準を超えるタイミングが 2020 年から 2019 年に 2019 年からは 毎回記者会見を実施今後の焦点は緩和的スタ

米国経済見通し 個人消費の加速と不透明感

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

スライド 1

Invesco Premia Plus Fund

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[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

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○ユーロ

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今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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マネーマーケットマンスリー 2018年12月

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FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

マネーマーケットマンスリー

米国経済見通し 中間選挙後の米国経済

産業トピックス

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

資料1

Outlook201805

Currency201207

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Outlook201806

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

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経済金融・情勢資料  15年7月 

2016 年 メキシコペソ もとの状況と今後の 通し <メキシコペソ / 円は下落 > < 政策 利とインフレ率の推移 > メキシコペソは もとまで軟調に推移してきました しかし 原油先物価格は2016 年 2 に安値をつけて下落が続いてきた理由として 1 統領選 2メ以降 持ち直す展開


Outlook201901

今月の経済・金融情勢

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米労働市場は直近の回復基調に変化なし ~FRB出口政策への影響は限定的~

Microsoft Word ECB利下げ.doc

Outlook201812

米国経済の見通し-減税、拡張的な財政政策などから当面は堅調見通しも、影を落とす通商政策動向

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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TFX_フィスコ通貨ウォッチャー

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

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マネーマーケットマンスリー 2018年3月

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

参考資料いちよし証券投資情報部 2019 年 10 月 7 日 極端な悲観相場の修正へ 業績の下方修正リスクも織り込み 日米経済指標に注目 最終ページに お客様にご確認いただきたい重要な注意事項を記載しております 必ずご確認ください

一部新興国市場が動揺 アルゼンチンは前四半期から経済危機に陥っていましたが トルコでは 6 月に再選された大統領が米国と対立したこと等を契機に 8 月に通貨が急落しました ブラジルや南アフリカ インドの通貨も下落が加速する局面が見られ 中国元も緩やかに値を下げました これまでのところ個別国の問題とい

月例経済報告

目次 概況 p.1~ トピックス1: 米中貿易摩擦が本格化 p.3 トピックス :~6 月期以降 個人消費は持ち直しに転じる見込み 景気 金利見通し p. p.5 Fed Watch:18 年の利上げペースが注目点に p.6 調査部マクロ経済研究センター ( 欧米経済グループ ) 研究員長野弘和 (

Fidelity Charts & Graphs PowerPoint Template

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

為替相場展望2018年9月号

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株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

月例経済報告

米国経済見通し 株安はFRBのせいなのか

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

○ユーロ

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外為マンスリービュー11月1日号

為替相場展望2018年10月号

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NZD NZDANZActivityOutlook 01:00 21: NZD ニュージーランド NBNZビジネス信頼感指数 01:00 21: AUD オーストラリア HIA 新規住宅販売件数 (MoM) 01:00 21:00 0.6% AUD オーストラリア民間事業

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Economic Indicators_  定例経済指標レポート

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金融政策決定会合における主な意見

みずほ米国経済情報 2019 年 2 月号 トピック 1 月 FOMC 議事要旨と米政治動向 FOMC の忍耐強さは 不確実性が後退すれば修正されるが 方向感は定まっていない 歳出 債務上限 自動車 部品関税 通商交渉と 不確実性が後退する動きも少ない 景気判断企業業況は低下傾向 個人消費は一時的な

( 公社 ) 近畿圏不動産流通機構市況レポート市況トレンド /1 年 7~9 月期の近畿圏市場 1. 中古マンション市場の動き 成約価格は前年比で 3 期連続上昇 1 年 7~9 月期の近畿レインズへの成約報告件数は,9 件と 前年同期比で 1.% 増加した (P1 図表 1) 新規登録件数は 15

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

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金融市場2018年12月号

株式市場 米国株 先行き不透明感強いがファンダメンタルズは良好 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました 堅調な経済指標の発表を受けて米国の年内利上げ観測が高まったことで 金利動向の影響を受けやすいディフェンシブセクターの一部が軟調に推移しました また 米

国内短期金利

財政赤字や債務発行残高の大幅な増加が予想されている 財政赤字の累積額が 1 兆ドルを超える時期は前回発表 (217/6/29) と比較すれば 2 年前倒しされており また 228 年には債務残高がGDP 対比ほぼ 1% に達すると見込まれている ( 図表 2) FRBによるバランスシート縮小も 需給

Outlook201609

中国、財新サービス業PMIは4ヶ月ぶりの低水準に(Asia Weekly(3/4~3/8)) | 第一生命経済研究所 西濵徹

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

グローバル・マクロ・ウォッチ

Invesco Australian Bond Fund (Monthly)

外為マンスリービューⅠ北米編 2月号

Transcription:

情勢判断 米国経済金融 労働市場 消費 企業部門において堅調さが持続 ~ 住宅市場 設備投資が弱含み~ 佐古佳史要旨 7~9 月期の GDP 速報値は 特殊要因が成長率を底上げした 4~6 月期には及ばなかったものの 前期比年率.% と高成長が持続した 足元の指標からは 住宅市場と設備投資にやや弱含みが見られるものの 米国経済は堅調に推移していると判断できる 賃金と生産者物価指数の上昇率は高まっているものの 足元のインフレ率は FRB が目標とする % 付近で安定している 11 月の FOMC では事前予想通り政策金利の誘導目標は据え置かれた一方で 1 月の FOMC にて利上げする下地は整いつつあると考えられる 中間選挙を終え オバマケアが再び争点化する可能性も賃金上昇率の加速が確認された雇用統計 約 年間のトランプ政権に対する国民の審判とも形容される 中間選挙 ( 下院は全 4 議席 上院は 議席が改選 ) が 6 日投開票され 上院は共和党が過半数を維持した一方で 下院は民主党が過半数を奪還した 投票の傾向としては 共和党は 白人 肉体労働者 地方在住者 非大卒 保守層といったトランプ氏のコアな支持基盤をまとめ上げた 一方の民主党は マイノリティ 都市在住者 大卒 中道 ~リベラル層からの支持を集めた もっとも 昨今の民主党内で発言力が増しつつある進歩主義 (progressive) 候補の躍進は限定的であった 下院で民主党が多数派となったことで ロシアによる 16 年の大統領選介入疑惑の追及が今後厳しくなる可能性が指摘されている また 医療保険が最も有権者の関心事となったことから 医療保険制度改革 ( オバマケア ) をめぐる対立は先鋭化すると考えられる トランプ政権が目指すインフラ投資の拡大については 両党が妥協点を見出せる可能性はあるものの 大規模化する場合は財源をめぐって対立する可能性が指摘されている 一方で トランプ政権と民主党は通商政策については協力的な関係が構築できており 米中貿易摩擦への影響はほとんどないと考えられる さて 足元の指標を確認してみると 1 月の雇用統計では賃金上昇率が前年比.1% と 9 年以来の高い伸びとなった 直近 ヶ月の非農業部門雇用者数は 1.8 万人と速いペースでの雇用拡大が続いており 失業率は約 年ぶりに.7% まで低下した

高い成長率が持続した 7 ~ 9 月期 (% 前期比年率 ポイント ) 6 また 7~9 月期の GDP 速報では 特殊要因が成長率を底上げした 4~6 月期には及ばなかったものの 前期比年率.% と高成長が持続した 需要項目別では 個人消費 民間在庫投資 政府支出が成長を牽引した一方で 輸入の伸びが下押ししたほか 住宅投資が伸び悩んだ 今後については 財政政策の効果が徐々に剥落してくることや FRB の利上げ ひっ迫する労働市場が重石となり.% 程度とされる潜在成長率に向けて成長率が徐々に低下していくと考えられる 以下では需要項目ごとに確認してみたい 図表 1 GDP の推移 4 1 1 設備投資政府支出民間在庫投資住宅投資外需個人消費実質 GDP 4 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 1 年 1 年 14 年 1 年 16 年 17 年 18 年 ( 資料 ) 米商務省 Bloombergより農中総研作成 ( 注 ) 各需要項目は寄与度 ( 前期比年率換算 ) 住宅に関しては 18 年入り後は弱含んで推移している 新築住宅着工件数の伸び悩みに加え 新築 中古住宅とも売れ行きが芳しくない 先行きについては 利上げの影響などから 年固定住宅ローン金利はこの 1 年間で約 1 ポイント上昇し 4.94% となっており 購入意欲は弱含まると思われる また 建設業界の求人件数比率も高く 労働者の不足感が強まっており 供給面の制約からも住宅着工は伸び悩むであろう ( 万件 ) 図表 住宅市場の動向 14 1 1 11 1 9 8 7 6 住宅着工件数 ( 左軸 ) 住宅価格指数 (S&Pケース シラー指数 右軸) 4 '9/1 '1/1 '11/1 '1/1 '1/1 '14/1 '1/1 '16/1 '17/1 '18/1 ( 資料 ) 米商務省 S&P ケース シラーより農中総研作成 ( 万件 ) 図表 住宅販売件数 6 1 19 17 4 1 4 1 中古住宅販売 ( 左軸 ) 新築一戸建住宅販売 ( 右軸 ) 11 '9/1 '1/1 '11/1 '1/1 '1/1 '14/1 '1/1 '16/1 '17/1 '18/1 ( 資料 ) 全米不動産業者協会 米国商務省 Bloombergより農中総研作成 ( 万件 ) 7 7 6 6 4 4

堅調な個人消費 と企業部門 1 月の小売売上高 ( 総合 ) は前月比.8% と高い伸びとなった また 9 月の個人消費支出は同.4%( 実質では同.%) となっている 先行きに関しても 雇用者数の増加や賃金上昇 減税政策の効果から消費の拡大基調が維持されると考えられる 企業部門については 1 月の鉱工業生産は製造業が前月比.% 鉱業が同.% 公益部門が同.% となり 全体では同.1% の上昇となった また 9~1 月にかけて米国南東部を襲ったハリケーンの影響は単月でそれぞれ同.1% 未満と軽微であったことが報告されている 先行きに関しては ISM 製造業景況指数が 7.7% 非製造業景況指数が 6.% と堅調な推移が続いていることなどからも 拡大基調が持続すると考えられる ( 前月比 %) 図表 4 小売売上高の推移 1. (1 年 =1) 11 図表 鉱工業生産と ISM PMI の推移 (%) 7 1. 総合 コア 1 6 1. 9 鉱工業生産 ( 全体 ). 9 製造業 ISM PMI ( 右軸 ) 4. '17/1 '17/1 '18/ '18/4 '18/6 '18/8 '18/1 ( 資料 ) 米商務省 Bloombergより農中総研作成 8 8 年 9 年 1 年 11 年 1 年 1 年 14 年 1 年 16 年 17 年 18 年 ( 資料 )FRB 全米供給管理協会 Bloombergより農中総研作成 ( 注 )ISM PMIはヶ月移動平均 貿易については 米中貿易摩擦やトランプ政権の保護主義的な動きが懸念されてはいるが 米国経済の拡大に伴う輸入の伸びが輸出の伸びを上回り 7~9 月期 GDP 成長率に対しマイナスに寄与した また 先行指標となる ISM 輸入指数も高い水準で推移しており 先行きも輸入の拡大と貿易収支の悪化が続くと想定される ( 億ドル ) 図表 6 貿易収支の推移 (% 前年比 ) ( 前年比 %) 図表 7 輸入 ISM 輸入指数の推移 (%) 6 1 貿易収支輸出 ( 右軸 ) 輸入 ( 右軸 ) 1 1 1 実質輸入 ( 左軸 ) ISM 輸入指数 ヶ月移動平均 ヶ月先行 ( 右軸 ) 6 4-1 - 6-7 8 年 1 年 1 年 14 年 16 年 18 年 ( 資料 ) 米商務省 Bloombergより農中総研作成 -4 1 4 '1/9 '11/9 '1/9 '1/9 '14/9 '1/9 '16/9 '17/9 '18/9 ( 資料 ) センサス局 ISM Bloombergより農中総研作成

インフレは % 付近で安定して いる インフレ関連指標をみると 1 月のコア生産者物価指数は前年同月比.6% コア消費者物価指数は同.1% と落ち着いた推移となっている FRB が注視する PCE デフレーター ( コア ) の上昇率も 月以降 目標の % で推移している インフレ率の先行きについては 期待インフレ率 ( ブレーク イーブン インフレ率 ) は低下傾向で推移しており インフレが短期間で昂進するとは考えづらいものの 賃金上昇率の高まりを背景に緩やかに上昇すると見込まれる (% 前年比 ) 図表 8 近年のインフレ関連指標の推移. (%) 図表 9 最近の期待インフレ率の推移..1. 1..1. 1.9 1. 時間当たり賃金消費者物価 ( コア ) 生産者物価 ( コア ) PCEデフレーター ( コア ) 1.9 1.8 BEI 年 BEI 1 年 1.8 '14/1 '1/4 '1/1 '16/4 '16/1 '17/4 '17/1 '18/4 '18/1 / 6/ 6/19 7/ 7/17 7/1 8/14 8/8 9/11 9/ 1/9 1/ 11/6 11/ ( 資料 ) 米労働省 経済分析局 Bloombergより農中総研作成 ( 資料 )Bloombergより農中総研作成 こうしたなか 7~8 日に開催された米連邦公開市場委員会 (FOMC) では 事前予想通り政策金利の誘導水準は.%~.% で据え置かれた また 声明文では経済は堅調に推移していると評価し 1 月の FOMC にて利上げする地ならしが行われたと解釈できる 一方で 声明文では設備投資の弱さが指摘されており 実際に投資の先行指標となる資本財受注や関連する DI が頭打ちとなっている 先行きについても弱含む展開が見込まれる ( 前年比 %) 図表 1 設備投資関連統計の推移 1 1 資本財受注 ( 非国防 除航空機左軸 ) 資本財出荷 ( 非国防 除航空機左軸 ) 設備投資計画 DI ( フィラデルフィア連銀調査右軸 ) ( 増やす - 減らす %) 4 4 1 1 1 '14/ '14/9 '1/ '1/9 '16/ '16/9 '17/ '17/9 '18/ '18/9 ( 資料 ) 米商務省 フィラデルフィア連銀製造業景況感調査 Bloombergより農中総研作成 ( 注 ) 設備投資計画 DIはヶ月先行

長期金利 : 方向 感を欠く展開 最後にマーケットを概観すると 米長期金利 (1 年債利回り ) は米中貿易摩擦懸念やトルコを初めとした新興国通貨不安から 8 月末にかけて.8% 近辺にまで低下した 9 月以降 8 9 月分の雇用統計などが FRB の利上げペースを後押しする堅調な内容となったことなどから金利は再び上昇し 1 月 日に一時.% まで上昇した その後は 株式市場の動きに合わせて 方向感を欠く展開が続いており 1 月 6 日に一時.% まで低下した後に上昇に転じ 11 月 7 日には一時.% まで上昇した しかし 足元では再び低下し % をやや上回る水準で推移している 先行きに関しては 米議会予算局 (CBO) の経済見通しによると 19 会計年度 (18 年 1 月 ~19 年 9 月 ) において 財政赤字が 9,81 億ドル (GDP の 4.6% 17 年度は 6,6 億ドル 18 年度は 7,789 億ドル ) と見積もられており 国債増発による金利上昇圧力が強まりやすい環境にある また FRB による漸進的な利上げやバランスシートの縮小も継続されるとみられる 一方で 世界経済の減速懸念もじわじわと強まっており 相対的に高金利な米国債に対する需要は相応にあると考えられる また株式市場の調整が終わるまでは 本格的な金利上昇も難しいのではないだろうか 以上から 米長期金利 (1 年債利回り ) は % をやや上回る現状の水準で推移すると思われる なお 投機筋の 1 年債売りポジションの巻き戻しが進んでいることにも注意すべきであろう ( ドル ) 図表 11 株価 長期金利の推移 7, (%). 6,..1 6,.1,., 4, 財務省証券 1 年物利回り ( 右軸 ) ダウ平均 ( 左軸 ).9.9 4,.8 9 月 4 日 9 月 17 日 9 月 8 日 1 月 1 日 1 月 日 11 月 7 日 11 月 1 日 ( 資料 )Bloomberg より農中総研作成

(%) 図表 1 1 年米国債先物の投機筋ポジションと 1 年債金利 7 6 4 投機筋 CFTC ネットポジション ( 右軸 ) 1 年債金利 ( 左軸 ) 買いポジション ( 万枚 ).8.6.4....4.6 1.8 '8 年 '1 年 '1 年 '14 年 '16 年 '18 年 ( 資料 )Bloombergより農中総研作成 株式市場 : 一進株式市場では 8~9 月にかけて堅調な決算や経済指標が好感さ一退の展開れた 1 月に入ると 急速な金利上昇と貿易摩擦の懸念が再燃したことで 株価は一旦急落し 調整局面に入っている 中国経済減速への懸念や サウジアラビアに関する地政学的リスク 原油価格の急落などが意識され 上値の重い展開となった その後は 11 月 6 日の中間選挙を挟んで 短期的に株高となったものの その後は アップル製品への弱い需要見通しと貿易摩擦懸念を嫌気したハイテクセクターの下げが先導する形で 軟調な展開が続いている 先行きは 堅調な米国の経済指標は追い風になるものの 利上げ見通しをめぐる思惑や 貿易摩擦によってサプライチェーンが混乱する可能性に対する織り込みの進展などが重石となり本格的な株価上昇は難しく一進一退の展開が続くと予想する (18.11. 現在 )