蘇生をしない指示(DNR)に関する指針

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私のリビングウィル 自分らしい最期を迎えるために あなたが病気や事故で意思表示できなくなっても最期まであなたの意思を尊重した治療を行います リビングウィル とは? リビングウィルとは 生前に発効される遺書 のことです 通常の遺書は 亡くなった後に発効されますが リビングウィルは 生きていても意思表示

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文書管理番号

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1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

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2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件


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国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院医療に係る安全管理のための指針 第 1 趣旨本指針は 医療法第 6 条の10の規定に基づく医療法施行規則第 1 条の11 の規定を踏まえ 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 ( 以下 センター病院 という ) における医療事故防止について組織的に

看護師のクリニカルラダー ニ ズをとらえる力 ケアする力 協働する力 意思決定を支える力 レベル Ⅰ 定義 : 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する 到達目標 ; 助言を得てケアの受け手や状況 ( 場 ) のニーズをとらえる 行動目標 情報収集 1 助言を受けながら情報収集の基本

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はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

いろいろな治療の中で して欲しい事 して欲しくない事がありますか? どこで治療やケアを受けたいですか? Step2 あなたの健康について学びましょう 主治医 かかりつけ医や他の医療従事者にあなたの健康について相談する事も大切です 何らかの持病がある場合には あなたがその病気で将来どうなるか 今後どう

( 様式 1-1) 日本専門医機構認定形成外科専門医資格更新申請書 20 年月日フリガナ 氏 名 生年月日年月日 所属施設 ( 病院 医院 ) 名 勤務先住所 連絡先 ( 電話 : - - ) ( FAX : - - ) アドレス 1: アドレス 2: 専門医登録番号 - 医籍登録番号

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

高等学校「保健」補助教材「災害の発生と安全・健康~3.11を忘れない~」 第3章

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CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

Transcription:

蘇生術を行わない (DNR) 指示に関する指針 008 年 月 0 日坂総合病院管理部 DNR(Do Not Resuscitate) とは 終末期状態の患者 ( 癌の末期 老衰 救命の可能性がない患者など ) で 心肺停止時に蘇生術を行わないことをいう DNR を医師が指示することを DNR 指示 という 本指針でいう心肺停止時の蘇生術とは 心臓マッサージ 電気的除細動 気管内挿管 人工呼吸器の装着 強心剤の投与など心肺蘇生のためのすべての手技 処置 投薬を指す いわゆる終末期状態の患者に対する治療方針の選択とは異なるので 混同してはならない また 以下の指針は 難治性進行性筋神経疾患 (ALS 筋ジストロフィー ) にも適用する Ⅰ DNR 指示を考慮する場合, 患者 家族からの要請 ( 事前指示書あるいは口頭で明確な意思表示 ) が出された場合 それをもとに主治医 ( 担当医 ) は患者 家族とその後の方針を検討する DNR 指示を考慮する時期については 患者の病状や理解能力 感受性などを考慮し 画一的ではなく個別的に対応していく, 進行性疾患で死が差し迫っている終末期や老衰末期患者などで 心肺蘇生が妥当な処置とは考えられない患者を対象とし 以下の つの要件を満たす場合に 主治医 ( 担当医 ) から DNR を選択枝の一つとして提示することができる () 医学的に死期が近い状態で 心肺停止がさし迫っていると判断される () 心肺蘇生をしても医学的に治療の効果が期待できないと判断される ( 治療的限界 医学的無益性 ) Ⅱ DNR の決定 事前指示書を携えている場合患者の意思決定能力があるときに書かれた 終末期状態で心肺蘇生を拒否することを明示した文書 ( 事前指示書 ) を患者が携えている場合は 客観的な医学的判断 ( 別紙チェックシートによる確認 ) の妥当性を前提に この文書における患者の意思を尊重しなければならない しかし その時点で家族から異なった意見が出された場合は関係者間で協議する 本来 事前指示書の作成の段階では患者 家族 主治医 ( 担当医 ) の充分な話し合いを持つことが望ましい. 意思決定能力のある患者の場合意思決定能力のある患者はいつでも DNR 指示 を要請できる 要請を受けた主治医 ( 担当医 ) は速やかに患者 家族と協議を行わなければならない この際 客観的な医学的判断 ( 別紙チェックシートによる確認 ) の妥当性を前提に 患者の意思が尊重される. 意思決定能力のない患者の場合意思決定能力のない患者で DNR 指示が妥当と判断される場合 あるいは家族からの DNR の要望が出されて DNR 指示を検討するのは Ⅰ の の つの要件 を満たす場合に限られる この場合 客観的な医学的判断 ( 別紙チェックシートによる確認 ) を行い 心肺蘇生が本人の生命維持に与える影響を十分説明した上での家族の同意が必要である 連絡可能な家族がい

ない場合は複数の医師の同意が必要である Ⅲ DNR 指示の決定における手順および留意点 DNR 指示申請の手続き本人または家族の方に 心肺蘇生術を行なわない要望書 ( 様式 または様式 ) の記入をしていただく 身寄りのない意識障害のある患者の場合は 主治医 ( 担当医 ) が DNR 指示申請書 ( 様式 ) へ記入する DNR 指示決定 承認における妥当性の判断と手続き () 医学的判断 DNR 指示が妥当かどうかの医学的判断は できるだけ事前に主治医 ( 担当医 ) を含めた複数の医師が充分検討し決定する 判断内容はその根拠や討議内容とともに主治医 ( 担当医 ) が診療録に正確に記載し 協議に参加した複数の医師名を記載しなければならない () 医師 医療スタッフ間での意思統一患者や家族の真意や置かれている状況を充分把握するために 医師のみならず看護師等複数の医療スタッフを加えたカンファレンスで別紙チェックシートに基づき方針を確認し 意思統一をはかる なお 在宅診療の場合 在宅カンファレンスにおいて確認し 意思統一をはかる () 患者 家族との協議の原則と手続き患者 家族との協議には 主治医 ( 担当医 ) に加えて看護師長または主任の同席を原則とする その際 DNR 指示の決定によりどのようなことが起こるのか患者や家族に充分な情報を提示し 充分理解したことを確認しなければならない 患者と医師 患者と家族間のコーディネーターとして看護師長や看護主任がその役割を担う 主治医 ( 担当医 ) は DNR 指示を診療録の 患者コメント欄 に記載する 質疑内容について 具体的に診療録に記載する 参加者名は全員記載する 種々の事情で看護師長 看護主任が同席できなかった場合は 別途患者 家族との面談の場を設け 認識の状態や意思を確認する () 例外的な場合時間外や救急搬入時などで 上記の一連の手続きが行なえない場合は 対応している当該医師は 家族と面談し病状や予後 DNR の意味について十分説明をした上で 他の医師とその時の担当看護師の同意のもとで DNR 指示を決定する DNR 指示決定後の手続きと報告 ()DNR 指示が決定された場合 主治医 ( 担当医 ) 診療科長 当該師長は 心肺蘇生術を行なわない要望書兼同意書 ( 様式 または様式 ) に署名する すべての事例について申請書に記入してもらい同意書に署名することとする 同意書は 手術同意書と同じく 原本は診療録情報管理課で保管する () 身寄りのない意識障害患者の場合は 主治医 ( 担当医 ) 診療科長 当該師長が DNR 指示申請書 ( 様式 ) に記入し 院長の承認を得る 院長承認後 主治医 ( 担当医 ) は DNR 指示を診療録の 患者コメント欄 に記載する 申請書は 手術同意書と同じく 原本は診療情報管理課で保管する DNR 指示決定後の修正 停止 撤回

DNR 指示決定後 状況の変化に応じ患者 家族 医師のどちら側からでも いつでも指示の修正 停止 撤回を要求できる 修正 停止 撤回があった場合は 主治医 ( 担当医 ) がその旨 診療録の 患者コメント欄 に記載する DNR 指示決定後の留意点 () DNR 指示と心肺停止までの治療 DNR 指示はあくまでも心肺停止時に際しての対応を規定したものであり それまでの治療行為に関する規定ではない 従って医学的に必要な治療 必要なケアは当然行なわなければならない () DNR 指示後の心電図モニターの装着について DNR 指示後の心電図モニター装着については 医学的に実効性がないから不要であるという意見がある また家族が 静かにみとりたいので装着はしないでほしい という場合もある しかし DNR 指示の患者といえども 様態の急変などその症状によって必要になる場合も想定され画一的に対応すべきではないと考えられる さらに社会的には 患者は人生最後の臨終時には家族にみとられながら亡くなることを希望するであろうし 家族 ( 近親者 ) も臨終の場に立ち会うということを強く望むことが一般的である したがって医療者にとっては 臨終の時期 を予測し家族に提示することが家族や患者とのかかわりの中で最後に託された任務と考えられる 以上のことを考慮し 当院としては DNR 指示患者に対する心電図モニターの装着 の是非は 事例ごとに判断する事とする 上記以外に倫理上の問題が発生した場合は 倫理委員会 ( 事務局 ) にて検討する

DNR 指示の手続き 意思決定能力のある患者 意思決定能力のない患者 身寄りのない 意識障害患者 心肺蘇生術を行わない要望書 への署名 ( 様式 ご本人 ) 事前指示書あればコピーを添付 心肺蘇生術を行わないことに関する同意書 への署名 ( 様式 ご家族 ) 事前指示書あればコピーを添付 例外的な場合 ( 時間外 救急搬入時など ) 医学的判断 ( 複数医師での検討 診療録への記載 ) 医師 医療スタッフ間でのカンファレンス ( 別紙チェックシートでの検討 診療録へ記載 ) 患者 家族との協議 ( 主治医 看護師長の同席 ) 家族との協議 ( 複数の医師 担当看護師の同席 ) 6 DNR 指示の決定 6 様式 ( ご本人 様式 ( ご家族 様式 ( 申請 ) 用 ) への署名 用 ) への署名 への署名 ( 主治医 診療科長 看護師長 ) 様式 ( ご家族用 ) への署名 ( 複数の医師 担当看護師 ) 院長の承認 DNR 指示申請書への署名

DNR 指示決定にあたってのチェックシート 以下の項目がすべてチェックされ確認された上でなければ DNR 指示決定をすることはできない 医学的判断 死期が近い状態である 病名を確認した 治療で病気の回復が期待できない状態である 心肺停止がさし迫っている状態である 心肺蘇生しても医学的に治療効果が期待できない 複数の医師により検討した 検討した医師名 手続きのチェック 提示者 事前指示書を持っており 意思表示されている 患者本人からの申し出があった 家族からの申し出があった 医療者側から提示した 患者 家族が要望書または同意書に署名した 医師とスタッフ間で協議し意思統一した 月 日 患者 家族に説明し協議した DNR 指示の撤回が可能であることを説明した 患者 家族が理解した 診療録に記載した 月日 看護師長または担当看護師が患者家族との協議に同席した もしくは別途患者 家族の意思を確認した 医療者側の同意書 ( または申請書 ) に署名した 月 日 主治医 診療科長 看護師長 ( または担当看護師 ) 例外的な場合 ( 時間外 救急搬入時などの時間的余裕のない場合 ) は 複数医 師の署名で可とする ( 身寄りなしのとき ) 院長が承認書に署名した 月日 以上