蘇生をしない指示(DNR)に関する指針

Similar documents
日本臨床倫理学会 Ⅱ POLST(DNAR 指示を含む ) 作成に関するガイダンス 生命を脅かす疾患 に直面している患者の 医療処置 ( 蘇生処置を含む ) に関する医師による指示 現在, 広く DNAR 指示 (Do Not Attempt Resuscitation Order) という言葉が用

2. 延命措置への対応 1) 終末期と判断した後の対応医療チームは患者および患者の意思を良く理解している家族や関係者 ( 以下 家族らという ) に対して 患者が上記 1)~4) に該当する状態で病状が絶対的に予後不良であり 治療を続けても救命の見込みが全くなく これ以上の措置は患者にとって最善の治

日本臨床倫理学会 日本版 POLST(DNAR 指示を含む ) 作成指針 POLST(Physician Orders for Life Sustaining Treatment) 生命を脅かす疾患 に直面している患者の 医療処置 ( 蘇生処置を含む ) に関する医師による指示書 これは日本臨床倫理

医療に対するわたしの希望 思いが自分でうまく伝えられなくなった時に医療が必要になった場合 以下のことを希望 します お名前日付年月日 変更 更新日 1. わたしの医療について 以下の情報を参照してください かかりつけ医療機関 1 名称 : 担当医 : 電話番号 : かかりつけ医療機関 2 名称 :

する 研究実施施設の環境 ( プライバシーの保護状態 ) について記載する < 実施方法 > どのような手順で研究を実施するのかを具体的に記載する アンケート等を用いる場合は 事前にそれらに要する時間を測定し 調査による患者への負担の度合いがわかるように記載する 調査手順で担当が複数名いる場合には

私のリビングウィル 自分らしい最期を迎えるために あなたが病気や事故で意思表示できなくなっても最期まであなたの意思を尊重した治療を行います リビングウィル とは? リビングウィルとは 生前に発効される遺書 のことです 通常の遺書は 亡くなった後に発効されますが リビングウィルは 生きていても意思表示

北里大学病院モニタリング 監査 調査の受け入れ標準業務手順 ( 製造販売後臨床試験 ) 第 1 条 ( 目的 ) 本手順書は 北里大学病院において製造販売後臨床試験 ( 以下 試験とする ) 依頼者 ( 試験依頼者が業務を委託した者を含む 以下同じ ) が実施する直接閲覧を伴うモニタリング ( 以下

12_モニタリングの実施に関する手順書 

【1

Ⅰ バイタルリンク 利用申込書 ( 様式 1-1)( 様式 ) の手続 バイタルリンク を利用する者 ( 以下 システム利用者 という ) は 小松島市医師会長宛に あらかじ め次の手順による手続きが必要になります 新規登録手続の手順 1 <システム利用者 ( 医療 介護事業者 )>

Microsoft Word - 02:【最終版】ガイドライン

文書管理番号

平成 26 年 3 月 6 日千葉医療センター 地域医療連携ネットワーク運用管理規定 (Ver.8) 千葉医療センター地域医療連携ネットワーク運用管理規定 第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条この運用管理規定は 千葉医療センター地域医療連携ネットワーク ( 以下 千葉医療ネットワーク ) に参加

( 別添様式 2) 喀痰吸引等業務 ( 特定行為業務 ) の提供に係る同意書 下記の内容について十分な説明を受け内容を理解したので 喀痰吸引等業務 ( 特定行為業務 ) の実施に同意いたします 喀痰吸引等 ( 特定行為 ) の種別 口腔内の喀痰吸引該当する ( 実地研修を実施する行為 ) にチェック

富山西総合病院 医療安全管理指針

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

<4D F736F F D E528E7396AF CF979D88CF88F589EF89EF8B63985E F985E816A2E646F63>

3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

MC-80 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン 1 人生の最終段階における医療及びケアの在り方 1 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ それに基づいて患者が多専門職種の医療 介護従事者から構成される医療 ケアチームと十分な話し合いを行い 患者本人による意思

Microsoft Word - 03:【最終版】ガイドライン解説編

血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 に関する説明書 一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター 所属長衞藤義勝 この説明書は 血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 の内容について説明したものです この研究についてご理解 ご賛同いただける場合は, 被

表紙@C

<4D F736F F D E34208EA18CB18EE891B182AB977697CC C8E8DB782B591D682A688CB978A>

Microsoft Word - 退院後生活環境相談員

上越地域医療センター病院 医療安全管理指針

身体拘束廃止に関する指針 社会福祉法人掛川社会福祉事業会 平成 30 年 5 月 23 日改定

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

I

Microsoft Word - HP用 同意書・説明書 130121

る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

責任者 医療安全管理者等をもって構成する (3) 委員会では 医療事故防止対策の検討 医療事故防止のために行う提言 職員に対する指示 啓発 教育 広報などの協議を行い 月 1 回開催するものとする 3 医療安全管理部門の設置 (1) 委員会で決定された方針に基づき 組織横断的に当院内の安全管理を担う

医科診療報酬点数表関係 別添 1 在宅患者支援療養病床初期加算 在宅患者支援病床初期加算 問 1 療養病棟入院基本料の注 6の在宅患者支援療養病床初期加算及び地域包括ケア病棟入院料の注 5の在宅患者支援病床初期加算の算定要件に 人生の最終段階における医療 ケアの決定プロセスに関するガイドライン 等の

平成19年度 病院立入検査結果について

内部監査業務指示書

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

Microsoft PowerPoint - 資料4_救急(ガイドライン)

宮城県立がんセンター受託研究業務手順書

<4D F736F F F696E74202D E372E D58FB097CF979D8CA48F4389EF814094B29088>

SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

Microsoft Word ① リワークマニュアル.docx

3. 本事業の詳細 3.1. 運営形態手術 治療に関する情報の登録は, 本事業に参加する施設の診療科でおこなわれます. 登録されたデータは一般社団法人 National Clinical Database ( 以下,NCD) 図 1 参照 がとりまとめます.NCD は下記の学会 専門医制度と連携して

医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-1

料 情報の提供に関する記録 を作成する方法 ( 作成する時期 記録の媒体 作成する研究者等の氏名 別に作成する書類による代用の有無等 ) 及び保管する方法 ( 場所 第 12 の1⑴の解説 5に規定する提供元の機関における義務 8 個人情報等の取扱い ( 匿名化する場合にはその方法等を含む ) 9

文字数と行数を指定テンプレート

第 4 章治験責任医師の業務 目次 1. 目的と適用範囲 1 2. 治験責任医師の要件 1 3. 治験実施計画書の遵守に関する合意 1 4. 同意説明文書の作成 1 5. 治験分担医師及び治験協力者のリストの作成 2 6. 治験の実施依頼 ( 新規 変更 継続 ) 3 7. 治験の実施等の了承 3

PowerPoint プレゼンテーション

臨床研究の概要および研究計画


<4D F736F F D208F AFA88E397C382C98AD682B782E9834B F89FC5F2E646F63>

目次 1. はじめに 1 2. 研究課題の倫理審査について 2 3. プライバシーの保護について 2 4. 提供試料の解析 / 分析等について 3 5. 研究課題と成果等の公表について 3 6. 追加の採血について 3 7. 過去の研究に提供した試料等の保管について 4 8. 試料 診療情報の提供先

( 委員以外の者の出席 ) 第 5 条委員長は 必要に応じ当該研究に必要な知見及び専門知識を持つ教員 産業医または看護師等を委員会の同意を得て出席させ 意見を聴くことができる ただし 上記の者の出席が困難な場合は 委員長又は委員長が指名した者が口頭等で意見を聴取し 委員会で報告することができる (

Microsoft Word - (課×県・指定)【頭紙】「精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について」等の一部改正について.rtf

TAVRライブ手術ガイドライン案

個人情報保護に関する規定 ( 規定第 98 号 ) 第 1 章 総則 ( 目的 ) 第 1 条学校法人トヨタ学園および豊田工業大学 ( 以下, 総称して本学という ) は, 個人情報の保護に関する法律 ( 平成 15 年法律第 57 号, 以下, 法律という ) に定める個人情報取り扱い事業者 (

2. 平成 9 年遠隔診療通知の 別表 に掲げられている遠隔診療の対象及び内 容は 平成 9 年遠隔診療通知の 2 留意事項 (3) イ に示しているとお り 例示であること 3. 平成 9 年遠隔診療通知の 1 基本的考え方 において 診療は 医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

「 タイトル 」実施要領(案)

<4D F736F F F696E74202D2082A082ED82E E9197BF205B8CDD8AB B83685D>


<4D F736F F F696E74202D208EFC926D C E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

Microsoft Word - 05FAQ(医科)

「 タイトル 」実施要領(案)

2) 社内外相談窓口についてまた ストレスチェック制度に基づく医師の面接指導以外にも 社内外に以下のような相談窓口が用意されています 今回のストレスチェックの結果に関わらず どなたでも利用できますので 体調面で何か気になることがあればご相談ください [ 社内相談窓口 ] 会社 部健康管理室保健師 連

Microsoft PowerPoint - å½fi报説柔ㅂㅯㅼㅚ㇤ㅳㅋ.pptx

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院医療に係る安全管理のための指針 第 1 趣旨本指針は 医療法第 6 条の10の規定に基づく医療法施行規則第 1 条の11 の規定を踏まえ 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 ( 以下 センター病院 という ) における医療事故防止について組織的に

適応外申請 治験審査委員会 Institutional Review Board (IRB)

倫理委員会審査手順書

看護師のクリニカルラダー ニ ズをとらえる力 ケアする力 協働する力 意思決定を支える力 レベル Ⅰ 定義 : 基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する 到達目標 ; 助言を得てケアの受け手や状況 ( 場 ) のニーズをとらえる 行動目標 情報収集 1 助言を受けながら情報収集の基本

国立病院機構熊本医療センターボランティア 活動受入規程 ( 目的 ) 第 1 条本規程は 国立病院機構熊本医療センター ( 以下 病院 という ) においてボランティア活動を希望する個人又は団体を広く受け入れ円滑に活動できるよう支援し 地域社会とともに患者さまを側面から支援し 病院での療養生活を充実

<4D F736F F D20905C90BF8EE891B F18F6F8F9197DE90E096BE E646F63>

<4D F736F F D A835E838A F8B7982D18AC48DB85F20534F A68CEB8E9A E9A8F4390B38DCF2

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

<4D F736F F D2088E397C388C091538AC7979D8B4B92F E81698F4390B3816A2E646F6378>

添付資料 (2) 美容医療広告について 医療広告ガイドラインに照らして 問題と考えられる点 平成 27 年 3 月 3 日 特定非営利活動法人消費者機構日本 医療法又は 医業 歯科医業若しくは助産師の業務又は病院 診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項 ( 平成 19 年厚生労働省告示

<4D F736F F D208EA18CB182C98AD682B782E995578F808BC696B18EE88F878F E38E748EE593B1816A E7B8D732E646F637

書類が整理できない ~ 書類 書類棚の 5S~ 書類が整理できない 岐阜赤十字病院看護部係長会小柳葉子村瀬彩はじめに当院は 平成 25 年度より 業務 KAIZEN 活動 (QC サークル活動 ) を開始し 毎年 20 前後のチームが活動に取り組んでいる 看護部係長会も 当初から 5S 班 を結成し

リウマチケア看護師規則(案) 21/11・1

<4D F736F F D CC8D5391A994708E7E82C98AD682B782E98E77906A E646F63>

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

地域における終末期ケアの意向と実態に関する調査研究(Ⅱ)報告書

                            技管第  号

( 様式第 6) 病院の管理及び運営に関する諸記録の閲覧方法に関する書類 病院の管理及び運営に関する諸記録の閲覧方法 計画 現状の別 1. 計画 2. 現状 閲 覧 責 任 者 氏 名 閲 覧 担 当 者 氏 名 閲覧の求めに応じる場所 閲覧の手続の概要 ( 注 ) 既に医療法施行規則第 9 条の

<4D F736F F D20819B8CA48B868C7689E68F D A8CA9967B5F E646F63>

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

いろいろな治療の中で して欲しい事 して欲しくない事がありますか? どこで治療やケアを受けたいですか? Step2 あなたの健康について学びましょう 主治医 かかりつけ医や他の医療従事者にあなたの健康について相談する事も大切です 何らかの持病がある場合には あなたがその病気で将来どうなるか 今後どう

( 様式 1-1) 日本専門医機構認定形成外科専門医資格更新申請書 20 年月日フリガナ 氏 名 生年月日年月日 所属施設 ( 病院 医院 ) 名 勤務先住所 連絡先 ( 電話 : - - ) ( FAX : - - ) アドレス 1: アドレス 2: 専門医登録番号 - 医籍登録番号

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

埼玉県特別養護老人ホーム優先入所指針 1 目的この指針は 特別養護老人ホーム ( 以下 施設 という ) のサービスを受ける必要性が高いと認められる者を優先的に入所させるため 施設が優先入所 ( 以下 入所 という ) に関する手続き及び入所の必要性を評価する基準等を制定する際の参考とすべき基準を明

6. 研究が終わった後 血液を他の研究に使わせてください 詳しくは ページへ 病には未解決の部分がまだ多く残っています 今後のさらなる研究のため ご協力をお願いいたします ( 必要に応じて ) バンク事業へのご協力をお願いします 遺伝子を扱う研究を推進するため 多くの人の遺伝子の情報を集めて研究に使

居宅介護 ( 介護予防 ) サービス計画計画の自己作成の手引手引き 平成 27 年 12 月 健康部介護保険課 Ⅰ 趣旨 要介護認定を受けた方は 居宅介護支援事業所を選んで どのようなサービスが必要か相談し ケアマネジャーに居宅介護 ( 介護予防 ) サービス計画 ( ケアプラン ) を作ってもらい

訪問介護標準契約書案

高等学校「保健」補助教材「災害の発生と安全・健康~3.11を忘れない~」 第3章


Microsoft Word - 03 大腸がんパス(H30.6更新).doc

Welcome!


CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

<4D F736F F F696E74202D2090C389AA8CA794C58DDD91EE88E397C398418C67836C F815B834E E096BE8E9197BF

Transcription:

蘇生術を行わない (DNR) 指示に関する指針 008 年 月 0 日坂総合病院管理部 DNR(Do Not Resuscitate) とは 終末期状態の患者 ( 癌の末期 老衰 救命の可能性がない患者など ) で 心肺停止時に蘇生術を行わないことをいう DNR を医師が指示することを DNR 指示 という 本指針でいう心肺停止時の蘇生術とは 心臓マッサージ 電気的除細動 気管内挿管 人工呼吸器の装着 強心剤の投与など心肺蘇生のためのすべての手技 処置 投薬を指す いわゆる終末期状態の患者に対する治療方針の選択とは異なるので 混同してはならない また 以下の指針は 難治性進行性筋神経疾患 (ALS 筋ジストロフィー ) にも適用する Ⅰ DNR 指示を考慮する場合, 患者 家族からの要請 ( 事前指示書あるいは口頭で明確な意思表示 ) が出された場合 それをもとに主治医 ( 担当医 ) は患者 家族とその後の方針を検討する DNR 指示を考慮する時期については 患者の病状や理解能力 感受性などを考慮し 画一的ではなく個別的に対応していく, 進行性疾患で死が差し迫っている終末期や老衰末期患者などで 心肺蘇生が妥当な処置とは考えられない患者を対象とし 以下の つの要件を満たす場合に 主治医 ( 担当医 ) から DNR を選択枝の一つとして提示することができる () 医学的に死期が近い状態で 心肺停止がさし迫っていると判断される () 心肺蘇生をしても医学的に治療の効果が期待できないと判断される ( 治療的限界 医学的無益性 ) Ⅱ DNR の決定 事前指示書を携えている場合患者の意思決定能力があるときに書かれた 終末期状態で心肺蘇生を拒否することを明示した文書 ( 事前指示書 ) を患者が携えている場合は 客観的な医学的判断 ( 別紙チェックシートによる確認 ) の妥当性を前提に この文書における患者の意思を尊重しなければならない しかし その時点で家族から異なった意見が出された場合は関係者間で協議する 本来 事前指示書の作成の段階では患者 家族 主治医 ( 担当医 ) の充分な話し合いを持つことが望ましい. 意思決定能力のある患者の場合意思決定能力のある患者はいつでも DNR 指示 を要請できる 要請を受けた主治医 ( 担当医 ) は速やかに患者 家族と協議を行わなければならない この際 客観的な医学的判断 ( 別紙チェックシートによる確認 ) の妥当性を前提に 患者の意思が尊重される. 意思決定能力のない患者の場合意思決定能力のない患者で DNR 指示が妥当と判断される場合 あるいは家族からの DNR の要望が出されて DNR 指示を検討するのは Ⅰ の の つの要件 を満たす場合に限られる この場合 客観的な医学的判断 ( 別紙チェックシートによる確認 ) を行い 心肺蘇生が本人の生命維持に与える影響を十分説明した上での家族の同意が必要である 連絡可能な家族がい

ない場合は複数の医師の同意が必要である Ⅲ DNR 指示の決定における手順および留意点 DNR 指示申請の手続き本人または家族の方に 心肺蘇生術を行なわない要望書 ( 様式 または様式 ) の記入をしていただく 身寄りのない意識障害のある患者の場合は 主治医 ( 担当医 ) が DNR 指示申請書 ( 様式 ) へ記入する DNR 指示決定 承認における妥当性の判断と手続き () 医学的判断 DNR 指示が妥当かどうかの医学的判断は できるだけ事前に主治医 ( 担当医 ) を含めた複数の医師が充分検討し決定する 判断内容はその根拠や討議内容とともに主治医 ( 担当医 ) が診療録に正確に記載し 協議に参加した複数の医師名を記載しなければならない () 医師 医療スタッフ間での意思統一患者や家族の真意や置かれている状況を充分把握するために 医師のみならず看護師等複数の医療スタッフを加えたカンファレンスで別紙チェックシートに基づき方針を確認し 意思統一をはかる なお 在宅診療の場合 在宅カンファレンスにおいて確認し 意思統一をはかる () 患者 家族との協議の原則と手続き患者 家族との協議には 主治医 ( 担当医 ) に加えて看護師長または主任の同席を原則とする その際 DNR 指示の決定によりどのようなことが起こるのか患者や家族に充分な情報を提示し 充分理解したことを確認しなければならない 患者と医師 患者と家族間のコーディネーターとして看護師長や看護主任がその役割を担う 主治医 ( 担当医 ) は DNR 指示を診療録の 患者コメント欄 に記載する 質疑内容について 具体的に診療録に記載する 参加者名は全員記載する 種々の事情で看護師長 看護主任が同席できなかった場合は 別途患者 家族との面談の場を設け 認識の状態や意思を確認する () 例外的な場合時間外や救急搬入時などで 上記の一連の手続きが行なえない場合は 対応している当該医師は 家族と面談し病状や予後 DNR の意味について十分説明をした上で 他の医師とその時の担当看護師の同意のもとで DNR 指示を決定する DNR 指示決定後の手続きと報告 ()DNR 指示が決定された場合 主治医 ( 担当医 ) 診療科長 当該師長は 心肺蘇生術を行なわない要望書兼同意書 ( 様式 または様式 ) に署名する すべての事例について申請書に記入してもらい同意書に署名することとする 同意書は 手術同意書と同じく 原本は診療録情報管理課で保管する () 身寄りのない意識障害患者の場合は 主治医 ( 担当医 ) 診療科長 当該師長が DNR 指示申請書 ( 様式 ) に記入し 院長の承認を得る 院長承認後 主治医 ( 担当医 ) は DNR 指示を診療録の 患者コメント欄 に記載する 申請書は 手術同意書と同じく 原本は診療情報管理課で保管する DNR 指示決定後の修正 停止 撤回

DNR 指示決定後 状況の変化に応じ患者 家族 医師のどちら側からでも いつでも指示の修正 停止 撤回を要求できる 修正 停止 撤回があった場合は 主治医 ( 担当医 ) がその旨 診療録の 患者コメント欄 に記載する DNR 指示決定後の留意点 () DNR 指示と心肺停止までの治療 DNR 指示はあくまでも心肺停止時に際しての対応を規定したものであり それまでの治療行為に関する規定ではない 従って医学的に必要な治療 必要なケアは当然行なわなければならない () DNR 指示後の心電図モニターの装着について DNR 指示後の心電図モニター装着については 医学的に実効性がないから不要であるという意見がある また家族が 静かにみとりたいので装着はしないでほしい という場合もある しかし DNR 指示の患者といえども 様態の急変などその症状によって必要になる場合も想定され画一的に対応すべきではないと考えられる さらに社会的には 患者は人生最後の臨終時には家族にみとられながら亡くなることを希望するであろうし 家族 ( 近親者 ) も臨終の場に立ち会うということを強く望むことが一般的である したがって医療者にとっては 臨終の時期 を予測し家族に提示することが家族や患者とのかかわりの中で最後に託された任務と考えられる 以上のことを考慮し 当院としては DNR 指示患者に対する心電図モニターの装着 の是非は 事例ごとに判断する事とする 上記以外に倫理上の問題が発生した場合は 倫理委員会 ( 事務局 ) にて検討する

DNR 指示の手続き 意思決定能力のある患者 意思決定能力のない患者 身寄りのない 意識障害患者 心肺蘇生術を行わない要望書 への署名 ( 様式 ご本人 ) 事前指示書あればコピーを添付 心肺蘇生術を行わないことに関する同意書 への署名 ( 様式 ご家族 ) 事前指示書あればコピーを添付 例外的な場合 ( 時間外 救急搬入時など ) 医学的判断 ( 複数医師での検討 診療録への記載 ) 医師 医療スタッフ間でのカンファレンス ( 別紙チェックシートでの検討 診療録へ記載 ) 患者 家族との協議 ( 主治医 看護師長の同席 ) 家族との協議 ( 複数の医師 担当看護師の同席 ) 6 DNR 指示の決定 6 様式 ( ご本人 様式 ( ご家族 様式 ( 申請 ) 用 ) への署名 用 ) への署名 への署名 ( 主治医 診療科長 看護師長 ) 様式 ( ご家族用 ) への署名 ( 複数の医師 担当看護師 ) 院長の承認 DNR 指示申請書への署名

DNR 指示決定にあたってのチェックシート 以下の項目がすべてチェックされ確認された上でなければ DNR 指示決定をすることはできない 医学的判断 死期が近い状態である 病名を確認した 治療で病気の回復が期待できない状態である 心肺停止がさし迫っている状態である 心肺蘇生しても医学的に治療効果が期待できない 複数の医師により検討した 検討した医師名 手続きのチェック 提示者 事前指示書を持っており 意思表示されている 患者本人からの申し出があった 家族からの申し出があった 医療者側から提示した 患者 家族が要望書または同意書に署名した 医師とスタッフ間で協議し意思統一した 月 日 患者 家族に説明し協議した DNR 指示の撤回が可能であることを説明した 患者 家族が理解した 診療録に記載した 月日 看護師長または担当看護師が患者家族との協議に同席した もしくは別途患者 家族の意思を確認した 医療者側の同意書 ( または申請書 ) に署名した 月 日 主治医 診療科長 看護師長 ( または担当看護師 ) 例外的な場合 ( 時間外 救急搬入時などの時間的余裕のない場合 ) は 複数医 師の署名で可とする ( 身寄りなしのとき ) 院長が承認書に署名した 月日 以上