はじめに 1. 原子力発電拡大の理由付け 2. 発電費用について 発電のコストとは何か 電力別 ( 火力 水力 原子力 ) 財政的支出 ( 開発 立地 ) 総合的単価 3. 再処理 核燃料サイクルについて 再処理にいくらかかるのか 再処理の費用負担のあり方 4. 事故費用を総体としてとらえる 5.

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試算の概要 (1) 電源別の発電コスト推計方法には モデルプラントによる方法と有価証券報告書による方法がある 有価証券報告書による方法では 償却の済んだ発電設備のコストを評価できないなどの方法上の問題がある このため 日本においては特に水力発電についてコストを大幅に過小評価することとなる 一方で 実

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スライド 1

平成22年3月期 決算概要

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2018年度第1四半期 決算説明資料

技術等検討小委員会 ( 第 2 回 ) 資料第 1 号 原子力発電所の 事故リスクコスト試算の考え方 原子力発電 核燃料サイクル技術等検討小委員会 ( 第 2 回 ) 平成 23 年 10 月 13 日 内閣府原子力政策担当室

2017(平成29)年度第1四半期 決算説明資料

電解水素製造の経済性 再エネからの水素製造 - 余剰電力の特定 - 再エネの水素製造への利用方法 エネルギー貯蔵としての再エネ水素 まとめ Copyright 215, IEEJ, All rights reserved 2

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第 3 章隠岐の島町のエネルギー需要構造 1 エネルギーの消費量の状況 ここでは 隠岐の島町におけるエネルギー消費量を調査します なお 算出方法は資料編第 5 章に詳しく述べます (1) 調査対象 町内のエネルギー消費量は 電気 ガス 燃料油 ( ガソリン 軽油 灯油 重油 ) 新エ ネルギー (

海外における高レベル放射性廃棄物 処理 処分の取組み事例について 平成 26 年 2 月 18 日 公益財団法人原子力環境整備促進 資金管理センター 1

平成 28 年度 事業報告書 平成 28 年 10 月 3 日から平成 29 年 3 月 31 日まで 使用済燃料再処理機構

第39回原子力委員会 資料第1-1号

) まとめ シート 複数の電源に共通する条件等を設定します 設定する条件は 以下の 6 つです. 割引率 - 0% % % 5% から選択. 為替レート - 任意の円 / ドルの為替レートを入力. 燃料価格上昇率 ( シナリオ ) - 現行政策シナリオ 新政策シナリオを選択 4. CO 価格見通し

資料 2 接続可能量 (2017 年度算定値 ) の算定について 平成 29 年 9 月資源エネルギー庁

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バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

開催日時 平成25年11月14日 木 9:3 17: 会場 東海大学高輪キャンパス1号館 第2会議室 講師 東海大学工学部原子力工学科 教授 大江 俊昭 氏 講義 課題1 放射性廃棄物処分の安全評価解析の基礎 Ⅰ 浅地中ピット処分の事例分析 Ⅱ 地層処分の事例分析 課題2 放射性廃棄物処分の安全評価

新旧対照表

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2. 各社の取り組み 各社においては 六ヶ所再処理工場の竣工に向けた取り組み等に加え これまで使用済燃料の発生量見通し等に応じて 使用済燃料貯蔵設備のリラッキングによる増容量 敷地内乾式貯蔵施設の設置 敷地外中間貯蔵施設の設置等の必要な貯蔵対策に取り組んできている ( 添付資料 1 参照 ) 今後も

扉〜目次

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

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しかし その使途について 例えば 電源立地促進対策交付金は 道路や公共施設の建設等に限定されているなど 交付を受ける地方公共団体からは その使い勝手に不満も出ていた このような状況を受け 資源エネルギー庁では 平成 15 年 発電用施設周辺地域整備法及び電源開発促進対策特別会計法の一部を改正する法律

平成 21 年度資源エネルギー関連概算要求について 21 年度概算要求の考え方 1. 資源 エネルギー政策の重要性の加速度的高まり 2. 歳出 歳入一体改革の推進 予算の効率化と重点化の徹底 エネルギー安全保障の強化 資源の安定供給確保 低炭素社会の実現 Cool Earth -1-

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内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

2 政策体系における政策目的の位置付け 3 達成目標及び測定指標 1. 地球温暖化対策の推進 1-2 国内における温室効果ガスの排出抑制 租税特別措置等により達成しようとする目標 2030 年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を 22~24% とする 租税特別措置等による達成目標に係る測定指

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『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

第 2 日 放射性廃棄物処分と環境 A21 A22 A23 A24 A25 A26 放射性廃棄物処分と環境 A27 A28 A29 A30 バックエンド部会 第 38 回全体会議 休 憩 放射性廃棄物処分と環境 A31 A32 A33 A34 放射性廃棄物処分と環境 A35 A36 A37 A38

参考 :SWITCH モデルの概要 SW ITCH モデル は既存の発電所 系統 需要データを基にして 各地域における将来の自然エネルギーの普及 ( 設備容量 ) をシミュレーションし 発電コストや CO 排出量などを計算するモデルです このモデルでは さらに需要と気象の時間変動データから 自然エネ

第 2 回保障措置実施に係る連絡会 ( 原子力規制庁 ) 資料 3 廃止措置施設における保障措置 ( 規制庁及び IAEA との協力 ) 平成 31 年 4 月 24 日 日本原子力研究開発機構安全 核セキュリティ統括部 中村仁宣

第1回 オリエンテーション

宮下第三章

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A23 A24 A25 A26 A27 A28 A38 A39 燃料再処理 A40 A41 A42 A43 第 3 日 休 憩 総合講演 報告 3 日本型性能保証システム 燃料再処理 A29 A30 A31 A32 A33 A34 A35 燃料再処理 A36 A37 燃料再処理 A44 A45 A4

報告書の主な内容 2012 年度冬季の電力需給の結果分析 2012 年度冬季電力需給の事前想定と実績とを比較 検証 2013 年度夏季の電力需給の見通し 需要面と供給面の精査を行い 各電力会社の需給バランスについて安定供給が可能であるかを検証 電力需給検証小委員会としての要請 2013 年度夏季の電

2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

ツールへのデータ入力前にすべきこと 一般廃棄物処理に係るフロー図を作成 < 収集 : 直営 > < 直接搬入 > 粗大ごみ **t <A 破砕施設 : 直営 > <D 最終処分場 > 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 粗大ごみ **t 燃やすごみ **t アルミ缶 **t スチール缶 **t びん

別添 4 レファレンスアプローチと部門別アプローチの比較とエネルギー収支 A4.2. CO 2 排出量の差異について 1990~2012 年度における CO 2 排出量の差異の変動幅は -1.92%(2002 年度 )~1.96%(2008 年度 ) となっている なお エネルギーとして利用された廃

第2回アジア科学技術フォーラム

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これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

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日本基準基礎講座 有形固定資産

( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

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平成30(2018)年度 第1四半期決算概況

注 1: 要件の判断に係る算定に当たっては 複数の発電用の電気工作物が同一の接続地点に接続している場合は 一つの発電用の電気工作物とみなす 注 2: 特定発電用電気工作物に該当しない電気工作物は 発電事業の要件 ( 小売電気事業用等接続最大電力の合計が 1 万 kw 又は 10 万 kw を超えるも


とを目指す必要がある このためには以下の10 領域における政策課題に取組む必要がある また 分類 Ⅳに分類される意見に基づく場合であっても 原子力施設の廃止措置やこれまで原子力発電の利用に伴い発生した放射性廃棄物の処分の取組に関するこれらの領域における政策課題に取組まなければならない (1) 福島第

MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

原子力に関する特別世論調査 の概要 平成 21 年 11 月 26 日 内閣府政府広報室 調査概要 調査対象 全国 20 歳以上の者 3,000 人 有効回収数 ( 率 ) 1,850 人 (61.7%) 調査期間 平成 21 年 10 月 15 日 ~10 月 25 日 調査方法 調査員による個別

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

日程表 mcd

緒論 : 電気事業者による地球温暖化対策への考え方 産業界における地球温暖化対策については 事業実態を把握している事業者自身が 技術動向その他の経営判断の要素を総合的に勘案して 費用対効果の高い対策を自ら立案 実施する自主的取り組みが最も有効であると考えており 電気事業者としても 平成 28 年 2

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

東京電力 における資産除去債務の計上と 財務諸表への影響について - 福島第一原発の廃炉解体費用を中心に - 劉 博 川口短期大学 1. はじめに米国においては 1990 年代に 原子力発電施設閉鎖時の資産の解体 撤去および汚染除去コストの会計処理に関する議論が行われた i これをきっかけに 有形固

一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

NDA の概要 名称 NDA(Nuclear Decommissioning Authority) 位置付 Non Governmental Public Body ( 独立行政法人 ) 設立 2005 年 4 月 1 日 根拠法 Energy Act 2004 使命国有時代に発生した原子力債務の処

平成 30 年度地方税制改正 ( 税負担軽減措置等 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 その他 ) No 8 府省庁名環境省 対象税目個人住民税法人住民税事業税不動産取得税固定資産税事業所税その他 ( ) 要望項目名 要望内容 ( 概要 ) 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置の延長

政策体系における政策目的の位置付け エネルギー基本計画 ( 平成 22 年 6 月 18 日閣議決定 ) において 一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を 2020 年までに 10% とすることを目指す と記載 地球温暖化対策基本法案 ( 平成 22 年 10 月 8 日閣議決定 )

図表 1 各特別会計ごとの平成 17 年度歳入歳出決算状況 ( 単位 : 億円 ) 1. 事業特別会計 収納済歳入額 (1) 支出済歳出額 (2) 繰越額 不用額 歳計剰余金 (1-2) 翌年度歳入に繰入 歳計剰余金の処理状況 他勘定に繰入 翌年度の一般会計に繰入 44 条資金に積立て 積立金 資金

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0 別 紙 参考資料 規制部門と自由化部門のコスト構造 <ご依頼内容 > 弊社資料 (6/19 P2) の表 費目別の規制 自由配分結果 における その他 の内容が分かる資料

部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

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1. 太陽光発電のコストパフォーマンス 奈良林氏 太陽光について, 実は実力的には原発の 1/10 しか電気が出ていない. しかも, コストは 10 倍高い. ですから,100 倍コストパフォーマンスが悪いです 原発の 1/10 しか電気が出ていない 意味不明? コストパフォーマンスは,1kWh あ

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再生可能エネルギーの全量買取に 関するプロジェクトチームについて

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

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熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

2017年度 決算概況

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連結財務諸表及び主な注記

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エネルギー規制 制度改革アクションプラン (11 月 1 日 ) の概要 重点課題と詳細リスト 現時点で政府が取り組むこととしている又は検討中の事項を 実施 検討事項詳細リスト (77 項目 ) として取りまとめ その中から 3つの柱で計 26 項目の重点課題を特定 1 電力システムの改革 (9 項

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東洋インキグループの環境データ(2011〜2017年)

まさしく先人から引き継いだ電力社員のスピリッツそのものであります 未だに余震も発生しておりますが 九州電力においては 引き続き 電力供給に最善を尽くすとともに 電事連といたしましても 必要な支援は速やかに実施してまいりたいと考えております 4 月から小売全面自由化が始まり 電力各社はお互いがライバル

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平成29年度 第3四半期決算概況(補足データ付き)

電気料金新旧単価一覧表 ( 平成 25 年 9 月 1 日実施 ) 平素は 弊社事業に対し格別のご高配を賜り 厚く御礼申し上げます また 日頃から節電にご協力いただいておりますことについて 重ねて御礼申し上げます さて 弊社は東日本大震災や新潟 福島豪雨による甚大な設備被害 原子力発電の停止による火

名城論叢 2013 年 3 月 243 電力会社における総括原価方式 原子力発電と関連して 谷江武士 目次はじめに 1. 総括原価方式採用の歴史的経緯 2. 総括原価方式と電気料金への算入 3. 原子力発電事故とバックエンド費用の料金算入 4. 電力会社による日本原燃への 再処理事業等の前払金 5.

Transcription:

原発の本当のコスト 公表データから見えてくるもの 立命館大学国際関係学部 大島堅一 k-oshima@cj8.so-net.ne.jp

はじめに 1. 原子力発電拡大の理由付け 2. 発電費用について 発電のコストとは何か 電力別 ( 火力 水力 原子力 ) 財政的支出 ( 開発 立地 ) 総合的単価 3. 再処理 核燃料サイクルについて 再処理にいくらかかるのか 再処理の費用負担のあり方 4. 事故費用を総体としてとらえる 5. 改革の方向性 2

原子力発電拡大の理由付け 1. エネルギー安全保障 石油代替エネルギー 準国産エネルギー 2. 経済性 原発が最も安い 3. 温暖化対策 原発の維持拡大 核燃料再処理 核燃料サイクル 3

枯渇生資源としてのウラン資源 枯渇せず 永久に使えるエネルギー 太陽光 風力 水力 地熱 潮力 波力 バイオマス これに対し いずれ枯渇する資源を枯渇性資源という 石油 石炭 ウラン ( 原子力 ) 天然ガスはいずれも枯渇性資源 ウランも 他の枯渇性資源なみにつかわれれば 数十年で枯渇 石油天然ガス石炭ウラン 確認埋蔵量 年生産量 12,580 億バレル 299.5 億バレル 185 兆 m 3 8,260 億トン 881 万トン 3.1 兆 m 3 67.8 億トン 4.0 万トン 可採年数 42.0 年 60.4 年 121.8 年 132.4 年 世界の 1 次エネルギーに占める割合 (2008 年 ) 33.1% 21.5% 27.0% 5.8% 4

政府発表の発電コスト 資源エネルギー庁 / 総合エネルギー調査会による発電コストの試算値 99 2004 年 設備規模 設備利用率 運転年数 年 設備規模 設備利用率 運転年数 一般水力 13.6 1.5 万 kw 45% 40 年 11.9 1 2 万 kw 45% 40 年 石油火力 10.2 40 万 kw 80% 40 年 10.7 35 50 万 kw 80% 40 年 石炭火力 6.5 90 万 kw 80% 40 年 6.2 60-105 万 kw 80% 40 年 LNG 火力 6.4 140 万 kw 80% 40 年 5.7 144-152 万 kw 80% 40 年 原子力 5.9 130 万 kw 80% 40 年 5.3 118 136 万 kw 80% 40 年 注 1:99 年試算 2004 年試算には 再処理 中間貯蔵 廃棄物処理処分 ( 高レベル放射性廃棄物処分 貯蔵 ) その他の廃棄物処分 貯蔵の費用を含んでいる 注 2:99 年 2004 年の試算は割引率 3% の場合のみ表にした 出所 : 日本原子力産業会議 原子力ポケットブック 2003 年版 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書 (2004 年 1 月 23 日 ) より作成 5

電事連による原子力発電のコスト 出所 : 電気事業連合会 (2010) 原子力 2010[ コンセンサス ] 6

エネルギー政策と費用 1. 発電に関する一般的な費用 ( 減価償却費 保守費 燃料費など ) は 料金原価に算入され 電力料金を通じて消費者が負担している 2. 政策上の方向付けを行う場合は a) 財政支出 b) 電力料金を通じた追加的負担 ( 料金原価への算入 ) を通して 費用が調達されている 原子力に対しては複雑な制度が次々に追加されてきた 今日 上記 1 2 を総合的に評価し 見直す必要がある 7

原価に算力に固有発電の費用 発電の費用 1 発電に直接要する費用 ( 燃料費 減価償却費 保守費用等 ) 費用 使用済燃料再処理費用 物処分費用用放射性廃棄廃炉費用 低レベル放射性廃棄物処分費用 高レベル放射性廃棄物処分費用 TRU 廃棄物処分費用 解体費用 解体廃棄物処分費用 3 国家からの資金投入 ( 財政支出 : 開発費用 立地費用 ) 4 事故に伴う被害と被害補償費用 今回は 1 3 について計算 料金一般会計 エネルギー特会から 原子力発電は莫大 料金原価にはきわめて不十分にしか反映されていない 福島第一原発の被害費用は数兆円規模といわれる 原子の費8 入2 バックエンド

1 の発電単価の計算方法 有価証券報告書総覧に記載されているデータを基礎に 原価として算入されている金額 (= 消費者が支払っている額 ) を総発電量 ( 送電端 ) で除して計算 ( 室田武 同志社大学教授の方法 ) 原価算入の方法は 供給約款料金算定要領として経済産業省が定めている 規制部門と自由化部門にわかれているが 収支が事後的にチェックされていることから 規制部門の算入方法で計算 9

原子力発電と揚水発電 Nuclear and pumping up development 25000 50000 45000 20000 40000 35000 15000 30000 MW 25000 MW 10000 5000 0 20000 15000 10000 5000 0 Pumping up Hydro Nuclear Year 10

電源毎の発電単価 ( 実績 ) 原子力 火力 水力 一般水力 揚水 原子力 + 揚水 1970 年代 8.85 7.11 3.56 2.72 40.83 11.55 1980 年代 10.98 13.67 7.80 4.42 81.57 12.90 1990 年代 8.61 9.39 9.32 4.77 50.02 10.07 2000 年代 7.29 8.90 7.31 3.47 41.81 8.44 1970-2007 単位 : 円 /kwh 8.64 9.80 7.08 3.88 51.87 10.13 注 : 電力各社の 有価証券報告書総覧 を基礎に算定 11

原子力政策の財政的裏付け ( スライド 8 の 3 の費用について ) 一般会計エネルギー対策費 特別会計 電源開発促進対策特別会計 立地対策 ( 電源立地勘定 ) 日本に固有の交付金システム 技術開発対策 ( 電源利用勘定 ) エネルギー対策特別会計 (2007 年度より ) 内容は 電源開発促進対策特別会計を引き継いでいる 12

電源別の財政支出額の計算 電源別に計上されている財政資料は存在しない そこで 國の予算 ( 各年版 ) を基礎に一般会計エネルギー対策費 特別会計の費用項目を可能な限り電源別に再集計して積み上げて これを当該年度の送電端発電量の電力九社合計で割る 交付金実績については 特別会計決算参照書 電源開発の概要 に基づき 計算 開発単価 : 国家予算のうち技術開発費 関連団体の運営費を 開発費用 とする これを 送電端発電量で除した値を 開発単価 とする 立地費用 : 国家予算のうち立地対策のための支出される費用を 立地費用 とする これを送電端発電量で除した値を 立地単価 とする 13

電源別の財政支出額の計算 石炭 石油 天然ガスについて : 発電と直接関係のない費目を除外 立地対策費については余剰金が多く無視できないので 余剰金を除いて考慮 立地対策費を 電源三法交付金の電源別交付割合で按分し 電源別に計算する 14

一般会計エネルギー対策費の推移 2000 1800 億円 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 その他 省エネルギー新エネルギー石油 石炭 原子力 年度 15

電源三法システム 16

電源開発促進対策特別会計 ( エネルギー源 用途別 ) 6000 5000 その他 4000 立地 億円 3000 2000 省エネルギー新エネルギー水力 1000 石炭 原子力 0 年度 17

交付金交付額 ( 電源別 ) 交付金交付額実績からすれば 電源三法交付金の約 7 割が原子力向けになっている 18

財政支出単価 ( 開発 立地 ) 1970 年代 1980 年代 1990 年代 2000 年代 1970-2007 年 単位 : 円 /kwh 原子力 火力 水力 一般水 力 揚水 原子力 + 揚水 開発 4.19 0.00 0.00 0.00 0.00 4.31 立地 0.53 0.03 0.02 0.01 0.36 0.54 開発 2.26 0.02 0.14 0.08 1.52 2.31 立地 0.37 0.06 0.04 0.03 0.35 0.38 開発 1.49 0.02 0.22 0.11 1.16 1.54 立地 0.38 0.10 0.08 0.06 0.29 0.39 開発 1.18 0.01 0.10 0.05 0.60 1.21 立地 0.46 0.11 0.10 0.07 0.38 0.47 開発 1.64 0.02 0.12 0.06 0.94 1.68 立地 0.41 0.08 0.06 0.04 0.34 0.42 19

電源別の単価 ( 総合 ) 原子力 火力 水力 一般水力 揚水 原子力 + 揚水 1970 年代 13.57 7.14 3.58 2.74 41.20 16.40 1980 年代 13.61 13.76 7.99 4.53 83.44 15.60 1990 年代 10.48 9.51 9.61 4.93 51.47 12.01 2000 年代 8.93 9.02 7.52 3.59 42.79 10.11 1970-10.68 9.90 7.26 3.98 53.14 12.23 2007 単位 : 円 /kwh 事故の場合の被害額 被害補償額は上記の表には含まれない 20

電源別のコスト 原子力単体でみた発電単価でみた場合であっても 原子力は安価な電源とは言えない 原子力 + 揚水 でみれば 最も高い電源である 電力料金を通じて支払われている電源開発促進税を主財源とする財政コストを考慮すると 原子力は最もコストが高く 消費者の負担が大きい つまり 原子力政策は 政策的に優遇措置を受け続けてきたと言える 今後も優遇策を続けるべきかどうかは議論の余地がある 少なくとも 発生する費用も含めて議論すべきである 21

再処理をめぐる課題 放射性廃棄物処理処分問題 2 つの選択肢 使用済燃料をそのまま処分する 使用済燃料の処理処分問題 使用済燃料を再処理する 高レベル放射性廃棄物 TRU 廃棄物が発生 使用済燃料の再処理問題 課題 日本は全量再処理方針をもっている 安全性確保 いったいいくらかかるのか どのように費用負担するのか 財源 持続可能性 22

電事連による再処理コストの説明 出所 : 電気事業連合会 (2010) 原子力 2010[ コンセンサス ] 23

放射性廃棄物の種類 ( 再処理する場合 ) 出所 : 財団法人原子力環境整備促進 資金管理センター HP http://www.rwmc.or.jp/library/pocket/radioactive_waste/1-1.html 24

バックエンド費用の費用推計 再処理返還高レベル放射性廃棄物管理返還低レベル放射性廃棄物管理高レベル放射性廃棄物輸送高レベル放射性廃棄物処分 TRU 廃棄物地層処分使用済燃料輸送使用済燃料中間貯蔵 MOX 燃料加工ウラン濃縮工場バックエンド合計 11 兆円 3000 億円 5700 億円 1900 億円 2 兆 5500 億円 8100 億円 9200 億円 1 兆 100 億円 1 兆 1900 億円 2400 億円 18 兆 8800 億円 出所 : 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会 (2004) バックエンド事業全般にわたるコスト構造 原子力発電全体の収益性の分析 評価 25

バックエンド費用推計の問題点 (1) バックエンド事業の範囲 劣化ウラン 減損ウランの処理は対象外 MOX 使用済燃料の再処理ないし処分費用は対象外 六ヶ所再処理工場のみ評価 ( 全量再処理する方針を堅持するのであれば さらに必要 ) 高速増殖炉サイクルに関する事業は対象外 費用推計の不確実性 大規模実施事例が世界的にない 高レベル放射性廃棄物 TRU 廃棄物地層処分廃棄物の具体的計画が無い 人類が生存する期間中 人類に影響がでないようにするという高度な要求を満たす必要がある 26

バックエンド費用の問題点 (2) 費用推計にあたっての仮定 再処理工場の稼働率を 100% と想定している (AREVA 社の実績は 2007 年 :56%) 放射性廃棄物処理費用の妥当性 ( 高レベル放射性廃棄物ガラス固化体 1 本あたり 3530 万 6000 円と見積もる 実績 ( 返還高レベル放射性廃棄物の管理費用単価は 1 億 2300 万円 / 本 ) 資源経済性 得られる MOX 燃料 :4800tHM( 重金属トン )=9000 億円程度 再処理費用 11 兆円 +MOX 燃料加工 1 兆 9000 億円 リサイクル 費用をリサイクル資源利用者に課さない構造 27

バックエンド事業費用の負担制度 廃炉 廃止措置 1989 年より電気料金の原価に 原子力発電施設解体費 として算入されている ( 解体費用のみ ) 2000 年から解体放射性廃棄物処理処分費用が組み込まれている 2007 年に対象費用項目拡大 高レベル放射性廃棄物 TRU 廃棄物処理 2000 年の 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律 により 高レベル放射性廃棄物費用を 特定放射性廃棄物処分費 として原価に算入 2007 年に 上記の法律が改正され 第二種特定放射性廃棄物とされて 料金原価に算入 28

バックエンド費用の負担制度 (2) 再処理 1981 年 : 使用済燃料再処理引当金 1986 年 : 使用済核燃料再処理費として料金原価に算入 2005 年 : 原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律 ( 再処理等積立金法 )(= 再処理費用を電力会社の外部に積立て 管理するもの ) 2006 年より使用済燃料再処理等引当金として原価に算入 六ヶ所再処理工場による再処理を含め いったいいくらになるのかが確定される必要があった まだ未決定の第二再処理工場の費用についても 内部留保として引当金を積み上げ 料金原価には算入されていない ( 将来 算入される可能性 ) 29

再処理にいくら払っているのか 電力料金からすでに徴収されているもの 2006 年度 2007 年度 使用済燃料再処理費 0.51 円 /kwh 0.43 円 /kwh 特定放射性廃棄物処分費 ( 高レベル放射性廃棄物 TRU 廃棄物 ) 0.09 円 /kwh 0.09 円 /kwh 合計 ( 注 ) 0.60 円 /kwh 0.51 円 /kwh 1:1 世帯 1 月当たりの負担額 2: 原子力の発電量で割ったときの単価 274 円 240 円 1.65 円 /kwh 1.69 円 /kwh 注 : 有価証券報告書総覧 に掲載された各費用を総電力量 ( 需要端 ) で除して計算 世帯 1 月当たりの平均電力消費量は 日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット編 エネルギー 経済統計要覧 より 2006 年度 455kWh 2007 年度 467kWh とした 30

再処理費用に関する小括 推計にあたっての疑問をさしあたって度外視したとしても バックエンド費用は莫大な額になのぼるとされている これに基づいて電気料金に含めて費用を徴収する制度が構築されてきた 再処理費用をいくら支払っているかについては 電力料金に明示されていない これは再生可能エネルギーとは著しい違いである 消費者が現在負担している費用は あくまで六ヶ所再処理工場での再処理に関するもののみである 全量再処理するのであれば さらに必要になる こうした高コスト事業に 国民的合意がとれるかどうかは甚だ疑問である 31

事故の費用について 事故後発生する費用は莫大 本来の事業の継続すら困難になる 1. 直接的事故対応 事態収束費用 廃炉費用 2. 電力事業者の経済的損失 資金調達 信用 3. 被害対応 被害補償費用 財産被害など事後的に補償可能な場合 被害補償費用 生命被害など事後的に補償不可能な場合 被害代償費用 被害修復費用 ( 完全修復 部分修復 大体修復 ) 被害緩和費用 取引費用 行政費用 32

東京電力にとっての事故費用 原子力からの収益 1970 2007 年度までの原子力発電からの事業報酬 東京電力は 3 兆 9953 億円 ( 有価証券報告書総覧からの推計 ) 事故費用は これまでの原発からの事業報酬を超える可能性がある 原発は 事故を起こした東京電力にとっては割に合わない電源であったと言えそうである 33

被害を総体としてとらえる 被害の総体 貨幣換算できない / しにくい被害 環境への直接的被害 健康被害 精神的被害 貨幣換算できる被害 経済活動 資産への直接的影響 他地域への影響 日本経済全体 ( 産業を含む ) へのマイナス影響 34

原発事故を総体としてとらえる 事故被害の総体 貨幣換算できる被害 請求可能額 実際の賠償支払額 東電の支払い能力 保険の限度額 35

被害の総体から補償を考える 加害者の支払い能力から被害補償を考えてはならない スソ切りの論理ではすべての被害を把握できない 審査会による被害のカテゴリーの設定 被害の総体をとらえた上で 被害補償を考える 36

結論 事故費用を考慮しなくても 原子力発電の国民にとっての費用は他の電源に比べて高い 使用済燃料再処理によって多額の費用がかかり 今後増大する可能性が高い バックエンド費用の負担システムがすでにできあがっている 事故費用は これまでの原発からの事業報酬を上回る可能性がでてきた 補償は 被害の総体から考える必要がある 原子力一辺倒の政策を改め 再生可能エネルギー中心のエネルギー政策への転換することが必要であろう 37

改革の方向性 1. 国家財政のあり方を改革する 一般会計 エネルギー特別会計の使途を徹底的に精査し 原子力偏重を改める 2. 電力料金を通じた費用負担のあり方を改革する 電源開発促進税の使途を精査する (=1 の課題 ) 再処理費用に関する無制限の費用徴収を可能とする制度を改める 再生可能エネルギー普及のために電力料金を再設計する 38

ご静聴 ありがとうございました 詳しくは 大島堅一 再生可能エネルギーの政治経済学 東洋経済新報社をご覧ください 39