資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価に関する検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 当該分野の有識者による検討を行い 科学的な観点から参考となる考え方やデータを提示

Similar documents
資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価の制度化に向けた検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 基準値についての検討を行うにあたり 当該分野の有識者による検討を行い 科

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

中医協総 医薬品及び医療機器の費用対効果評価に関する取扱いについて 1 既収載品に係る費用対効果評価の手続き (1) 対象品目の指定中央社会保険医療協議会の定める以下の選定基準に基づき 費用対効果評価専門部会において指定 公表されたものとする 次の全ての要件を満たす品

<4D F736F F F696E74202D C5974C82E8816A94EF817C E397C38B5A8F CC94EF977091CE8CF889CA82CC955D89BF82C68A C982C282A282C481698A54985F816A2E >

現在検討中の主な制度改正内容

データの取り扱いについて (原則)

医政発 0329 第 43 号 保発 0329 第 5 号 平成 31 年 3 月 29 日 地方厚生 ( 支 ) 局長 都道府県知事 殿 厚生労働省医政局長 ( 公印省略 ) 厚生労働省保険局長 ( 公印省略 ) 医薬品 医療機器及び再生医療等製品の費用対効果評価に関する取扱いについて 標記につい

Microsoft PowerPoint 費-4v4専門部会資料 福田修正 pptx

薬-1 長期収載品と後発品

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 眞鍋様.pptx

( 選定提案 ) は 利用者に貸与しようと福祉用具の種目の候補が決まった後で 具体的な提案品目 ( 商品名 ) を検討する際に用いる つまり ( 選定提案 ) に記載されるのは 候補となる福祉用具を利用者に対して提案 説明を行う内容である 平成 30 年度の制度改正では 提案する種目 ( 付属品含む

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

PowerPoint プレゼンテーション

資料3

<4D F736F F F696E74202D D94EF2D322D F948A4F8D9182C482CC94EF977091CE8CF889CA955D89BF82CC8A E

< A838B D D862E696E6464>

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

総会名簿 代表区分 氏 名 現 役 職 名 1. 健康保険 船 員保険及び国民 幸 野 庄 司 健康保険組合連合会理事 健康保険の保険 平 川 則 男 日本労働組合総連合会総合政策局長 者並びに被保険 間 宮 清 日本労働組合総連合会 患者本位の医療を確立する連絡会 委員 者 事業主及び 宮 近 清


資料 1 SUT タスクフォース 意見取りまとめ (1) ー SUT 産業連関表の基本構成の考え方ー 2017 年 8 月 8 日国民経済計算体系的整備部会 部会長 SUTタスクフォース座長宮川努 1

(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

資料 2-2 SUT タスクフォース 意見取りまとめ (1) ー SUT 産業連関表の基本構成の考え方ー 2017 年 8 月 24 日国民経済計算体系的整備部会 部会長 SUTタスクフォース座長宮川努 1

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

監視手法に関する調査 分析 我が国の卸電力取引に係る競争状況 不正取引を監視し それを踏まえた対応を検討するための基礎資料として活用するため ( 6) の諸外国の規制当局や取引所に係る調査 分析を行う 調査に当たっては文献 インターネット 各国の規制当局及び取引所の関係者等へのヒアリングを通じ 幅広

Microsoft PowerPoint  税-1(平成28年度補てん状況把握)

1

厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

ストレスチェック制度は 従業員 50 名以上の事業所が対象となっているため 中小企業の多くが適用外となっている そのような中小企業のメンタルヘルス対策の現状はいかがか 現在 宮城支部ではメンタルヘルス関連事業として セミナー 出前講座 カウンセリング事業を実施しているところであるが 申し込み状況等か

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

医療費適正化計画の概要について 国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から 医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため 国 都道府県は 医療費適正化計画を定めている 根拠法 : 高齢者の医療の確保に関する法律作成主体 : 国 都道府県計画期間 :5 年 ( 第 1 期 : 平成 20~24

長期収載品について 長期収載品とは 明確に定義はされていないが 一般的には 後発医薬品のある先発医薬品をいう 長期収載品と後発医薬品の間には 実質的に 以下のような役割分担が生じている 安定供給 長期収載品 安定供給することが求められており 具体的には 医療機関から継続供給を求める意見が強いことなど

29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

Microsoft PowerPoint - (参考資料1)介護保険サービスに関する消費税の取扱い等について

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

16_27

国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々

1. はじめに 1 需要曲線の考え方については 第 8 回検討会 (2/1) 第 9 回検討会 (3/5) において 事務局案を提示してご議論いただいている 本日は これまでの議論を踏まえて 需要曲線の設計に必要となる考え方について整理を行う 具体的には 需要曲線の設計にあたり 目標調達量 目標調達

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

2012年○月○日(第1版)

Microsoft Word WT報告書最終版 (医療部会)

Microsoft PowerPoint - 事業実施方針+++

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

お申し込み方法 参加ご希望の方は ISPOR 日本部会ホームページ ( からお申し込み下さい プログラム 13:00 ISPOR 日本部会会長挨拶 ( 坂巻弘之 ) 13:05 厚生労働科学研究 医療経済評価の政策応用とガイドライン開発に関する予備的研究 に

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) JST 中間評価 1 の実施要領 平成 29 年 6 月改定 JST 国際部 SATREPS グループ 1. 地球規模課題国際科学技術協力 (SATREPS) プロジェクトの中間評価について SATREPS は JST による研究支援お


shaho2605_1P

本事業の意義 実効性 ( 見直しの必要性 ) 医療情報データベース基盤整備事業 ( 平成 23 年度 ~ 10 協力医療機関 ) 日本再興戦略 ( 平成 25 年 6 月 14 日 ) 医療 介護情報の電子化の促進 医薬品の副作用データベースシステムについて データ収集の拠点となる病院の拡充や地域連

<4D F736F F D208AEE967B8C7689E65F DC58F4994C58EA993AE8D C882B5>

40号表1

広報No.199.indd

バイオ燃料

新収益認識基準に関するFASB及びIASBの改訂案

資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

本日の説明内容 1. グリーン購入法の概要 2. プレミアム基準策定ガイドライン

生殖発生毒性試験の実施時期について

制度見直しに関する主な方向性については 次の通り考えるものとする 1. ビッグデータ時代におけるパーソナルデータ利活用に向けた見直し 個人情報及びプライバシーの保護に配慮したパーソナルデータの利用 流通を促進するため 個人データを加工して個人が特定される可能性を低減したデータに関し 個人情報及びプラ

J P M A N E W S L E T T E R 2015 年 3 月号 No.166 Topics トピックス イギリスにおける医療技術評価 (HTA) に関する議論の動向 イギリスではここ数年間で 医薬品の価格制度を含めた医療技術の評価制度をめぐる議論が活発になっています 今回は 国際委員

Microsoft Word - 第10回消費税分科会資料税1-1(1月6日段階暫定)④

<4D F736F F D208E9197BF315F B838D C8C768E5A977697CC5F FC C8AEE8F808F808B925F E646F63>

2. 環境報告ガイドラインの改訂にあたって 環境省では 平成 16 年 3 月に 環境報告書ガイドライン (2003 年度版 ) を策定する等 さまざまな形で環境報告書の普及促進を図ってきました また 環境情報の提供の促進等による特定事業者 * 等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律 ( 平成

医療機関群の具体的な設定について (1) 診調組 D 基礎係数に係る医療機関群の設定方針 ( 平成 23 年 9 月 7 日中医協総会承認 ) 平成 23 年 9 月 7 日の中医協総会において DPC/PDPS 調整係数の見直し 基礎係数の導入に伴い設定する医

1. はじめに 1 日常生活や事業活動をめぐる様々なリスクに対応する損害保険の中で 賠償責任保険の存在は 我が国の損害賠償制度において今や欠かすことができないものとなっています 損害保険業界では 数多くの種類の賠償責任保険をご提供することを通じて損害賠償制度にのっとった被害の回復に向けたお手伝いをす

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

公社債の店頭売買の参考値等の発表及び売買値段に関する規則 に関する細則 の 一部改正について 平成 30 年 4 月 6 日 日本証券業協会 Ⅰ. 改正の趣旨本協会では平成 27 年 11 月 2 日より 社債の取引情報の発表制度 ( 以下 発表制度 という ) を開始しており 発表制度については

第 2 章 1 診療ガイドライン作成手順およびスケジュール 診療ガイドラインは, 以下の作成手順により作成される 計画にあたっては, 全体を通してどのくらいの時間が必要か, 各手順にどの程度の時間と費用をかけるかを考慮し, 具体的に立案する必要がある 1 作成目的の明確化 2 作成主体の決定 3 事

プライベート・エクイティ投資への基準適用

0801全.indb

これを公にした場合には 政府の情勢認識 関心事項 情報収集能力等が明らかとなり 又は推察されると認められる したがって 当該不開示部分を公にすることにより 我が国の安全が害されるおそれ 又は公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき 相当の理由があるとして法 5

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

終わりを告げ 新たに根拠に基づく医療 (Evidencebased Medicine; EBM) が登場した [2] このEBMは 科学的に検証されたデータに基づいて医学上の診断法や治療法を選択することを目指す考え方 科学的方法 および それらの実践的教育の体系化を意味した 科学的に検証されたデータ

「諸外国の大学教授職の資格制度に関する実態調査」1

目次 1 ガイドラインの目的 分析の立場 分析対象集団 比較対照 追加的有効性 安全性 分析手法 分析期間 効果指標の選択 データソース 費用の算出 公的介護費

資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

医療機器開発マネジメントにおけるチェック項目

Microsoft Word - 学習指導案(公民的分野 ②).doc

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

国立感染症研究所血液 安全性研究部 HBV-DNA 国内標準品及び HIV-RNA 国内標準品の力価の再評価のための共同研究 1. 背景と目的血液製剤のウイルス安全性の確保対策として実施されている原料血漿と輸血用血液のウイルス核酸増幅試験 (NAT) のための HCV HBV 及び HIV の国内標

バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D DC58F4994C5816A82732B825195D78BAD89EF95F18D908F9182CC8A E >

特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 新旧対照表 改正後 特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 現行 ICT を活用した特定保健指導の実施の手引き 最終改正平成 30 年 2 月 9 日 1.ICTを活用した特定保健指導の実施者保険

政策課題分析シリーズ16(付注)

愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

○○○の課題と検討

PowerPoint プレゼンテーション

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

表紙1_4

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数


お知らせ 柔道整復師の資格を取得される皆さま 関係の皆さまへ 平成 30 年 4 月から 柔道整復療養費の受領委任を取り扱う 施術管理者 になる場合は 実務経験と研修の受講が必要となる方向で 以下のとおり検討しています 柔道整復療養費の受領委任の取扱いを管理する 施術管理者 になるための要件について

耐震診断 耐震改修に関する設計に係る業務報酬基準案について寄せられたご意見と国土交通省の考え方 20 名の個人 団体から合計 66 件の意見をいただきました とりまとめの都合上 内容を適宜要約させていただいております 本業務報酬基準案と直接の関係がないため掲載しなかったご意見についても 今後の施策の

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

Transcription:

中医協費 - 2 3 0. 8. 2 2 費用対効果評価における 科学的な事項の検討について ( その 2) 1

資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価に関する検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 当該分野の有識者による検討を行い 科学的な観点から参考となる考え方やデータを提示するもの 2

メンバー ( 五十音順 ) 赤沢学 ( 明治薬科大学 ) 五十嵐中 ( 東京大学 ) 池田俊也 ( 国際医療福祉大学 ) 鎌江伊三夫 ( 東京大学 ) 後藤励 ( 慶應義塾大学 ) 斎藤信也 ( 岡山大学 ) 白岩健 ( 国立保健医療科学院 ) 田倉智之 ( 東京大学 ) 中村良太 ( 一橋大学 ) 西村周三 ( 医療経済研究機構 ) 福田敬 ( 国立保健医療科学院 ) 森脇健介 ( 神戸薬科大学 ) 3

本日の内容 1. 複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 2. 評価結果の報告 公表の仕方について 4

1. 複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 5

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 1 複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 1. 複数の ICER を一つに統合する方法 (1) 各 ICER の加重平均値を算出 ( 試行的導入における方法 ) 各疾患毎に ICER を計算し 各 ICER の患者割合等による加重平均から代表値を算出する方法 (2) 増分費用と増分効果の加重平均値を求めてから ICER を算出各疾患毎の増分費用と増分効果について それぞれ加重平均を算出したうえで 代表値を算出する方法 2. 複数の ICER を一つに統合しない方法 (3) 各 ICER のいずれかを代表値として採用各疾患毎の ICER のうち いずれかの値 ( 最も低い あるいは最も高い値等 ) を代表値として採用する方法 (4) 各 ICER に基づく価格の加重平均値を採用各疾患毎の ICER に基づく価格を算出し それらの加重平均を価格として採用する方法 6

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 2 複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 1. 複数の ICER を一つに統合する方法 (1) 各 ICER の加重平均値を算出 ( 試行的導入における方法 ) 各疾患毎に ICER を計算し 各 ICER の患者割合等による加重平均から代表値を算出する方法 (2) 増分費用と増分効果の加重平均値を求めてから ICER を算出各疾患毎の増分費用と増分効果について それぞれ加重平均を算出したうえで 代表値を算出する方法 2. 複数の ICER を一つに統合しない方法 (3) 各 ICER のいずれかを代表値として採用各疾患毎の ICER のうち いずれかの値 ( 最も低い あるいは最も高い値等 ) を代表値として採用する方法 (4) 各 ICER に基づく価格の加重平均値を採用各疾患毎の ICER に基づく価格を算出し それらの加重平均を価格として採用する方法 7

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 3 1. 複数の ICER を一つに統合する手法 (1) 各 ICER の加重平均値を算出 ( 試行的導入における対応方法 ) 〇各疾患毎に ICER を計算し 各 ICER の患者割合等による加重平均から代表値を算出する方法 ( 例 ) 疾患 A と疾患 B に適応症を持つ医薬品 X の場合 患者割合増分効果増分費用 ICER 疾患 A 0.5 2QALY 600 万円 300 万円 /QALY 疾患 B 0.5 1QALY 600 万円 600 万円 /QALY 300 万円 /QALY 0.5 + 600 万円 /QALY 0.5 疾患 A の ICER = 450 万円 /QALY 統合された ICER 疾患 A の重み 疾患 B の ICER 疾患 B の重み 比較対照品目 ( 技術 ) に対し効果が増加し ( 又は同等であり ) 費用が削減される場合は 当該適応症等にかかる値を 0 として加重平均を行う 8

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 4 1. 複数の ICER を一つにまとめる手法 (2) 増分費用と増分効果の加重平均値を求めてから ICER を算出 〇各疾患毎の増分費用と増分効果について それぞれ加重平均を算出したうえで 代表値を算出する方法 ( 例 ) 疾患 Aと疾患 Bに適応症を持つ医薬品 Xの場合 患者割合 増分効果 増分費用 ICER 疾患 A 0.5 2QALY 600 万円 300 万円 /QALY 疾患 B 0.5 1QALY 600 万円 600 万円 /QALY 増分費用の加重平均 =600 0.5+600 0.5=600 万円 増分効果の加重平均 =2 0.5+1 0.5=1.5QALY 統合された ICER = 600 万円 /1.5QALY = 400 万円 /QALY 9

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 5 複数の ICER を統合することに関する課題 1 1 本来性質が異なると考えられる複数の数値 ( 異なる対象集団に対する ICER など ) の平均値等を算出し それを代表値とすることについては 学術的な ( 医療経済学的な ) 評価が難しいという指摘がある 例えば加重平均により統合した ICER のみを用いて価格調整を行う場合 各疾患に対する評価結果が反映されないという側面があり 品目全体を適切に評価できない可能性がある ( 例 ) 疾患 A と疾患 B に適応のある医薬品 X の場合 疾患 A 疾患 B 統合した結果 ICER=300 万円 ICER=600 万円 ICER=450 万円 500 万円 疾患 A には費用対効果がよい 疾患 B には費用対効果が悪い 医薬品 X は疾患 A にも疾患 B にも費用対効果がよい? 10

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 6 複数の ICER を統合することに関する課題 2 2 また 複数の ICER の統合を行う方法として 2 通りが考えられ それぞれ異なる結果が得られるが どのような方法がより適切であるかについて学術的な合意はない 3 学術的には集団毎の結果を統合せずに それぞれの集団ごとに意思決定することが原則である 4 製品の価値を費用対効果の観点から評価するために より適切な方法について検討する必要がある 11

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 7 複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 1. 複数の ICER を一つに統合する方法 (1) 各 ICER の加重平均値を算出 ( 試行的導入における方法 ) 各疾患毎に ICER を計算し 各 ICER の患者割合等による加重平均から代表値を算出する方法 (2) 増分費用と増分効果の加重平均値を求めてから ICER を算出各疾患毎の増分費用と増分効果について それぞれ加重平均を算出したうえで 代表値を算出する方法 2. 複数の ICER を一つに統合しない方法 (3) 各 ICER のいずれかを代表値として採用各疾患毎の ICER のうち いずれかの値 ( 最も低い あるいは最も高い値等 ) を代表値として採用する方法 (4) 各 ICER に基づく価格の加重平均値を採用各疾患毎の ICER に基づく価格を算出し それらの加重平均を価格として採用する方法 12

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 8 2. 複数の ICER を一つに統合しない手法 (3) 各 ICER のいずれかを代表値として採用 〇各疾患毎の ICER のうち いずれかの値 ( 最も低い あるいは最も高い値等 ) を代表値として採用する方法 一部の諸外国 ( イギリスなど ) では 採用されている方法であるが 例えば 費用対効果が最も悪い (ICER が最も高い ) 結果を用いて評価する場合 費用対効果の悪いことが見込まれる疾患に対する医薬品等の開発に影響を及ぼす可能性がある ( 平成 29 年 9 月 13 日 : 中医協費 -1) 13

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 9 2. 複数の ICER を一つにまとめない手法 (4) 各 ICER に基づく価格の加重平均値を採用 各疾患毎の ICER に基づく価格を算出し それらの加重平均を価格として採用する方法 ( 例 ) 疾患 A と疾患 B に適応のある医薬品 X の場合 500 万円患者割合疾患 A ICER=300 万円 減算なし 0.5 0% 0.5 疾患 B ICER=600 万円 18% 減算 ( ) 0.5 +18% 0.5 =9% 減算 ( ) 試行的導入の方法における 価格調整範囲の減算幅 これは適応疾患毎に異なる値付けが行われたと仮定したときの 品目全体の平均価格と解釈できる オーストラリア等においてはこの方法が採用されている 14

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 10 (4) の方法と (1) 試行的導入時の方法との比較 例 1 例 2 ICER 患者割合 疾患 A 300 万円 0.5 疾患 B 600 万円 0.5 ICER 患者割合 疾患 A 700 万円 0.5 疾患 B 1,500 万円 0.5 (1) 試行的導入時の方法 : 統合 ICER =300 0.5+600 0.5 =450 万円 /QALY 価格調整なし (4) の方法 : 疾患 A: 価格調整なし疾患 B: 一部引き下げ 一部引き下げ (1) 試行的導入時の方法 : 統合 ICER=700 0.5+1,500 0.5 =1,100 万円 /QALY 最大引き下げ (4) の方法 : 疾患 A: 一部引き下げ疾患 B: 最大引き下げ 部分的に引き下げ ( 引き下げ幅は減少 ) (1) 試行的導入時の方法と比較しても 価格調整結果が一方向に動くことはない 15

複数疾患に適応がある場合等の対応方法について 11 検討会の考え方 ( まとめ ) 複数疾患に適応がある場合等に 異なる対象集団に対する ICER の平均値等を算出し それを代表値とすることについては 学術的な ( 医療経済学的な ) 評価が難しいという指摘があり 品目を適切に評価するためにはさらなる検討が必要である 複数の ICER を一つに統合するのではなく 適応疾患ごとに ICER に基づき価格を算定し それらの重みつき平均を用いる方法は 適応疾患ごとに異なる価格がつけられたときの市場平均価格とも解釈でき さらには各疾患における価値を価格に反映できる また (3) 各 ICER のいずれかを代表値として採用 する方法よりも (4) の方法は結果の活用方法としてより公正な評価と考えられる 16

2. 評価結果の報告 公表の仕方について 17

評価結果の報告 公表の仕方について 1 評価結果の報告 公表の仕方 〇費用対効果評価の分析手法や結果については 透明性確保の観点に加えて 関連業界のみならず国民にとっても意味のある情報であることから 諸外国において公開されていることが多い 〇分析結果の概要については 諸外国の多く ( イギリス フランス オーストラリア スウェーデン等 ) において ICER の値や感度分析の結果等を含めて公開されている 〇分析結果の概要に加えて 専門組織に該当する組織で議論された科学的論点とその結論等については 企業の知的所有権に配慮しつつ 諸外国においてもその概要が一定程度公開されていることが多い 議論の前例が参照できることにより 企業側 再分析側ともにより整合性の取れた分析が実施可能になると考えられる 〇イギリス NICE では企業分析 再分析を含め膨大なレポートが公開されるが その他の国では該当する医療技術評価機関から要約されたものが公開されていることが多い 〇我が国においても上記の観点を踏まえて 結果が公表されることが望ましいと考える 18