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1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

2017 年訪日外客数 ( 総数 ) 出典 : 日本政府観光局 (JNTO) 総数 2,295, ,035, ,205, ,578, ,294, ,346, ,681, ,477

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

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第1章

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北米からの原油供給量は 2011 年は前年比日量 +21 万バレル増であったが 2012 年は前年比 +158 万バレル増となり 2013 年は +130 万バレル増 2014 年は +92 万バレル増と見込まれている 北米を含めた OECD 先進諸国からの供給は 2011 年は +1 万バレル増

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第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

参考資料 1 約束草案関連資料 中央環境審議会地球環境部会 2020 年以降の地球温暖化対策検討小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合事務局 平成 27 年 4 月 30 日

原稿メモ

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番号文書項目現行改定案 ( 仮 ) 1 モニタリン 別表 : 各種係 グ 算定規程 ( 排出削 数 ( 単位発熱量 排出係数 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 -


ご参考資料 オーナー経営者経営者の意識調査 - 概要 - 調査期間 2003 年 9 月 1 日 ~10 月 31 日 調査機関日本では ASG グループが本調査の主体になり 日経リサーチ社に調査を委託した 調査の一貫性を保つために 各国のデータの取りまとめは 国際的な調査機関である Wirthli

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Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度 わが国は エネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し 衣食住の面で欠くことのでき ない多くの資源を輸入に頼っている わが国海運は こうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている 石 炭 100% 原 油 99.6% 天然ガ

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2 Ⅰ. 世界及びアジア 太平洋の石油製品需要の動向 世界及びアジア 太平洋の石油製品需要の伸び アジア 太平洋における油種別の需要伸長予測 アジア 太平洋域内での需給バランスと地域外からの輸出入 ( ガソリン 軽油 ) アジア 太平洋の需要伸長は大きく 域内及び域外との石油製品輸出入が多く 競争が

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[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

Transcription:

LNG 価格のこれまでの経緯と将来の展望 ( パート Ⅰ) 世界の3 大 LNG 市場世界の LNG 市場は アジア 太平洋 欧州 北米と大きく3つに区分することが出来る 世界の地域別 LNG 輸入割合は輸入量の多い地域を順に挙げると 1アジア 太平洋 64.0% 2 ヨーロッパ 27.2% 3 北米 8.3% 4 中南米 0.5% となる 図 1 は世界の地域別 LNG 輸入割合を示したものである 中東とアフリカ地域には LNG 輸入国は存在しない 中南米地域の輸入割合は 0.5% と極めて小さい市場なので 世界の LNG 市場は限定的な 3 地域といっていいだろう LNG 市場の最も大きいアジア太平洋地域においては 日本 韓国 台湾が主要な輸入国であり インドは 2005 年から 中国は 2006 年から LNG の輸入を開始し アジア太平洋市場における新規参入者として登場してきた 2 番目に大きい LNG 市場である欧州での巨大なプレーヤーは スペイン フランスである 3 番目の LNG 市場である北米の LNG プレイヤーはアメリカであり トリニダード トバコ エジプト ナイジェリア等から LNG を輸入している 中南米市場はごくわずかであるが トリニダード トバコからドミニカ共和国とプエルトリコへ輸出されている 図 1 世界の地域別 LNG 輸入割合 (2006 年 ) 北米 8.3 0.5 中南米 27.2 ヨーロッパ 64.0 中東 アフリカ アジア太平洋 1

グローバル化する LNG 貿易 LNG 貿易は 1964 年にアルジェリアから英国に輸出されたのが最初である 図 2 は 世界の天然ガス取引推移を 1997 年から 2006 年までの天然ガス貿易量を表したものである 1997 年の天然ガス貿易量は パイプラインとLNGを合わせて 4,330 億 m 3 であったが 2006 年には 7,482 億 m 3 と 1.7 倍に拡大している この 10 年間の年間平均増加率は 5.9% となる 因みに 同期間の世界の天然ガス消費量の年間増加率は 2.3% であるので この間の天然ガス貿易量の増大は 消費量の増加に対して 2 倍以上のスピードで拡大していったことになる 次に パイプラインガス取引と LNG 取引の割合を見る 1997 年における天然ガス全体の貿易量に占めるパイプラインガスと LNG の割合は パイプラインガス 74.3% LNG25.7% であったのに対して 2006 年にはパイプラインガス 71.8% LNG28.2% となっており この 10 年の間に LNG の割合が大きくなっている 過去 10 年間を振り返り 今後の展望として 天然ガスの国際貿易はさらに拡大することが予想され またその中で LNG の比率が増大していくと言えよう 言葉を変えて表現すれば LNG 貿易は今後さらにグローバル化することが予測される ( 単位 : 億 m3) 図 2 世界の天然ガス取引推移 8000 7000 6000 5000 4000 3000 4330 4461 3217 3331 4837 3605 世界全体 5543 5263 4113 3893 5812 4314 6801 6237 5021 4549 パイプライン取引 7215 7482 5327 5371 2000 1000 1113 1130 1232 LNG 取引 1370 1430 1498 1688 1780 1888 2111 0 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 ( 出典 :BP 統計よりグラフ化 ) 2

市場毎に異なる LNG 価格メカニズム天然ガスは全世界で取引されている共通の商品ではないので 天然ガス価格のメカニズムはその地域毎で独立している 現在のところ世界における主要な LNG 市場は前述したようにアジア 欧州 北米であるが それぞれ地域独自の価格メカニズムを持っている アジア地域においては LNG は石油代替燃料と考えられていたので LNG 価格は原油価格にリンクするようになっており 日本においては輸入された原油の平均価格 JCC(Japan Crude Cocktail) リンク方式が採用されている このように LNG 価格は原油価格にリンクしているために 原油価格が上昇すれば LNG 価格も後を追うように上昇し 原油価格が下落すれば LNG 価格も後を追うように下落するような価格変動をする 欧州においては パイプラインガスが 石油化学製品 ガスオイル 燃料油等と競合しているので パイプラインガス価格は石油製品の価格水準を尺度として決められている 一方 LNG はヨーロッパ全土に網羅されているパイプラインガスと競合的にならざるを得ないので LNG 価格も自ずとパイプラインガスと同じような価格メカニズムとなっている 米国においては 円熟した競争的なガス市場が存在するため ガス価格は一般的にヘンリー ハブの市場価格とリンクしている ヘンリー ハブとは 17 系統のパイプラインが交差しているガス集積地の名前であり そこで天然ガスの売買が行われている 米国全土で行われているガス価格は ヘンリー ハブとの格差 (+ または-) で表示される ヘンリー ハブとの格差はその時の需要パターンや最終需要者までの輸送距離の遠近によるものが多い 米国への LNG 輸出においては スポット販売 及び長期契約に基づく販売の 2 種類があるが LNG はパイプラインガスと競合しているので LNG 価格はヘンリー ハブの価格にリンクしている 以上 3 地域 ( アジア ヨーロッパ 北米 ) の価格リンクと考え方をまとめると表 1 のようになる 表 1 現在の LNG 価格リンク地域リンク方式考え方備考 アジア ( 日本 ) 原油価格リンク LNG は石油代替エネルギーである 現在は JCC 価格決定の主要指数となっている ヨーロッパ 競合燃料価格リンク 天然ガスは原油 石油製品と競合しなければならず LNG も同様である LNG はパイプラインガスとの競合もある 北米 ( 米国 ) ヘンリー ハブ価格 リンク LNG は国内天然ガスの需給に委ねる ヘンリー ハブ価格は原油価格との相関性が薄く 変動幅が大きいため 米国への LNG 輸入量も大幅に変動する 3

図 3 は 1996 年から 2006 年までの日本 欧州 米国の原油とガスの主要価格の推移を表したものである 図によれば 欧州と米国のガス価格はそのほとんどがパイプラインで輸送されるため 日本に比べて価格が安くなっている 米国においてはガスは国内で生産されるばかりか カナダ メキシコからも輸入している 欧州においては ガスはアルジェリア オランダ 北海 そしてロシアからパイプラインで輸送されている 日本の LNG 価格は 原油価格にリンクしているので 概ね OECD 原油価格と同じような価格変動をしている ( 単位 : ドル /MMBtu) 図 3 世界の天然ガス価格 12.0 1 日本 LNG CIF 価格 8.0 6.0 4.0 ヨーロッパ連合天然ガス CIF 価格 米国天然ガスヘンリーハブ価格 2.0 OECD 原油 CIF 価格 1996 年 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 ( 出典 :BP 統計 2007 年 ) 2004 年 2005 年 2006 年 図 4 は日本の原油価格と LNG 価格の関係を示したものである 日本の LNG 導入は 1969 年に米国アラスカ州キナイから第 1 船が日本に到着したのが最初である アラスカ LNG 導入時の LNG 価格は プロジェクトへの投資額を基にした固定価格で $0.52/MMBtu であった この固定価格は原油換算すると 原油平均価格 $0.33/MMBtu に相当し プレミアムを加算して $0.52/MMBtu となった その後ブルネイ アブダビでも当初は固定価格が採用されたが 1973 年アラブ イスラエル戦争が勃発し 73 年から 74 年にわたって貨物積込停止が続いた これが原油価格の急激な高騰という第一次石油危機である 石油価格の高騰に追従して LNG 価格も値上げされた 1973 年 原油価格は $2.83/b だったものが 74 年には $10.41/b( または $1.90/MMBtu) に急上昇した LNG 供給者は原油の高価格から得られる利益を LNG にも取り込もうと LNG 価格を原油等価にすべきだと盛んに主張した その結果 第 2 次石油危機後の 1979 年以降は原油等価方式が採用され 原油の GSP( 政府販売価格 ) に 100% リンクして熱量等価により LNG 価格が決定された 原油等価方式は 1985 年まで続くことになる 4

しかし 1980 年半ば頃から既に原油供給過剰は表面化しており OPEC 諸国の一部は減産を余儀なくされてきた それにも拘らず OPEC は原油値上げを続行し 基準原油であるアラビアンライトは 1981 年 10 月には 34$/bbl まで上昇した その後 1983 年 2 月に 30$/bbl 1985 年 2 月にはさらに 28$/bbl に値下げされた 1986 年以降 OPEC は政府販売価格の仕様を放棄し 世界の石油市場は供給と需要によって価格が決められるようになると 価格の崩壊が生じた 1985 年からの原油実勢価格の低下により GSP リンクの LNG 価格が原油価格と著しく乖離したため 新たに JCC(Japan Crude Cocktail) リンク方式が採用されるようになった JCC とは全日本輸入原油 CIF 平均価格のことで これによる LNG 価格の算式は以下のとおりである LNG 価格 (Y)= 係数 (a) JCC(X)+ 一定額 (b) 現在 ほとんどプロジェクトではその価格フォーミュラーを GSP リンクから JCC リンクに変更しているが a b の数字はプロジェクトごとに若干の差異がある 1986 年以降 価格フォーミュラーに基づいた S カーブ が導入されるようになった S カーブ の詳細は後ほど述べるが 基本的には原油リンクとしており 以前の価格方式に不安定性を緩和しようとするものである 2007 年 12 月現在 LNG 価格は S カーブ が影響して 熱量等価で原油よりも安いレベルで推移している ( 図 3 参照 ) ( 単位 : 円 /1,000Kcal) 図 4 日本の原油 LNG 価格推移 6.00 5.00 LNG 価格 4.00 3.00 2.00 1.00 0 1969 年度 原油価格 1971 年度 1973 年度 1975 年度 1977 年度 1979 年度 1981 年度 1983 年度 1985 年度 1987 年度 1989 年度 1991 年度 1993 年度 5 1995 年度 1997 年度 1999 年度 2001 年度 2003 年度 2005 年度