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ここで Ω は系全体の格子数,φ は高分子の体積分率,k BT は熱エネルギー,f m(φ) は 1 格子 あたりの混合自由エネルギーを表す. またこのとき浸透圧 Π は Π = k BT v c [ φ N ln(1 φ) φ χφ2 ] (2) で与えられる. ここで N は高分子の長さ,χ は

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高速液体クロマトグラフィー (PLC) の基礎と操作法 分子機能解析化学研究室 M2 池田豊

クロマトグラフィーとは? 互いに混じり合わない二つの相 固定相とそれと接しながら流動する移動相とで構成された系の中で 物質を分離する方法のこと 移動相に液体を用いた方法が液体クロマトグラフィー (liquid chromatography LC) である

PLC で測定できること

UV-Vis スペクトルから物質の濃度を定量 吸光度 数種類の物質 λmax が近接 波長 (nm) UV-Vis スペクトル図 各物質のピークが重なり 定量できない 分離が必要! PLC で測定できること

クロマトグラフィーでは 各物質の 固定相や移動相への親和性の違い 相互作用 小 中 大 高速液体クロマトグラフィー (PLC)

圧力計 マニュアルインジェクタ UV 検出器 クロマトグラフ ポンプ 固定相 溶媒フィルター カラム 溶離液槽 廃液槽 装置の構成

分離の原理

PLCによる分離は固定相 - 試料成分の吸着だけでなく 固定相 - 移動相溶媒の吸着も競合する固定相 - 移動相溶媒の極性に大きな差が生じないと試料成分の分離が不完全になる 固定相の極性 > 移動相の極性 順相クロマトグラフィー 固定相の極性 < 移動相の極性 逆相クロマトグラフィー 移動相と固定相の選択

疎水性相互作用について O O O O O O O 油油 O O O O O O O 親水系での疎水性物質同士の集合効果 = 疎水性相互作用親水性溶媒の組成が下がると 疎水性相互作用はおこりづらい親水性溶媒の組成が下がると 疎水性相互作用はおこりづらい油油

油 : 固定相 分離したい試料 A B 固定相 B A A ODS A A A B B 移動相 : 水 + アルコール 固定相と試料との相互作用が弱いものから溶出する カラム内の図 B B 親水性溶媒 + 有機溶媒固定相 -- 試料の相互作用の程度を調整 分離の原理

測定手順

溶媒選択 脱気 カラム平衡化 試料 inject 分析 カラム洗浄 保存 PLC 操作手順

移動相 : 水と有機溶媒を混合させて用いる 特性 試料を適度に溶解させ 化学変化させないこと カラムに負担をかけないこと 試料の吸収帯において 溶媒自身の吸収が見られないこと メタノールアセトニトリル PRTR 指定 メタノール アセトニトリルの吸収特性 溶媒選択

異なる溶媒を混合することで 気泡が発生!! 水 メタノール混合液発熱溶存空気が気泡として発生 水 アセトニトリル混合液吸熱室温で暖められて気泡が発生 移動相の流量が変動による保持時間の変化 気泡の光吸収によるクロマトグラム上のノイズ脱気 気泡の除去 脱気操作

水分子 ODS 固定相と親水性溶媒はなじみずらい試料の分離能が良くない ODS ODS 数十分間 移動相を流すことで馴染ませるカラムの平衡化 ODS 溶媒の比率やカラムの長さによって平衡化に要する時間は異なる カラムの平衡化

測定結果について

1.EGC 2.C 3.Caffeine 4.EGCg 5.EC 6.ECg 7.Cg PLC Condition カラム CAPCELL PAK C18 移動相 C 3 O / 0.5vol% 3 PO 4, 2 O / =1/4 流速 0.8mL/min カラム温度 40 検出設定 UV 280nm 1~7 の成分は同じ濃度 クロマトグラムの例 : カテキン類 同じ濃度でも試料によってピーク面積が異なる クロマトグラム

8.0 PLC ピーク面積 ( 10 5 ) 6.0 4.0 2.0 Cg ECg GCg EGCg (+)C EC 0 0.04 0.08 濃度 (mm) 算出式 :[ ピーク面積 ]= 傾き [ 試料の濃度 ] 検量線の作成

洗浄 保存

PLC 分析を行った後の ODS 充填剤表面には 分析に用いた物質が吸着している そのままにしておくと 次回の分析時に影響 ( 保持時間のずれ 安定化に長時間かかる ) がでる ODS 充填剤表面の物質を洗い流す 洗浄という作業が重要 ODS カラムの洗浄

移動相に緩衝液を含む場合 移動相に緩衝液を含まない場合 同じ混合比率の有機溶媒と酸性水で置換 分析で用いた移動相よりも極性の低く やや酸性にした洗浄液で洗う 有機溶媒比率を高めた酸性洗浄液で洗浄する 洗浄液に過塩素酸ナトリウムを加え洗浄 ODS カラム洗浄

カラム固定相の劣化の原因 1 結合相の脱離 ( とくに酸性条件 ) 2 シリカの溶解 ( 中性 アルカリ性条件 ) 3 移動相および試料中の成分の吸着 充填剤やカラムに負担のない溶媒で置換する 中の溶媒が揮発しないように密栓し 一定温度で保存 カラムの保存

δ+ 2.1 O 結合 δ- O 3.5 電気陰性度 : 原子が結合電子対を引き寄せる力 電気陰性度の差大 電荷の偏りが生じる ( 極性 ) ヒドロキシル基 (-O) カルボキシル基 (-COO) など 電気陰性度の差小 電荷の偏りがほとんど見られない ( 無極性 ) C-C C- 結合を有する分子 アルキル基 ( 炭素差が長いほど疎水性大 ) ベンゼン環 逆相系 PLC では疎水性が分離の駆動力 固定相は無極性分子は保持されやすく 極性分子は保持されにくい 分子構造と保持力の関係

シラノール基に ODS 化剤を結合する C 3 C 3 O-Si C 3 C 3 O-Si Cl O Si C 18 37 C 3 C 3 シリカゲル表面 極性が低く表面積が大きい 逆相クロマトグラフィーで用いられる固定相の状態

カラム圧力の違い 水 : メタノール =1:1 の時水素結合がもっとも密になる

クロマトグラム模式図 保持時間 (retention time, t R ) 物質が注入されてから溶出されるまでに要した時間 ピーク幅 (W) ピークの両側の変曲点に接線を引き それらがベースラインと交わった 2 点間の距離 ピークの高さ (h ) ピーク頂点からクロマトグラムのベースラインまでの距離 半値幅 (W 1/2 ) h の 1/2 の位置 (h/2) のピーク幅 保持比 (capacity factor, k ) : カラムへの保持の度合い ' t1 t k1 = t 0 0 k2' = t 2 t t 0 0 分離係数 (α) : 分離の程度を表す尺度 α = k2 k 1

PLC の評価 1) 理論段数 (number of theoretical plate, N) N = tr 16 W 2 カラムの分離効率を表すパラメーター N = 5.545 t W R 1/ 2 2 保持時間 :t R ピーク幅 :W 半値幅 :W 1/2 a) 高理論段数 b) 低理論段数 2) 理論段相当高さ (height equivalent to a theoretical plate, ETP, ) 1 理論段数あたりのカラム長さ = L/N ( カラム長さ :L)

+ ' 1 ' -1 4 Rs 2 2 k k N α α = 3) 分離度 (Rs) 2 成分のピークがどの程度分離しているかを示すパラメーター a) 分離良 b) 分離やや不良 c) 分離不良 ( 完全分離 : Rs > 1.5 ) 保持比 (capacity factor, k ) : カラムへの保持の度合い 0 0 1 1 ' t t t k = 0 0 2 2' t t t k = 分離係数 (α) : 分離の程度を表す尺度 α = 1 2 k k

ピーク形状とその理由 a) 正常ヒ ーク b) フロンティンク c) テーリンク フロンティンク カラムまたはガードカラムの汚れ インジェクション容量が多すぎる / サンプル濃度が高すぎる ( サンプルのオーバーロード ) 平衡化が不十分 移動相に対して サンプルを溶解している溶媒が強すぎる テーリンク カラムまたはガードカラムの汚れ インジェクターの問題 ( バルブが動かない バルブの液漏れ ニードルのつまり ニードルの破損 インジェクションポートのつまり )

疎水性相互作用で保持されている成分の洗浄 極性の低い溶媒を使う 移動相に緩衝液を用いていた場合 塩の析出に注意 緩衝液 / 有機溶媒の分析移動相を用いている場合 1 同比率の水 / 有機溶媒でカラムや流路を置換 2 有機溶媒の比率を上げる 疎水性相互作用

水素結合で吸着している成分の洗浄 ODS 充填剤表面には僅かにシラノール基が存在しており 窒素上の孤立電子対などと水素結合を形成する ( 弱酸性 ~ 中性移動相下 ) リン酸や酢酸を加え やや酸性にした洗浄液を用いる 酸性の洗浄液を用いて 孤立電子対に水素を配位させ水素結合を抑制 R-N 2 R-N 3 +

イオン結合で吸着している成分の洗浄 テトラブチルアンモニウムのように, イオン半径の大きなプラスイオンの場合 解離したシラノールのマイナス電荷とイオン結合が起こる 電荷密度の高さから水和が何重にも生じてマイナスイオンが近づきにくい 水和が弱くなるためマイナスイオンが近づきやすい 半径の大きなマイナスイオンである過塩素酸イオンを ( 過塩素酸ナトリウムとして )0.1M 程度入れた酸性洗浄液を用いる ( 無機塩にも拘わらずメタノールやアセトニトリル 100% にも溶解し析出が起こりにくい )