プライマリケアの位置づけ 整形外科 :orthopaedics 大学 国立センター病院 surgery 一般病院 : 中間的存在 ( 専門化の傾向 ) 診療所 : 整形外科プライマリケア orthoapaedic medicine
整形外科プライマリケアの対象 * 痛みプライマリケアの痛みを知れば誤診が防げる * しびれ * 小児整形外科 * 骨粗鬆症 * 外傷 など手術を必要としない疾患で整形外科の患者の 90% 以上を扱う
整形外科的痛みについて * 運動痛である * 動きで痛みが強くなり 安静で軽減 * 痛みを感じている部位が原因部位とは限らない * 自然治癒傾向が強い
診察 * 問診で診断が可能 ( 症状診断 ) * 疼痛を誘発する動きは? * 圧痛は? * 可動域制限は?
治療 ( 診断的治療が可能 ) * 注射療法炎症のあるとき * AKA- 博田法 * 機能異常のあるとき * 一般的な治療 ( 鎮痛薬 理学療法など )
プライマリケアで多い主訴 その他肘関節痛肩関節痛腱鞘炎頸部痛膝関節痛腰痛外傷 外傷腰痛膝関節痛頸部痛腱鞘炎肩関節痛肘関節痛その他 0 10 20 30 40
第 6 位. 肘痛 : 上腕骨外上果炎 (tennis elbow) * 肘を伸展してものをつかむと肘の外側が痛みます * 外側上果に圧痛 ( 総指伸筋腱付着部 ) * スポーツ ( テニス 野球 ) 仕事 ( ものをつかむ ) * 手関節を背屈し さらに抵抗を加えると疼痛 * 急性期は外側上果にステロイト 注射 * 原因動作を控えると自然回復する
上腕骨外上果炎ー圧痛点と誘発痛
注射部位 Extensor commnis Lateral epicondyle
上腕骨外上果に注射
エビデンス * 有益 : 局所へのステロイド注射 ( 短期 ) * 有益 : 非ステロイド性抗炎症薬内服, 外用 ( 短期的改善 ) * 有益性不明 : 鍼 装具 体操 手術
第 5 位. 肩関節周囲炎 ( 五十肩 ) * 肩が痛くて腕があげられない * 40 歳以上 * 急性症状 外傷歴はない * ときにレントゲンで肩峰下に石灰化像 * 6 か月から 2 年の間に自然回復する * 腱板損傷では肩の外転力が失われる
肩関節を挙上すると疼痛 * 肩関節周囲炎では上腕の拳上で痛みを起こすが 肩甲骨の動きは良好 * 腱板断裂すると肩甲骨はほとんど動かない
肩峰下滑液包炎と石灰沈着
肩峰下滑液包へのステロイト 注射 ステロイドと局麻剤を混合して注射 やや斜め上方に針を向ける
エビデンス * ステロイドの肩峰下注射 :RCT なし * 理学療法 ( 運動 ): 不十分なエビデンス * 非ステロイド性抗炎症薬 : エビデンス不十分
第 4 位. 手の腱鞘炎 ( 狭窄性 ) * 指を曲げたり 伸ばすと痛いけれど腫れはない * 圧痛あり * ときに指関節がひっかかって動かなくなり 強制すると急に動く ( ばね指 ) 拇指 環指に多い 腱鞘内にステロイト 注射 IP 関節 (PIP) 関節のテーピング固定
長拇指外転筋腱 ( 短拇指伸筋腱 ) の腱鞘炎 (de Quervain) での 尺屈での痛み (Finkelsein test)
de Quervain 腱鞘炎の ステロイト 腱鞘内注射 Abdctor pollicis longus
長拇指屈筋腱腱鞘炎 ( ときに弾発拇指 )
拇指 MP 関節掌側に圧痛拇指屈筋腱腱鞘炎
腱鞘内ステロイド注射
環指の屈筋腱の腱鞘炎 ( 弾発指 )
第 3 位. 頸の痛み 肩こり * 頸項部 頸基部 背中がつっぱる 凝る 痛い * 頚椎の運動痛 * 圧痛 * 悪い姿勢 不安抑うつ 頸部の緊張 職業性
頸痛 肩こり * 肋椎関節 硬結筋周辺にトリガーポイント注射 * AKA- 博田法
頸痛 肩こり 背中の痛みの AKA
エビデンス * 有益な可能性 : 運動 理学療法 手技療法 * 有益性不明 : 牽引 温熱 鍼 患者教育 カラーの装着 特別な枕 薬物療法
第 2 位膝関節痛 * 変形性膝関節症 ( 退行性変化 ) があって炎症を生じた場合 歩行痛 関節の腫脹 ( 膝蓋跳動 ) 内側関節裂隙の圧痛
膝蓋跳動 ( 膝関節水腫の検査 )
膝関節炎 ( 変形性膝関節症 ) 注射 ( ステロイト ヒアルロン酸ナトリウム )
膝蓋大腿関節痛 * 歩行時痛はないが 階段昇降時に疼痛 * 膝蓋骨を動かすと 痛みや雑音を生じる * 関節の腫脹 圧痛はなし * レントゲンは正常
膝蓋大腿関節痛
エビデンス * 有益 : 非ステロイド性抗炎症薬 外用薬 * 有益な可能性 : 運動 装具 ステロイト 関節内注射 ヒアルロン酸関節内注射 * 不明 : 教育 グルコサミン コンドロイチン
第 1 位. 腰痛 * 特異的腰痛感染 腫瘍 骨折など数 % * 非特異的腰痛 90% 以上特別な所見 治療法のない腰痛 * 椎間板ヘルニア 1-3 %
腰痛に占める非特異的腰痛 椎間板ヘルニア椎体骨折腫瘍内臓痛非特異性腰痛 腫瘍 1% 内臓痛 1% 椎体骨折 4% 非特異性腰痛 91% 椎間板ヘルニア 3%
非特異的腰痛 * 生涯で 70% の人に経験がある * 原因不明とされてきた ( 椎間板性であるという根拠はない ) * 自然治癒傾向が強いが 再発 慢性化も多い * レントゲン所見 MRI 所見と症状が一致しない * 特異的な治療法がなく AKA が著効
非特異的腰痛と椎間板ヘルニア の症状の違い * 非特異的腰痛腰痛が主体 下肢はしびれと軽い疼痛 自然治癒傾向が強いが再発も多い AKA が有効 * 椎間板ヘルニア下肢痛の方が強い とくに歩行時に強い 知覚運動障害がある AKA は無効 自然治癒傾向もあるが経過が長い
前屈 後屈
評価 (SLR) * SLR は痛みの誘発テストではない * 痛みではなく endfeel でのやわらかさをみる * 拳上途中で筋緊張を感じたらそこで停止 * 自動運動を行わせないよう 他動運動で評価する * Slowly & gently で 39
評価 (Fadirf,Fabere) 膝窩部に指を入れ誘導 膝関節を持ってはいけない 40
エビデンス ( 急性腰痛 ) * 有益 : 活動を維持する 非ステロイド性抗炎症薬 * 不明 : 鍼 腰痛教室 コルセット 牽引 温熱 * 有益でない : 腰痛体操 * 無効 : 安静
エビデンス ( 慢性 ) * 有益 : 運動 集学的治療 ( 医師 PT,OT, 心理学者 SW による ) * 有益な可能性 : 腰痛教室 行動療法 ( 考え方を変える ) マッサージ トリガーポイント注射 * 不明 : 鍼 抗うつ薬 硬膜外注射 サポーター 電気刺激 牽引
腰痛の治療法のまとめ * 特異的か非特異的かを区別する * 下肢痛が異常に強いときは椎間板ヘルニアを疑う * 非特異的腰痛には AKA を行い 診断的治療をする (AKA が有効なら仙腸関節原性による腰痛である )
AKA- 博田法 ( 関節運動学的アプローチ ) * 博田節夫先生 ( 大阪大学整形外科 ) により創始 米国で関節運動学を学ぶ 関節運動学を疼痛治療に応用し 手技療法を開発した とはなんですか?
副運動 下部離開 腸骨下部を仙骨に対して離開
副運動 : 上方すべり 腸骨を仙骨に対して上方にすべらす
AKA で腰痛が消失した時期 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 45(81%) 39(62%) 10(9%) 24(38%) 3 週以内 3 週以上 AKA 単独 従来治療
急性腰痛 45 歳男性 * 1 か月前から急に腰痛と左下肢のしびれ ( 下腿から足底へ ) * 前医診断 : 腰椎椎間板ヘルニア (L4-5) * SLR 右 80 左 60 FBR 右 90 左 80 * AKA- 博田法を仙腸関節に行い SLR 各 80 に改善,FBR も正常化 * 2 日後から痛み しびれは消失 * 診断 : 仙腸関節機能異常 * 患者コメント 一体私に何が起こったのですか? 48
82 歳男性 * 両下肢のしびれが立位であり 歩行は 5 分でしゃがむ 臀部灼熱感 指揮者の仕事が困難 * 前医診断 : 腰部脊柱管狭窄症 ( 手術が必要 ) * SLR5050,AKA- 博田法を仙腸関節に行い各 85 に改善 疼痛軽減し 300m まで歩行可能 その後しびれと時々の臀部の灼熱感はあるものの歩行距離が次第に増加 指揮者に復帰 * 診断 : 仙腸関節炎特殊型 49
関連痛 1. 神経伝達物質が到達した脳の感覚中枢の部位に痛みを感じる 例 : 仙腸関節からの伝達物質が膝の中枢に到達これを膝の痛みと感じる 2. 神経伝達物質は感受性の高い部位に多く到達 1 最初はシナプス伝達が感受性を高める 2 古傷の部位 3 器質的病変の部位 50
左股関節痛 54 歳女性 10 代からの左股関節痛 * 今までは放置していたが次第に痛みが増強してきた 杖でようやく歩行 要消炎鎮痛剤 * SLR 右 80 左 60 * FDF 右 30 左 0 * FBR 右 90 左 30 * AKA- 博田法 ( 仙腸関節 ) を行い SLR は各 80 に 月 1 回 AKA- 博田法を行い 消炎鎮痛剤 杖は不要に 3 年経過でときどき痛みはあるが 自制内 * 診断 : 慢性仙腸関節機能異常の関連痛 51
前症例の骨頭 臼蓋の改変 初診時 3 年経過 52
伸展障害のある右膝関節痛 60 歳女性 中学時代に左膝外傷でギプス固定 正座ができず 歩行痛 前医診断 : 変形性膝関節症 屈曲は 140 で疼痛 伸展はー 30 SLR: 右 20 左 30 FDF,FBR は正常 AKA- 博田法 ( 仙腸関節 ) で SLR は各 80 に改善 伸展障害はー 10 に改善 疼痛消失 診断 : 仙腸関節機能異常の関連痛 53
腰痛と膝関節痛 80 歳女性 10 年以上まえから腰痛と両膝関節痛があり 各種治療で奏功せず 前医診断 : 変形性膝関節症右膝関節屈曲 120 伸展はー 20 SLR: 右 20 左 60 FDF.FBR は正常 AKA- 博田法 ( 仙腸関節 ) を行い SLR は左右とも 80 に改善 腰痛 両膝痛とも消失 3 か月後草取りで再発し AKA- 博田法 ( 仙腸関節 ) で疼痛消失診断 : 慢性仙腸関節機能異常の関連痛 54
左足関節痛前医診断 : 変形性足関節症 * 57 歳男性 以前は激しいスポーツで何度も足関節外傷 現在足が痛くて杖がないと歩けない * SLR50,40 * AKA- 博田法 ( 仙腸関節 ) を行い さらに距骨下関節に追加すると足関節痛は消失 * 診断 : 仙腸関節 距骨下関節機能異常の関連痛 55
67 歳女性 * 10 年前から左上肢背側の痛みとしびれが常時あり MRI では 4-5. 5-6 で狭窄像 * 前医診断 : 頸部脊柱管狭窄症 * 頸椎は後屈制限と痛み * SLR 各 30 * AKA- 博田法 : 仙腸関節で AKA 各 80 に改善 次いで第一肋椎 胸鎖関節の AKA- 博田法で肩甲上部前部しびれ痛み消失 後屈時痛消失 * 肋椎関節椎間関節に AKA- 博田法をおこないすべてのしびれが消失 * 診断 : 慢性仙腸関節機能異常の関連痛 56
55 歳男性 腰痛と肩の痛み * 10 年まえから両肩がいたく右肩は外転制限 80 で痛み 屈曲 120 伸展 30 * 腰痛もあり FFD30 cm 後屈不能 SLR は 30,50 * FBR50,80 * 前医診断 : 肩関節周囲炎 腰痛症 * AKA- 博田法を仙腸関節に行い SLR80 に改善 FBR 正常化 同時に腰痛と肩の痛み消失 肩後方の痛みは肋椎 1,2 で消失 * 可動域は正常化 * 診断 : 仙腸関節機能異常 肋椎関節機能異常による関連痛 57