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Transcription:

HTLV-1 感染の診断指針 平成 29 年度日本医療研究開発機構委託研究開発費 (AMED 補助金 ) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 HTLV-1 の疫学研究及び総合対策に資する研究 1

平成 29 年度日本医療研究開発機構委託研究開発費 (AMED 補助金 ) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 HTLV-1 の疫学研究及び総合対策に資する研究 班 研究代表者 : 浜口功 ( 国立感染症研究所 ) 研究分担 協力者 : 渡邉俊樹 ( 聖マリアンナ医科大学 東京大学 ) 内丸薫 ( 東京大学 ) 山野嘉久 ( 聖マリアンナ医科大学 ) 佐竹正博 ( 日本赤十字社 ) 相良康子 ( 日本赤十字社 ) 齋藤滋 ( 富山大学 ) 宇都宮與 ( 慈愛会今村総合病院 ) 久保田龍二 ( 鹿児島大学 ) 石塚賢治 ( 鹿児島大学 ) 岡山昭彦 ( 宮崎大学 ) 梅木一美 ( 宮崎大学 ) 岩永正子 ( 長崎大学 ) 長谷川寛雄 ( 長崎大学 ) 増崎英明 ( 長崎大学 ) 三浦清徳 ( 長崎大学 ) 緒方正男 ( 大分大学 ) 野坂生郷 ( 熊本大学 ) 高起良 (JR 大阪鉄道病院 ) 滝麻衣 ( 洛和会京都健診センター ) 大隈和 ( 国立感染症研究所 ) 松岡佐保子 ( 国立感染症研究所 ) 倉光球 ( 国立感染症研究所 ) 2

Ⅰ. はじめに国の HTLV-1 母子感染防止対策として 2010 年 11 月から妊婦健康診査の項目に HTLV-1 抗体検査が公費助成検査項目に追加され 2011 年 4 月には産婦人科診療ガイドラインにおいて妊婦に対する HTLV-1 抗体検査が推奨レベル A( 強く推奨する ) に変更となり 多くの妊婦が HTLV-1 抗体検査を受けるようになった HTLV-1 感染 ( 症 ) の診断はこれまで一次検査と 一次検査陽性者に対する確認検査としてウエスタンブロット (WB) 法による HTLV-1 抗体検査が行われてきた 近年 抗体検査法の感度 特異度は向上している一方で 確認検査における 判定保留 が 10~20% を占める点が課題となっている 特に妊婦における 判定保留 の問題は乳汁栄養法の選択にかかわってくるため 正確な感染の有無の判定が望まれてきた 確認検査における 判定保留 例に対し 末梢血細胞ゲノム中の HTLV-1 ウイルス DNA( プロウイルス DNA) を特異的に検出する核酸検出 (PCR 法 ) が HTLV-1 感染の確定に有用であることは以前より知られていたが その標準的な測定方法が確立されていない問題点が残っていた 1 この問題に対しては 2014 年に厚生労働科学研究班によって標準化が確立され 2 2016 年 4 月より WB 法判定保留の妊婦に対しては HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) が保険適用されることとなった また 同研究班において ラインブロット (LIA) 法が確認検査として有用であることが示唆された LIA 法は 2017 年 10 月 31 日に保険収載された そこで 同研究班は 最新の検査法を利用した HTLV-1 感染 ( 症 ) の正確な診断指針が早期に広く普及するよう 最新の医学知識に則し LIA 法と HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) を加えた新しい推奨検査手順を HTLV-1 感染の診断指針 として新たに公表することとした なお 本診断指針は 2018 年 2 月時点の情報に基づくものである Ⅱ. 指針設定の考え方 HTLV-1 抗体検査法が進歩した現状を受けて HTLV-1 母子感染予防対策保健指導マニュアル (2011 年 3 月 ) 3 において一次検査の方法として これまで推奨されてきた抗体検査の粒子凝集 (PA) 法と化学発光酵素免疫測定 (CLEIA) 法に加え 化学発光免疫測定 (CLIA) 法と電気化学発光免疫測定 (ECLIA) 法が従来の検査 3

法と同等の検査であることが判明したため 4-6 CLIA 法と ECLIA 法を追加して推奨する また 確認検査で実施する WB 法による HTLV-1 抗体検査の判定保留例に対し HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) による HTLV-1 プロウイルス検出法が一定の有用性を示すとする厚生労働科学研究班の研究結果が得られた 2 すなわちウイルスは存在するが産生抗体力価が低い状況では 抗体検出系である WB 法のみでの確定診断は困難であり HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) の実施が有効であることが明らかとなった さらに 同研究班において LIA 法を確認検査として用いることで 判定保留率が大きく軽減されることが明らかとなった このような観点から一次検査で陽性となった際 WB 法もしくは LIA 法により一次検査の特異性を確認し その際判定保留になった場合には HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) による HTLV-1 プロウイルスの検出を行うことにより より正確で信頼性の高い診断が期待できる このため確認検査において 判定保留の場合の HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) 実施を推奨する Ⅲ. 診断法の実際 1. 一次検査 (1) 当該検査は HTLV-1 の感染を判定する診療において行われる (2) 診断薬としては HTLV-1 の一次検査法の中から 最新の情報により感度が十分に高い製品を選択することが重要である (3) これまで推奨されている PA 法と CLEIA 法に加えて CLIA 法と ECLIA 法を一次検査の推奨検査法とする (4) 一次検査の結果判定とその後の対応は以下の通りとなる 1 陰性 の場合この時点で 非感染 ( 感染はない ) と判定を確定する 2 陽性 の場合判定を確定させるため 確認検査を必ず実施する 2. 確認検査 確認検査は WB 法もしくは LIA 法による HTLV-1 抗体検査を実施し その結 果が判定保留の場合には HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) を実施することを推奨する 4

検査と判定は 別紙のフローチャートに従う (1) HTLV-1 の WB 法もしくは LIA 法が 陽性 の場合陽性と判定を確定し HTLV-1 感染 ( 症 ) と診断する (2) HTLV-1 の WB 法もしくは LIA 法が 陰性 の場合陰性と判定を確定し 非感染 ( 感染はない ) と診断する (3) HTLV-1 の WB 法もしくは LIA 法が 判定保留 の場合 1 HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) の結果が陽性であれば 陽性と判定を確定し HTLV-1 感染 ( 症 ) と診断する 2 HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) の結果が陰性の場合は 陰性もしくは検出感度以下 (4 コピー /10 5 細胞未満 ) と判定する Ⅳ. 留意事項 1. 検査における留意点 (1) 多くの被検者は たとえ一次検査が陽性であっても 確認検査で陽性と確定されない限り HTLV-1 感染 ( 症 ) とは診断されないことを知らない 従って医療者は一次検査の陽性者への説明に際しては上記を踏まえたものとしなければならない すなわち 一次検査の結果が陽性であった場合には 被検者に 一次検査の結果が陽性であり これから確認検査を行うこと 確認検査の結果が出るまで感染は明らかでないこと を確実に理解してもらう必要がある 説明を担当する医療者においては 被検者に 一次検査が陽性 =( イコール ) 感染 ( 症 ) との誤解や不安が生じる説明とならないよう配慮し 慎重に対処されたい (2) 本指針は HTLV-1 感染 ( 症 ) の診断時での使用を目的にしたものである 従って 指針中に設定された HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) は定性的な検査であり HTLV-1 のプロウイルス量の測定 ( 定量検査 ) を意図したものではない (3) HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) では 確認検査での十分な感度を得るためには 1 µg 程度の genomic DNA を使用することが望ましい 2. 妊産婦診療における留意点 HTLV-1 感染の判定確定後の妊産婦診療は HTLV-1 母子感染予防対策マニュ アル (2017 年 3 月 ) 7 に沿って対応する 5

3. 保険診療上の留意点妊婦における WB 法判定保留例に対して 2016 年 4 月 1 日 HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) が保険適用されたが 妊婦以外における WB 法判定保留例に対しては HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) は保険適用されていない LIA 法判定保留例に対しては妊婦 妊婦以外ともに HTLV-1 核酸検出 (PCR 法 ) は保険適用されていない 参考文献 1. Kamihira S, Yamano Y, Iwanaga M, et al. Intra- and inter-laboratory variability in human T-cell leukemia virus type-1 proviral load quantification using real-time polymerase chain reaction assays: a multi-center study. Cancer Sci. 2010;101(11):2361-7. 2. 厚生労働科学研究費補助金 HTLV-1 感染症の診断法の標準化と発症リスクの解明に関する研究 班 ( 代表浜口功 ) 平成 23 25 年度総合研究報告書 3. HTLV-1 母子感染予防対策保健指導マニュアル. 厚生労働科学特別研究事業 ヒト T 細胞白血病ウイルス-1 型 (HTLV-1) 母子感染予防のための保健指導の標準化に関する研究 班 ( 代表森内浩幸 ) 平成 22 年度研究報告書 4. Qiu X, Hodges S, Lukaszewska T, et al. Evaluation of a new, fully automated immunoassay for detection of HTLV-I and HTLV-II antibodies. J Med Virol. 2008;80(3):484-93. 5. 出口松夫, 鍵田正智, 吉岡範, 他. 6 種 HTLV 抗体測定試薬の基本性能について. 医学と薬学. 2011;66(6):1053-9. 6. 園山里美, 宇野直輝, 岡田侑也, 他. HTLV-1/2 抗体測定試薬 エクルーシス試薬 Anti-HTLV I/II の基礎性能評価. 医学検査. 2016;65(6):642-8. 7. HTLV-1 母子感染予防対策マニュアル. 厚生労働行政推進調査事業費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業 HTLV-1 母子感染予防に関する研究 : HTLV-1 抗体陽性妊婦からの出生児のコホート研究 班 ( 代表板橋家頭夫 ) 平成 28 年度研究報告書 2018 年 2 月作成 6

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