[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

自己株式の消却の会計 税務処理 1. 会社法上の取り扱い取得した自己株式を消却するには 取締役会設置会社の場合は取締役会決議が必要となります ( 会 178) 取締役会決議では 消却する自己株式数を 種類株式発行会社では自己株式の種類及び種類ごとの数を決定する必要があります 自己株式を消却しても 会

経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

経営 V iewpoint 相 談自己株式の取得に係る会計と税務について 宮澤正彦相談部東京相談室 自己株式の取得については 平成 18 年に資産の取得から資本の控除項目へと会計基準が変更されました この改正に伴い 税法も取扱いが変更されました 自己株式の取得についての手続きや留意

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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第 9 章純資産の会計 問題 43 問題 43 資本剰余金の振替え 借方科目金額貸方科目金額 次の独立した取引の仕訳を示しなさい ⑴ 資本準備金 2,000,000 円とその他資本剰余金 800,000 円を資本金とすることを株主総会で決議し その効力が生じた ⑵ 資本金 500,000 円を資本準

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

PG_第3期期末配当の取扱いに関するQA

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

財剎諸表 (1).xlsx

計算書類等

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

営業報告書

第 76 期 計算書類 自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 大泉物流株式会社

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

東京電力エナジーパートナー

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

第10期

「中小企業の会計に関する指針《新旧対照表

第4期電子公告(東京)

完全子会社同士の無対価合併 1. 会社法の規制 100% 子会社同士が合併する場合は 兄弟合併とも言われます 実務上は新設合併はマイナーで 法律上の許認可の関係で一方が存続する吸収合併が一般的です また 同一企業グループ内での組織再編成の場合は 無対価合併が一般的です 簡易合併に該当する場合は 存続

第4期 決算報告書

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 平成 27 年度末平成 28 年 3 月 31 日現在

財務諸表 金融商品取引法第 193 条の 2 第 1 項の規定に基づき 当社の貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書及び附属明細表については 有限責任あずさ監査法人の監査証明を受けております 貸借対照表 科目 ( 資産の部 ) 流動資産 2017 年度末 2018 年 3 月 31 日現在 (

3. 資本剰余金からの配当について ( ご参考 ) 今回の配当は 全額 その他資本剰余金 を配当原資とするため 資本の払戻し に該当し 一般的な 利益剰余金 を配当原資とする配当とは税務上の取扱いが異なります 今回の配当は 所得区分が 配当所得 ( みなし配当 ) 部分と みなし配当以外 の部分に分

TAC2017.indb

[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

2019年年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)

第 36 期決算公告 浜松市中区常盤町 静岡エフエム放送株式会社代表取締役社長上野豊 貸借対照表 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 資産の部 負債の部 Ⅰ. 流 動 資 産 909,595 Ⅰ. 流 動 負 債 208,875 現金及び預金 508,

サンプル集

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

投資主の皆様へ 平成 29 年 3 月 マリモ地方創生リート投資法人 第 1 期分配金の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます さて 本投資法人は 平成 29 年 2 月 14 日開催の役員会において 第 1 期 ( 平成 28 年 12 月期 ) の (A)

Invincible

【H 改正】株主資本等変動計算書.docx

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

Microsoft Word - 決箊喬å‚−表紎_18年度(第26æœ�ï¼›

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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平成20年2月

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

Q. 確定申告は必要ですか? A. 今回の配当によるみなし譲渡損益が特定口座の計算対象とならない場合 または源泉徴収の無い特定口座や一般口座でお取引いただいている場合につきましては 原則として確定申告が必要になります 申告不要制度の適用可否を含め 株主の皆様個々のご事情により対応が異なりますので 具

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Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度

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決算書類(H25年度)

計 算 書 類

第1章 財務諸表

1 口当たりの基準価額 口数 + 再投資されていない未収分配金 - 再投資されていない未収分配金に係る源泉所得税相当額 ( 注 ) - 信託財産留保額および解約手数料 ( 消費税相当額を含む ) 注 : 特別徴収されるべき都道府県民税の額に相当する金額 および復興特別所得税を含みます ( 以下同 )

e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

株主各位 証券コード 7022 平成 29 年 6 月 23 日 大阪市北区中之島三丁目 3 番 23 号 取締役社長上田 孝 第 6 期期末配当の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓日頃より格別のご高配を賜り厚く御礼申しあげます さて 当社は 平成 29 年 6 月 23 日開催の第 6 期定時株主

(1) 連結貸借対照表 ( 添付資料 16 ページ ) (3) 連結株主資本等変動計算書 ( 添付資料 28 ページ ) 6. 個別財務諸表 (1) 貸借対照表 ( 添付資料 31 ページ ) (3) 株主資本等変動計算書 以上 2

営 業 報 告 書

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

計算書類 第 60 期 自至 平成 29 年 7 月 1 日平成 30 年 6 月 30 日 協和医科器械株式会社

包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

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公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

法人税における役員特有の取扱いには 主に次のようなものがあります この取扱いは みなし役 員も対象となります 項目 役員給与 損金算入制限 過大役員給与 特有の取扱い 定期同額給与 ( 注 1) や事前確定届出給与 ( 注 2) など一定のもの以外は損金不算入 実質基準 ( 職務内容 収益状況など

貸借対照表平成 30 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 6,646,807 流動負債 4,437,848 現金及び預金 4,424,351 1 年以内返済予定の長期借入金 1,753,120 未 収 運 賃

2019年3月期 中間期決算短信〔日本基準〕(連結):東京スター銀行

株式等の譲渡(特定口座の譲渡損失と配当所得等の損益通算及び翌年以後への繰越し)編

平成26年度 第138回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

株 主 各 位                          平成19年6月1日

第6期決算公告

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

本資料の記載数値について 第一生命保険株式会社 ( 旧 第一生命 : 下図 A) は 2016 年 10 月 1 日付で 第一生命ホールディングス株式会社 に商号を変更し 事業目的をグループ会社の経営管理等に変更しています 旧 第一生命が営んでいた国内生命保険事業は 会社分割により 第一生命保険株式

営 業 報 告 書

業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑧・連結税効果実務指針(その3)

Q1 法人事業税の負担変動の軽減措置とは どのような制度ですか? A. 平成 27 年度税制改正により導入された 外形標準課税の拡大 ( 所得割の税率引き下げ及び付加価値割 資本割の税率引き上げ ) によって生じる税負担の変動の影響を緩和する措置で 付加価値額が一定以下の法人を対象に税負担の増加につ

『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

税効果会計シリーズ(3)_法定実効税率

計算書類 貸 損 借益 対計 照算 表書 株主資本等変動計算書 個 別 注 記 表 自 : 年 4 月 1 日 至 : 年 3 月 3 1 日 株式会社ウイン インターナショナル

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

6. 個別中間財務諸表等 株式会社キョーリン (1) 中間貸借対照表当社はより中間財務諸表を作成しているため 前中間会計期間末は記載しておりません 末 ( 平成 18 年 9 月 30 日 ) の要約貸借対照表 ( 平成 18 年 3 月 31 日 ) 区分 注記番号 構成比 構成比 ( 資産の部

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ViewPoint 営 法人の自己株式の取得等に係る財務 税務上の影響 米澤潤平部東京室 昨今 ROE など資本効率の観点から 上場企業を中心に増加している自己株式の取引が新聞などで報道されることが多くなっていますが 中堅 中小企業においても 経営上の必要性から自己株式を取得する場面は十分に想定されます 今回は 株式の発行法人における自己株式の取得 処分 消却時の会計 税務処理について整理します また 平成 27 年度税制改正により 自己株式を取得した企業では 事業税資本割等の税負担が大きくなる可能性があることから その影響について解説します 1. 自己株式の取得等に関する重要論点 [1] 経営上の意義 昨今 上場企業を中心に これまで以上に株主還元や資本効率を重視した経営が求められるようになり 株主への利益還元やROE(Return On Equity( 注 )) を高めるための手法の一つとして 自己株式を取得する企業が増加しています 一方 中堅 中小企業においても資本効率を意識した経営を行っていくことは重要ですが 加えて下表のような経営上の必要性から 自己株式の取得が行われることがあります 取得理由 株主構成の是正 事業承継対策 備考 自己株式には議決権がないため 自己株式の取得により既存の株主構成の是正が図れる 事業承継にあたり後継者に株式の相続に伴う相続税が課された際 企業が後継者から自己株式を買い取ることで納税資金を確保できる 注 : 自己資本利益率とも呼ばれ 投資家 ( 株主 ) の立場から見た総合的な収益性を表し 企業が自己資本をどれだけ効率的に活用して利益を上げているか ( 資本効率 ) を図る指標となる ROE は 企業の当期純利益を自己資本 ( 純資産 ) で除して求める 1

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2) その他資本剰余金 の前に を付します( 右図 ) 3. 利益剰余金 取得した自己株式は その後は自社でそのまま保有し (1) 利益準備金 (2) その他利益剰余金 ておくほか 自己株式を資金調達のため売却するなどの 4. 自己株式 処分 や 自己株式の効力を消滅させる 消却 があ ります 自己株式の取得は 自己資本の減少要因となるため 結果として前項 [1] で述べたように RO Eを高めることとなります ROE= 当期純利益自己資本 (%) 自己株式の取得により 分母の自己資本 ( 純資産 ) が圧縮され 結果として ROE が高まる また 注記事項である1 株当たり当期純利益の計算においても ROEと同様に自己株式は分母の株式数から除かれるため 自己株式の取得は1 株当たり当期純利益の増加につながります なお 自己株式の取得は 株主に対して資産を受け渡すという点で配当と同様の性格を有するため 一定の計算式に基づき算出された 分配可能額 の範囲内でのみ取得することができます また 自己株式を特定の株主との相対取引により取得する場合は 株主総会の特別決議が必要となります [3] 税務 ( ) 上の取扱い 企業が自己株式を取得する場合に これに応じて企業から現金等の支払いを受けた株主について では 当該企業に対する投資資金の回収をしたと同時に利益の分配 ( 配当 ) を受けたものと考えます ( 右図 ) 具体的には 企業 (A 社 ) の株主 (A 社株主 ) が自己株式の売却対価として受け取った現金等の合計額のうち 当該企業の資本金等の額に対応する部分を超える部分の金額 ( 利益積立金を財源として支払われたと考えられる部分の金額 ) については 株主は配当を受け取ったものとみなす という規定が設けられています これを一般に みなし配当 と呼び 企業が自己株式を取得する際 ( 自己株式の取得が証券取引所における購入による場合等を除く ) みなし配当が発生する場合は 自己株式を取得した企業は株主に対しみなし配当の額を通知する義務を負い また このみなし配当に係る源泉所得税の徴収を行わなければなりません 2

2. 会計 税務処理の事例解説 ここでは 自己株式の 取得 処分 消却 時の株式発行法人の会計 税務処理について 順を追って説明します [1] 事例の前提 A 社は設立時に 1 株 10,000 円の株式を 50,000 株発行し 払込資本 500 百万円で設立 ( 内訳は 百万円 百万円 ) された法人であり 現在まで資本の部に関する変動はない A 社の会計上の資本金 資本剰余金の状況と 上の資本金等の額 ( では 資本金と資本準備金を区別せず資本金等の額として取り扱う ) の状況は右図のとおり なお A 社は非上場企業である 単位 : 百万円 ( 以下同 ) 会計 資本金等の額 500 [2] 自己株式の取得 その後 A 社はA 社株主から自己株式 (A 社株式 ) を1 株 15,000 円で 10,000 株 ( 総額 150 百万円 ) 取得した なお みなし配当に係る源泉所得税率は便宜上 20% とする 自己株式 150( 注 1) / 現金預金 140 預り金 10( 注 2) 注 1: 会計上は 取得原価をもって自己株式の名称で株主資本の控除項目とする 注 2: 預り金 は源泉所得税によるもので 計算は下記税務仕訳の注 5 を参照 取引後の資本に関する状況会計 自己株式 150 資本金等の額 100( 注 3) / 現金預金 140 利益積立金 50( 注 4) / 預り金 10( 注 5) 資本金等の額 400 注 3: では 取得した自己株式に対応する 資本金等の額 を減額する 500 百万円 50,000 株 10,000 株 =100 百万円注 4: 株主に交付した現金総額 150 百万円のうち 資本金等の額 100 百万円を超える部分の金額 50 百万円は 利益積立金を財源とした配当の額とみなされる ( 株主において課税関係が発生する ) 逆に 株主に交付した現金総額が対応する 資本金等の額 に満たない場合には みなし配当は生じない 注 5: みなし配当に係る源泉所得税 50 百万円 20%=10 百万円 [3] 自己株式の処分 A 社は [2] で取得した自己株式 10,000 株をB 社に対し1 株 18,000 円 ( 総額 180 百万円 ) で売却した 3

現金預金 180 / 自己株式 150( 注 6) その他資本余剰金 30( 注 7) 会計 その他資本剰余金 30 注 6: 1 株当たりの取得原価 15,000 円 売却した株式数 10,000 株 注 7: 自己株式に関する取引は資本取引であるため 対価の総額 180 百万円と自己株式 150 百万円との差額 30 百万円は 損益とせずに その他資本剰余金 を増減させる 現金預金 180 / 資本金等の額 180( 注 8) 資本金等の額 580 注 8: においては 自己株式の処分は新株発行と同様に扱うこととされており 受け取った対価の額を全額 資本金等の額 とする [4] 自己株式の消却 A 社は [2] で取得した自己株式 10,000 株をすべて売却した ([3] の取引後に行われたものではない ) なお 消却により発行済み株式数も 10,000 株減少することとなる その他資本余剰金 150( 注 9) / 自己株式 150 注 9: 消却した自己株式と同額を その他資本剰余金 の減額とする なお 期末においても その他資本剰余金 が負の値のままの場合には 払込資本のマイナスは会計上想定されていないため その他資本剰余金 がゼロになるまで繰越利益剰余金の金額を減額させる 会計 その他資本剰余金 150 処理なし ( 注 10) 資本金等の額 400 注 10: 資本金等の額 は [2] の自己株式取得時から変化しない 3. 地方税法改正による影響 [1] 資本金等の額 を基準とする課税 において資本金等の額は寄付金の損金算入限度額の計算等に用いられますが その他に地方税である住民税均等割において税率区分の基準となり 同じく地方税の事業税資本割 ( 外形標準課税対象法人 ( 資本金の額が1 億円超の企業 ( 電気 ガス供給業や保険業を営む企業等を除く ) に課されます ) において課税標準 ( 税額を算定する際の基礎となるもの ) となります 本稿では 住民税均等割については割愛し 事業税資本割 ( 以下 資本割 ) の概要と自己株式の取得等が資本割に与える影響について説明します 資本割は 事業年度末におけるにおける 資本金等の額 ( 一定の場合は所定の調整を加えた金額 ) に一定の税率を乗じて算出しますが その税率は下表のとおり 平成 27 年度 28 年度と税率 4

改正による引き上げが続いています 資本金等の額が5 億円の企業の場合 原則として平成 28 年度は 平成 27 年度よりも資本割の納税額が 100 万円増えることとなります 平成 26 年度 平成 27 年度 平成 28 年度 標準税率 0.2% 0.3% 0.5% [2] 資本割の課税標準等の見直し 上記の税率改正のほか 平成 27 年度税制改正により 資本金等の額が 事業年度末における ( 会計上の ) 資本金と資本準備金の合計額に満たない場合は 資本割 ( および住民税均等割 ) の税額計算に用いる資本金等の額は 資本金と資本準備金の合計額とする改正が行われました 1 資本金等の額 < 2 資本金 + 資本準備金の合計額 2 資本金 + 資本準備金の合計額が資本割の課税標準とされる この改正により 企業が自己株式を取得した場合は 資本割の税額計算に注意を要する必要が出てきました ここで 前述の 2. 会計 税務処理の事例解説 の第 2 項 自己株式の取得 のケースを用いて影響を確認します A 社の 1 資本金等の額 は 400 百万円であるのに対し 2 資本金と資本準備金の合計額 は 250 百万円 +250 百万円 =500 百万円となっています この場合 このまま事業年度末を迎えたとすると 1 < 2 となるため 上記の規定に従い資本割の課税標準は 1 資本金等の額 である 400 百万円ではなく 2 資本金と資本準備金の合計額 である 500 百万円とされます 平成 27 年度税制改正前は 自己株式の取得により資本金等の額が減少し 結果として資本割額や住民税の均等割額について税負担が減少することがありましたが 改正後は上記の例のように これらの税負担が必ずしも減少するとは限りません 自己株式を所有している企業や これから取得しようとする企業は この点について留意すべきといえます 内容は 2016 年 6 月 24 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にごください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所部東京室 03-3591-7077 / 大阪室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5