皮膚筋炎 多発性筋炎 [ 主な膠原病の歴史 ] < 関節リウマチ > B.C1000 年頃古代インディアンの骨に痕跡あり 17 世紀ルーベンスの絵に関節リウマチ患者の絵? 20 世紀初頭変形性関節症から疾患概念が分かれる 1955 年ステロイドを治療に使用 Dermatomyositis and polymyositis < 強皮症 > B.C400 年頃 < 皮膚筋炎 多発性筋炎 > 19 世紀頃疾患概念が確立 ヒポクラテスにより厚い皮膚について記載 リウマチ膠原病センター 吉田健志 < シェーグレン症候群 > 1933 年スウェーテ ンの眼科医 Sjögren により発見 < 血管炎 > 20 世紀初頭 結節性多発動脈炎の病名 他血管炎を分類 1939 年 ドイツの病理学者 Wegenerが肉芽腫病変を記載 皮膚筋炎 多発性筋炎の概要 横紋筋を広範に障害する炎症性筋疾患で 対称性の四肢近位筋と頚筋の脱力 ( 下肢 92% 上肢 83% 頚筋 40%) を特徴とし しばしば筋痛を伴う 経過は数か月程度かけて進行することが多い 血液検査では CK アルドラーゼ LDH トランスアミナーゼ上昇 筋電図で筋原性変化 MRI 検査で STIR で筋に高信号域 皮膚筋炎 (DM) では特徴的な皮疹 ( ヘリオトロープ疹 ゴットロン徴候 V ネック徴候 ショールサイン ) [ 疫学 ] 男女比 1:3 本邦の推定患者数 約 17000 人 有病率 3~5 人 /10 万人 多発性筋炎 (PM) と皮膚筋炎 (DM) はほぼ同数 発症ピークは 5~9 歳と 50 歳台の 2 峰性 小児は約 2 割 皮膚筋炎の約 3 割に悪性腫瘍を合併 主な死因悪性腫瘍 間質性肺炎 感染症 < 皮膚筋炎と多発性筋炎の違い > < 診断基準 > 悪性腫瘍の合併率 DM: 約 25% PM: 約 6% DM の方がやや予後が悪い 全体では 10 年生存率約 80% 筋病理組織から PM は CD8T 細胞 DM は CD4T 細胞が関与とされる 感度は良いが特異度は高くなく 除外に努めることが重要 1
鑑別疾患 < 神経内科領域 > 成人発症筋ジストロフィー封入体筋炎 筋の障害 脊髄性筋萎縮症 神経の障害筋委縮性側索硬化症 (ALS) ギランバレー症候群を始めとした自己免疫性ニューロパチー糖尿病 ポルフィリア 重症筋無力症 Lambert-Eaton 症候群 など 神経筋接合部 家族歴を聴取 筋原性では近位筋優位 神経原性では遠位筋優位 神経原性では振戦 (tremor) や筋束性収縮 (fasciculation) 臨床では Gowers 徴候が近位筋障害に有用 一般医には見分けはなかなか困難 神経内科診察の上筋電図を 鑑別疾患 2 < 内分泌 電解質異常 > 低カリウム血症高 低カルシウム血症低マグネシウム血症甲状腺機能低下症クッシング症候群 < 薬剤性 > アルコール イソトレチノン クロロキン コカイン プロピオチルウラシル プロカインアミド スタチン フィブラート アザチオプリン抗精神病薬 < 感染症 > ウイルス :EBV HIV インフルエンザ コクサッキー細菌 : ブドウ球菌 連鎖球菌 クロストリジウム [ 封入体筋炎について ] 50 歳以上で発症する慢性進行型の筋疾患 典型的には左右非対称の筋力低下が 大腿四頭筋 手指 手屈筋に見られる 左右対称性に筋力低下を来す場合 PM との見分けが難しい CK は 2000 は越えず 多くは 3 桁までの上昇に留まる 5~10 年で車椅子生活となり 嚥下筋が侵されることもある ステロイドを始めとした免疫抑制療法は無効 確定診断には筋生検 ( 封入体の確認 筋内鞘への炎症細胞浸潤 ) 鑑別の為にも あとで困らないためにも 筋生検が重要 続いて 皮膚筋炎にみられる皮疹です ヘリオトロープ疹 眼瞼部の紫紅色浮腫状紅斑 Gottron 丘疹 手指伸側にみられる落屑を伴う隆起性病変 Gottron 徴候 手指以外に関節伸側 ( 肘 膝等 ) 日本人では褐色や紅色が多い 2
逆 Gottron 徴候 関節屈側に認めるゴットロン徴候 ヘリオトロープ疹 ゴットロン 逆ゴットロン徴候はケブネル現象の一種 関節や瞼など皮膚の刺激の多いところで生じる V ネックサイン 前胸部にみられる紅斑 ショールサイン 肩 ~ 上背にみられる紅斑 爪周囲紅斑 爪上皮出血点 多発性筋炎 皮膚筋炎でみられる合併症 肺病変 間質性肺炎が約 50% に合併 NSIP パターン UIP パターンが多い ADM では DAD 型を呈しステロイド抵抗性の難治性間質性肺炎 DM では縦隔気腫も多い 肺病変がしばしば生命予後を決める <61 歳女性 DM > RA 合併抗 ARS 抗体 + 治療前 ステロイド導入 4 カ月後 3
<73 歳女性 DM ARS+ 縦隔気腫 > 心病変 心筋が侵されることによる心不全や 心膜炎を呈することもある 刺激伝道系の線維化による不整脈も高頻度で認める 初診時 悪性腫瘍 50 歳以上の DM では 悪性腫瘍は 5 割との報告もある 日本では胃癌がトップ 他 肺癌 子宮癌 乳癌 卵巣癌の頻度が高い PSL 内服 3 週間後 悪性腫瘍合併例では原疾患の病性と筋炎の病性がパラレルに動くことが多い 難治症例が多い 嚥下障害 嚥下筋が侵されることによる しばしばステロイド抵抗性 嗄声や誤嚥性肺炎を呈する症例も多い <73 歳男性 DM 肺小細胞癌 > 2 週間の経過で皮疹 筋力低下 歩行困難 嚥下機能障害 CK:65000 多発性筋炎 皮膚筋炎でみられる自己抗体について 抗 Jo-1 抗体で満足していませんか?? PM/DM の 80% 近くに特異的自己抗体が検出される 自己抗体の種類により特徴がある 抗 ARS 抗体 ( 抗 Jo-1 含む ) 約 30% 抗 MDA-5 抗体 DMの10~20% 抗 TIF1-γ 抗体 DMの10~20% 抗 SRP 抗体 3% 抗 HMGCR 抗体 6% 抗 Mi-2 抗体 5~10% 抗 SAE 抗体 3% 他 NXP2 抗体 抗 Ku 抗体などなど 抗 ARS 抗体 (Jo-1 含む ) aminoacyl trna synthetase ARS は trna に対応するアミノ酸を結合させる反応を触媒する酵素 ARS はアミノ酸の種類ごとに 20 種類ある 現在見つかっている抗 ARS 抗体は 8 種類 (Jo-1 PL-7 PL-12 EJ OJ KS Ha ZO) 抗 ARS 抗体症候群と呼ばれる特徴的なスペクトラムを呈する 長らく筋炎関連抗体で保険収載されているものは抗 Jo-1 抗体のみであったが 2014 年に抗 ARS 抗体キットが保険収載された 測定が出来るのは Jo-1 PL-7 PL-12 EJ KS の 5 種類 ARS 抗体の中に抗 Jo-1 抗体が含まれる 抗 ARS 抗体でスクリーニングし 抗 ARS 抗体が陽性であれば Jo-1 を追加すると良い 4
抗 ARS 抗体症候群 間質性肺炎 発熱 レイノー症状 多関節炎 機械工の手を高頻度に認める 特に間質性肺炎は 8 割以上合併 ステロイド反応性は良好だが 再発も多い 機械工の手 (Mechanic's hands) 母指尺側面 他の指の橈側面に出現する角化性紅斑 Rheumatology 2014 53 (3): 397-405 抗 MDA5 抗体 ( 抗 CADM-140 抗体 ) 抗 TIF1-γ 抗体 対応抗原の MDA5 は Ⅰ 型インターフェロンを誘導し ウイルス感染防御に重要な蛋白である 皮膚筋炎の皮疹を呈するが 筋炎症状はない or ごく軽微臨床的に amiopathicdm(adm) または clinically-amyopathicdm(cadm) と呼ばれる 予後不良 治療抵抗性の急速進行性間質性肺炎が特徴的数日 ~ 数週間で急速に進行 4 割程度の高死亡率 他 発熱 関節炎の頻度が高く 皮膚症状では潰瘍形成も特徴的とされる TIF-1 腫瘍化の促進あるいは抑制に関与? 成人 DM に認めた場合 悪性腫瘍合併率が高率 (50~75%) 小児 DM にも高い頻度で認めるが 小児では悪性腫瘍は認めない 間質性肺炎合併は少ない ヘリオトロープ ゴットロン V ネック ショールサインなど典型的皮疹が高率 まもなく検査キットが保険収載される予定 2015 年 9 月 抗体検査キットが製造販売承認 抗 SRP 抗体 PM に見出され 筋病理所見が壊死性筋炎を特徴とする 治療抵抗性の筋炎 発熱 レイノー現象 間質性肺炎は少ない 抗 Mi-2 抗体 皮膚筋炎の典型的な皮疹を呈する 治療反応性良好 悪性腫瘍 間質性肺炎合併は少ない まもなく 検査キットが保険収載される予定 抗 HMGCR 抗体 スタチンの標的部位 HMG-CoA 還元酵素に対する抗体 この抗体陽性例の 60% 強でスタチン使用歴あり スタチン誘発性の自己免疫性筋炎 病理組織 : 壊死性筋炎 初期治療 1. まずはステロイド (PSL 換算で 1mg/kg) 悪性腫瘍合併 DM は 状態が待てるなら腫瘍の治療を優先 2. 難治例 (CK 上昇の遷延 筋力低下の悪化 ) 合併症のコントロール困難例 間質性肺炎の悪化嚥下機能障害の進行 では早期に免疫抑制剤 ( アザチオプリン メトトレキサート タクロリムス等 ) の追加 3. さらに抵抗性の場合 大量ガンマグロブリン (IVIG) 療法 約 4 週間 PSL1mg/kg で治療した後 PSL 減量に入る 5
~Take Home Message~ 筋力低下 CK 上昇をみたら 甲状腺 電解質 薬剤はチェック 間質性肺炎の有無 皮膚症状の有無 近位筋か遠位筋かなどから鑑別を絞り込む 特徴的な皮疹 ( ヘリオトロープ ゴットロン ) をみたら 筋力低下のエピソード CK 上昇 間質性肺炎ないかチェック CADM に注意 皮膚筋炎を疑ったら 腫瘍随伴症候群の可能性があり徹底した悪性検索を ご清聴ありがとうございました! PM/DM には様々な自己抗体が検出され 自己抗体の種類により性格が異なる 抗 ARS 抗体に続き 抗 MDA5 抗体がまもなく当院で測定可能になる予定です TIF1-γ Mi-2 も控えています 6