Microsoft Word - 【最終】リリース様式別紙2_河岡エボラ _2 - ak-1-1-2

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なお本研究は 東京大学 米国ウィスコンシン大学 国立感染症研究所 米国スクリプス研 究所 米国農務省 ニュージーランドオークランド大学 日本中央競馬会が共同で行ったもの です 本研究成果は 日本医療研究開発機構 (AMED) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 文部科学省新学術領

ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

エマージングウイルスの ワクチン 東京大学医科学研究所 河岡義裕

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

インフルエンザ、鳥インフルエンザと新型インフルエンザの違い

Microsoft Word 「ERATO河岡先生(東大)」原稿(確定版:解禁あり)-1

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Research 2 Vol.81, No.12013

BSL4の稼働合意について

があるため 一ヶ月以上の間隔をおいて単品投与することが基本である そこで 呼吸器疾患を引き起こすパラインフルエンザウイルスの感染防御抗原を発現する組み換えインフルエンザウイルスを作製することによりウイルス性呼吸器疾患に対する多価生ワクチンの開発を試みた インフルエンザウイルスのNAは感染防御にはそれ

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて


ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

生物時計の安定性の秘密を解明

リサーチ Press Release 報道関係者各位 2014 年 8 月 20 日 ( 水 ) アウンコンサルティング株式会社 世界 40 カ国の検索キーワードトレンド調査 2014 年 7 月人気キーワードランキングトップ 10 日本のトレンドは 日本の夏 ならでは致死率 90% の エボラ出血

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スライド 1

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後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

長期/島本1

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

日本脳炎不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した日本脳炎ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称日本脳炎ウイル

2. 定期接種ンの 接種方法等について ( 表 2) ンの 種類 1 歳未満 生 BCG MR 麻疹風疹 接種回数接種方法接種回数 1 回上腕外側のほぼ中央部に菅針を用いて2か所に圧刺 ( 経皮接種 ) 1 期は1 歳以上 2 歳未満 2 期は5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間 ( 年

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詳細を明らかにするとともに ウイルスの病原性に関する研究も アジアで流行中のH5N1 鳥インフルエンザウイルスならびにその他のウイルスについても展開する予定である インフルエンザウイルス ゲノムのパッケージング シグナルの知見に基づくインフルエンザワクチンならびにワクチンベクターの開発 1. 次世代

Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

革新的がん治療薬の実用化を目指した非臨床研究 ( 厚生労働科学研究 ) に採択 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療 再生医学分野の小戝健一郎教授の 難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究 が 平成 24 年度の厚生労働科学研究費補助金 ( 難病 がん等の疾患

た遺伝子を切断し修復時に微小なエラーを生じさせて機能を破壊するノックアウトと 外部か ら任意の配列を挿入して事前設計した通りの機能を与えるノックインに大別される 外来遺伝 子をもった動物の作成や遺伝子治療には後者の技術が必要である しかし 動物胚への遺伝子ノックインには マイクロインジェクション法

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

なお, 世間では HPV ワクチンのことを 子宮頸がんワクチン と呼んでいるが, ワクチンの性格上, 本稿では HPV ワクチン ( 正確には HPV 感染症予防ワクチン ) と表現する HPV 感染と子宮頸がんとの関係子宮頸がんの原因のひとつとして,HPV 感染による細胞の癌化が証明されている H

針刺し切創発生時の対応

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

馬ロタウイルス感染症 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した馬ロタウイルス (A 群 G3 型 ) を同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化し アジュバント

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

0 歳 0カ月 乳幼児の予防接種スケジュール ( 例 : その 1) 同時接種を希望するが 1 回に受ける数は 2 種類以下を希望する場合 ( 受診回数 : インフルエンザを除いて 18 回 ) 1 歳 カ月 日本小児科学会推奨案 ジフテリア 百日咳 破傷風混合ワクチン生ワクチン別の種類のワクチンを

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

スライド 1

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Slide 1

PowerPoint プレゼンテーション

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

平成14年度研究報告

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情報提供の例

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1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL


小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

新技術説明会 様式例

系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点 正常な脳では 神経細胞が適切な相手と適切な数と強さの結合 ( シナプス ) を作り 機能的な神経回路が作られています このような機能的神経回路は 生まれた時に完成しているので はなく 生後の発達過程において必要なシナプスが残り不要なシナプス

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

1 ジカウイルス感染症の認知度 問 1 あなたは, ジカウイルス感染症, いわゆるジカ熱を知っていますか この中から 1 つだけお答えください どのような病気か詳しく知っている 9.1% どのような病気かある程度知っている 44.9% 名前だけ知っているが, どのような病気かは知らない 37.7%

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

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新しいエボラワクチンの開発に成功 ワクチンの有効性をサルで証明 1. 発表者 : 河岡義裕 ( 東京大学医科学研究所感染 免疫部門ウイルス感染分野 教授 ) 2. 発表のポイント : 新しいエボラウイルス ( 注 1) ワクチンを開発し 霊長類において 本ワクチン の有効性を示した 本ワクチンは エボラウイルスの遺伝子の一部を欠損した変異エボラウイルスを 基に作製しているため 安全性が高く ワクチン効果が高い 未だにエボラ出血熱に対する治療法や予防法は確立されていないので 本ワクチンが エボラ出血熱の制圧に向けた大きな一歩となることが期待される 3. 発表概要 : 東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らの研究グループは 新しいエボラウイルスワクチ ンを開発し 霊長類において 本ワクチンが有効であることを示しました 現在 世界保健機関 (WHO) の報告によれば 西アフリカ諸国で流行しているエボラ出 血熱 ( 注 1) によって 感染者数が 24,000 人以上 犠牲者数は 10,194 人にのぼっています しかし 未だにエボラウイルスに有効なワクチンの開発には至っておらず 現在 臨床試験 が行われている 3 種類のエボラウイルスワクチンにもその効果や安全性の問題が懸念されて います そのため 新しいエボラウイルスワクチンを開発してエボラ出血熱の予防および治 療方法を確立することは最重要課題です 本研究グループは 安全性の高いエボラワクチンを開発するため エボラウイルスの遺伝子の一部を欠損した変異エボラウイルスを作製しました この変異ウイルスは 特定の細胞 においては増殖できますが 普通の細胞では増えることはできません 本研究グループは 開発したエボラウイルスワクチンの安全性をさらに高めるため この変異エボラウイルスを 過酸化水素水で不活化しワクチンをサルに接種してその効果を評価しました その結果 こ のエボラウイルスワクチンを接種したサルは その後 致死量のエボラウイルスを接種され ても エボラウイルスに感染しないことが明らかとなりました 本研究成果は エボラ出血熱の制圧に向けた大きな一歩となることが期待されます 本研究成果は 2015 年 3 月 26 日 ( 米国東部時間 ) に 米国科学雑誌 Science のオンラ イン速報で公開されます なお 本研究は 東京大学 米国ウイスコンシン大学 米国国立衛生研究所 (NIH) と共 同で行ったものです

4. 発表内容 : < 研究の背景と経緯 > エボラ出血熱は エボラウイルスに感染することによって起きる感染症です ( 図 1) 致死率が非常に高く 効果的な治療薬やワクチンがないため 公衆衛生上非常に深刻な問題を 引き起こしています 西アフリカ諸国におけるエボラ出血熱の流行は 2014 年 3 月のギニア での集団発生が引き金となり 住民の国境を越える移動により隣国へと流行が拡大していま す 2015 年 3 月 15 日現在の世界保健機関 (WHO) の報告によると エボラ出血熱の患者数 は 24,000 人を超えており そのうち 10,194 人が死亡しています 欧米諸国でも 流行地から 帰国した医療関係者を中心に 数名の感染者が出ています 日本でも 流行地からの帰国者 の中に エボラ出血熱の疑いのある人が出ています 現在までのところ陽性患者は出ていま せんが 日本にもエボラウイルスが入ってくる可能性は大いにあります そのため エボラ 出血熱の予防 治療方法を確立することは急務です 現在 3 種類のエボラワクチンの臨床試験が行われていますが その効果や安全性の問題 が懸念されています そのため 安全性が高く効果的な新規エボラワクチンの開発が望まれ ています < 研究の内容 > これまでに河岡教授らの研究グループは エボラウイルスの増殖に必須の遺伝子 VP30 を 欠損した変異エボラウイルス ( 以後 エボラ ΔVP30 ウイルス ( 注 2) と呼ぶ ) を 人工的 に作製していました このエボラ ΔVP30 ウイルスは 通常の細胞では増えませんが VP30 蛋白質を発現する人工細胞で効率良く増殖することができます ( 図 2) したがって エボ ラ ΔVP30 ウイルスは 特定の人工細胞でしか増えられないため安全であり 現在臨床試験が 行われている他のエボラワクチンと異なり エボラ ΔVP30 ウイルスは エボラウイルスを構 成するほぼ全てのウイルス蛋白質を有するため より高いワクチン効果が期待されます 本研究グループは エボラ ΔVP30 ウイルスのワクチンとしての効果を調べるために 1000 万個のエボラ ΔVP30 ウイルスをサルに筋肉内接種し 4 週間後に 致死量のエボラウイルス を感染させました エボラ ΔVP30 ウイルスを接種していないサルが全て死亡したのに対して エボラ ΔVP30 ウイルスを接種したサルは生き残りました これは エボラ ΔVP30 ウイルスの 接種によって エボラウイルスに対する免疫がつくことを示すものです エボラ ΔVP30 ウイルスをワクチンとして使用し 人に接種することを想定する場合 安全 性に配慮して 生きているウイルスの毒性を弱めた生ワクチンではなく その毒性を取り除 いた不活化ワクチンであることが望まれます より安全なエボラウイルスワクチンを開発す るため 本研究グループは エボラ ΔVP30 ウイルスの不活化の方法について 1) ガンマ線 を用いた方法と 2) 過酸化水素水を用いた方法を検討し エボラ ΔVP30 ウイルスのワクチ ン効果の評価試験を行いました 不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスのワクチンを 2 回接種し たサルに 致死量の野生型エボラウイルスを感染させたところ ワクチン接種をしなかった グループのサルとガンマ線で不活化したエボラウイルスのワクチンを接種したグループのサ ルは全て死亡しました それに対して 過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスの ワクチンを 2 回接種したグループのサルは全て生き残り またエボラ出血熱の臨床症状も示しませんでした ( 図 3) 以上の結果から 過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスを免疫したサルは エ ボラウイルス感染を防御することが分かりました

< 今後の展開 > 本研究結果によって 過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスは 安全性が高く 効果的な新規エボラワクチンとして有望であることが示されました 本ワクチンによって 現在臨床試験が行われている 3 種類のエボラワクチンの問題点が解決できる可能性が高く エボラ制圧に向けて大きな一歩となることが期待されます 今後は 少ない回数の免疫でも十分なワクチン効果を発揮できるよう 不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスの免疫原性を高める方法を模索します また 早期実用化を目指して 人に 接種できる安全性基準を満たしたワクチン製造や臨床試験等を進めていく予定です 5. 発表雑誌 : 雑誌名 : Science ( 米国東部時間 3 月 26 日のオンライン版 ) 論文タイトル :An ebola whole virus vaccine is protective in nonhuman primates. 著者 :Andrea Marzi, Peter Halfmann, Lindsay Hill-Batorski, Frederike Feldmann, W. Lesley Shupert, Gabriele Neumann, Heinz Feldmann and Yoshihiro Kawaoka* 6. 注意事項 : 日本時間 3 月 27 日 ( 金 ) 午前 3 時 ( 米国東部時間 :3 月 26 日 ( 木 ) 午後 2 時 ) 以前の 公表は禁じられています 7. 問い合わせ先 : 河岡義裕 ( カワオカヨシヒロ ) 東京大学医科学研究所感染 免疫部門ウイルス感染分野教授 108-8639 東京都港区白金台 4-6-1 Tel:03-5449-5310 Fax:03-5449-5408 E-mail:kawaoka@ims.u-tokyo.ac.jp ( 海外出張中のため 電話は取り次ぐ形となります なるべくメールでお問い合わせください ) 8. 用語解説 : ( 注 1) エボラウイルス エボラ出血熱エボラ出血熱は エボラウイルスが感染することによって起こる感染症です 感染したヒトまたは動物の血液などの体液と直接接触した場合に感染する危険があります 致死率が高く さらに未だに確立された予防 治療法がないため 公衆衛生上深刻な問題となっています ウイルス粒子はひも状の形態をしています ( 図 1) エボラウイルスの遺伝子は 図 2に示すように 核蛋白質 (NP) ポリメラーゼ補因子 (VP35) 主要マトリックス蛋白質 (VP40) ウイルス粒子表面糖蛋白質 (GP) 転写活性化因子 (VP30) マイナーマトリックス蛋白質 (VP24) RNA 依存性 RNAポリメラーゼ (L) といったウイルス蛋白質をコードしています 感染した細胞内では 新しく複製されたウイルス遺伝子や 数種類のウイルス蛋白質が集合して 子孫ウイルスが産生されます

注2 エボラ ΔVP30 ウイルス エボラウイルス遺伝子がコードする転写活性化因子 VP30 は エボラウイルスの増殖に必須の蛋 白質です エボラ ΔVP30 ウイルスは VP30 をコードする遺伝子を欠損させることによって 人工 的に作製した遺伝子組換えウイルスです この変異ウイルスは 普通の細胞では増えませんが VP30 蛋白質を発現する人工細胞では効率良く増殖することができます 9 添付資料 図1 エボラウイルスの電子顕微鏡写真 左図 細胞に感染させた エボラウイルスの形状を走査型顕微鏡にて観察しました 写真中の バーは 2μm マイクロメートル の大きさを示します 右図 透過型電子顕微鏡で撮影したエ ボラウイルス 電子顕微鏡写真提供 東京大学医科学研究所 野田岳志 准教授

図 2: 増殖性を抑えたエボラ VP30 ウイルスエボラ ΔVP30 ウイルスとは 人工的に作製した エボラウイルスの増殖に必須な VP30 遺伝子を欠損した変異エボラウイルスです このエボラ ΔVP30 ウイルスは 通常の細胞では増えませんが VP30 蛋白質を発現する人工細胞で効率良く増殖することができます

図 3: 不活化したエボラ VP30 ウイルスの サルにおけるワクチン効果の検証過酸化水素水で不活化したエボラ ΔVP30 ウイルスワクチンを サルに 2 回接種しました その後 致死量の野生型エボラウイルスを感染させたところ ワクチンを接種しなかったグループ ( コントロール群 ) のサルは全て死亡しましたが ワクチンを接種したグループのサルは全て生き残りました