高度先進技術研修資料 平成 18 年 11 月 7 日 めん用小麦研究チーム ( 栽培生理担当 ) 高品質麦生産のための栽培生産技術 高品質な麦を生産するためには 品質特性の良い品種を用いるだけでなく 土壌管理 施肥 病害虫防除 適期収穫などの栽培管理も重要となる ここでは小麦の栽培法の概略と各地域の新しい栽培技術や研究成果について解説する 1. 小麦栽培の概略 我が国では小麦は畑地でも水田でも作られる 畑作では輪作体系を組んで作付け順序 を守ることが重要である 一方 水田の栽培では湿害が発生しないような管理が必要となる 小麦の栽培では 土壌の ph は 6 ~ 7 が適し 酸性が強い圃場では石灰剤を施用する また 小麦はリン酸の肥効が高い作物であり 黒ボク土などの火山灰土壌ではリン酸資材を投入して土壌改良を図る 施肥は 基肥として窒素 4 ~ 8 kg/10a リン酸及びカリ 6 ~ 9kg/10a程度を施用する 播種様式には条播 全面全層播 ドリル播などがある 条播は条間 50 ~ 70 cm ですじ状に播種するのが古くからの慣行となっている 全面全層播は 土壌表面に種子と肥料を散布した後にロータリにより土を撹拌し 深さ 0 ~ 8 cm 程の土壌に種子を混ぜ込むようにするものである ドリル播は機械播きによる密条播で 条間 10 ~ 30 cm ですじ状に播種していく方法であり 多収を得やすい 播種量は 5 ~ 10 kg/10a であるが 条播では播種量を少なく 全面全層播では多くし ドリル播ではその中間の量とする 踏圧と土入れは 冬期から春期にかけて行う我が国独特の管理作業で 倒伏の防止に効果があるほか 寒冷地では凍上害の防止 温暖地では過剰生育の防止に効果がある 除草は 播種後に土壌処理剤を散布するほか 生育期に広葉雑草のみを枯死させる選択性除草剤を散布することが多い また 追肥として窒素を冬期の分げつ期や春先の茎立期と出穂前にそれぞれ 2 kg/10a 程度施用する なお 高品質化のために子実のタンパク質含有率を高める場合は 出穂前後に硫安や尿素で窒素追肥を行うほか 尿素液の葉面散布を行う場合もあるが 生育診断や葉色診断により適切な窒素追肥量を決めることが望ましい 登熟期が梅雨の時期に当たる我が国では その時期に病害の発生に対する注意が必要であり うどん粉病や赤かび病の防除を行う 特に 赤かび病に罹病したコムギ種子にはカビ毒であるデオキシニバレノール ( DON) が生ずることから十分な注意が必要である 収穫に用いるコンバインには自脱型 普通型 汎用型があり 圃場の規模や他作物の作業との関係で種類が選ばれる 乾燥施設で種子の水分を 12.5% 以下まで乾燥させ 2 ~ 2.4 mm 程度の目の篩を通して調製する -1-
2. 地域別の栽培法 1) 北海道における栽培と新技術 北海道には全国の小麦の約 6 割の栽培がある 道東の十勝 網走地域などの畑作 地帯を中心に秋播き小麦の栽培が行われている 以前は ホロシリコムギ が多かったが 品質の良い チホクコムギ に置き換わり さらに収量性 耐病性 耐穂発芽性に優れる ホクシン に代わってきた 北海道における秋播き小麦の播種時期は 9 月下旬 収穫期は翌年の 8 月上旬が中心である また 北海道では 一部に春播き栽培が行われ パン用の小麦品種が栽培されている 春播きパン用の小麦品種は 以前は ハルユタカ が主体であったが 品質の良い 春よ恋 に置き換わってきた 春播き小麦は生育期間が短いために収量が少ないことが問題であるが 最近 春播き小麦を根雪前に播種して長い生育期間を確保する栽培法が開発された ( 佐藤ら 2002) 初冬にあたる根雪前に播種し 積雪下で発芽させて融雪と同時に生育を開始させて生育期間を長くするというこの技術は 1930 年代にも試みられたが 当時は越冬後の生育が不安定で失敗に終わったという その後 1991 年から道立中央農試と道立上川農試において播種期 播種量 種子コーティングによる出芽抑制法及び施肥法について研究が行われた その結果 平年の根雪始の 20 ~ 25 日前を播種早限と考え 11 月上旬から中旬に播種することとして技術が完成した さらに 撥水し物理的に吸水を防ぐ種子コーティング剤を用いることでさらに 5 日程度の早播きが可能となることなどを明らかにした 播種量は春播栽培に比べて密植となる約 18 kg/10a が良く 窒素施肥は越冬前には不要で 越冬直後にやや多めの量 ( 9 ~ 10kg/10a) を施用し 止葉期に 6 kg/10a を上限として追肥を行う なお 初冬播き栽培では生育ステージが早まるため ムギキモグリバエの加害時期からはずれ 春播栽培で必須であったこの害虫の防除が不要になる ( 佐藤ら 2002) また 出穂が早まることにより赤かび病の発生も少なくなることが分かってきた 2005 年現在 道内の多雪地帯である石狩 空知 上川管内を中心に 1,445ha( 春播き小麦品種作付面積の 20 %) で普及している 2) 東北地域における栽培と新技術東北地方では 岩手県や青森県で小麦の栽培が多く 品種は古くから栽培されている ナンブコムギ や小麦粉のアミロース含有率が低く うどんの粘弾性が優れる ネバリゴシ が多い 播種期は 10 月上旬 収穫期は 7 月上中旬が中心となる 東北地方では 水稲や大豆等の夏作物の収穫作業と秋播き小麦の播種作業が競合する そこで 岩手県農業研究センターは 夏作物の収穫作業終了の根雪前に秋播性小麦を播種し 越冬後から生育を開始させる冬期播種栽培技術を開発した ( 荻内ら 2006) すなわち 岩手県では 12 月上旬以降に播種し 播種量は密植となる 350 粒 /m 2 ( 15 kg/10a 程度 ) が冬期播種栽培法として適当であるとした また 窒素施肥法は播種と同時に全量を基肥として土中に側条施用し 施肥量は慣行の秋播き栽培と同等から 25% 増の窒素成分で 8~ 10 kg/10a とする これにより 夏作物との作業競合を防ぎつつ 慣行の -2-
秋播栽培並の収量や品質が得られる また この技術では 播種後すぐに低温となるために秋期におけるコムギ縞萎縮病ウイルスの感染が妨げられ 発病が著しく減少することも明らかにされている ( 荻内ら 2006) この技術は 2005 年現在 岩手県内の 120 ha で普及しており 特にコムギ縞萎縮病の発病が多い県南地域の花北管内及び一関管内において普及が進んでいる 3) 関東以西における栽培と新技術 関東から九州にかけては 昭和 19 年に育成された 農林 61 号 が広く栽培されてき た 九州では シロガネコムギ などに置き換えられてきたが 関東では現在でも広く栽培されている 小麦は関東以西では大豆などの夏畑作物との組み合わせで転作作物として用いられるほか 水稲との 2毛作栽培も行われている 播種期は 11 月 収穫期は 6 月上中旬が中心である 最近 九州沖縄農業研究センターで秋播性の小麦品種 イワイノダイチ の早播き栽培法が開発された ( 福嶌ら 2004) 九州など暖地の小麦作においては 雨害の回避や水稲作との作期競合の回避の観点から収穫の早期化が強く求められてきた 品種改良による早生化は着実に進んできたが それに加えて早播き栽培を行えば成熟期が早期化する ところが 通常 暖地で栽培されている春播性の小麦品種を早播き栽培すると茎立ちや幼穂分化が早くなり 冬期や早春に幼穂凍死による凍霜害が発生して減収する そこで 九州沖縄農業研究センターでは 秋播性の早生品種を早播きすることにより 凍霜害を回避しつつ収穫時期を早くする技術を開発した すなわち イワイノダイチ を用い 播種期を通常よりも 2 ~ 3 週間早い 11 月上旬とすると成熟期が標準播き栽培に比べて 5 日程度早まり 凍霜害の発生も見られないため 収量は標準播き栽培と同等 2 になるという なお この栽培法では 80 粒 /m ( 3 kg/10a 程度 ) の疎植が標準的な播種 2 量 160 粒 /m ( 6 kg/10a 程度 ) よりも耐倒伏性が強くなるため適している また 施肥は追肥に重点を置くことが望ましい ( 福嶌ら 2004) なお 2005 年産の イワイノダイチ の栽培面積は 1,395 ha である 4) 後期追肥に関する研究成果小麦の栽培においては 生育の初期に窒素を追肥すれば茎数や収量が増え 生育の後期に追肥すれば千粒重や子実のタンパク質含有率が上がる このため 生育量の調整は生育初期の追肥で行い 子実の内容成分の調整は後期の追肥で行うことになる 出穂前後 1 ~ 2 週間の窒素追肥は子実のタンパク質含有率の増加に効果的であるため 作業上可能な場合は導入される 近畿中国四国農業研究センターの研究で 出穂 10 日後の遅い窒素追肥で千粒重と容積重の値が大きくなり タンパク質含有率が追肥窒素 1 kg/10a あたり約 0.5 % 増加することが明らかになった また 収量性の高い品種では追肥窒素 1 kg/10a あたり約 0.4 % 程度になり 子実収量の高い年には追肥窒素 1 kg/10a あたりの増加率が低くなることから 収量生育状況に応じて追肥量を増減させる必要がある なお 子実のタンパク質含有率が高くなると小麦粉の色相や粒の外観が悪くなることもあるが これは後期に追肥する場合に限って起こる現象ではないらしい また 後期追肥により小麦粉の製粉性や加工適性が悪くなることはないと考えられる ( 高 -3-
山ら 2004) 5) 湿害に関する研究成果水田転換畑での小麦栽培では しばしば湿害が発生して問題になる 耐湿性は大麦に比べて小麦のほうが強いが 耐湿性の品種間差異は小さく 大麦 小麦ともに実用的な耐湿性品種は育成されていない 一方 小麦の根系の深さには明確な品種間差異が認められ 関東以西の品種は浅い根系を作り 北日本の品種や海外の品種は深い根系を作ることが明らかになっている そこで 東北農業研究センターで小麦の根系分布と耐湿性の関係を調べたところ 浅い根系を作る小麦系統は 深い根系を作る小麦系統に比べて耐湿性が若干強いという結果が得られた これは 過湿により地下水位が上昇するような場合でも 根系の浅い品種は土壌の表面近くに根が多く 低酸素による障害が少なくなるためではないかと考えられている ( 小柳ら 2004) なお その調査の中で 1 枚の水田転換畑でも圃場内の土壌表面には凹凸がみられ 低くなっている部分で湿害が発生しやすいことが確認されている このことは 転換畑においては暗渠や明渠を主とする圃場の排水対策に加え 圃場の均平化も湿害対策となることを示している 引用文献 1) 佐藤導謙 沢口敦史 南忠 土屋俊雄 佐々木高行 ( 2002) 春播コムギの初冬播き栽培技術の開発 北農 69: 258-261. 2) 荻内謙吾 勝部和則 及川一也 岩舘康哉 ( 2006) 秋播性コムギの冬期播種栽培によるコムギ縞萎縮病の発病抑止効果 日作紀 75: 281-288. 3) 福嶌陽 楠田宰 古畑昌巳 中野洋 ( 2004) 早播きした秋播性コムギ イワイノダイチ における後期重点施肥が生育 収量に及ぼす影響 日作紀 73: 163-168. 4) 高山敏之 長嶺敬 石川直幸 田谷省三 ( 2004) コムギにおける出穂 10 日後追肥の効果 日作紀 73: 157-162. 5) 小柳敦史 乙部 ( 桐渕 ) 千雅子 柳澤貴司 三浦重典 小林浩幸 村中聡 ( 2004) 根系の深さが異なるコムギ実験系統群の過湿な水田圃場における生育と収量 日作紀 73: 300-308. -4-
2006.11.8 業界の要望する小麦品質と それに対応した小麦新品種の育成 1. はじめに 平成 10 作物研究所 小麦研究グループ 藤田 雅也 年 5 月に 新たな麦政策大綱 が決定され 従来の全量政府買い入れから民間 流通へと移行するのに伴い 実需者の要望する品種とのミスマッチを解消し ニーズに応えた 売れる麦づくり がいっそう求められるようになった これに対応して 試験研究機関では技術的な面から問題点を解決するために 高品質麦類品種の開発などを柱としたプロジェクト研究が進められ 新品種が数多く育成されてきた さらに 平成 17 年 3 月には 新たな食料 農業 農村基本計画 が閣議決定され 麦などの品目別に行われていた施策が平成 19 年産から品目横断的な経営安定対策へ転換することや 平成 27 年度における国産小麦の生産努力目標 86 万トンが示された これを受けて平成 17 年 11 月に食料 農業 農村政策審議会では 政府買い入れの廃止や 実需者ニーズに応じた新品種開発の一層の推進などの 今後の麦政策のあり方 について意見を出している 今回の研修では 製粉業界の要望する小麦品質に対して 小麦育種の現場ではどのように対応してきているのか また 実験棟において製めん試験を行うなど 実際の品質試験の体験を予定している 2. 製粉業界の要望する小麦品質と 業界による品質評価 ( 資料 1) 製粉協会技術委員会が 毎年全国の出回り麦について品質検定し 小冊子を作成している また 今年度産から 普及が見込まれる新品種についても製粉協会による品質検定が始まる 3. ランク区分における品質評価基準の見直し 農産物検査規格の一部改正等 ( 資料 2) 平成 19 年産麦から 日本めん用小麦の品質評価基準について見直しが行われ 基準値や許容値の数字が若干厳しくなる また 農産物検査規格が一部改正される 4. 国産小麦の品種開発と今後の取り組み ( 資料 3) 平成 11 年以降のプロジェクトの成果を交え 品種開発と今後の取り組みを紹介する 5. 小麦育種試験における品質検定 ( 資料 4)+ 実験棟見学現在の小麦育種試験における品質検定試験は 30 年以上前に定められた検定法に基づいており アミロース含量など若干の項目の増加と 測定機器の進歩はあるが 基本的には製粉業界も含め 世界共通の機器を使って実施されている 6. 小麦のめん適性評価法 ( 資料 5)+ 実習うどんについては 旧食糧庁方式による食味試験が行われる 7. 品質管理の展開 ( フォーリングナンバー 容積重 資料 6)
細胞壁 細胞膜 ミトコンドリア 粗面小胞体 ゴルジ装置 グリアジン 核 輸送小胞体 DNA m R N A アミロプラスト ( 白色体 ) 澱粉顆粒 グルテニン 液胞 細胞壁 細胞膜 澱粉合成関連酵素の合成 G-6-P ADPG ADPG アミロプラスト ( 白色体 ) 澱粉顆粒 核 酵素 S S SBE I S A DNA m R N A G B SS (Wx protein) アミロペクチン アミロース 澱粉顆粒
表 1 国内外の硬質小麦品種系統のピュロインドリン遺伝子型 Pina 欠失変異 (Pina-D1b Pina-D1b) 赤豊後 伊東小麦 ハルユタカ 春よ恋 ニシノカオリ 北見春 42 号 北見春 50 号 北見春 52 号 北見春 57 号 Cranbrook Falcon Gutha Glenlea Grandin Machete Stoa YacoraRojo VictoriaINTA Wialki Wildcad Wilgovne PinbG46S 変異 (Pinb-D1b Pinb-D1b) 本野小麦 ムカコムギ タクネコムギ ハルミノリ 春のあけばの はるひので アオバコムギ トヨホコムギ コユキコムギ ホロシリコムギ 北見春 16 号 北見春 48 号 北見春 49 号 北見春 53 号 北見春 56 号 北見春 58 号 北見春 61 号 北見春 62 号 北海 257 号 勝系 12 号 勝系 14 号 勝系 33 号 東北 205 号 東北 214 号 東北 215 号 農林 8 号 農林 42 号 鴻巣 25 号 関系 w364 関東 87 号 関東 12 3 号 中国 140 号 中国 152 号 西海 186 号 ACMajestic Aroona Banks Blade Cocamba Condor Cook Dagger Garnet Halberd Hope Katepwa KS831957 Laura Leader Marquis Meering Mida Monopol Neepawa Oxley Pilot Robin Schomburgk Spear Sunco 農大 16 農大 311 石家荘 54 石家荘 63 石家荘 407 PinbL60P 変異 (Pinb-D1c Pinb-D1c) 北見春 51 号 北見春 63 号 農林 35 号 農林 67 号 農林 75 号 ハルヒカリ ミクニ
図 1 小麦胚乳組織の硬軟質性の支配要因 Pin-a 蛋白質マトリックス Pin-b 澱粉顆粒 細胞壁 澱粉顆粒 硬質化 Pin-a 胚乳細胞 澱粉顆粒 Pin-b 軟質化 澱粉顆粒 Pin-a および Pin-b は澱粉顆粒と蛋白質マトリックスとの接着性を弱める
硬質小麦の粉 ふるい 細胞塊 凝集塊 凝集塊がふるい目より大きくなる 凝集塊 ふすま画分へ 軟質小麦の粉 図 2 澱粉間および澱粉と細胞間の架橋液膜を介して凝集塊が生まれる 小麦の硬軟質性とふるい抜け性 小麦粉 65 60 55 硬質小麦 r = -0.795 製粉歩留 (%) 50 45 40 軟質小麦 r = -0.747 35 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 不溶性アラヒ ノキシラン (%) 図 3 製粉歩留と不溶性アラビノキシラン含量との関係
(a) 通常のグルテンの網目構造 (b) 特異型低分子グルテニンを含むグルテンの網目構造 高分子グルテニン 低分子グルテニン 正常型 特異型 図 5 グルテン網目構造モデル
タイプ I グループ 1, 2 I I 3, 4 I II I V V 5 6, 7, 8, 9 10 V I 11, 12 N 末反復配列 C 末保存領域 図 1. 低分子グルテニンの分類. : 分子間結合に関与するシステインの分布. : タイプI II に特異的に存在する疎水性領域
平成 18 年度 高度先進技術研修 資料 (2006.11.7) 実需者ニーズの品質と生産増に対応した大麦研究と品種育成 作物研究所大麦研究関東サブチーム Ⅰ. 背景 平成 12 年に策定された 食料 農業 農村基本計画 において 麦類の自給率向上がうたわれ 大 裸麦では合わせて 35 万トンの生産努力目標が示された しかし近年の生産量は 20 万トン前後に推移し伸び悩んでおり 平成 27 年度を目標とした新基本計画でも同様の 35 万トンが設定された 一方で新たな麦政策大綱のもと 平成 12 年産より民間流通に移行し 生産増のためには実需者評価への対応が不可避となった 生産サイドでは実需者ニーズの把握と それに応えうる品質を備えた麦を生産する必要があり 高品質品種の導入と その品種の能力を発揮できる栽培技術の確立が重要である 大麦の品種育成機関においても 平成 11 年より開始された 麦緊急開発プロ から 21 世紀プロ ブランドニッポン プロジェクトにより 高品質で栽培性の優れた多収品種育成を加速化してきた 平成 18 年度からは新たに 加工プロ 新需要麦 によりその取り組みを継続して推進する Ⅱ. 実需者による大麦品質評価と要望 1. 主食用主食用の大麦 ( 押麦 切断麦などの麦飯用 ) の需要は約 9 万トンで ほぼ 100% 国産麦で賄われ 並性の六条皮麦が多く用いられている 精白 ( 搗精 精麦 ) されて利用されるため 胚乳が軟質で白度が高く 白度低下の要因となる硬質粒の混入が少ないこと 条溝が浅く薄いこと 穀皮が薄く除去されやすいこと 搗精中に砕けにくいこと 切断麦用には 腹溝に沿って切断しやすいようやや長めの粒型で 粘りがあって割れにくいことが求められている 実需においては 試験用小型搗精機 ( 佐竹社製 TM-05 型 ) を用いてロット毎に搗精試験が行われることが多い シュンライ ファイバースノウ等の実需者評価が高い ミノリムギも評価が高く 精麦用品種の主力をなしていたが 近年は気象変動等により細麦や硬質粒の発生等により品質低下が発生するようになり 北陸地域ではファイバースノウにほぼ置き換わった 表大麦の精麦品質評価 項目 内 容 ( 原麦形質 ) 水分千粒重容積重粒厚分布 硝子率 粒横断面を観察し 硝子状の硬質粒の割合を求める 硝子率の高いものは白度が低下するため 好まれない 蛋白質含量 蛋白質含量が高いものは硬質粒が多く 白度が低下する傾向がある 硬度差 圧砕値から挫折値を差し引いた値で粒の粘り強さ ( 割れにくさ ) を示す 異物混入率 雑草や大麦以外の穀粒の混入率 ( 精麦品質 ) 搗精時間 一定歩留 (55% 等 ) に達するまでの時間 短いことが望ましい 精麦白度 一定歩留 (55% 等 ) の精麦の色の白さ 白いほど優れている 精麦色相 白度測定だけでは色相は評価できないので 明るさ (L*) 赤み(a*) 黄色み(b*) を測定し 色相の指標値とする 腹溝の幅 精麦の幅に占める腹溝の幅 腹溝が太く目立つものは好まれない 砕粒率 搗精中に砕けたり 割れたりした粒の割合で 多いものは不適とされる
2. 麦茶 麦茶用には約 6 万トンの需要があり このうち国産麦使用率は 5 割である 近年 清涼飲料水のベ ースとしての需要が増える一方 麦茶粉が コーヒー代用物 として海外から安価で輸入されており 業界では危機意識を持っている 麦茶用の品質としては 粒が大きすぎず 粒揃いが良いこと 蛋白質含量が高いこと 麦茶にしたときに香りが高く 味にコクとまろみがあるものが求められているが 実需者による品質評価は 試験焙煎と官能評価が主である 茨城県産カシマムギ マサカドムギ 埼玉県産すずかぜの評価が高く ミノリムギ等の食用品種も用いられている 表大麦の麦茶品質評価 項目 内 容 蛋白質含量 蛋白質が多いものほど 焙煎香が強いとされている 焙煎時間 原料投入から焙煎終了までに要する時間 膨化程度 一定重量あたりの麦茶粒体積 加工適性 焙煎時に 作業性を見ながら最良 ~ 不適の指標で達観判定する 均一に焙煎され 固まりが生じにくいものがよいとされる 麦茶粒の形状焙煎粒について 最良 ~ 不適の指標で達観判定する 麦茶粒色 色彩色差計で 明るさ (L*) を測定し 麦茶粒色の指標とする 麦茶粉色 麦茶粒を粉砕し 色彩色差計で 明るさ (L*) を測定する 麦茶粒内部までの煎り具合の指標となる また粉末麦茶では色の出具合に関係するため重要な指標である 麦茶液の色 抽出した麦茶液について 440( または420)nmの吸光度を測定する 味 コクやまろみ等を官能試験により判定 香り 香りの強さ よしあしを官能試験により判定 3. ビールビール用大麦の需要は78 万トンで 国産麦使用率は5% ほどである 発芽勢が高く 蛋白質含量が適正であることやエキス分が高いことが求められているが ビール用大麦の品質については研究が進んでおり 品質分析項目は多岐にわたる 品種育成の過程において ビール業界 指定試験地 関係団体等が参画するビール大麦育種打合せ会のもとで実施される合同比較試験により 統一の基準により品質評価が行われている 各品種はビール会社との契約に基づき作付されているが 原料買い入れ時の品質基準 ( 水分 発芽勢や蛋白質含量等 ) は厳しい 表ビール大麦の品質評価 項目 内 容 ( 原麦形質 ) 水分千粒重 整粒歩合 2.5mm 以上の粒の割合 細麦発生率 2.2mm 未満の粒の割合 蛋白質含量 10~11% が適正値とされる 発芽勢 20 で72 時間以内の発芽率 製麦上 発芽が旺盛で斉一であることが望ましいとされる 水感受性 水分過多のときの発芽勢の低下程度 水感受性の高いものはよくない 浸漬時間 浸漬開始から発芽行程に移すまでの浸水時間 浸漬度 浸漬行程から発芽行程に移したときの水分量 ( 麦芽品質 ) 水分 麦芽水分量 色度 麦汁の色度 エキス量 麦汁の比重から換算表を用いて麦汁エキスを算出する 全窒素 麦芽に含まれる窒素含量 可溶性窒素 可溶性窒素の含量 酵母の生育に必要 コールバッハ数 ( 可溶性窒素 / 全窒素 ) 100 全窒素当たりのジアスター 麦芽のジアスターゼ力を麦芽全窒素で除した値 エキス収量 ( 麦芽収量率 / 麦芽エキス ) 100 最終発酵度 麦汁に酵母を加えて発酵させた後のエキスの減少率
表ビール大麦評価配点方法 区分 項目 ( 測定値範囲 ) ウエイ 10 5 0-5 ト 麦芽 EX 麦芽エキス (%) 2 ( 分析値 -79) 2 84 81.5 79 76.5 TP 粗蛋白質 (%) 1 (1)10.0~11.0 (1)10.0~11.0 10.0~11.0 - - - (2)11.0<X (2)12.5-(X-10.5) 0.2 11.0 12.0 13.0 14.0 (3)X<10.0 (3)12.5-(10.5-X) 0.2 10.0 9.0 8.0 7.0 SN 可溶性窒素 (%) 1 (1)0.7~0.8 (1)0.7~0.8 0.7~0.8 - - - (2)0.8<X (2)40 3-(X-0.75) 0.015 0.8 0.875 0.95 1.03 (3)X<0.7 (3)40 3-(0.75-X) 0.015 0.7 0.625 0.55 0.48 KI コールバッハ数 (%) 1 (1)40.0~45.0 (1)40.0~45.0 40.0~45.0 - - - (2)45<X (2)15-(X-42.5) 0.5 45.0 47.5 50.0 52.5 (3)X<40 (3)15-(42.5-X) 0.5 40.0 37.5 35.0 32.5 DP ジアスターゼ力 2 ( 分析値 -100) 15 250 175 100 25 AAL 最終発酵度 (%) 1 ( 分析値 -78) 1 88 83 78 73 β グルカン (mg/l) 0 計算式 (10 点満点 ) 大麦水感受性 (%) 0 評点 =( 点数 ウエイト ) 総和 (8 分の 10) ( 但し 小数点以下 2 位を四捨五入する ) 備考 : 麦芽の他の分析値 製麦特性は参考に供する 計算例 ( ウエイトは含まず ) 足切りとして使用する 但し具体的な数値は設定せず その都度 標準品種との比較から判断する 同上 水感受性の測定は 9 月下旬とする 4. 焼酎焼酎用は約 20 万トンの需要があるが 国産麦使用率は1 割に満たない 焼酎原料用には澱粉価が高いことから二条大麦が主に用いられているが これまで焼酎醸造適性の評価は十分には行われていなかった 近年 大手メーカーでは一次加工適性 ( 精麦品質 ) 以外に 製麹性や少量仕込みによる発酵試験が行われるようになっている 焼酎用としてはニシノチカラやニシノホシ等の食用二条大麦品種以外に ビール会社の買い取り対象とならなかったビール用品種も用いられているが 一次加工を請け負う精麦業界ではビール落ち品種の評価は低い 表大麦の焼酎醸造適性評価 項目 内 容 澱粉含量 澱粉の加水分解により生成した糖がアルコール発酵の基質となるので 多いほどよいとされる 蛋白質含量 蛋白質が多すぎるものは相対的に澱粉が少なくなるので好ましくないとされる 吸水性 原料となる精麦の吸水速度 適正な範囲にあることが望ましく 吸水速度の速すぎるものは吸水量の制御が難しくなる 麹酵素活性 大麦麹から産生されるα-アミラーゼ等の糖化酵素の活性 麹消化性 大麦麹消化後の増加液量 麹の消化程度を示す 高いほうがよい 麹糖化性 澱粉の分解による糖分の増加量 麹の酵素力を示し 高いほうがよい 麹総合力価 麹の消化性 糖化性で示される 高いほど製麹性が優れる 酸度 小仕込み試験を行ってクエン酸の生成量を調べるもので 酸度が低いと雑菌に汚染されやすい アミノ酸度 小仕込み試験を行ってアミノ酸の生成量を調べる エタノール生成量小仕込み試験を行ってエタノール生成量を調べる 香気成分 焼酎によい香りを与える酢酸イソアミル等の生成量を調べる
5. 味噌味噌用には約 4 万トンの需要があり このうち国産麦使用率は8 割程度である 味噌原料用としてはイチバンボシなどの裸麦が多く用いられているが 品質に関しては原料麦の搗精程度 吸水性や蒸煮条件 麹の酵素力価等の研究事例があるものの メーカーにおいては一般的ではない Ⅲ. 高品質品種の育成 1. 東北地方における高品質品種の育成東北地方では シュンライ ミノリムギ等が作付されている 以前は飼料用のべんけいむぎの作付が多かったが 平成 15 年度より飼料麦制度が廃止されたため食用品種への転換が求められた 平成 15 年に東北農業研究センターで育成されたシンジュボシは ミノリムギに比べて早生で外観品質が優れ ポリフェノール含量がやや低く加熱後白度も優れるという特性を持つ 2. 北陸地方向け高品質品種の育成北陸産のミノリムギは実需者評価が良く 精麦用品種の主力を担っていたが 近年は気象変動等により細麦や硬質粒が発生し 品質低下が指摘されるようになった 平成 13 年に長野県農事試験場で育成されたファイバースノウは ミノリムギよりも早生で耐寒雪生 耐倒伏性に優れている上 実需者評価が高く ミノリムギに替わって急速に作付が増え 現在では六条大麦作付シェアの 50% 近く (1 位 ) を占めている 3. 関東地方における高品質品種の育成 1) 早生 高品質のシルキースノウ近年 関東地域では精麦用としての評価が高いシュンライの作付が主流であるが 関東ではシュンライの熟期はやや遅く 雨害の恐れがある上 縞萎縮病に対する抵抗性を持たない このため これらの問題を解決する品種が求められている 平成 17 年度に長野県農事試験場で育成された 早生で縞萎縮病に強く品質も優れるシルキースノウは 今後の普及が期待されている 2) 縞萎縮病 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 型ウイルスに抵抗性をもつ高品質ビール大麦品種スカイゴールデンとサチホゴールデンこれまでの主なビール大麦は 縞萎縮病に対して抵抗性遺伝子 rym5 のみを持つ ミカモゴールデン等の品種が多く作付されてきた その結果 関東地域の一部において新たにⅢ 型ウイルスが増え それらの品種においても罹病化し 収量減や整粒歩合の低下が問題となってきた 栃木県農業試験場栃木分場で平成 13 年に育成されたスカイゴールデン 平成 17 年に育成されたサチホゴールデンは Ⅲ 型ウイルスに対する抵抗性遺伝子 rym3 を併せ持つとともに優れたビール醸造適性も備えた品種である 3) 短強稈多収で整粒歩合が優れ 縞萎縮病抵抗性の麦茶用品種さやかぜ麦茶用品種としては 茨城県のカシマムギ マサカドムギに次いで 埼玉県等ですずかぜが栽培されているが すずかぜは縞萎縮病に弱く 整粒歩合が低いため収量の年次変動が大きいため 業界からの評価が低くなった 平成 15 年に作物研究所で育成されたさやかぜは これらの問題点が解消さ
れており 麦茶適性がある品種である また 精麦品質にも優れ 実需からは押麦用としての評価も得られている 4. 四国地方における高品質品種育成四国地方では 平成 4 年に育成されたイチバンボシ ( 四国農業試験場育成 ) がこれまでの品種に替わって広く普及したが 生産者側からは耐倒伏性の強化と 整粒歩合の向上が要望されてきた 近畿中国四国農業研究センターで平成 13 年に育成されたマンネンボシは 耐倒伏性に優れ 整粒歩合が高く イチバンボシと同等の精麦品質を持ち 愛媛県での普及が進んでいる また 平成 17 年に育成されたトヨノカゼは多収で 軟質で精麦品質が良く 味噌加工適性が優れている 大分県で地元限定材料の供給を強く望む味噌業者の要望により 地元オリジナル品種 としての生産が推進されている 5. 九州地方における高品質品種の育成 1) 焼酎醸造適性に優れる食用二条大麦品種ニシノホシ九州地域で作付される食用二条大麦の主な用途は焼酎醸造用で 主力品種はニシノチカラ ( 昭和 62 年 九州農業試験場育成 ) であるが 実需者より精麦品質の安定化が要望されてきた 平成 9 年に九州農業試験場で育成されたニシノホシは ニシノチカラに比べて精麦品質が優れ 且つ安定しており 焼酎醸造適性にも優れている 2) 焼酎用品種はるしずく福岡県 熊本県で焼酎醸造用として採用されたはるしずくは 縞萎縮病 うどんこ病抵抗性を有し 早生 短強稈 多収で 精麦品質が優れるとともに輸入原料並みに焼酎醸造適性が優れる品種で 平成 17 年に福岡県農業総合試験場で育成された 3) 早生で麦芽品質の優れるビール大麦品種ほうしゅん しゅんれい九州地方のビール大麦では これまであまぎ二条や アサカゴールド ミハルゴールドが作付されてきた しかし あまぎ二条は縞萎縮病 アサカゴールドはうどんこ病に弱く ミハルゴールドはやや熟期が遅い また あまぎ二条やアサカゴールドは 凸腹粒 側面裂皮粒等の被害粒発生による外観品質の低下が問題となっており 早生で病害に強く 被害粒の発生が少ない 麦芽品質の優れた品種の早急な育成が要望されていた そこで福岡県農業総合試験場では平成 11 年に 早生で縞萎縮病 うどんこ病に強く 被害粒の発生が少ないほうしゅんを半数体育種により育成した また平成 16 年には 被害粒の発生が極めて少ない 早生で麦芽品質の優れるしゅんれいを育成した Ⅳ. 高品質安定化に向けた育種の取り組み 1. 畑作地帯における高精麦白度系統の育成関東 東山地域の畑での麦類の作付面積は約 7200ha に達し 北海道を除けば顕著に多い 畑で作付した場合 品種による差はあっても多少とも硬質粒の発生が多くなる これは 畑栽培では穀粒が高蛋白質化しやすいことによるが 作物研究所で土壌の質と硬質粒の発生について調べた結果 遺伝
的に低蛋白質である系統でも畑では硬質粒が増加したが 100.0 しわ澱粉粒 (fra) という遺伝的形質をもつ系統では土質にかかわらず安定した粉状質を示すことを明らかにした 現在 この遺伝子を導入した品種育成を進めているところである 育種による対応以外では 高蛋白質が求められる麦茶用品種を畑で作付する方策が考えられる 畑栽培における硝子率 (%) 80.0 60.0 40.0 20.0 うるち性 うるち性 (fra) もち性 2. 赤かび病抵抗性系統の育成近年 麦の赤かび毒について国内における安全性基準が 1.1ppm( 暫定基準 ) と定められるなど 赤かび病対策は極めて重要な問題となっている しかし麦は赤かび 0.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 水田栽培における硝子率 (%) 図 1 水田及び畑栽培における粒質 ( 硝子率 ) の変動 病に対して免疫的抵抗性遺伝資源が無く 抵抗性育種が困難であった 大麦では二条品種に比べ六条品種の抵抗性が弱いことから 条性等が抵抗性に関与している可能性が示唆されていた 作物研究所では 各種穂形質に関する準同質遺伝子系統 (NIL) を用いて穂形質が抵抗性に及ぼす影響を解析したところ 開花期感染においては条性による抵抗性の差は小さく 閉花受粉性 が感染回避に有効であることを明らかにした このことから六条大麦でも閉花受粉性にすることによって 比較的赤かび病に強い系統の育成が可能であることが示された 生理的抵抗性因子の研究と合わせて 赤かび病に強い品種の育成が進められている 表 3 各種穂形質に関するNILsにおける 赤かび病抵抗性検定の罹病性スコア 切り穂検定 ポット検定 穂形質 2003 年度 2004 年度 2003 年度 2004 年度 n スコア1 スコア2 n スコア1 スコア2 n スコア1 スコア2 n スコア1 スコア2 二条渦性閉花 24 0.4 a 3.7 a 11 0.1 a 1.9 a 6 0.0 a 1.5 a 5 0.2 a 2.6 a 六条渦性閉花 7 1.0 b 4.8 b 36 0.5 a 2.6 ab - - - 5 0.3 a 3.5 ab ミサトゴールデン 二条並性閉花 12 0.6 ab 5.6 bc 11 0.7 ab 6.5 c 12 0.3 ab 1.7 a 11 1.0 a 2.8 ab 六条並性閉花 30 1.3 b 6.3 c 71 1.9 c 6.6 c 15 0.7 b 3.3 b 5 2.2 b 5.2 bc 二条渦性開花 0 - - 0 - - - - - - - - 六条渦性開花 0 - - 3 2.0 bcd 4.0 b - - - - - - 二条並性開花 15 2.3 c 6.3 cd 5 3.1 de 6.3 c 15 0.8 b 2.6 ab 5 1.1 a 3.3 ab 六条並性開花 22 3.3 d 6.9 d 31 3.4 e 6.9 c - - - 5 2.7 b 6.7 c 罹病性スコアは0~9の10 階級評価 スコア1 スコア2は それぞれ接種後 1 週間目 2 週間目の罹病性スコア nは反復数 年度は播種年度 英字の同一文字間は5% 水準で有意差なし ( 最小有意差法による ) 3. 少量搗精試験による高白度系統選抜大麦の品質検定では 通常 試料 150~200g を用い 小型搗精機で搗精試験が行われる そのため 種子量の少ない初期世代での選抜には不向きで 作業も比較的煩雑であるため 試験点数も限られる 中央農業総合研究センター 北陸研究センターでは 初期世代から効率的に高白度系統を選抜するため 卓上型小型精米試験機 ( ケット社製パーレスト ) を用いて 10g の少量搗精を行い 色彩色差計で白度を測定する簡易選抜法を開発した この方法では 個体レベルの評価が可能で 精麦白度の高い系統の早期選抜が期待される
4. 麦芽品質に関する遺伝解析栃木県農業試験場栃木分場では 麦芽品質の高いビール大麦品種育成のため β-グルカンの簡易測定法の開発や 貯蔵蛋白質と醸造品質との関係の解析 麦芽品質に関する遺伝解析や簡易選抜法の開発が行われている これらの一連の研究により 麦芽の澱粉分解能力の指標となるジアスターゼ力は原麦硬度と高い相関があり SKCS 硬度計により高ジアスターゼ系統の簡易選抜が可能であること 高 α-アミラーゼ特性は 高ジアスターゼ力 低麦汁 β-グルカンなどの好ましい麦芽特性と関係があること等が明らかにされた またα-アミラーゼ活性に関する QTL 解析により 1H と5H 染色体上に有意な QTL があることが明らかになった 5. 被害粒耐性の選抜西南暖地におけるビール麦では 穀皮の側面が避ける側面裂皮粒や 腹溝部分が膨らみ胚乳内部が露出する凸腹粒 穀皮が剥がれる剥皮粒等の被害粒が多発し 外観品質を大きく低下させることがある 福岡県農業総合試験場のこれまでの研究で 側面裂皮粒は出穂前の内外頴の発育不良 凸腹粒は登熟期の降雨が関係し それぞれ品種間差異があることが明らかにされた そこで効率的な選抜法として 側面裂皮粒は早播して節間身長期 ~ 出穂期に遮光する方法 凸腹粒は登熟後期に散水する方法 剥皮粒は試験用小型脱穀機による4 回脱穀検定法を開発し それぞれ検定 選抜が行われている その結果 高品質で被害粒発生の少ないほうしゅんやしゅんれいが育成された 6. 褐変しにくい系統の育成大麦利用上の問題として 加熱調理後の褐変があげられる 加熱調理に伴う褐変は 大麦粒に含まれるポリフェノール類の酸化によるもので ポリフェノールの少ない品種を育成すれば 褐変を抑え 大麦への忌避感を減らすことができる
近畿中国四国農業研究センターでは ポリフェノール含量には品種間差異があり ポリフェノール 含量と褐変程度に相関があることが明らかにした また 褐変程度の低い品種を効率的に育成するため 大麦粉 1g を懸濁液とし その加熱後色相を測定して褐変程度を評価する方法を確立している 各育成地ではプロアントシアニジンというポリフェノール成分が少ない大麦系統の育成を進めており 西海皮 65 号等 ( 九州沖縄農業研究センター ) 等が育成されている プロアントシアニジン欠失系統ではほとんど褐変が見られず 長期の保存においても外観色が変化しにくいことが明らかになり レトルト食品への加工等 新たな用途開発が期待される 一方 ポリフェノール類は 抗菌作用を有する生体防御物質の一つであるため プロアントシアニジン欠失系統の病害抵抗性について 準同質遺伝子系統を用いた解析を行っている 赤かび病にニシノホシニシノホシニシノホシニシノホシニシノホシ (ant13) (ant17) (ant18) (ant28) ついては プロアントシアニジン欠失系統が プロアントシアニジン欠失 NILsにおける加熱後褐変程度特に抵抗性が弱くなることはなかった の相違 表 3 ニシノホシとant 遺伝子に関するNILsの赤かび病罹病性スコア (2005 年度 ) 品種 系統 開条閉切り穂検定ポット検定世代性花性 n 1 週目 2 週目 n 1 週目 2 週目 ニシノホシ 2 c P 5 0.9 3.9 5 0.5 2.0 N-ant13 2 c BC4F3 5 0.6 5.1 5 0.0 1.3 N-ant17 2 c BC5F3 5 0.4 3.9 5 0.2 1.6 N-ant18 2 c BC5F3 5 1.2 4.4 5 0.2 1.7 N-ant28 2 c BC4F3 5 0.6 6.1 * 5 0.5 2.8 N-ant22 2 c BC3F3 3 0.3 2.7 3 0.3 0.8 N-ant25 2 c BC3F3 3 0.3 4.2 3 1.3 3.7 N-ant26 2 - BC3F3 3 0.3 5.2 3 0.3 1.7 N-ant29 2 c BC3F3 3 0.8 6.5 3 0.2 1.5 N-ant21 2 - BC1F3 3 1.8 5.3 3 0.5 2.8 N-ant27 2 c BC1F3 3 0.0 4.3 3 0.7 2.7 N-ant30 2 - BC1F3 3 2.3 7.2 * 3 0.7 2.8 ant13-152 2 + D 3 2.5 * 4.7 3 1.2 2.5 Galant(ant17) 2 + D 3 2.7 * 4.8 3 2.2 * 4.5 * ant18-162 2 + D 3 2.0 4.8 3 1.8 * 3.7 ant28-494 2 + D 3 2.3 * 3.3 3 2.0 * 3.8 ** * ** は それぞれ5% 1% 水準でニシノホシと有意差有り (t- 検定 : 片側検定 ) 白度 W(L*a*b*) 65 60 55 50 45 40 35 ニシノホシ ニシノホシ (ant13) ニシノホシ (ant17) 炊飯直後白度保温 12 時間後白度炊飯直後 a* 値保温 12 時間後 a* 値 ニシノホシ (ant18) ニシノホシ (ant28) 図 1. プロアントシアニジン欠失 NILs における炊飯麦の加熱後色相の相違 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 a* 値 7. 機能性成分の向上大麦には他の穀物に比べ 食物繊維が多く含まれ 血中コレステロール低減作用のあるβ-グルカンが多い β-グルカン含量には品種間差異があり 0% から多いものでは 10% を越えるものまである 現在 高 β-グルカン品種の育成が始まっているが 精麦品 1000 質上重要な胚乳の硬軟質とβ-グルカン含量には相関があ β ーグルカン ( うるちるため あまりに含量の多いものはかえって精麦用には適性系統 ) 800 β ーグルカン ( もち性さなくなるほか 食感の低下が予想される このため 高系統 ) 含量のものはβ-グルカン添加物用として 精麦用としては 600 中庸程度のものの利用が考えられる また 糯性品種では β ーク ルカン r=568** 粳性に比べてβ-グルカンが多い上に 炊飯時の食感も良いため 精麦の加工行程上問題点がないことが明らかになれ 400 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 ば食用としての利用が期待できる 含有率 (%) 搗精時間 ( 秒 ) 図 β ーグルカン含有率と搗精時間の相関
表 3 β-グルカン含量に関する育種素材の作出 系統名 育成系譜 β-グルカン含量 (%) 60% 搗精時間 ( 秒 ) 4) ( 二条裸麦 ) 四国裸 84 号 ( 高 β-グルカン )BC3 四国裸 84 号 /Riso M86 1) // 四国裸 84 号 *3 12.8 634 四国裸 84 号 ( 低 β-グルカン )BC3 四国裸 84 号 /Riso M56 2) // 四国裸 84 号 *3 3.0 484 四国裸 84 号 (β-グルカン欠失)bc1 四国裸 84 号 / 泉系 A41 3) // 四国裸 84 号 0.1 485 四国裸 84 号 ( 反復親 比較 ) - 3.9 516 ( 並性六条裸麦 ) 谷系 A6992-4 四国裸 97 号 /Riso M86//Olssal bori 9.1 562 谷系 A6991-2 9.3 606 谷系 A6996-2 9.5 685 谷系 A6995-4 10.2 636 谷系 A6991-5 10.9 575 谷系 A6993-2 11.2 629 谷系 A6996-4 11.4 713 谷系 A6990-4 11.7 677 谷系 A6990-2 13.3 600 イチバンボシ ( 比較 ) - 4.5 483 注 1), 2), 3): それぞれ高 低 β-グルカン β-グルカン欠失の母本を示す 4): 搗精試験は 小型精米器 ( パーレスト ) による Ⅴ. 資料 麦作経営安定資金における大麦のランク区分 主食等用評価項目容積重 基準値 小粒大麦 690g/L 以上はだか麦 840g/L 以上大粒大麦 709g/L 以上 許容値 細麦率小粒大麦 2.2mm( 篩 ) 下に2.0% 以下はだか麦 2.0mm( 篩 ) 下に2.0% 以下 - 大粒大麦 2.5mm( 篩 ) 下に3.0% 以下 白度 小粒大麦 43 以上 ( 基準歩留 :55%) 40 以上 はだか麦 43 以上 ( 基準歩留 :60%) 40 以上 大粒大麦 40 以上 ( 基準歩留 :55%) 37 以上 農産物検査時から1ヶ月経過したサンプル 硝子率 小粒大麦 40% 以下 50% 以下 はだか麦 50% 以下 60% 以下 正常粒率 大粒大麦 80% 以上 (65% 歩留時 ) 70% 以上 1.8mm( 篩 ) 上 ( 砕粒を除く ) 麦茶用評価項目基準値たんぱく Ⅰ 7.5% 以上 9.0% 未満 Ⅱ 9.0% 以上 10.5% 未満 Ⅲ 10.5% 以上細麦率小粒大麦 2.0mm( 篩 ) 下に2.0% 以下大粒大麦 2.2mm( 篩 ) 下に2.0% 以下はだか麦 2.0mm( 篩 ) 下に2.0% 以下 許容値 6.5% 以上 たんぱく Ⅰ は品質評価項目の基準値を 1 つ達成 たんぱく Ⅱ は 2 つ達成 たんぱく Ⅲ は 3 つ達成したものとする - -
平成 18 年度高度先進技術研修資料 (2006.11.7-9) 大麦育種における品質検定 ( 精麦 麦茶 ) 作物研究所大麦研究関東サブチーム Ⅰ. 大麦の精麦品質検定 1. 精麦用大麦に求められる品質食用大麦の主な用途は 焼酎 味噌 麦飯であり いずれも搗精 ( 精白 ) されたもの ( 精麦 ) が用いられるため 搗精に関する品質 ( 精麦品質 ) が重要である その品質として次のような点が求められる 1 粒の形 大きさが揃っており 充実がよいこと 2 穀皮が薄く除去されやすい 腹溝が浅く細いこと 3 歩留の高いこと 4 胚乳部分が軟質で 硬質粒 ( 硝子粒 ) の混入が少なく 白度が高いこと 5 搗精の際 砕粒が少ないこと 2. 育種における精麦品質の検定小型搗精機を用いた試験搗精を行い 搗精に要する時間 精麦白度 砕粒率を調査する 1) 試験用小型搗精機 ( 佐竹社製 TM-05) 円盤状の砥石 ( 粒度 No.36) をモーターで回転させ ( 回転数 1150rpm) 大麦粒を削る仕組みになっている 当研究室では 搗精中に発生する糠を吸引除去できるよう工夫している 搗精は 過不足なく糠を除去する方法 ( 完全搗精法 ) が基本であるが 育種試験においては煩雑であるので 歩留を一定にする方法 ( 歩留一定法 ) で行っている 2) 原料調整粒厚 六条皮 裸麦は 2.2mm 二条皮 裸麦は 2.5mm 以上の整粒に調整する 水分 極端な原麦水分の差は試験結果に影響し 水分過小では搗精中に割れやすい 当チームでは 原麦水分約 12%(11.5~12.4%) になるよう調整している 3) 水分測定穀物水分計 ( 電気伝導度測定方式 ) により搗精直前の水分を測定 4) 搗精整粒 180g について 55%( 裸麦は 60%) 歩留一定搗精を行い 所定の歩留に達する時間を硬軟質性のデータとして記録する 1 回の搗精で 55% 歩留に調整することは煩雑であるので 第一段階として 4 分一定搗精を行い その時点での粒重から残り搗精時間を推定し (55% 歩留になるまでの追加搗精時間は 4 分搗精粒重を独立変数とする一次回帰式で推定できる ) 若干の補正を加えて 55% 歩留まで搗精する
整粒 180g を搗精機に投入 タイマーを用いて4 分間搗精する機械を止め 試料を取り出す 重さを測定する 4 分搗精粒重から 55% 歩留になるまでの追加搗精時間を求める ( 別途推定式から判断する ) 55% 歩留までの時間を計測する目安時間の 30 秒手前で機械を止め 粒重を確認し さらに 55% 歩留に仕上げる 搗精終了 搗精開始からの合計時間を搗精時間として記録する 5) 白度 色相測定白度 光電白度計色相 色彩色差計により明るさ (L*) 赤み(a*) 黄色み(b*) を測定 6) 砕粒率精麦 10g 中の砕粒を目視で選別し その重量比から砕粒率 (%) を求める 7) 精麦の外観品質精麦粒の観察により 以下の項目の評価 ( 分級値 ) を行う 1 腹溝の幅 1: 極狭い 2: 狭い 3: やや狭い 4: 中 5: やや広い 6: 広い 2 粒質 2: 完全な粉状粉質 2: 粉状質 3: やや粉状質 5: 中間質 6: やや硝子質 7: 硝子質 8: 完全な硝子質 3 外観 1: 上の上 2: 上の中 3: 上の下 4: 中の上 5: 中の中 6: 中の下 7: 下の上 8: 下の中 9: 下の下 4 総合評価搗精時間 白度 砕粒率 精麦の外観から総合的に判断する 評価は 外観品質と同じ 9 階級評価による 8) その他の試験項目 1 硝子率 ハインスドルフ式穀粒裁断器で横断した粒断面の観察により硝子質粒の割合を求める 2 穀皮歩合 穀皮を薬品処理により剥皮し その重量比を求める ( 当研究室では実施していない ) 3 蛋白質含有率 原麦及び精麦中の蛋白質含量を測定 4ポリフェノール含有率 原麦及び精麦 ポリフェノールは加熱調理後の褐変の原因物質 5β グルカン含有率 大麦胚乳細胞壁の主要多糖類 食物繊維として有用 胚乳の硬軟質性に影響する ( 研究材料についてのみ測定 ) 6アラビノキシラン含有率 大麦糊粉層 胚乳細胞壁に含まれる多糖類 ( 研究材料についてのみ測定 ) 7 加熱後褐変程度 加熱後及び保温後の色相を測定し 褐変程度を評価 ( 研究材料についてのみ測定 )
Ⅱ. 大麦の加熱後褐変に関する検定 1. 目的高品質大麦の育種が進められた現在 シュンライ ファイバースノウ イチバンボシ ニシノホシなどの品種が育成され 一次加工適性である精麦品質 ( 白度 硬軟質性 ) については かなり向上している しかし 大麦では加熱調理後に褐変するという欠点があり この問題は依然として解決していない 加熱後褐変にはポリフェノールの関与が明らかにされており 加熱後褐変しにくい高品質大麦育種においては 原因物質であるポリフェノール含量の測定と加熱後褐変の評価が重要である 2. ポリフェノール含量の測定 1) プルシアンブルー法による全ポリフェノール測定この方法では 全ポリフェノール含量が測定される メタノール抽出液に フェリシアン化カリウム水溶液と塩化鉄水溶液を混合した発色液を加え 吸光度を測定する 2) バニリン法によるカテキン プロアントシアニジン含量の測定この方法では ポリフェノールの中でもとくに褐変に関与するカテキン プロアントシアニジンの含量が測定できる メタノール抽出液に 塩酸酸性バニリン溶液を加え 吸光度を測定する 3) ジメチルアミノ桂皮アルデヒド (DMACA) 法によるカテキン プロアントシアニジン含量の測定バニリン法同様にカテキン プロアントシアニジンの含量が測定でき こちらのほうが感度が高い 3. 加熱後褐変評価法 1) ペーストによる加熱後褐変評価 55% 歩留 ( 裸麦は 60%) に調整した精麦を粉砕し 精麦粉とする 色彩色差計 ( ミノルタ CM-3500d) のガラスセルに 精麦粉 4g を入れ 蒸留水 8ml を加えてペーストとする アルミ箔でフタをして 電気定温庫等で 90 2 時間加熱し 放冷後 色彩色差計で色相 (L*a*b*) を測定する 2) 炊飯精麦粒の褐変評価 55% 歩留 ( 裸麦は 60%) に調整した精麦に 精麦重量の 2.2 倍容の蒸留水を加え 耐圧ビンに入れて 105 で 2 時間加熱する 炊飯ムラを軽減するため 途中で攪拌するのが望ましい 炊飯終了後 電気定温庫等で 70 ( 一般的な家庭用炊飯機の保温温度 ) で保温する 保温中 数回攪拌する 炊飯直後と保温開始 12 時間後の色相を測定する 1) 2) の方法とも 褐変の指標には 赤みを示す値である a* 値と白度が用いられる なお 大麦の褐変で問題となるのは 加熱直後よりも加熱後の保温による褐変の進行である ペーストによる方法は少量試料での検定に適しているが 保温時の乾燥が大きいため 保温後の色相評価が難しい 保温後の褐変評価には 炊飯精麦粒を用いた方法が適している ただし 粒体であるので 色相測定にあたっては測定ムラを軽減する工夫が必要である 4. 無褐変大麦の育成通常の品種はカテキンやプロアントシアニジンを含み 程度の多少はあっても加熱後に褐変する 一方 これらの成分を含まないプロアントシアニジン欠失大麦の育種が進められており その実用化に向けた研究が進められている プロアントシアニジンの有無は バニリン法で簡単に選抜できる
Ⅲ. 大麦の麦茶品質検定 1. 麦茶用大麦に求められる品質麦茶は 大麦穀粒を焙煎加工したもので 麦茶品質として次のような点が求められる 1 粒が大きすぎず粒揃いがよいこと 2 水分が均一であること 3 蛋白質含有率が高いこと 以上のことから比較的小粒で粒揃いがよく 耐倒伏性が強く多肥栽培が可能な渦性の六条大麦品種が適している 2. 育種における麦茶品質の検定試験焙煎と 官能試験による香味 ( コク 香り ) の評価が主体である 麦茶用試験焙煎器は今のところないので 家庭用コーヒー焙煎器を代用している 1) 家庭用コーヒー焙煎器遠赤外線で加熱し 試料を攪拌しながら焙煎する仕組みになっている 2) 原料調整粒厚 六条皮 裸麦は 2.0mm 二条皮 裸麦は 2.2mm 以上の整粒に調整する 水分 過乾 過湿を避け 試料により極端な差のないようにする 3) 水分測定穀物水分計 ( 電気伝導度測定方式 ) により焙煎直前の水分を測定 4) 焙煎整粒 50g について 焙煎機の焙煎調節ツマミを適度な焙煎程度 ( 焙煎色 ) になるよう設定する 焙煎が完了すると 自動で冷却し 試料が排出される 冷却終了後 直ちに次の試料の焙煎を開始し 焙煎開始から終了までを焙煎時間の参考値 焙煎中の最高温度を焙煎温度とする 整粒 50g を焙煎器に投入 タイマーを用いて時間を計測する一定の焙煎色になるまで焙煎する 加熱終了直後 試料投入口より温度計を差し込み 温度を計測 焙煎終了 焙煎開始から終了までの時間を焙煎時間として記録する
5) 焙煎過程における調査項目 1 焙煎時間焙煎開始から終了までの時間 2 焙煎温度焙煎終了までの試料の最高温度 3 加工適性焙煎過程において 1: 良 2: やや良 3: 並 4: やや劣 5: 劣の5 階級で評価する 6) 麦茶粒に関する調査項目 1 麦茶粒の形状観察による 1: 良 2: やや良 3: 並 4: やや劣 5: 劣の5 階級評価 2 焙煎後体積 3 焙煎後重量 4 膨化程度麦茶粒 100g あたりの体積 (ml) で示す 5 麦茶粒色色彩色差計で測定し 明るさ (L*) で表示 6 麦茶粉色粉砕した麦茶粒について 色彩色差計で測定し 明るさ (L*) で表示 麦茶粒内部までの煎り具合の指標となる 粉末麦茶では 色の出具合に関係するため重要な指標である 7) 麦茶抽出液に関する調査項目麦茶液の作成法 : 麦茶粒 5g を 100 100ml の熱水で 10 分間煮出しする その後室温にて 10 分間放置した後 麦茶液を濾紙で濾過する 途中 煮出し終了直後とその5 分後にびんを振って抽出を促す 冷めたら麦茶液色の測定と官能試験を行う (1) 麦茶液色 1 分光光度計で 440nm の吸光度を測定 2 観察による評価 (1: 淡 ~3: 中 ~5: 濃の5 階級 ) (2) 香味に関する官能評価 1コク味 1: 良 2: やや良 3: 並 4: やや劣 5: 劣の5 階級評価 2 香り 1: 良 2: やや良 3: 並 4: やや劣 5: 劣の5 階級評価 茨城県産カシマムギを比較対照とする ( 評価は3: 並とする ) 100ml の沸騰水を入れたビンを 100 に設定したウォーターバスに置く 麦茶粒 5g をビンに投入して 10 分間煮出しする ビンをウォーターバスから取り出し ビンをよく振って5 分間室温に放置 ビンをもう一度よく振って さらに5 分間放置 麦茶液を濾紙で濾過する 冷めたら麦茶液色の測定 (440nm 吸光度 ) と官能試験を行う