<4D F736F F D208DB893C78CE3835A F18D90817A8DBB89CD90EC94E388C990EC82CC89CD8FB092E189BA82C692E D82CC8F6B8FAC89BB82CC8B408D5C81698F6F895F89CD90EC81469C4196EC816A2E646F63>

Similar documents
2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 千代田概要版 ppt [互換モード]

1. 木津川流域 河道の概要 系名 淀川水系 河川名 木津川 幹川流路延長 99km 流域面積 1,596km 2 八幡水位流量観測所 飯岡水位流量観測所 加茂水位流量観測所 木津川下流 (0K~37.2K) 木津川上流域 ( 笠置より上流 )

1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

【参考資料】中小河川に関する河道計画の技術基準について

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

報告 河川技術論文集, 第 18 巻,2012 年 6 月 日野川河道における土砂管理方策の効果 THE EFFECT OF SEDIMENT MANAGEMENT IN HINO RIVER 川本洋次郎 1 片寄秀樹 1 長谷川勇 1 堀江克也 2 川津幸治 3 Youjiro KAWAMOTO,

河川技術論文集2010

L46.00 新 L L TA R R46.60 KP45.8 KP46.6 造成箇所 KP47.6 造成箇所 KP46.0 造成箇所

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

7 章問題解答 7-1 予習 1. 長方形断面であるため, 断面積 A と潤辺 S は, 水深 h, 水路幅 B を用い以下で表される A = Bh, S = B + 2h 径深 R の算定式に代入すると以下のようになる A Bh h R = = = S B + 2 h 1+ 2( h B) 分母の

Microsoft PowerPoint - 宇治災害2

Microsoft PowerPoint - 【配布用】河川技術流木発表.pptx

<4D F736F F D208BD98B7D92B28DB88EC08E7B95F18D908F915F96788CA42E646F63>

untitled

論文 河川技術論文集, 第 19 巻,2013 年 6 月 音更川における澪筋部の蛇行形状の発達と河岸侵食評価 EVALUATION OF MEANDERING DEVELOPMENT AND BANK EROSION IN OTOFUKE RIVER 旭一岳 1 泉典洋 2 渡邊康玄 3 永多朋紀

3.4.2 モニタリング 巨石付き盛土砂州を用いた河岸防護工の完成後は モニタリングを実施し河岸防護工の効果を 評価し 必要に応じて設計 計画にフィードバックするものとする 効果の把握 解説 モニタリングにより対策工が目的の効果を発揮したか また 機能を維持しているかどうかの監視 評価を行うものとし

Microsoft PowerPoint - 基礎水理シンポ②村上.pptx

472 土木学会論文集 B2 海岸工学 Vol. 66 No 図-1 図-2 西湘海岸の海底形状 1990年 測線 No.3と No.33 における縦断形変化 d50 の水深方向 分布および粒度組成の水深分布 0.425mm 粗砂 mm で覆われている 図-3-5m

Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

22年2月 目次 .indd

22年5月 目次 .indd

Microsoft PowerPoint - 基礎水理シンポ①村上.pptx

™…

i-RIC 3D

Microsoft PowerPoint - ⑪(福井(国))砂礫河原再生事業の現状と対応

ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

Microsoft Word - 005_第4章_工法(作業済)

江の川上流部における治水と環境の調和した 河道断面形に関する評価 平成 23 年 7 月 国土交通省中国地方整備局岡山河川事務所百間川出張所 ( 前 ) 国土交通省中国地方整備局三次河川国道事務所大賀祥一 国土交通省中国地方整備局三次河川国道事務所 中央大学研究開発機構 森脇孝洋 桝井芳樹 福岡捷二

<4D F736F F F696E74202D E9197BF A90EC95D390EC8EA CE8DF488C42E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

<4D F736F F F696E74202D20819C81798D828DE38DC58F4992B290AE817A91E63689F A835E838A F959489EF816994B C5816A2E707

6. 現況堤防の安全性に関する検討方法および条件 6.1 浸透問題に関する検討方法および条件 検討方法 現況堤防の安全性に関する検討は 河川堤防の構造検討の手引き( 平成 14 年 7 月 ): 財団法人国土技術研究センター に準拠して実施する 安全性の照査 1) 堤防のモデル化 (1)

<4D F736F F D20819B322D302D318E9197BF AD8DF489EF8B C8E862E646F63>

土木学会論文集の完全版下投稿用

国土技術政策総合研究所 研究資料

現行計画 ( 淀川水系河川整備計画 ): 川上ダム案 治水計画の概要 事業中の川上ダムを完成させて 戦後最大の洪水を 中下流部では ( 大臣管理区間 ) 島ヶ原地点の流量 3,000m 3 /s に対して 川上ダムで 200m 3 /s を調節し 調節後の 2,800m 3 /s を上野遊水地や河道

国土技術政策総合研究所 研究資料

かつて海の底にあった大阪では 川が縦横無尽に走っていた 大阪はかつては海底 海面が後退してからは 上流からの土砂の堆積により沖積平野が形成 河川は脈流しており 水利用 舟運に適した川沿いの街では度々浸水被害が発生 約 7000 年 ~6000 年前 縄文時代前期前半 800~1700 年ごろの大阪平

河道の特徴とその動態を知るために

水中の河床地形の面的計測とその活用方策について 続報 3 観測データの処理および加工 2k 河床標高データの作成 計測時水位から測深データを差し引いて河床標高を算出し 測線ごとに繋ぎ合わせ m 2 に 点の密度で 河床高の三 km 付近より上流 直線区間で河床は平坦 交互砂州が確認できる 次元座標値

2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

.....u..

H-ADCPの有効計測範囲決定法の提案

図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

資料4 検討対象水域の水質予測結果について

<4D F736F F D2091E E8FDB C588ECE926E816A2E646F63>

阿賀野川 早出川 阿賀野川平面図 国管理区間 附図 -2

新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川洪水浸水想定区域図 ( 計画規模 ) (1) この図は 新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川の水位周知区間について 水防法に基づき 計画降雨により浸水が想定される区域 浸水した場合に想定される水深を表示した図面です (2) この洪水浸水想定区域図は 平成

水情報国土の経緯 H13 H14 H15 H16 H17 H18 情報国土河川定期縦横断図水H データ管理センター立ち上げ 河川局長通達 データ管理センター搭載 連携の検討 H16.2サブシステム立ち上げ データ管理センターサブシステム川の防災情報 水文水質データベース 水情報国土デー

<4D F736F F F696E74202D E9197BF C C192A582C689DB91E881698B EC816A2E707074>

Transcription:

報告 河川技術論文集,, 第 23 巻,17,17 年 6 月 砂河川斐伊川の河床低下, 低水路幅の縮小化と是正のための今後の対応 RIVER MANAGEMENT FOR MITIGATING BED DEGRADATION AND CHANNEL WIDTHS REDUCTION IN THE SANDY HII RIVER 廣野太志 1 柴田亮 2 福岡捷二 3 後藤岳久 4 Futoshi HIRONO, Ryo SHIBATA, Shoji FUKUOKA and Takahisa GOTOH 1 国土交通省中国地方整備局河川部河川計画課計画第二係長 ( 730-8530 広島市中区上八丁堀 6-30) 2 正会員国土交通省中国地方整備局出雲河川事務所長 ( 693-0023 出雲市塩冶有原町 5-1) 3 フェロー中央大学研究開発機構機構教授 ( 112-8551 東京都文京区春日 1-13-27) 4 正会員中央大学研究開発機構機構助教 ( 112-8551 東京都文京区春日 1-13-27) In the sandy Hii River, sediment supplies from the upper basin have been decreasing due to constructions of check dams. The sediment transport in the Hii River occurs during not only the flood but also the ordinary discharge because of small and uniform sand composing the river bed. Therefore, river bed degradation and channel widths reduction downstream from the Igaya groundsill have developed due to non-equilibrium sediment transports at the groundsill during the ordinary discharges and small scale floods. We proposed proper shapes of the groundsill and river cross-section for mitigating the river bed degradations and channel widths reductions by using the numerical simulation model for long-term bed topographic changes in the river. Key Words : sandy river, river bed degradation, channel widths reduction, river improvement technique 1. 背景 斐伊川流域では江戸時代から たたら製鉄 が盛んであり, 山肌を削り土砂を川に流し, 原料となる砂鉄を採取する 鉄穴流し が大規模に行われたため, 下流域に多量の土砂が堆積し, 河床を構成する砂層厚は約 m にも達する天井川となった. 斐伊川の河床材料は 1~2mm 程度のほぼ均一な砂で構成され, 下流部の河道は網状の流路を形成しており, 平水時でも澪筋部で土砂移動が生じやすい 1) ( 写真 -1). 図 -1 は, 斐伊川 12.4k における限界掃流力に対する掃流力の比と河床高, 平水流量相当時 (39m 3 /s) の水位を示しており, 斐伊川では平水時においても澪筋付近で土砂が移動していることが分かる. 過去から斐伊川下流域の土砂堆積による河道の流下能力不足は慢性的な課題であり, 昭和 年から貯砂のための堰堤が上流域に建設された. その後, 上流域からの流送土砂は 鉄穴流し の衰退と相まって劇的に減少し, 現在の斐伊川は著しい河床低下の河川に一変している. 特に, 斐伊川 23.3k 付近に位置する伊萱床止から下流では河床低下とそれに伴う低水路幅の縮小化が顕著に見られ, 高水敷化した砂州には植生が繁茂し,14.2k 付近 写真 -1 平水時の斐伊川下流部 図 -1 斐伊川 12.4k の平水位と無次元掃流力分布 - 509 507 -

図 -2 伊萱床止付近から斐伊川放水路分流部の低水路幅の経年変化 図 -4 斐伊川上流域の堰堤群の位置 40 35 30 南神立橋 JR 山陰本線来原岩樋 水路分山陰道放流部三代橋上出西岩樋 右岸頭首工 下阿宮樋 図 -3 伊萱床止下流の低水路の経年変化 島観測所森坂大橋伊萱床止10 計画高水位 年度 S50 年度 S60 年度 H4 年度 年度 年度 4 年度 12k 13k 14k k 16k 17k 18k 19k k 21k 22k 23k 24k k 26k 累計堆砂量 ( 千 m 3 ) 1,400 1,0 1,000 800 600 400 0 1,0 千 m 3 H16 洪水堰堤水抜き穴破損 0 S30 S35 S40 S50 S55 S60 H7 H12H177 図 -5 日登堰堤の堆砂状況 累計堆砂量 計画堆砂量 発生土砂量 100 90 80 70 60 50 40 30 10 0 発生土砂量 ( 千 m 3 ) に位置する斐伊川放水路の分流部まで河床低下が進行しつつある ( 図 -2, 図 -3). 斐伊川放水路は斐伊川の洪水を神戸川へ分流し, 斐伊川下流域の宍道湖 大橋川 中海の浸水被害を解消するために平成 年に完成した重要な治水施設であるが, 河床低下が進行すると適切な分流に支障をきたす恐れがある. また, 伊萱床止下流には, 地域社会的に重要な農業用取水樋門や橋梁が点在しており, 河床低下による取水障害や橋脚基礎の露出が発生している. 本報告では, 測量や観測等の実測データにより, 斐伊川の伊萱床止下流から進行している河床低下と低水路幅の縮小化の実態を説明し, 実測データと長期河床変動計算を踏まえ, 将来にわたって安定した河道を維持するための技術的検討を示す. 2. 実測データに基づく斐伊川流域の土砂移動及び河床低下と低水路幅縮小化の実態 図 -4 は, 斐伊川上流域からの流送土砂量を減少させる目的で建設された堰堤群の位置を示す. 上流の土砂供給域の最下流に位置する日登堰堤は, 昭和 30 年に完成している. 図 -5 は日登堰堤の堆砂測量結果から算定した累積 河道内 ( 分流部下流 ) +7.1 斐伊川放水路 河道内 ( 直轄上流端 ~ 分流部 ) 7.2 土砂生産域 ( 支川 ) A=5km 2 三刀屋川 +1.2 日登堰堤 +1.0 宍道湖 +3.0 赤川 +0.9 伊萱床止 深野堰堤 ( 満砂 ) 久野川 +0.3 尾原ダム 土砂生産域 ( 支川 ) A=1km 2 図 -6 斐伊川流域の年間土砂収支 : 本川河道の土砂収支 ( 測量 ) : 支川からの供給土砂量 ( 推定 ) : 上流堰堤地点の発生土砂量 ( 堆砂測量 ) 単位 : 万 m3/ 年 ウォッシュロード成分は除く 堆砂量と, 各年の堆砂量の差分から算定した日登堰堤地点の発生土砂量 ( ウォッシュロードは除く ) を示す. 日登堰堤地点での発生土砂量は経年的に減少しており, 最近 40 年間 ( 昭和 51 年 ~ 平成 27 年 ) で平均すると約 10,000m 3 / 年程度となっている. また, 堰堤の計画堆砂量に対して未だ満砂状態となっていないため, 平水時において, 下流河道域への土砂供給はほとんど期待できないことが明らかになった. ここで, 平成 16 年及び平成 18 年の堆砂量の減少は, 平成 16 年の堰堤の水抜き穴の破損に 久野川 土砂生産域 ( 本川 ) A=444km 2 土砂生産域 ( 支川 ) A=49km 2 阿井川ダム 三成ダム +0.9 高尾堰堤 +1.7 +0.5 : 直轄上流端 : 床止 : 堰堤 ダム - 510 508 -

上島流量 (m 3 /s) 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 洪水 ( 約 2,400m 3 /s) H17 H19 39 34 24 写真 -2 伊萱床止 19 37 35 33 31 27 23 27 23 21 19 17 28 26 24 22 18 16 14 伊萱床止天端高 23.4k ( 床止上流 ) 23.2k ( 床止下流 ) 23.0k 10.07m 14 50 0 50 100 0 0 0 300 350 5.65m T.P+23.40m T.P+18.98m (23.0k ) 図 -8 伊萱床止下流 (23.0k) の横断変化と上島地点の時刻流量 かごマット 55.5m(H11 延伸 ) T.P+24.40m 矢板 H17 H19 計画高水位 87.7m ブロック 32.2m(S50~54 改修 ) T.P+27.40m 矢板 ブロック 図 -9 伊萱床止の改修履歴 ( 縦断図 ) T.P+.05m 改良沈床 FLOW 矢板 27 23 21 19 17 22.8k 上流側水制設置 床止延伸 下流側 洪水水制設置 図 -7 伊萱床止上下流の低水路河床高の経年変化 よる堆砂の流出と, 近年最大の出水となった平成 18 年洪水による堆砂の巻き上がりが要因と考えられる. 図 -6 は, 上流の堰堤群の堆砂測量 ( 昭和 51 年以降 ) 及び斐伊川直轄区間の横断測量 ( 昭和 60 年以降 ) の経年変化から推定した流域の年間土砂収支を示す. 年間の土砂量は測量データが存在する年ごとの差分を経過年数で割り, それを平均化した. 支川からの供給土砂量は, 日登堰堤地点における単位流域面積当たりの発生土砂量 ( 昭和 51 年以降 ) に支川の流域面積を乗じて推定した. 斐伊川直轄上流端から放水路分流部までの河道から約 70,000m 3 / 年土砂が流出し, 分流部下流に約 70,000m 3 / 年堆積している. 伊萱床止上流から日登堰堤までの河道には床止群が設置されているため河床は比較的に安定しているが, 伊萱床止下流は河床低下と低水路幅の縮小により土砂が流出しやすく, 上流域からの土砂供給も期待で 写真 -3 伊萱床止下流の水制群 きないため, 河床低下が著しくなっている. 次に, 伊萱床止下流の著しい河床低下に着目し, 床止周辺の測量データ等から土砂移動と河床変動の実態を整理した. 伊萱床止は昭和 35 年に完成した横断工作物である ( 写真 -2). 図 -7 は床止上下流における低水路河床高の経年変化を示しているが, 床止上流 23.4k の低水路は床止の天端より低く安定しており, 平水時や小規模な洪水では土砂が床止下流に供給されにくいことが分かる. 図 -8 は床止下流 23.0k の横断形状の変化と斐伊川上島地点の流量時系列を示す. 上島地点で約 2,400m 3 /s を記録した平成 18 年洪水後では河床が上昇しており, 大規模な洪水が発生すると床止上流の土砂が床止天端を超えて下流に供給されているものの, その後は大規模な洪水が生 - 511 509 -

標高(T.P.m) 40 35 計画高水位 年度 S50年度 S60年度 H4年度 年度 年度 4年度 図-10 伊萱床止切り下げ高 幅の設定 設定河道 河床勾配1/1,000程度 伊萱床止 標高 T.P.m 横断距離(m) 放水路分流部 30 設定河道 砂州の比高を是正 現況河道 10 12k 13k 14k k 16k 17k 18k 19k k 21k 22k 23k 24k k 26k 図-11 設定河道の低水路 表-1 検討ケース 床止下流河道 伊萱床止 床止上流河道 Case1 低水路幅拡幅 現況 現況 Case2 Case1と同じ 標高(T.P.m) 写真-4 床止上流の網状砂州 昭和50年 床止中央部 砂州の比高差是正 切り下げ 30cm 横断距離(m) (a) 18.0k 標高(T.P.m) 図-13 計算に用いた流量時系列 横断距離(m) (b).0k 図-12 設定河道の横断面形 じていないにも関わらず 澪筋の河床が低下しているこ とが分かる これは 斐伊川は平水時においても澪筋部 で土砂が活発に移動し その継続時間が洪水の継続時間 に比べて著しく長いため 伊萱床止上下流で平水時の土 砂移動の非平衡性が大きくなり 床止下流で経年的な河 床低下を進行させてきたことを示す 伊萱床止周辺は床止設置後 河岸洗掘や床止本体の被 災を繰返し 昭和50年洪水では床止本体が流出する大規 模な災害が発生している その後も床止下流の局所洗掘 による偏流が発生したため 昭和58年頃から水制群を床 止下流の両岸に設置し 洪水流の水刎ねと減勢による偏 流の是正が試みられた 写真-3 しかし 図-7の水制 設置箇所下流22.8k及び23.0kの低水路河床高を見ると 水制設置以降 に対しの低下量が やや大きくなっていることが分かる このように 両岸 に水制群を設置したことにより 水制群周辺で流れの集 中と深掘れが生じ 明瞭な澪筋が形成された 斐伊川で は平水流量でも深掘れ部で土砂が移動することから 形 成された澪筋が固定化し 平水時には床止上流からの土 砂供給が殆どないことから 低水路幅の縮小化と河床低 下が下流に向かって進行している 平成11年には床止直下の局所洗掘に対応するため 床 止下流側法面を延伸した その結果 現在では床止天端 から下流側法尻までの直高は6m近くになっている 図9 床止直下23.0kのと床止天端の落差でみ ると10mにも達している 床止直下23.2kより下流の最深 河床高は 床止下流側法面の延伸後に急激に低下してお り 床止天端からの大きな落差によって生じた流れが澪 筋に集中し さらに局所洗掘が進行していることを示し ている 図-7 澪筋の河床低下により砂州との比高差が拡大するため 砂州上には植生が繁茂し 澪筋の固定化と低水路幅の縮 小を下流に進行させており 河道管理を困難にしている また 床止下流の経年的な河床低下により 床止下流側 法面 かごマット の一部崩壊と土砂の吸い出しによる 下流側法面下の空洞化が確認された 床止上流河床には 水道用水の取水埋設管が設置され 他にも床止本体は農 業用取水口を兼ねているため 今後も床止の機能を維持 する必要があるが 下流の河床低下に対する悪影響を踏 まえると抜本的な対応が必要な状況にある 3 斐伊川の河床低下と低水路幅の縮小化の是正 に向けた河道縦横断形と伊萱床止構造の検討 経年的な実測データより 伊萱床止上下流での土砂移 動の不連続性および床止下流への水制設置による澪筋の 固定化を契機として 下流河道の低水路幅の縮小化や低 水路の河床低下が進行していたことが明らかとなった そこで本研究では 床止上下流での土砂移動の不連続性 を緩和する伊萱床止形状や床止下流河道の縦横断形につ - 510 512 -

伊萱床止 図 -14 通水 10 年後の解析河床高コンター 図 -17 通水 6 年後の伊萱床止周辺の解析河床変動コンター 縦断距離 (km) 図 - 通水 10 年目の河床高の縦断形状 ( 計算 ) (a) 22.9k (b).6k 図 -16 通水 10 年目の横断形状 ( 計算 ) (a) Case1 縦断距離 (km) 図 -18 23.2k 付近の 6 年通水後の埋戻し状況 ( 計算 ) いて, 長期河床変動計算を用いて検討する. 以下では, 長期河床変動計算の条件とした是正河道の縦横断面形および伊萱床止の形状について説明する. まず, 伊萱床止上下流における土砂移動の不連続性を緩和するため, 床止の中央の一部の天端を切り下げる. 切り下げ高は, 床止上流に埋設された取水管に影響を及ぼさないように 30cm とした ( 図 -10). 切り下げ幅については, 床止上流の砂州が床止下流に流下出来る幅として, 土砂移動が比較的健全であった昭和 50 年の砂州幅程度 ( 写真 -4) の幅とし, 概ね堤間幅の半分程度である. 床止下流河道の横断面形については, 低水路幅の縮小化が小さかった平成 4 年頃の低水路幅とした ( 図 -2). 設定河道のについては, 掘削土砂量と埋戻し土砂量が各断面でほぼ同程度となるように縦横断面形を設定しており, 概ね平成 10 年頃ので河床勾配が約 1/1,000 である. また, 伊萱床止上流河道についても, (b) Case2 図 -19 通水 10 年目の流砂量縦断図 縦断距離 (km) 砂州と澪筋の比高差を是正して河道断面形を設定した. 図 -11 は本検討において設定した低水路を示し, 図 -12 は計算で設定した河道の横断面形を示す. 表 - 1 は, 計算の検討ケースを示す. 計算では上記のような河道是正を実施した場合 (Case2) と, 床止形状は現況のままとし下流河道是正のみを行った場合 (Case1) の 2 ケースの条件で長期河床変動計算を行い, 河道の安定性について比較検討した. 計算区間は,km~ 宍道湖である. ここで, 本検討では洪水時の斐伊川放水路への分流を考慮しておらず, 伊萱床止から放水路分流部の上流河道の縦横断面形について議論することとしている. 放水路分流部の河道の是正方法や維持管理方法 2)3) も含めた検討については, 今後の課題とする. 図 -13 は, 計算で与えた流量時系列を示す. 斐伊川は平水時でも土砂移動が生じることから平水流量から洪水流量までの年間の流量変化を与え,10 年間分に相当する - 513 511 -

Case1 Case1 Case2 23k 23k 22k 22k 摩擦速度(m/s) UST 0.059 0.055 0.051 0.047 0.043 0.039 0.035 0.031 0.027 21k k 日程度生じる流量230m3/sを与えた場合の摩擦速度のコ ンター図を示す 平均粒径1~2mmに対する移動限界摩擦 速度は0.028~0.04cm/sであり Case2ではCase1と比べて 広い範囲 23k~k付近 で河床が攪乱を受けているこ とが分かる このようにCase2では 年間に2~5日程度で 河床が攪乱を受けるため 植生繁茂が抑制されることが 期待できる 今後 長期河床変動計算に植生の侵入 成 長を考慮し 適切な河道縦横断形とその是正頻度 優先 順序および維持管理方法について検討する必要がある UST 摩擦速度(m/s) 21k 0.059 0.055 0.051 0.047 0.043 0.039 0.035 0.031 0.027 4 結論 k 図- 230m3/s時の摩擦速度 通水10年後 期間を対象として計算した 流れの解析法には 内田 福岡の一般底面流速解析法4)を用いており 長期計算の ため静水圧を仮定して適用し 低水路粗度係数は既往研 究3)で用いた平均的な値として0.027m-1/3sを与えている 図-14は各ケースにおける通水10年後の伊萱床止下流 河道の河床高コンターを示し 図-は通水10年目にお ける河床高の縦断図を示す 図より 伊萱床止の形状を 現況のままとしたCase1の解析結果では 床止の約1km 下流まで明瞭な澪筋が形成され これにより最深河床 高 がCase2よりも低下していることが分か る 図-16は22.9kおよび.6kにおける通水後の解析横断 形状を示す.6kのCase1の解析結果では 内岸である 左岸側で堆積傾向にあるものの 右岸外岸側に形成され た澪筋の河床は低下傾向にある 一方 伊萱床止の天端 の一部を切り下げたCase2の場合では 澪筋の固定化は 見られず顕著な河床低下も生じていない 図-17は Case2における通水6年目の伊萱床止周辺の河床変動コン ターを示す 伊萱床止では 切り下げた天端から流下し た土砂が床止直下流の河道中央で堆積している この結 果 床止直下流の河岸沿いで深掘れが生じた 本研究で は 深掘れが顕著になった通水6年目において Case2で は図-18のように伊萱床止直下流で埋戻しを行った条件 で計算している 図-19は 通水10年目における流砂量 縦断分布を示す 伊萱床止の天端の一部切り下げに加え て床止上下流河道を是正したCase2は Case1と比べて床 止を通過する通年の流砂量が多くなっている また Case2では平水時 梅雨期 豊水流量 においても 流 砂量はさほど多くはないものの 土砂が床止を通過して いることが分かる 以上より 伊萱床止の天端の一部を切り下げることに より床止上下流での土砂移動の不連続性を緩和し 床止 下流で生じる深掘れの定期的な埋戻しを行うことにより 澪筋の固定化とそれによって加速度的に進行する低水路 の河床低下を抑制し得ることを示した 図-は 通水10年後の河床形状において 年間に2~5 本報告では斐伊川上流域からの流送土砂量の実態や河 道の経年変化を整理し 伊萱床止下流の河床低下及び低 水路幅の縮小化の要因を明らかにするとともに 長期洪 水流 河床変動計算により 河床低下と低水路幅の縮小 化を是正する方策を示した. 1) 砂河川の斐伊川は 平水時にも土砂が活発に移動し ている 一方 斐伊川上流域の堰堤群の建設により 上流域から河道への土砂供給は殆ど期待できなく なっている中で 伊萱床止は平水時や小規模出水時 での土砂流下を妨げることにより 床止上下流での 土砂移動の非平衡性を強め 床止下流で経年的な河 床低下を進行させている また 床止下流に設置さ れた水制群は澪筋に流れを集中させ 下流河道の河 床低下を助長している 2) 伊萱床止下流河道の低水路幅の拡幅に加え 床止天 端の一部を切り下げて土砂移動の不連続性を緩和し 床止直下流では深掘れを定期的に埋戻すことにより 低水路幅の縮小化とそれに伴う河床低下を抑制出来 得ることを長期河床変動計算により示した 今後 斐伊川放水路への分流や植生繁茂の影響も含めて 伊萱床止の改良及び適切な河道縦横断面形とその維 持管理方法について具体的な検討が必要である 参考文献 1) 福岡捷二 砂河川 斐伊川が抱える治水問題と今後の対応 総合的な土砂管理の必要性 河川 16 年 平成 28 年 10 月号 pp.82-87 16. 2) 後藤岳久 福岡捷二 舛田直樹 取水用砂堰の繰返し崩壊に よる大規模砂州の形成 河幅縮小軽減策の研究 河川技術論 文集 第21巻 pp.271-276 3) 後藤岳久 福岡捷二 柴田 亮 大量の土砂を伴う洪水流の 斐伊川放水路への分流と土砂流入抑制に関する研究 土木学 会論文集B1(水工学) Vol.73 No.4 I_895-I_900 17. 4) 内田龍彦 福岡捷二 浅水流の仮定を用いない水深積分モデ ルによる種々な小規模河床形態の統一的解析法の構築,土木 学会論文集B1(水工学) Vol.69 No.4 I_1135-I_1140 13. - 512 514-17.4.3受付