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Transcription:

図 1 電磁波 周波数 イメージング方法 表 1 イメージングのコントラスト要素や要因 内因性のコントラスト Absorption Reflection Transmission Relaxivity Susceptibility Diffusion of water Spectral distribution Temperature Impedance Frequency shift 外因性のコントラスト Absorption Reflection Emission Relaxivity Susceptibility Isotope spectra Fluorescence Luminescence Extracellular ph Saturation transfer 図 3 臨床における画像診断の現在と将来の役割セグメント 察 2. 臨床イメージング装置 2.1 臨床画像装置 diagnostic imaging:di 概観 イメージング手法は 臨床の現場で多用されてきてお り その 用量と用途は増加している 周知のごとく 日 本では皆保険制度の社会医療保険が定着し 世界のなかで も模範的な医療を実施している 現在の画像利用は 大き く けて 形態画像の利用と機能画像の利用に かれる 画像診断技術は図 2 に その進展の歴 を示す レント ゲン撮影 というよび方で親しまれている X 線が 体の なかを透過する透過画像を解剖学的に 用することから出 図 2 画像診断技術の歴 発し 現在までさまざまな画像診断方法が開発されてき た 例としては 後述する X 線 CT 装置 CT がある イメージングの 用は 図 3 の医療の流れをモデル化して 用を対象に供給が始まっていたり 臨床試験中である 説明したなかにもあるように 疾病を認識できない段階で さらには 生体機序の解明に ナノ粒子として生体への導 検診というシステムで診断機器として われている 臨床 入が可能な鉄製剤を 用した研究も盛んである 現場では 疾病の兆候が発現した後 疾病診断や病期診断 として 用される さらに 診断ができた後 治療の流れ のなかでも 用される たとえば 外科手術のときに 常 84 (20 ) 光 学

図 5 PET 原理図 4. 核 医 学 装 置 図 4 CT によるヒト心臓三次元再構築画像 (慶應義塾大学 附属病院放射線診断科提供) 4.1 インビボ核医学診断 インビボ核医学診断は 放射性医薬品を患者に投与し 放射性医薬品から放出される γ線を検出する診断方法で ある インビボ核医学診断には 単光子放射型コンピュー ター断層撮影 SPECT と 陽電子 ポジトロン 放出 核種を利用する断層影像法 PET がある SPECT は γ 線放射核種で標識した薬剤を体内に投与し 体軸周囲から γカメラで計測し コンピューターを用いて体内の放射 布画像を得る検査方法である 図 5にその原理を示すよう に PET はポジトロンの消滅により 1 8 0度方向に放出さ れる一対の消滅 γ線 5 1 1keV を同時計数法によって検 出し 画像を得る検査方法である PET は同時計数法を 用いるため SPECT より空間 解能が高く 体内吸収補 正が正確にできるため定量にすぐれている特徴をもつ 放射性医薬品に含まれる放射性核種は 放射能が自然に 減衰してゆき体内から消失する 放出される放射線の量が 半 になる時間を半減期という インビボ核医学診断で は 特に半減期が短い放射性核種が用いら れ て い る 図 9 PETCT 臨床例( 国立がんセンター東病院提供) SPECT で最も用いられている放射性核種はテクネチウ ム9 9m であり 半減期は約 6時間である PET で用い られる放射性核種には フッ素-18が 1 1 0 酸素-15が が ガドリニウムや鉄造影剤を 用すると 40ミリモルの 2 と かなり短いものである インビボ核医学診断によ 感度がある これらのイメージング手法は生体内挙動であ って患者は被ばくするが 急性の放射線影響の閾値を超え る 糖代謝 アミノ酸代謝 細胞増殖 低酸素症 コリン ることはないので 急性放射線の影響が生じることはな 作動系 リン酸化 オステロゲンやアンドロゲンレセプタ い ーの挙動などを直接 あるいは間接にイメージ化する 4.2 SPECTの製剤 インビボ診断薬に用いられる SPECT の放射性核種は 人体に対する放射線の被ばく量をできるだけ低減するため に 半減期が数時間から 4日程度で 放出 γ線のエネル 8 6(2 2) 光 学

ギーが 80 510 kev の核種が用いられる 特に テクネ である これらの特徴としては 生体構成元素であるた チウム-99 m ヨード-123 タリウム-201 等が最近では多 め 観察したい 子を直接標識できるか あるいは類似体 く 用されている 放射性医薬品は これらの放射性核種 であっても直接観察をしたい 子の生体内の挙動ときわめ に臓器特異的なリガンドを結合させて 脳 甲状腺 骨 て近い状態がつくれる という点であろう また 抗体や 心臓 肝臓 腎臓など多くの臓器の機能診断を可能として タンパクなどの高 子物質からペプチド 糖 さらには いる テクネチウム-99 m にビスホスホネートを結合させ 水 ガスなどの低 子物質まで標識ができる点も利点とい ると 骨代謝活性部位に集まり 前立腺がん 乳がんの骨 えよう 反面 これらの陽電子放出核種はいずれも半減期 転移の診断に利用されている がきわめて短く 一般的なもののなかで最も半減期の長い 特にヨード-123 はハロゲンであり 低 子に直接標識 フッ素-18 であっても 110 である したがって 通常 ができる 脂肪酸や脳レセプター ドーパミントランスポ これらの陽電子放出核種およびそれらで標識された物質の ーターの標識体により 心臓脂肪酸代謝 てんかんやパー 精製は 実験を行う施設内で行われることがほとんどであ キンソン病といった脳変性疾患など CT や M RI の形態 った 2005 年 8 月より F-18 フルオロデオキシグルコース 診断では不可能な診断が可能となっている 4.3 PET の製剤 F-18 FDG の供給が一部地域で開始されるようになり 病態診断や PET を用いた検診を目的に臨床 PET に用いられる放射性核種には 炭素 窒素 酸素 用が可能と なったが 用可能な地域も量も制限があるうえ 供給可 フッ素などの生体構成元素がある 放射性同位元素である 能な製剤も F-18 FDG のみであることから供給された標識 炭素-11 窒素-13 酸素-15 フッ素-18 などのポジトロ 薬剤を用いての 子イメージング研究 というのは現実的 ン放出核種は サイクロトロンで生産でき 種々の生体活 ではない すなわち PET を用いての 子イメージング 性物質やその誘導体 薬物薬剤などを直接標識することが できるため 人体のいろいろな生化学的な情報や脳機能の 動態挙動の診断に利用されている グルコースのフッ素18 標識体である FDG F-18 フルオロデオキシグルコー ス は 生体内において糖代謝を反映し 腫瘍イメージン グ剤として用いられている グルコースのヨード標識体で は ヨードが大きいためグルコース代謝の診断ができな い PET では これら生体構成元素の核種が利用できる ため 治療薬の炭素の標識や生体活性物質の 子イメージ ング研究が行える 4.4 PET 検査の流れ 実際に PET で 用される陽 電 子 放 出 核 種 は 炭 素 - 11 窒素-13 酸素-15 フッ素-18 などの放射性同位元素 図 6 小動物用 PET カメラ 35巻 2号 2 06 図 7 臨床用 PETCT 装置 図 8 ヒト臨床用 PETCT 装置の説明図 87 (23 )