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CEO 交代率の比較 図表 1 世界の CEO 交代率の経年傾向 ( 世界の上場企業上位 2,500 社の割合 2013) 12.9% (323) % ( % (270) 4. % 9.8% (244) % (367)

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2018年Chief Digital Officer調査

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2017年グローバル・ イノベーション調査結果概要


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平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved


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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

Q8: 為替変動が売上収益に与えたインパクトはどの程度か? A: 為替変動により 当第 4 四半期における売上収益は前年同期比で 49 億円増加しました また 通期では 為替変動により 売上収益は前年同期比で 565 億円増加しました HR テクノロジー事業 Q9:( 通期 ) 売上収益が米ドルベー

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2016年3月 会計基準アップデートセミナー

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非清算店頭デリバティブに関する 証拠金規制開始に見る今後の対応 2016 年 9 月 1 日より 世界に先駆けて 日本 アメリカ カナダの 3 カ国で 非清算店頭デリバティブに関する証拠金規制が始まった 欧州や他の国 地域についても適用を延期してはいるものの今後施行予定である 日本では大手金融機関数

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スピンオフに関する組織再編税制の改正 PwC 税理士法人 国際税務 /M&A タックスグループディレクター原嵩 はじめに 2017( 平成 29) 年度税制改正では事業再編の環境整備のために 経営戦略に基づく先を見据えたスピード感のある事業再編等を加速するため 特定事業を切り出して独立会社とするスピ

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2017年度 決算説明会資料

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目次 レポート 3. 概要 4. 主要なインサイト 5. 地域ごとの SEM 業界の支出増加率 6. 検索エンジンごとの SEM 業界の支出増加率 7. SEM 支出のシェア 8. Google の検索ビジネス売上予測 9. 世界全体での業界セクターごと SEM 支出増加 10. 世界全体でのディス

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< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

第 1 四半期の売上収益は 1,677 億円となり 前年からプラス 6.5% 102 億円の増収となりました 売上収益における為替の影響は 前年 で約マイナス 9 億円でしたので ほぼ影響はありませんでした 事業セグメント利益は 175 億円となり 前年から 26 億円の減益となりました 在庫未実現

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IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

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第 1 四半期は好調なスタートとなり 通年でも好調を維持する見通しです 主要製品の販売量を高水準で維持しながら 他の主な指標すべてにおいても 非常に好調であった前年同期からさらに大幅に向上しました と コベストロのチーフ コマーシャル オフィサー (CCO) であり 次期最高経営責任者 (CEO)

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2018 Brother Industries, Ltd. All Rights Reserved 年度第 3 四半期連結業績概要 16Q3 増減 増減率 () は為替影響 除く増減率 売上収益 1,878 1, % (+6.4%) 事業セグメント利益 224

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

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2019年3月期第2四半期決算説明資料

社団法人日本生産技能労務協会

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

第 2 四半期累計として 連結の売上高 営業利益 経常利益 四半期純利益とも 過去最高 上期で初の売上高 1 兆円を達成 4 月 27 日に発表した連結業績予想数値との比較でも それぞれプラス 事業環境に関する認識と確認 ( 物流業界の状況 ) 国内外ともに 景気の回復基調は続き 荷動きは おおむね

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Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 30 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 30 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 30 年 1~3 月期 来期平成

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目次 1. テクノプロ ホールディングスってどんな会社? 2. 技術人材サービスとは? 3. 経営ビジョンは? 4. 市場環境 成長性は? 5. 技術人材サービスが安定的に成長している理由 6. どんな仕事をしているの? 7. 業績は? 8. 今後の見通しは? 9. 計画達成の道すじは? 10. 重

2018年度第2四半期 決算概要

Ⅱ 用語等の説明 今期の状況 来期の状況 前年同期 ( 平成 28 年 4~6 月期 ) と比べた今期 ( 平成 29 年 4~6 月期 ) の状況 前年同期 ( 平成 28 年 7~9 月期 ) と比べた来期 ( 平成 29 年 7~9 月期 ) の状況 前期平成 29 年 1~3 月期 来期平成

2016 年 10 月 31 日 各位 社名 代表者名 問合せ先 株式会社村田製作所代表取締役社長村田恒夫 ( コード :6981 東証第 1 部 ) 広報室長生嶌匠 (TEL ) ソニー株式会社からの電池事業の取得に関するお知らせ 株式会社村田製作所 ( 以下 当社 といい

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各 位 平成 29 年 11 月 28 日フィンテックグローバル株式会社代表取締役社長玉井信光 ( コード番号 :8789 東証マザーズ ) 問合せ先 : 上席執行役員千田高電話番号 : ( 03) 航空機アセットマネジメント会社の株式取得に伴う子会社の異動に関するお知らせ 当社

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目次 1. 経営成績営業利益分析 / 海外売上高 / 貸借対照表 2. 業績予想 ( 修正 : 有 ) 3. 研究開発費 / 減価償却費 / 設備投資 4. 株価の状況 5. トピックス P.2 P.10 P.14 P.16 P

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2018 年 8 月 10 日 各 位 上場会社名 エムスリー株式会社 ( コード番号 :2413 東証第一部 ) ( ) 本社所在地 東京都港区赤坂一丁目 11 番 44 号 赤坂インターシティ 代表者 代表取締役 谷村格 問合せ先 取締役 辻高宏

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2018年3月期 第1四半期決算概要

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Transcription:

PwC Deals 米国テクノロジー業界 年第 四半期の M&A に関するインサイト 高いバリュエーションと解消されない不確実性で取引減速 エグゼクティブサマリー 年第 四半期 経済は順調 規制 市場環境も良好であったことからM&Aは記録的なスタートを切ったものの その後 取引金額は過去 年間の最低水準まで落ち込んだ 第 四半期には復活が見られた大型案件も 第 四半期にはほとんど見られなかった 高いバリュエーションやその他の不確実性のため テクノロジー分野や非デジタル分野の買手も様子見を余儀なくされ も減少した バリュエーションの期待値は プライベートによるファンディングがかつてないほど高い水準にあり テクノロジー関連のIPOが爆発的に増加していることもあって さらに高まっている 当四半期におけるIPOの平均利回りが% に達していることもあって テクノロジー企業の上場は 第 3 四半期に向け 引き続き高い水準で推移すると考えられる 今後 テクノロジーのディールメーカーは無数の不確定要素に直面する 関税 反トラスト法 経済リスク プライバシー規制など 全て不透明である ただ一つ明瞭なことは 技術変革がますます速くなっており 迅速に対応できない企業は繁栄どころか生存することすらおぼつかないということである 従って テクノロジー案件はどのような形であれ 今後も技術革新にアクセスするためにその重要性を失うことはないであろう Tech deals faltered in the face of high valuations and regulatory uncertainties. Marc Suidan US Technology, Media & Telecommunication Deals Leader PwC トレンドとハイライト 年第 四半期のM&A 案件の取引金額は第 四半期と比較しほぼ半減 は約 % の減少であった 取引金額ベースでは3 年以降の最低へと大きく落ち込んだが 大型案件が前期の 件に対し今期は 件のみであったことが主要因であった サブセクター別では ほぼ全てで落ち込んでいるが 特にハードウェアと半導体の落ち込みが大きく 取引金額 件数ともにほぼゼロとなった インターネットでは 億米ドルを超える案件が数件あったことから取引金額総額でプラスとなったものの は低水準にとどまった 取引金額 年第 四半期 (306 億米ドル ) 年第 四半期 (9 億米ドル ) 7 年第 四半期 (3 億米ドル ) 年第 四半期 ( 件 ) 年第 四半期 (06 件 ) 7 年第 四半期 (9 件 ) 年第 四半期 vs. 7 年第 四半期 年第 四半期 vs. 年第 四半期 % 9% 9% 7%

年第 四半期のハイライトと 年の展望 最大規模の取引 7 億米ドル 年第 四半期最大のM&Aは マイクロソフトがGitHubを7 億米ドルで買収した案件であった マイクロソフト以外にも大手テクノロジー企業からのオファーがあったものの マイクロソフトの 買収するも独立性を尊重する という運営モデルが決め手になったとの噂である 大型案件 (0 億米ドル以上 ) 大型案件 件の合計取引金額がほぼ 億 米ドルという好調なスタートを切った第 四半期 であったが 第 四半期は 0 億米ドル以上という基準を満たす 案件はマイクロソフトの GitHub 買収のみと大きく減速した 政治面で 反トラスト法はプラス要因であったがプライバシー 規制はマイナス要因と好材料 懸念材料が入り乱れ テクノロ ジー分野の先鋒となるべき買手側が様子見に徹した テクノロジーにおける取引金額および件数 $.0 $0.0 $0.0 取引金額 ( 単位 : 憶米ドル ) $60.0 $.0 $.0 $ 9 7 6 06 39 30 37 $. $96.0 $.9 $6. $9. $. $3.6 $3. $33. $30.6 Q Q Q3 Q Q Q Q3 Q Q Q 7 公表取引金額 公表 600 00 00 0 0 年第 四半期の M&A は小型案件が中心で大型案件は限定的と低迷 当四半期 合計取引金額は 年以降では初めて 3 億米ド ルを下回り 第 四半期としては 3 年以降の最低を記録し た 大型案件こそ見られなかったものの 億 ~0 億米ドル の取引は堅調で 第 四半期の 件に対し 当四半期は 9 件で あった は 件とまずまずの水準であるが 前四半期比では 約 % の下落となっている 低水準となった一因は おそら くは非デジタルの買手企業が高いバリュエーションを嫌って様 子見姿勢を強めたためである テクノロジーセクターにおける M&A の見通し 年も半ばを過ぎたが テクノロジーのディールメーカーはいくつもの不確実要因に直面しており こうした要因は案件取り組み意欲を失わせるのみならず 手掛けることのできる案件のタイプにも影響している この不確実要因には以下のようなものがある : 規制の不確実性 : 連邦反トラスト法に基づく訴訟は過去 年間 増加傾向にある 現在控訴中であるものの AT&Tが司法省に勝訴したことから テクノロジーセクター企業を買手あるいはターゲットとし 業態の変化につながるような大型案件が激増することも考えられる 他方 中国商務部がQualcommによるNXP 買収提案をいまだに承認しておらず 世界的にこのような問題が見られ M&Aの障害となるのは米国司法省のみではなさそうである 貿易戦争の影響 : 世界的な案件承認プロセスを悪化させている要因に米中間の緊張の高まり 特に関税問題がある 現在は膠着状態にあるものの 結末次第では 企業としてもサプライチェーン維持を目的とした垂直統合あるいは垂直提携などの非典型的な M&Aを検討せざるを得なくなることも考えられる テックラッシュによる躊躇 : データプライバシー問題は今や大手テクノロジー企業の大半にとって取締役会で取り上げる必要のある大問題であり 経営陣はその時間の相当程度を戦略的計画立案から割いてこれに充てざるを得なくなっている また 業態変化を伴うような案件はこれまで以上に慎重な検討を要しており この様な案件に取り組むことは理にかなわないのではとの疑念が生じている こうした問題があるとはいえ M&Aの最大の問題は引き続き高いバリュエーション期待値である 資金調達は容易であるものの バリュエーションは正当化できるものでなければならず この解決には関税や金利など経済には重荷となるものが有用となりそうである とはいえ テクノロジーセクターは引き続きM&A 活動全般の牽引役であり 解決される上記不確実要因が一つなのか あるいは複数なのかによって 業容拡大の案件が成立するか ゲームチェンジ案件が成立するかが決まりそうである PwC Deals 米国テクノロジー業界 年第 四半期の M&A に関するインサイト

年第 四半期の M&A の主な特徴 主な公表案件 年第 四半期における注目すべき主要案件は以下のとおり コンピュータープログラムのバージョン管理サービスのウェブベー ス ホスティングサービス プロバイダーである GitHub をマイクロ ソフトが 7 億米ドルで買収 マーケットインテリジェンス 実行取引 投資家コミュニケーショ ンなどの金融情報サービスプロバイダーである Ipreo を IHS Markit が 9 億米ドルで買収 安全運行 通行料金電子徴収のビジネスソリューション プロバイ オープンソースのEコマースソフトウェアを開発するダーであるVerra MobilityをGores Holdings IIが 億米ドルで買収 X.commerce(Magento) をアドビシステムズが7 億米ドルで買収 モバイル支払ソリューション開発のスウェーデン企業である izettleabをペイパル ホールディングスが 億米ドルで買収 中小企業向けにインターネットおよびオンライン マーケティングサービスを提供するWeb.com GroupをSiris Capital Groupが 億米ドル * で買収 業務計画作成ツール プラットフォームのSaaSプロバイダーである Adaptive InsightsをWorkdayが 億米ドルで買収 企業や雇用に関する情報ポータルを提供するGlassdoorを日本の総合人材サービス会社であるリクルートホールディングスが 億米ドルで買収 *Siris Capital による Web.com 買収に係る取引価額は テクノロジー業界の M&A に関するインサイトとメディア テレコム業界の M&A に関するインサイト ( いずれも 年第 四半期版 ) で報告された数値が異なっているが これは前者が企業価値 後者が取引価格を分析しているためである サブセクター別取引金額および件数 インターネット $3. 引き続きソフトウェアが牽引役 ハードウェアと半導体は減少 インターネットは金額ベースで急増 取引金額 ( 単位 : 億米ドル ) 6 ハードウェア $0.9 半導体 $0. 情報技術サービス $. 0 0 0 0 0 ソフトウェア $9.9 Note: Bubble size denotes volume of deals >$B in value. ソフトウェアは 7 年以降 四半期あたり平均 0 件以上のペースを維持してきており 引き続きM&Aの牽引役となっている 金額ベースでは 買手がボルトオン型の小型案件に集中したため 第 四半期から0% 減少した ハードウェアと半導体はほぼゼロの水準まで減少 特に半導体は米国企業を対象とする買収 米国企業による買収ともに国境を越える承認の不確実性が大きく影響している 既述のとおり インターネットは 億米ドル超の案件が数件あったことから取引金額は増加したものの は低調な水準にとどまった 今後はサイバー クラウド 人工知能 機械学習などのサブセクターがM&Aの中心になると思われる IPO 市場は 年以降で最多件数を記録 この傾向は今後も続くと思われる 年第 四半期 米国 IPO 市場はテクノロジー分野の案件が多 数あったことを主要因として過去にない繁忙を極めた 当四半 期 テクノロジー分野の IPO 申請は 件 市場価格合計で 0 億 米ドルに達し 申請件数 9 件 調達資本 0 億米ドルを記録し た 年第 四半期以降で最高となった 上場手法としては伝統的なもの以外に Spotify の案件があり 時 価総額 6 億米ドルとなる同社の直接上場は新聞の一面を飾るこ ととなった 同社の株式公開は引受会社を使わず 新規株式を 発行せず 追加資本も調達していない ( 従って本図には含まれ ていない ) テクノロジー企業上場の勢いは衰えを見せておらず 買収対象 となる未上場企業のバリュエーション期待値はさらに上昇する ことになろう これは中規模企業の M&A をさらに落ち込ませる 可能性がある PwC Deals 米国テクノロジー業界 年第 四半期の M&A に関するインサイト IPO 金額 件数の四半期別推移 IPO 金額 ( 単位 : 米億ドル ) 3 9 9 3 $0. $. $0. $0. $.0 $0.9 $0.3 $.3 $. $.6 Q Q Q3 Q Q Q Q3 Q Q Q 7 IPO 金額 IPO 件数 IPO 件数 6

年第 四半期の M&A の主な特徴 ( 続き ) テクノロジー企業の余剰資金の代替使途 主要テクノロジー企業の余剰資金はすでに広く関心を引い ているが さらに増加を続けている 主要テクノロジー企 業は全て自社株買いや従業員福利厚生以外にも資金の代替 使途を探そうとしており 純粋な M&A 以外の投資も検討し ている 例えば Alphabet/Google は一連の公開企業 未上場企業の少 数株主持ち分を取得 直近では JD.com の少数持分を 億,000 万米ドルで取得している アマゾンは米国での配送 能力を増強する一方 インドにも数十億米ドル単位の投資 を行う旨を明言している アップル フェイスブック マ イクロソフトも米国インフラへの投資を表明している こ の他 企業ベンチャーキャピタルの動きも M&A 以外の資 金使途があることを示している 主要テクノロジー企業の余資水準 余剰資金 ( 単位 : 億米ドル ) 00 700 600 00 00 0 0 3 7 当座資産 テクノロジー企業と非テクノロジー企業による買収の四半期別推移 90 0 70 取引金額 ( 単位 : 億米ドル ) 60 0 30 3 3 79 307 3 $.0 $3.0 $. $. $. $6.0 $. $7. $. $.6 Q Q Q3 Q Q Q Q3 Q Q Q 333 3 7 90 3 3 7 非テクノロジー企業による買収取引金額非テクノロジー企業による買収 0 テクノロジー企業による買収取引金額テクノロジー企業による買収 00 30 0 0 0 0 プライベートエクイティは静かな環境下で非テクノロジー企業買収を増やしている 年第 四半期は M&A 全般が減速しており 非テクノロジー企業に よるテクノロジー企業買収も 金額ベース 件数ベースともに減少して いる 非テクノロジー企業による買収中 金額ベースで最も大きな割合 を占めるのがフィナンシャルバイヤーによるもので Verra Mobility の 買収 億米ドル Web.com グループの買収 億米ドルなどがあった 減少しているとはいえ 年になってからこれまでに成立したテク ノロジー企業買収取引上位 件のうち ほぼ 件が非テクノロジー企業 によるものであった 上位買手企業は消費者マーケット メディア テ レコム 金融サービスであり 上位 件を見ると これに製造業 ヘル スケアが加わっている 半導体は規制当局の監督でほぼ絶滅 半導体サブセクター買収の四半期別推移 対米外国投資委員会と世界的な競争監視のバリケードに阻まれて 半導体企業のM&Aはほぼ休止状態となった 年第 四半期のQualcommによるNXP 買収 (390 億米ドル いまだ承認待ち ) 7 年第 3 四半期のBainによる東芝メモリ買収 (0 億米ドル ) 年第 3 四半期のAnalogによる Linear 買収 (0 億米ドル ) など 巨大案件が目白押しであった過去 年間とは状況が大きく変化している 0 3 取引金額 ( 単位 : 億米ドル ) 30 7 3 7 7 3 Broadcom による Qualcomm 敵対的買収 (, 億米ドル ) は 承認されていればテクノロジー業界で最大規模のM&Aになったと思われるが承認には至らず 同社はギアを入れ替え 第 3 四半期期初にCA Technologies 買収計画 (9 億米ドル ) を発表している 関税や対米外国投資委員会レビューに係る不透明感が解消さ $7.6 $. $6.3 $. $.9 $.7 $.0 $. $0. $0. Q Q Q3 Q Q Q Q3 Q Q Q 7 その他半導体取引金額 半導体大型取引金額 半導体合計 れない限り 半導体企業の M&A は近い将来 良くても低水準 で推移すると思われる PwC Deals 米国テクノロジー業界 年第 四半期の M&A に関するインサイト

お問い合わせ : 青木義則 PwC アドバイザリー合同会社パートナーディールズ TMT セクターリーダー 009699 yoshinori.aoki@pwc.com 著者 Min Kim Director, PwC s Deals Practice + 0 7 minkyung.kim@pwc.com 取引を成功させる企業は 他社が見落としがちな価値を見出す大局観や 不測の事態に対応できる柔軟性 厳しい競争の中でも有利な条件を勝ち取る大胆さに加え 契約が成立した瞬間から直面するさまざまな課題を見出すための慎重さを兼ね備えています しかし 情報が瞬時に駆け巡るような事業環境の中では 取引を実効性のあるものとするために 経験豊富なアドバイザーに助言を求める企業こそが 真に取引を成功に導くことができるのです PwCのディールズプラクティスはテクノロジー企業やテクノロジーセクターに注力するプライベートエクイティに対し 買収候補や部門売却候補の選定 詳細なバイサイドのデューデリジェンス実施 買収後の利益獲得計画策定 さらには売却 企業分割 IPOなどによるエグジットまで M&Aのあらゆる局面でクライアントが重要な決断を下す際に幅広く助言を提供いたします 当社は全世界に0,000 名を超えるディールプロフェッショナルを擁しており 貴社のビジネス拠点やM&A 取引対象所在地が世界のどこであれ テクノロジー分野のみならず現地市場についても知識や経験が豊富なチームを派遣することができます 取引には一つとして同じものがありません だからこそ信頼できるパートナーから戦略的 M&Aに関するアドバイス デューデリジェンス 取引のストラクチャリング M&A 関連の税務 買収後の統合 バリュエーション ポストディールなどのサービスを提供し M&Aプロセス全般にわたる助言を得ることが重要です これによりディールから最大限の価値を引き出すことが可能になるのです 当社が提供するソリューションは 個別取引の状況に合わせ 貴社がリスク特性の中で最大の価値を引き出せるように設計した統合型のソリューションです 買収や合弁事業を通じた資本投下 IPOや私募債発行による資金調達 会社分割プロセスを通じた投下資本の回収など 貴社のニーズに合わせて支援することができます テクノロジー産業のM&Aおよび関連サービスに関する詳細情報は下記をご参照ください pwc.com/us/tmtdeals pwc.com/us/tmt データについて 当社ではM&Aを ターゲット企業が米国を拠点とするテクノロジー企業であって買手企業が米国または外国の企業である買収 合併 または買手企業が米国を拠点とするテクノロジー企業である買収 合併と定義しています また 部門売却は 米国を拠点とする企業がその一部のみを売却することと定義しています 当社では 業界で認知されている情報源の提供するデータを元に調査を行っています 特に 本レポートの随所で用いられている金額や件数は Thomson Reutersが 年 6 月 30 日現在で提供している公表案件のものであり Research Groupおよび当社独自の調査によって補足したものです 噂されてはいるものの公表されていない取引は含まれません 過去の期間に関する情報は 当該時点で入手可能であったデータを基にしたものであり Thomson Reutersがその後収集した新規データによる更新は行っていません 別途記載のある場合を除き 本レポートに含まれるデータやグラフは全てThomson Reutersから提供を受けたものです テクノロジー企業の多くは複数のセクターにまたがっているため 本レポートで取り上げたセクター内の傾向は他のセクターにも当てはまるものと考えます 本レポートで取り上げるテクノロジーセクターはNAIC( 北米産業分類システム ) コードを基に定めたものです ただし 半導体サブセクターは SIC( 標準産業分類 ) コードの半導体およびその他電子部品製造コードが付与された企業から抽出しています また 取引実態をより正しく反映することができる場合には NAICコードやSIC コードと無関係にセクターの再分類をすることがあります PwC. All rights reserved. PwC refers to the PwC network member firm and/or one of their specified subsidiaries in Japan, and may sometimes refer to the PwC network. Each of such firms and subsidiaries is a separate legal entity. Please see www.pwc.com/structure for further details. This content is for general information purposes only, and should not be used as a substitute for consultation with professional advisors.