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9 図 1 三菱重工環境 化学エンジニアリング ( 株 ) の汚泥処理技術 2. 汚泥乾燥機の基本構造と技術的特徴 当社汚泥乾燥機の設備フローを図 2に示す また, 本乾燥機の構造と技術的特徴について以下に述べる 図 2 汚泥乾燥機設備フロー 2.1 二軸ディスク型蒸気式間接加熱乾燥機 (1) 間接加熱式を採用直接加熱式 ( 熱風乾燥機, 気流乾燥機, ベルト乾燥機など ) は多様な汚泥性状に対して比較的安定かつ大容量の処理を行うことが可能であるが, 大量に排出される排ガスに臭気が同伴されるため, 大規模な脱臭設備が必要であるとともに熱源温度が高いため燃料消費量が高くなる傾向がある 一方, 間接加熱式は熱媒 ( 蒸気など ) による間接式熱交換であるため熱効率が良く, 排ガス ( 臭気ガス ) 量が少ないため, ランニングコストが低くなり脱臭設備の簡素化も可能である (2) 二軸ディスク式の独自構造本二軸ディスクには, 高粘度汚泥に対する高い搬送性とディスクやケーシングに付着した汚泥を掻き取る効果を持たせた 他の間接加熱式汚泥乾燥機 ( 一軸ディスク型や薄膜式乾燥機など ) に比べ汚泥の付着や詰りを抑制することで, 多様な汚泥に対しても安定的な運転が可能である

10 (3) 乾燥用熱源として蒸気を利用乾燥用熱源として, 隣接する汚泥焼却炉, ごみ焼却炉, 発電プラント等あるいは工場内の余剰蒸気を有効利用できれば, ランニングコストを更に大幅に低減することが可能である 2.2 安定した運転と乾燥性能基礎研究により, 最適なディスク形状および基本構造を持つ汚泥乾燥機を開発した ディスクによる汚泥の攪拌 混合効果が大きくなり, ディスク伝熱面での汚泥の攪拌混合が十分行われることで, 高粘度汚泥に対しても安定的な運転が可能である 実証試験において, 搬送性能 ( 脱水汚泥供給量と乾燥汚泥排出量 ) と乾燥性能 ( 脱水汚泥含水率と乾燥汚泥含水率 ) の安定性を評価し, 運転条件 運転方法の最適化を図ることで安定的な運転を確保している 2.3 汚泥減容化によるライフサイクルコストの低減従来埋立処分していた脱水汚泥を汚泥乾燥機にて乾燥することにより, 埋立処分量を大幅に減容化できるため, 埋立処分費用の低減が可能となる このため, 汚泥乾燥機を導入することで, 脱水汚泥を埋立処分する場合と比較してライフサイクルコストの低減が可能である 3. 実証試験の概要 実証試験では, 当社独自で設計 製作した汚泥乾燥機を試験装置として使用し, 汚泥乾燥機の安定的な運転が確保されていること, 乾燥性能が維持されていることを確認した 3.1 試験実施概要 2012 年 3 月にA 処理場,2012 年 12 月 ~2013 年 8 月にB 処理場にて試験を実施した (A,B 処理場とも所在地は中国国内 ) 3.2 試験装置試験で使用した実証機の設計仕様を表 1に, 概略フローを図 3に示す 項目 表 1 実証機設計仕様 仕様 伝熱面積 21m 2 汚泥投入量 飽和蒸気圧 回転数 300~450 kg/h 0.4~1.0MPa 5~15rpm 汚泥含水率入口約 85% 汚泥含水率出口 50% 以下 図 3 実証機設備フロー

11 汚泥は, 汚泥供給ポンプにより電磁流量計で流量を測定し, 配管圧送にて汚泥乾燥機に直接投入後, 機内で攪拌 乾燥 搬送され, 排出ゲートから乾燥汚泥が排出される 乾燥熱源である蒸気は軸内配管およびディスク ケーシングジャケット ( 伝熱面 ) 内へ投入した後, 蒸気ドレンとして乾燥機系外へ排出される また, 汚泥乾燥機からの蒸発水分 ( ベーパー ) は, 排ガスファンにてスクラバーへ送気され, 蒸発水分中のダストと臭気成分を除去した後に排出される 3.3 試験結果と評価本試験では以下の項目について検証 評価を行った (1) 汚泥性状分析供試汚泥の性状を図 4に示す 汚泥含水率および固形物中の灰分, 可燃分は JIS M8812 により測定し, 汚泥粘度は JIS K7199(ISO 11443 でキャピラリーレオメータ使用 ) における剪断速度 :50s -1, 汚泥含水率 :80%, 温度 :17 での条件による測定である A,B 処理場の汚泥性状は, 一般的な日本国内の下水汚泥であるC,D 処理場に比べ, 比較的高い灰分率かつ高い粘度の汚泥であることが特徴である 図 4 汚泥性状分析結果 (2) 安定運転の評価汚泥粘度が最も高いB 処理場の汚泥を用いて連続運転を実施し, 高粘度汚泥における乾燥性能および搬送性能の安定性について評価した結果を図 5に示す 搬送性能評価として, 脱水汚泥供給量と乾燥汚泥排出量を計測し, 安定的な運転を確保していることを確認した また, 図中の蒸気消費量はボイラ出口に設置した蒸気流量計の値を計測し, 単位伝熱面積当たりの蒸発水分 ( ベーパー ) 量は, 脱水汚泥供給量と乾燥汚泥排出量およびそれぞれの水分計測結果から算出した この結果, 高粘度汚泥に対しても, 投入汚泥水分負荷に応じて安定的な乾燥性能 ( 単位伝熱面積当たりの蒸発水分量 ) を維持していることを確認した 図 5 高粘度汚泥における乾燥性能および搬送性能の安定性評価

12 (3) 乾燥性能の評価当社従来機 ( 羽根付き円柱ディスク型 ) と開発機 ( 二軸ディスク型 ) の総括伝熱係数を比較した結果を図 6に示す この結果, 開発機は高粘度汚泥を対象としたにもかかわらず, 低粘度汚泥を対象としていた従来機の総括伝熱係数よりもやや高い値を示していることを確認した 独自のディスク形状を新たに開発したことで, 伝熱面での汚泥の攪拌混合が十分行われ, 高粘度汚泥に対しても安定的な乾燥性能を維持していることを確認した 図 6 乾燥性能の評価 3.4 導入効果の検討汚泥乾燥機の導入効果の試算例 ( 脱水汚泥処分量 :20t/ 日, 脱水汚泥含水率 :80%, 乾燥汚泥含水率 :40% の場合 ) を図 7に示す 脱水汚泥を乾燥することにより,3 分の1に減容化することができるため, 汚泥の埋立処分費を大幅に低減することができる 汚泥乾燥機を導入することにより, 乾燥により減容化した汚泥の埋立処分費と汚泥乾燥機のランニングコスト ( 燃料費 + 電力費 +メンテナンス費 ) を合わせた費用は, 脱水汚泥の埋立処分費よりも安価になり, ライフサイクルコストの低減が可能である 図 7 汚泥乾燥機の導入効果

13 4. 製品仕様簡易計算ソフト 実証試験の結果を解析することにより, 製品仕様簡易計算ソフト ( 汚泥乾燥機の仕様を計算するためのソフト簡易版 ) を作成した 情報として, 汚泥性状 ( 脱水汚泥含水率, 灰分率等 ) とお客様の設定条件 ( 汚泥処理量, 乾燥汚泥含水率, 稼働条件等 ) などをインプットすれば, 当社汚泥乾燥機の型式選定 ( 概略イニシャルコスト, 設置面積, 重量等 ) とユーティリティ消費量 ( 概略ランニングコスト ) などの参考データがアウトプットとして容易に算出できるものである ( 標準寸法表を表 2に示す ) これにより, 当社製品の適用について, お客様に幅広くご検討いただけるものと期待している 表 2 当社汚泥乾燥機の標準寸法表 概略寸法 型式 MSD-20 MSD-50 MSD-100 MSD-150 MSD-200 全長 L [mm] 4 900 7 700 10 800 12 800 10 800 全幅 W [mm] 2 100 2 500 3 100 3 500 5 200 全高 H [mm] 2 900 3 900 4 600 5 100 4 600 重量 [t] 7 17 34 60 65 5. まとめ 汚泥の高粘度化など汚泥性状の多様化にも適した汚泥乾燥機を新たに開発した 従来の汚泥乾燥機では, 高粘度汚泥の処理が困難であったが, 当社独自の攪拌ディスクにより, ディスク伝熱面での汚泥の攪拌混合が十分行われるため, 安定的な運転と乾燥性能を発揮することができた これにより, 従来埋立処分していた脱水汚泥を汚泥乾燥機により乾燥することにより, 埋立処分量を大幅に減容化できるため, 埋立処分費用の低減が可能となる 実証試験によって得られたデータを解析し, 製品仕様簡易計算ソフトを作成した これにより, お客様への迅速かつ円滑な技術提案を可能としている これを足掛かりに, 日本国内のみならず中国や東南アジア等の諸外国への拡販などグローバルな展開を目論んでいる また, 各種排水汚泥やバイオマスなど幅広い分野での適用についても推進する予定である