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第 2 問問題のねらい青年期と自己の形成の課題について, アイデンティティや防衛機制に関する概念や理論等を活用して, 進路決定や日常生活の葛藤について考察する力を問うとともに, 日本及び世界の宗教や文化をとらえる上で大切な知識や考え方についての理解を問う ( 夏休みの課題として複数のテーマについて調

(3) 指導観公民的分野は地理的分野と歴史的分野の学びの積み重ねによるところが大きい 用語や概念も高度化し 生徒の感想にも 難しい と感じるものが多くなっている そこで その難しいと感じる公民の用語などは積極的に用語集を活用し 難しい言葉に対する抵抗感を少しでも和らげるよう授業でも活用している また

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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第 5 学年 社会科学習指導案 1 単元名自動車をつくる工業 2 目標 我が国の自動車工業の様子に関心を持って意欲的に調べ, 働く人々の工夫や努力によって国民生活を支える我が国の工業生産の役割や発展について考えようとしている ( 社会的事象への関心 意欲 態度 ) 我が国の自動車工業について調べた事

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中学校第 3 学年社会科 ( 公民的分野 ) 単元名 よりよい社会をめざして 1 本単元で人権教育を進めるにあたって 本単元は 持続可能な社会を形成するという観点から 私たちがよりよい社会を築いていくために解決すべき課題を設けて探究し 自分の考えをまとめさせ これらの課題を考え続けていく態度を育てる

知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

第 2 章 知 徳 体 のバランスのとれた基礎 基本の徹底 基礎 基本 の定着 教育基本法 学校教育法の改正により, 教育の目標 義務教育の目標が定められるとともに, 学力の重要な三つの要素が規定された 本県では, 基礎 基本 定着状況調査や高等学校学力調査を実施することにより, 児童生徒の学力や学

第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

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5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

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国語科学習指導案様式(案)

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H26関ブロ美術プレ大会学習指導案(完成版)

商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

基礎 基本の定着 習得すべき基礎 基本について 基本的人権の考え方や個人の尊重, 法の下の平等の原理についての理解 平等権をめぐる現代社会の諸課題とそれらに対する法整備の理解 自由権の種類とその内容の理解 社会権の種類とその内容の理解 参政権と請求権の種類とその内容の理解 公共の福祉と国民の義務の理

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

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Microsoft Word - 小学校第6学年国語科「鳥獣戯画を読む」

基礎を育てることを主なねらいとしている 現在 地方自治体を取り巻く状況は 少子高齢化 情報化 グローバル化 経済の変動などによ り急速に変化している また 地方分権を推進する法律がつくられ 各地方自治体は 財政の健全 化や組織の改編 市町村合併等の新しい枠組みづくりに取り組んでいる さらに 子育て支

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

今年度の校内研究について.HP

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

中学校における授業実践事例 1 第 3 学年社会科 消費生活と経済 1 学校名 職氏名萩市立田万川中学校教諭室谷雄二 2 生徒 3 学年 15 人 3 学習指導案 (1) 題材名消費生活と経済 (2) 題材の目標経済活動の意義について消費生活を中心に理解させるとともに 価格の働きに着目させて市場経済


平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

ICTを軸にした小中連携

子葉と本葉に注目すると植物の成長の変化を見ることができるという見方や, 植物は 葉 茎 根 からできていて, それらからできているものが植物であるという見方ができるようにしていく また, 学んだことを生かして科学的なものの見方を育てるために, 生活の中で口にしている野菜も取り上げて観察する活動を取り

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第○学年 ○○科指導計画

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中学校第 3 学年国語科学習指導案 日時平成 28 年 月 日第 校時対象第 3 学年 組学校名 中学校授業者 1 教材名 故郷 2 単元の目標 情景や人物を描写する語句や表現を読み取り 内容への理解を深めることができる 作品を通して 社会の中での人間の生き方について考え 自分の意見をもつことができ

4 単元の評価規準 コミュニケーションへの関心 意欲 態度 外国語表現の能力 外国語理解の能力 言語や文化についての知識 理解 与えられた話題に対し 聞いたり読んだりした 1 比較構文の用法を理解 て, ペアで協力して積極 こと, 学んだことや経 している 的に自分の意見や考えを 験したことに基づき

画像, 映像などの気象情報や天気と1 日の気温の変化の仕方に興味 関心をもち, 自ら気象情報を収集して天気を予想したり天気の観測をしたりしようとしている 気象情報を活用して, 天気の変化を予想することができる 1 日の気温の変化の仕方を適切に測り, 記録することができる 天気の変化は気象情報を用いて

指導内容科目国語総合の具体的な指導目標評価の観点 方法 読むこと 書くこと 対象を的確に説明したり描写したりするなど 適切な表現の下かを考えて読む 常用漢字の大体を読み 書くことができ 文や文章の中で使うことができる 与えられた題材に即して 自分が体験したことや考えたこと 身の回りのことなどから 相

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2、協同的探究学習について

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

第 4 学年算数科指導案 平成 28 年 11 月 2 日 ( 水 ) 第 5 校時場所 4 年 2 組男子 22 名女子 10 名指導者垣見遥 ともなって変わる量 思考力 判断力 表現力の育成 ~ 児童の考えを引きだす算数的活動の工夫 ~ 1 単元名 ともなって変わる量 2 単元の目標 ともなって

や水産生物の栽培を含むかたちで生物育成領域が新設され C 生物育成に関する技術 が必修化さ れた これは社会の基礎として存在する生物育成の技術について すべての生徒が体験し その重要 性を理解する必要性があるからである しかし 中学校技術 家庭科 ( 技術分野 ) における栽培技 術は長い間必修領域

成績評価を「学習のための評価」に

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

H27 国語

社会科学習指導案 横浜市立いぶき野小学校 指導者 後藤覚洋 1 単元名暮らしの中の政治 2 日時平成 28 年 1 月 27 日 ( 水 ) 5 校時 3 学年 組第 6 学年 1 組 40 名 4 単元目標身近な地域で行われている施策や国や地方公共団体のはたらきとしくみについて調べ, 政治は, 国

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

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○数学科 2年 連立方程式

英語科学習指導案 京都教育大学附属桃山中学校 指導者 : 津田優子 1. 指導日時平成 30 年 2 月 2 日 ( 金 ) 公開授業 Ⅱ(10:45~11:35) 2. 指導学級 ( 場所 ) 第 2 学年 3 組 ( 男子 20 名女子 17 名計 37 名 ) 3. 場所京都教育大学附属桃山中

年間授業計画09.xls

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

平成 2 2 年度 広島市教育センター 目標の明確化と指導と評価の一体化に関する研究 - 指導計画とイメージマップの工夫 改善 - 広島市立安西中学校教諭松岡美香 研究の要約 知識基盤社会 の時代, 子どもたちに 生きる力 をはぐくむという理念はますます重要であり, 確かな学力を身に付けさせるために

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「標準的な研修プログラム《

(2) 授業者が学びの見通しを持つ ( 学習目標の明確化 ) 問題解決的な学習に取り組む際, どのような場面で, どのようにして, どのような力を子どもたちに付けるのか, 単元や授業における目標を明確にして学びを見通しておくことが大切です 目標が不明確であると, 作業や体験などの活動そのものに, 子

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福祉科の指導法 単位数履修方法配当年次 4 R 2 年以上 科目コード EC3704 担当教員佐藤暢芳 ( 上 ) 赤塚俊治 ( 下 ) 2017 年 11 月 20 日までに履修登録し,2019 年 3 月までに単位修得してください 2014 年度までの入学者が履修登録可能です 科目の内容 福祉科

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

し, 定期的に評価することで 自己の考え を自覚する場面を意図的に設定している 本教材の学習においては, 様々な情報の中から必要な情報を取り出し, 整理 分析し, それに基づいた自分の考えを表現する活動を通して, 自己の考えの深まりや広がり を実感させることによって, 課題改善につなげたいと考えてい

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学年第 3 学年 2 単元名 ( 科目 ) いろいろな関数の導関数 ( 数学 Ⅲ) 3 単元の目標 三角関数 対数関数 指数関数の導関数を求めることができる 第 次導関数の意味を理解し 求めることができる 放物線 楕円 双曲線などの曲線の方程式を微分することができる 4 単元の学習計画 三角関数 対

たい 生徒は九州地方のイメージを漠然と 自然が多い 山がある 空気がおいしい というような自然や環境がよいことをあげていた そこで 九州地方の環境と産業の関わりや環境保全への取組 持続可能な社会を目指した活動についてなど 九州の地域的特色を捉えさせることが重要である そのために 環境保全には人々の積

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第 1 学年国語科学習指導案 日時 平成 27 年 11 月 11 日 ( 水 ) 授業 2 場所 八幡平市立西根中学校 1 年 2 組教室 学級 1 年 2 組 ( 男子 17 名女子 13 名計 30 名 ) 授業者佐々木朋子 1 単元名いにしえの心にふれる蓬莱の玉の枝 竹取物語 から 2 単元

理科学習指導案

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2 単元の目標 廿日市市 についての魅力を目的意識や相手意識を明確にして地域内外に発信することができる 自分たちの住む 廿日市市 に愛着をもつことができる 3 単元の評価規準 学習方法 自分自身 他者や社会 課題発見力 思考力 判断力 表現力 主体性 自らへの自信 対象と積極的にかかわる中で, 課題

ている それらを取り入れたルーブリックを生徒に提示することにより 前回の反省点を改善し より具体的な目標を持って今回のパフォーマンスに取り組むことができると考える 同に そのような流れを繰り返すことにより 次回のパフォーマンス評価へとつながっていくものと考えている () 本単元で重点的に育成をめざす

2 単元の構想本単元の目標 関心 意欲 態度 身近にある基本的人権に関する問題を取り上げ, 学習した内容をもとに意欲的に調べようとすることができる 社会的な思考 判断 人間尊重の立場から, 社会における様々な基本的人権の尊重における課題を見出し, 多面的 多角的に考察し, 根拠を明確にして公正に判断

(2) 系統観 小学校社会科 ( 第 6 学年 ) 世界の中の日本の役割について, 我が国と経済や文化などでの面でつながりが深い国の人々の様子などを調査し, 外国の人々と共に生きていくためには異なる文化や習慣を理解し合うことが大切であることを考える 中学校社会科 ( 第 1 学年地理的分野 ) 世界

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第5学年  算数科学習指導案

第 4 学年算数科学習指導案 平成 23 年 10 月 17 日 ( 月 ) 授業者川口雄 1 単元名 面積 2 児童の実態中条小学校の4 年生 (36 名 ) では算数において習熟度別学習を行っている 今回授業を行うのは算数が得意な どんどんコース の26 名である 課題に対して意欲的に取り組むこ

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6. 単元の展開 ( 全 6 間 ) 学習活動 単元の見通しを持つ 2. 学習計画を立てる 3. 本文を読み, 感想を書く 内容に関する感想 書き方に関する感想 4. 感想や疑問を交流する 指導上のポイント ( ) 学習活動に即した評価規準 ( 関 読 言 ) 既習事項を振り返らせ,

第 2 学年 5 組理科学習指導案 日時平成 26 年 12 月 12 日 ( 金 ) 場所城北中学校授業者酒井佑太 1 単元名電気の世界 2 単元について (1) 教材観今日の私たちの日常生活において 電気製品はなくてはならないものであり 電気についての基礎的な知識は必要不可欠である しかし 実際

しかし 社会科については 嫌い どちらかといえば嫌い と答えている生徒の方が多く また 地理分野よりも歴史分野のほうに興味関心が高い傾向がある 資料の活用に関しては 地図や資料集を用いながら授業を進めている ほとんどの生徒は資料を読み取ることができるものの 読み取ったことを比較したり 関連付けたりす

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

Transcription:

中学校社会科における資料活用能力を育てる指導の工夫 永澤 宏明 秋田県学習状況調査により, 所属校の生徒の実態として, 資料活用能力に課題があることが明らかになった 本研究では, 新聞記事を授業に取り入れて, 生徒が学習で身に付けた知識及び技能を活用する学習展開により, 資料活用能力を育てることができると考えた 新聞記事やロジックツリーの特性を生かした学習を展開することで, 生徒が社会的事象と向き合い, 思考を深めながら諸資料を効果的に活用する姿が見られるようになった キーワード : 資料活用能力, 新聞記事, ロジックツリー Ⅰ 主題設定の理由秋田県学習状況調査 ( 平成 21 年 12 月実施 ) の結果から, 所属校の生徒の実態として, 複数の資料をもとに比較 関連付けするなど, 資料活用能力に課題があることが明らかになった このような実態を改善するためには, 日常の指導において, 具体的な事例を通して知識や概念を形成させる指導の工夫や諸資料を活用させる指導の工夫が必要である 中学校学習指導要領解説社会編 ( 平成 20 年 9 月, 文部科学省 ) によれば, 公民的分野の学習では, 具体的事例を通して政治や経済などについての見方や考え方の基礎が養われるようにすること を目標としている この点を踏まえ, 資料の中に, 日常の社会生活の具体的な事象が掲載され, 時事性 正確性 信頼性のある新聞記事を取り入れることを考えた 新聞記事には, 文字情報の他に写真や図表などの視覚情報があるという利点がある 授業でこれらの特性を生かし, 地図や統計などの各種基礎的資料とともに活用を図ることで概念の形成につなげていけるのではないだろうか また, 問題の解決にあたっては, 生徒に思考のポイントや考える方向性を示すことが大切である そこで, 問題を解決するための手立てとしてロジックツリーを用い, 諸資料を効果的に活用させることにより, 資料活用能力を育てていきたい Ⅱ 研究の仮説 公民的分野の学習において, 単元に新聞記事などの資料の活用を位置付け, 具体的な事例に基づいた学習課題をロジックツリーの特性を生かして適切に解決させることにより, 資料活用能力を育てることができるであろう Ⅲ 研究内容 1 新聞記事を位置付けた学習内容表の作成公民的分野の学習では, 現代の社会的事象に関心をもって課題を追究するとともに, このような学習を通してさらに社会的事象への関心を高めることが大切である しかし, 所属校でのアンケート調査によると, 新聞を読む割合は, 時々読むを含めて55% であった 新聞を読まない理由は, 忙しい, 時間がない, 面倒くさいなどである このことから, 新聞などのメディアに目を向けさせ, 今の社会的事象への関心を高める必要があると考えた そこで, 学習内容に関連する2010 年の新聞

記事を位置付けた学習内容表を作成し ( 図 1), この表をもとに授業を構築した この図の新聞記事は, 新しいニュースや生徒が収集した新聞記事と適宜入れ替えながら用いる また, 新聞記事を単元や分野ごとに蓄積し, 社会的事象の推移を比較したり, 同様の事象を関連付けたり, 事象の結果を調べる際のデータベースとしても活用することができる 学習内容 新聞記事 (2010 年 ) (1) 私たちと現代社会ア私たちが生きる現代社会と文化イ現代社会をとらえる見方や考え方 ブルカ禁止決議 犯人よもう逃げられない 臓器移植法施行 駐車版 優先席 殺人など時効廃止 ワシントン条約会議 普天間問題揺れる 捕鯨妨害で起訴 (2) 私たちと経済ア市場の動きと経済イ国民生活と政府の役割 口蹄疫に国 県甘い対応 事業仕分け カツオの北上遅れる 介護保険維持できない 少子高齢化進む 国の借金 882 兆円 政府予算案決定 政府税制改正大綱決定 円急騰一時 82 円 地デジ普及率 83% エコポイント効果 高校授業料無償法案成立 (3) 私たちと政治ア人間の尊重と日本国憲法の基本原則イ民主政治と政治参加 小林多喜二の新作発見子ども手当法成立足利事件無罪確定 1 票の格差違憲判断福島消費者相を罷免国民投票法が成立 鳩山総理大臣辞任菅内閣発足裁判員制度 1 年 (4) 私たちと国際社会の諸問題ア世界平和と人類福祉の増大イよりよい社会を目指して 山崎さん宇宙へ東京の人口 1300 万人空の足混乱世界に波及 上海万博開幕 EU 新条約発効ギリシャ金融危機ノーベル賞受賞 NPT 再検討会開幕新 START G20 菅総理出席 図 1 新聞記事を位置付けた学習内容表 2 資料活用能力を育てる授業構想図の作成本研究では, 資料活用能力を1 収集,2 選択,3 読み取り,4 意味づけ,5 比較関連,6 表現と捉えた このような能力を系統的に育てるためには, 社会科の年間を通しての指導全体を視野に入れ, 学習内容や教材の特性を考慮し, 多様な形態の資料を活用する授業を計画的に行うことが大切である そこで, 授業構想図 ( 図 2) を作成し, それぞれの段階で資料の活用を位置付けていくこととした 授業構想の つかむ段階 では, 社会生活の具体的事例から問題を見出し, 学習課題を設定させる 追究する段階 では, 必要な情報とそうでない情報を選別する合理的な基準を見出す能力を学習の中で養えるような調査活動を行う まとめる段階 では, レポートやポスターセッションなど多様な表現活動を計画する そして, それぞれの段階で新聞記事を他の基礎的資料とともに活用させることにより, 自らの知識や経験に基づいた具体的な課題解決を目指していきたい

聞記事学んだ知識や技能を課題解決に活用することができる まとめる段階 学習課題を解決 社会との関係 資料の活用を位置付ける 新1 収集追究する段階 ロジックツリー 2 選択 3 読み取り学習課題の追究 4 意味づけ仮説 検証 5 比較関連 6 表現つかむ段階学習課題の設定生活との関係実態 用語は知っているが具体的な事例と結びつかない 内容や制度などの知識理解で終わり, 基本的な考え方や意義の理解が不十分 図 2 授業構想図 3 資料活用の手立て資料を効果的に活用する手立てとして, ロジックツリーを用いた ロジックツリーは論理構成を図式化したもので, 主張を明らかにするツールである ツリーの最上層には, 解決されるべき学習課題を具体的に設定する 最上層にある課題について, なぜそうなのか, どうすれば解決できるかを考え, 解決を図っていく 上位から下位に分解していくが, 最上層と最下層が, 全体 と 部分, 原因 と 結果 などの関係になる 課題の全体像を見極め, 構成要素を整理して考えるもので, 一般的には3 段階で作成する 授業においては, 既習の用語や知識を活用して資料を調べ結論を説明するツールとして使用する 第 2の段階を記入する際に, 生徒が話し合いによって焦点を絞ったり, 教師が思考のポイントや解決の方向性を示すことにより, 解決までの思考の深まりや作業時間の短縮が期待できる また, 検証授業の前後に思考の過程を確認するため, マインドマップを用いた マインドマップは連関図の一つで質的な関連により整理 解決していく手法である テーマに沿って自分の考えた手段や解決策を周辺に配置し, 線や矢印で結びながら内容を整理する 新しい発想や方策を考える場面などで様々な形で用いられる マインドマップで思考を広げることで知識の連関が図られ, 整理した内容をロジックツリーで展開することでより論理的な解決が図られると考える

Ⅳ 検証方法 1 検証授業 (1) 調査対象 大仙市立 O 中学校第 3 学年 1クラス37 名 (2) 実施時期 Ⅰ 期 平成 22 年 5 月 31 日 Ⅱ 期 平成 22 年 9 月 3 日 ~9 月 10 日 (3) 単元名 Ⅰ 期 人権と共生社会 Ⅱ 期 国の政治のしくみ (4) 学習活動 Ⅰ 期 検証授業時数 主 な 学 習 活 動 自 由 権 1 小林多喜二の人生を現在の社会や自分の生活と比較して考え, 人権の意味や内容について調べる ( 新聞記事, 学習シート, 評価カード ) つかむ 段階で新聞記事を取り入れる 新聞記事の収集とレポート作成 ( 夏季休業中 ) 資料の収集, 選択, 読みとりなど検証授業につなげる Ⅱ 期 検証授業時数 主 な 学 習 活 動 国会のしくみ 1 国会のしくみを知る( マインドマップ, 学習シート ) 国会のはたらき 2 法律案をつくる( 新聞記事, ロジックツリー, 評価カード ) 追究する 段階で生徒が収集した新聞記事を取り入れる 法律案を説明する( ポスター, 評価カード, マインドマップ ) 2 検証方法 (1) ロジックツリーの特性を生かした課題解決によって諸資料を効果的に活用できたかに ついて, ロジックツリー及びマインドマップへの記入内容を分析する (2) 検証授業の学習シートの記述内容, 課題解決の過程, まとめ ( 作品 ) を検証する Ⅴ 検証結果と考察 1 結果 (1) ロジックツリーとマインドマップの分析から図 3は, 検証授業 Ⅱのロジックツリーの記入例である 学習シートの記述を分析すると, ロジックツリーで思考を焦点化することで, 解決までの過程を比較しながら聞き, 他のグループの対策について自分なりの判断をしている生徒が66% であった 授業の分かりやすさの評価 (4 点満点 ) では, 検証授業 Ⅰ( ロジックツリーの活用なし ) が3.3で, 検証授業 Ⅱ( ロジックツリーの活用あり ) が,3.6であった その理由として挙げられていたのは, 図 3 ロジックツリーの記入例 調べるポイントがはっきりしている, ポイントごとに役割を分担できたなどであった また, ロ ジックツリーに記入したことを基に作業することで, 作業に要する時間が短縮された 図 4は, 検証授業前後のマインドマップへの記入の変化を示している その中で, テーマ周 辺への記入数が2.9から4.1になり, そのほとんどが単元を通して習得が期待される用語 ( 以下, 基本的用語 ) で占められようになり, 用語同士の関連を示す線も7.0から10.8になった また, みんなの党 など授業で取り上げなかった時事的な用語も記入されるようになった この記入 内容の量的 質的向上から, 授業に新聞記事を取り入れた効果がうかがえる

12 10 授業前 授業後 8 6 4 2 0 総記入数基本的用語テーマ周辺関連を示す線 40 30 項目別記入数 授業後 授業前 20 10 0 1 個人別記入数 36 図 4 検証授業前後のマインドマップへの記入の変化 (2) 検証授業から Ⅰ 期検証授業では, 単元 人権と共生社会 中の 自由権 の導入として新聞記事を取り入れた 導入によって学習課題に興味関心をもてたとする生徒は86% であった また, 人権について具体的に理解できたとする生徒は80% であった しかし, 授業で提示した資料のほとんどが文書資料であり, 読み取りに時間がかかり, 中心課題についての話し合いを十分に行うことができなかった Ⅱ 期検証授業では, 単元 国の政治のしくみ の中の 国会のはたらき の展開に生徒が夏季休業中に収集した新聞記事を資料として取り入れた あるグループでは, 地上デジタル放送という身近な事象を取り上げた新聞記事から学習課題をつかみ, リサイクルやエコの視点から他の例と比較関連させながら追究することができた まとめでは, エコ活動を通した温暖化防止の対策が具体的に考えられていた 図 5は, 検証授業の様子である すべての班で学習の図 5 検証授業の様子成果をまとめてポスターセッションを行い, 提案理由や具体的な対策について自分のことばで説明したり, 質疑応答をしたりすることができた 2 考察 (1) ロジックツリーとマインドマップの分析からロジックツリーによって思考が焦点化され, 社会的事象を正しく読み取るだけでなく, 事象の推移に関心をもって統計資料を調べるなど, 意味づけや比較関連をしたりしながら思考を深めることができた マインドマップへの総記入数は,70% の生徒が増加している 30% の生徒が減少しているが

これらの生徒の基本的用語の記入数は,86% 増加している このことから, 学習を通して, 記入内容の質的な向上が図られたと捉えることができる このことが, 必要な資料を適切に選択して論拠として取り込むなど, 資料の効果的な活用に結び付いている (2) 検証授業から授業に新聞記事を取り入れることで, 生徒の学習への興味関心が高まった 興味関心が生徒の課題追究の意欲を高め, 実感を伴った具体的な理解につながり, また, そのことにより新聞などのメディアに更に目を向けさせることができた 新聞などのメディアに目が向くと, 情報を収集したり選択したりする合理的な基準がはっきりしてくる そして, その基準で読み取り, 意味づけを行うことにより, 他の事例と比較したり関連付けたりして考察することができるようになった このような課題解決へのプロセスによって, 資料を活用する技能が高まった Ⅵ 成果と課題 1 成果新聞記事を授業に取り入れることは, 社会的事象に目を向けさせ, より具体的に考えさせる上で有効な手段であった 学習を通して新聞記事の利点を理解し, 社会的事象から考察しようとする態度が身に付いてきた 検証授業のポスターセッションでは, 自分たちがつくった法律案を説明し, 質疑応答を行い, 採択するという学習過程の中で, それぞれの法案についてグループで議論をすることができた そこでは, 資料から必要な情報を読み取るだけではなく, 習得した知識, 概念や技能を活用して他の事例と関連付け, 具体的な取り組みやその効果を取り上げて表現することができた また, 各分野で培った社会的な見方や考え方を活用し考察しようとする意識も高まった ロジックツリーは, 思考のポイントや解決の方向性を話し合ったり, 生徒同士で確認したりする上で効果的なツールであった 学習課題の解決に向け, 思考を深めさせながら作業時間の短縮を図ることができた 検証授業では, 資料を単に読み取るだけでなく, 資料の特性を理解した上で批判的に検討したり, 視覚情報を作ったりする姿が見られるようになった 2 課題本研究では, 新聞記事を単元に位置付ける学習内容表を作成し, 表をもとに授業を構築する段階まで進んだ 新聞記事には, 問題を提起する記事, 問題の経過を説明する記事, 問題を解明する記事, 問題の結果を報告する記事などがある それらを分類 整理し, どのタイプの記事を学習過程のどこで用いるかについても検討する必要がある また, 資料活用能力を育てる上で, 基本的知識の習得や多面的 多角的に考察する力は大切な要素である その意味で, 新聞記事を位置付けた学習内容表を更に充実させていきたい マインドマップとロジックツリーの関連やロジックツリーの効果的な活用とともに, 来年度の課題としたい 参考文献 文部科学省 (2008) 中学校学習指導要領解説社会編. 秋田県教育委員会 (2009) 平成 21 年秋田県学習状況調査の結果. 秋田県教育委員会 (2010) 秋田県学校教育の指針. 北俊夫 (2005) あなたの社会科授業は基礎 基本を育てているか 明治図書.