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低温度なエネルギーを用いた融雪システム 柳博文 1 松浦和也 1 正会員工博鉄建建設株式会社建設技術総合センター ( 86-85 千葉県成田市新泉 9-1) 正会員鉄建建設株式会社建設技術総合センター ( 86-85 千葉県成田市新泉 9-1) 北海道をはじめとする積雪寒冷地では, 散水融雪を採用した場合には路面凍結の恐れがあり, 無散水融雪であるロードヒーティングが有効的と考えられる. 特に, 地中熱利用による融雪システムは初期費用が比較的高価であるが, ランニングコストと環境負荷の面で優位性が認められる. しかし, 他の伝熱方式等に比べ低温な地中熱をエネルギー源とするため, 北海道などの厳しい気象条件下ではボイラー等の補助熱源が必要となるケースが多い. このため, 地中熱単独の融雪利用の有効性については明確な評価はされていない. 低コスト化の観点から, 札幌市内において地盤から得られる低温度の熱エネルギーのみを活用した無散水融雪試験を実施したので, その結果について報告するものとする. キーワード : 地中熱, ロードヒーティング, 融雪, 凍結防止 1. はじめに北海道をはじめとする積雪寒冷地では, 散水融雪を実施した場合には路面凍結の恐れがあり, 無散水融雪であるロードヒーティングが有効的である. 特に, 地中熱利用による融雪システムは初期費用が比較的高価であるが, ランニングコストと環境負荷の面で優位性が認められる. しかし, 積雪寒冷地で融雪システムを導入するにあたっては, ヒートポンプなどの補助熱源を併用しているケースが多く見られ, この補助熱源を必要とするならばこのような長所が没却されかねない. しかし, 既往の文献 1)~3) に見られるように, これまで北海道などの厳しい気象条件下での地中熱のみを利用した融雪システムの有効性についての明確な確認はされていない. そこで, 他の伝熱方式等に比べ低温な地中熱を唯一の熱源とする融雪システムの有効性を確認するため採熱試験及び放熱試験を実施した 本報では, 積雪寒冷地での循環水の流量と採熱量並びに循環水の温度上昇との相関性を明らかにし, さらに気象条件の厳しい積雪寒冷地においても, 地中熱から得られる低温度エネルギーのみでも効果的な融雪及び凍結防止効果が確認できたことを報告する. 循環水出入口温度 熱交換杭 L=4m,φ1 舗装体温度 ( 鉛直方向 ) 図 -1 融雪システム概要図 交計測小屋熱換杭流量計 計測小屋 P 循環水出入口温度 無対策舗装融雪舗装融雪舗装 t=16 mm t=16 mm 無対策舗装杭無対策舗装 融雪舗装 融雪舗装 ( m) ( 4m) ( 4m). 試験概要 写真 -1 融雪システム全景 当融雪システムの概要図とその写真を図 -1, 写真 -1 に示す 熱交換杭は二重管方式とし, 熱交換杭の

表 -1 融雪システム諸元表 部位 仕様, 形状 数量 熱交換杭 外管 VP1 内管 VP5 L=4m 循環水 ホ リフ ロヒ レンク リコール 5% - 融雪舗装体 m 4m t=16 mm ブロック 普通コンクリート 18N/ mm A=16m 無対策舗装体 m m t=16 mm 1ブロック 普通コンクリート 18N/ mm A=4m 放熱管 SGP-B 15A - 内管内部を下方向に向かって流れる循環水は熱交換杭下端で外管に移動し, 外管と内管の間を上昇する間に地盤より熱エネルギーを採取する. このように熱交換杭により温められた循環水は, 融雪舗装体に埋設された放熱管 (φ15 mm, 被り 5 mm ) へと流れ込み, この舗装内部に配した放熱管内を流れることで熱エネルギーを放出 ( 融雪 ) し, 再び熱交換杭の内管に戻る循環システムである. 融雪システムの各部位の諸元は表 -1 のとおりである. 試験の手順として, 熱交換杭の採熱能力の試験を採熱試験にて実施する. 熱交換の媒体である循環水の流量をパラメータとして,Q= L/min から 15L/min,1L/min,5L/min と連続的に変化させ, 最終的に最大流量.5L/min で試験を終了し, この時の熱交換杭の出入り口温度差から熱交換杭による採熱量を把握した. 熱交換杭については, 外管 φ1 mm ( 内管 φ5 mm ) の塩ビ管 L=4mを採用している. 次に, 融雪試験を上記と同様に流量をパラメータとして Q=L/min,1L/min,5L/min で実施し, 融雪舗装体出入り口部の循環水の温度差から融雪能力の把握を行った. 試験期間中 ( 概ね 1 ケース 1 日 ~ 15 日間 ) は舗装体の鉛直方向の温度分布及び融雪舗装体出入口部の循環水温度を採熱試験の計測項目に加え計測している. 融雪量及び積雪量は, 適時ロットにて目視確認を行った. G.L. 流量計熱交換杭採熱による循環水の温度上昇 ( ) 3..5. 1.5 1..5. ポンプ P G.L.-.5m 融雪舗装体 G.L.-5.m 内管 :VP5( 塩化ビニル管 ) G.L.-1.m 外管 :VP1( 塩化ビニル管 ) G.L.-5.m 出口温度 (1 箇所 ) 入口温度 (1 箇所 ) 外管温度 (4 箇所 ) G.L.-39.9m 内管温度 (5 箇所 ) 図 - 熱交換杭概要図 y = -.98x + 1.983 R =.914 1 3 流量 (L/min) 図 -3 流量と循環水の温度上昇との関係 ブにより順次流量を切り替えた. 3. 採熱試験 (1) 試験手順採熱試験においては, 熱交換杭の採熱能力に着目するため, 融雪舗装体に残雪を堆積させた状態で試験を行った. 図 - に熱交換杭の概要図と温度計測箇所を示す. 温度計測は外気温のほか, 熱交換杭出入り口の循環水温度 ( 各 1 箇所 ) 及び熱交換内部の鉛直方向の温度分布 ( 計 9 箇所 ) である. 流量は, L/min,15L/min,1L/min,5L/min,.5L/min と連続的に変化させ, 各流量においては出入口温度が定常状態もしくは 9 分 ~1 分経過した時点でバル () 試験結果各流量と循環水の温度上昇 ( 出口温度と入口温度との差 ) の関係を図 -3 に示す. 今回の試験の範囲では, 流量と温度上昇の関係は一次式で近似することができ, 流量が増加するとともに循環水の温度上昇分が減少するといった負の比例関係が認められる. 次に, 循環水の温度差に流量を乗じて得た熱量と流量の関係を図 -4 に示す. 熱量については, 熱交換杭の長さで除し, 杭の単位長さ当たりの採熱量として表している. 当該試験結果において,L/min までは流量の増加に比例して採熱量も増加しているが,.5L/min になるとその増加分は減少していること

熱量 (W/m) 1 1 8 6 4 4 6 流量 (L/min) 図 -4 流量と採熱量との関係 無対策舗装部融雪舗装部 1 mm 8 mm 15 mm 札幌採熱試験結果文献 1) G.L. 1 mm 3 mm 5 mm 1 mm 15 mm 17 mm 3 mm 5 mm 1 mm 融雪舗装 地盤 図 -5 舗装体 ( 鉛直方向 ) 温度測定位置 積雪深さ (cm) 45 4 35 3 5 15 1 5 積雪深さ (cm) 45 4 35 3 5 15 1 5 計測期間 6.1.5 16:~.9 1: 融雪舗装無対策舗装 循環流量 Q= リットル /min 1 1 月 4 日 1 月 5 日 1 月 6 日 1 月 7 日 1 月 8 日 1 月 9 日 1 月 3 日 月 8 日 月 9 日 月 1 日 月 11 日 月 1 日 月 13 日 a) 流量 Q= リットル /min 計測期間 6..9 1:~6.. 9: 融雪舗装無対策舗装 循環流量 Q=5 リットル /min 3 1 月 31 日 月 1 日 月 日 月 3 日 月 4 日 月 5 日 月 6 日 月 7 日 月 8 日 月 9 日 月 1 日 月 11 日 月 14 日 月 15 日 月 16 日 月 17 日 月 18 日 月 19 日 月 日 月 1 日 月 日 月 3 日 月 4 日 がわかる 図中に文献 1) として福井大学で行われた採熱試験結果 1) を併せて記載している. 文献 1) では, 杭長 7m であり材質はポリエチレン管 ( 内管 φ 56 mm外管 φ9 mm ) となっており, 循環水はホ リフ ロヒ レンク リコール % を使用している. 本試験の結果と文献 1) との採熱量の違いは, 杭材の熱貫流率並びに循環水の濃度の違いが現れていると考えられるが, 熱交換杭が二重管構造であることから, 単に杭材の熱貫流率の比による補正のみでは一義的には決めることができない. 熱交換杭の採熱量については, 今後試験を重ねるとともに, 杭材の熱伝導率及び循環水の層流時の影響等を加味した, 定量的な評価手法を検討する必要がある. 積雪深さ (cm) 45 4 35 3 5 15 1 5 月 日 月 日 b) 流量 Q=5 リットル /min 計測期間 6.. 9:~3.15 8:3 月 4 日 融雪舗装無対策舗装 循環流量 Q=1 リットル /min 月 6 日 月 8 日 3 月 日 3 月 4 日 3 月 6 日 3 月 8 日 3 月 1 日 c) 流量 Q=15 リットル /min 図 -6 積雪量変化 3 月 1 日 3 月 14 日 3 月 16 日 3 月 18 日 4. 融雪試験 (1) 試験手順融雪試験については図 -1 と同様のシステムで行っており, 融雪舗装体の脇には, 融雪効果の比較のために無対策の舗装を設置している. 融雪試験は流量をパラメータとし, 流量を L/min,5L/min, 1L/min と変化させている. 各試験ケースにおいては, 積雪状況に応じて 1 日 ~ 日程度連続運転を行い, 採熱試験の計測項目に加え, 各舗装体の鉛直方向温度分布 ( 図 -5) 及び融雪舗装体出入口部の循環水温度を計測した. 融雪量及び積雪量は, 適時ロ ットにて直接確認している. () 試験結果 a) 融雪状況融雪状況について, 積雪 ( 融雪 ) 量の経時的な変化を表したグラフを図 -6a)~c) に示す. 全体的に, 無対策舗装に比べて融雪舗装の方が積雪量が少なくなっていることがわかる. また, 急激な融雪性能は期待できないが, 積雪量が 3cmを超える状況下においても, 降雪時の積雪開始を遅らせる効果とあわせて, 概ね ~3 日程度で完全に融雪されているのが判る. 試験結果のうち, 流量が L/min 時の図 -6a) 中

1 6.1.31 9: Q= リットル 熱交換杭計測小屋 15cm 無対策舗装 a) 積雪前 cm 融雪舗装部 6.. 8:1 熱交計測小屋換杭37cm 無対策舗装部 Q= リットル 1.4cm 融雪舗装部 b) 降雪時 3 6..3 9: Q= リットル 熱交換杭計測小屋 8cm 無対策舗装 c) 融雪後写真 - 融雪状況 cm 融雪舗装部 における1~3の状況を写真 -a)~c) に示す. この場合, 降雪後の積雪ピーク時から 4 時間後には舗装体の表面が現れだしているのが判る. なお, 図 -6 のグラフ中で融雪舗装体の方が積雪量の多い時点があるが, これは融雪舗装体に地吹雪等で雪が堆積した影響と考えられる. 次に, 融雪されていない場合の舗装表面状況の目視確認を行った. その時の状況を写真 -3 に示す. 確認を行ったのは,1 月 6 日で気温 -3.5, 積雪量は融雪舗装体が 7.6cm, 無対策舗装体は 4.6cm であった. 融雪舗装体について一部の残雪を取り除くと, 舗装表面近傍ではシャーベット状になっており融雪効果が確認できた. このことより, 完全に融雪されていなくても除雪の容易さ並びに車や歩行者が通行することによる融雪の促進が期待できる. 一方, 無対策舗装体については完全に凍結しており舗装体に残雪がこびり付いている状態であった. 写真 -3 舗装体表面の状況 b) 舗装体の温度分布次に, 流量が L/min 時の舗装表面と循環水の経時的な温度変化を図 -7 に示す. 舗装出入口の循環水の温度差は概ね一定で推移しており, 安定的に熱量が供給されているのがわかる. また, 積雪の状況下では舗装表面温度も融雪舗装, 無対策舗装ともに一定値を示しており, 融雪舗装体については, 外気温が-1 を下まわっている状況においても表面温度は 以上を示し, 舗装表面の凍結が防止されていることがわかる. ここでは, 舗装体の表面温度が を下まわっている状態を凍結と定義するものとする. 一方, 完全に融雪されている状態 ( 積雪なし ) では, 舗装表面温度は外気温の影響を大きく受けて変動しており, 気温が-3 ~-4 より低い場合には舗装体表面も凍結している状態になっていることがわかる. 積雪時並びに積雪ゼロ時 ( 写真 -4) のそれぞれの状況に応じた舗装体鉛直方向の温度分布を図 -8 に示す. 積雪時には, 無対策舗装では舗装全体が凍結している状態にあるが, 融雪舗装については積雪の保温効果もあり, 全体的に循環水の熱により温められ, 融雪 凍結防止効果が現れている. 融雪後の積雪のない状態では外気温変化の影響を受けるため, 融雪舗装の表面温度は-3 近くまで低下しており, 放熱管から上部の範囲においてはその影響の程度が大き

Q= /min 1 6.1.5 18: 6..3 9: 外気温 循環水温度 舗装体入口部 循環水温度 舗装体出口部 融雪舗装表面温度 無対策舗装表面温度 8 6 4 温度 - -4-6 -8 融雪舗装部 積雪ゼロ -1-1 144 88 43 576 7 864 18 115 196 経過時間 min 図-7 舗装表面及び循環水温度変化 /min 融雪舗装 積雪なし 融雪舗装 積雪時 無対策舗装 積雪なし 無対策舗装 積雪時 無対策舗装自体には 常に積雪有り 舗装体天端 測定位置 - -4 放熱管位置 -6-8 -1-1 積雪時 外気温 -1-14 6.1.31 気温 約 1 舗装体下端 -16-4 - 温度 4 図-8 舗装体の鉛直方向温度分布 積雪なし 無対策舗装は積雪有り 6..3 気温 約 1 写真-4 計測時の融雪状況 い なお積雪状態にある無対策舗装と比べても 舗 装表面付近の温度については逆に温度が低く現れて いる 5 熱量収支について (1)採熱量と放熱量との関係 融雪試験の各流量ケースにおける 融雪に利用した 放熱量並びに融雪試験時の熱交換杭の採熱量と循環 水流量との関係を図-9 に示す なおグラフ中には 当初 の採熱試験で得られた採熱量と流量との関係を併せて 記載している 図-1 には 融雪に利用した放熱量と そ れに照応する熱交換杭の採熱量とを棒グラフにて比較 している 今回の試験の範囲において 融雪能力すなわち放 出熱量は循環水の流量が多いほど大きくなるが 流 量が 1L/min 以上の範囲では採取熱量と放出熱量と の乖離が大きく現れ 同一流量の下では採取熱量に 比べて放出熱量は小さい値となっている ここで融雪能力を考える時に 当該融雪システム では 熱交換杭から出た循環水は一旦二つに分岐さ れ それぞれ2ブロックに分けられた融雪舗装体に 流れているものであるから 各融雪舗装体に流れる 流量は熱交換杭に流れている流量の半分になってお り その ブロックの流量の合計と熱交換杭に流し ている流量が照応していることに留意する必要があ る -69-

熱量 (kw) 1.8 1.6 1.4 1. 1.8.6.4. 採取熱量 放出熱量 採熱試験結果 6.1.5 5 1 15 5 流量 ( リットル /min) 熱量 (kw) 1.6 1.4 1. 1.8.6.4. 採取熱量放出熱量.513.5.941.71 1.566.914 5 リットル /min 1 リットル /min リットル /min 流量 (L/min) 図 -9 流量と採取熱量 放出熱量との関係 図 -1 流量と熱量収支 6. まとめ今回の試験範囲において, 外気温が-1 を下まわるような状況においても, 低温度な熱エネルギーの単独利用による融雪システムの適用可能性を示すことが出来た. また, 今回の融雪システムにおいて次のような知見が得られた. 1) 流量の増加とともに熱交換杭による採熱量は増加するが,L/min 以上になるとその増加量は逓減する傾向が見られる. ) 流量の増加とともに熱交換杭の出入口温度差は小さくなる. この流量と熱交換杭の出入口温度差との関係は, 一次式により近似できる. 3) 杭の採熱能力は, 気温変化の影響下で連続運転を行えば短期に比べ採熱能力は最大で 15% 程度低下する. 4) 低熱エネルギーの条件下では, 路面凍結防止効果を得られるほどの能力はないが, 積雪の保温効果により融雪効果は十分に得ることができる. 5) 今回の融雪面積においては, 熱交換杭の採熱能力と融雪舗装の融雪能力は概ね 1L/min で均衡している. 次に, 今後の課題について述べると, 熱交換杭の採熱能力については, 地盤温度等の環境条件 熱交換杭の内外管の熱伝導率及び循環水の物性値の影響を加味した採熱能力の定量的な評価を確立する必要がある. また, 需要者の要求性能の見極め並びに低コストを目的とし効率を高める必要がある. さらには, 循環水の流れの性質及び物性値が熱伝導 ( 採熱能力 ) に与える影響を把握する必要があると思われる. 今回の研究開発は, 北武コンサルタント株式会社 と共同で行った成果を記したものである. 最後に, 本研究に対して福井大学の福原輝幸教授から貴重なご助言を頂いた. 記して謝意を表します. 参考文献 1) 大竹英雄 地中熱源ヒートポンプ式ロードヒーティングシステム 日本機会学会誌,vol.17, No.13,p44,4.11 ) 布施浩司ほか 省エネルギー型ロードヒーティングの性能評価試験 北海道開発土木研究所月報,No.594,pp4-31,.11 3) 岡喜秋ほか 鋼板を利用したロードヒーティングシステムの開発 北海道立工業試験場報告, NO.94,pp77-8,1995 4) 大木政弘ほか 掘削杭熱交換方式による地盤蓄熱と路面温度制御 水工学論文集, 第 41 巻, pp.587-59,1997 5) 福井県雪対策 建設技術研究所年報地域技術第 18 号,pp143-145,5.7 6) 福原輝幸ほか 放熱管を有する舗装体の融雪能力特性 水工学論文集, 第 36 巻,pp. 71-74,199