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Q2 蚊媒介感染症 にはどんな病気があるの? A2 蚊媒介感染症は世界的に数多く存在しますが, 海外から日本国内へ持ち込まれ, 流行する可能性のある感染症としては, ウエストナイル熱, ジカウイルス感染症, チクングニア熱, デング熱, 日本脳炎, マラリアの6つがあります 海外から持ち込まれる可能

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Transcription:

復興農学 被災地における害虫問題 女川 気仙沼 生物制御機能学分野 堀雅敏 1

災害時における衛生害虫問題 衛生害虫とは 人や家畜に対して害を与える昆虫やダニ類 東日本大震災の際は ハエや蚊が大量に発生し 問題となった 2

ハエと蚊の違い ハエ目 :2 枚の翅をもつ昆虫の分類群 後翅にあたる 2 枚が平均棍という器官になっている ハエ亜目 ( 短角亜目 ): 触角の節数が 3 節以下ハエ アブ カ亜目 ( 長角亜目 ) : 触角の節数が4 節以上カ ガガンボ チョウバエ キノコバエ ブユ 3

東日本大震災におけるハエの大量発生要因 飼料 肥料 玄米の貯蔵倉庫 水産加工場 冷凍貯蔵施設 大量の魚介類や穀物の流出 ハエ類の大量発生 4

大量の腐敗した有機物や流出 した肥料からのハエの発生 腐敗した有機物に群がるハエ類 ( イエバエ クロキンバエ ヒロズキンバエ ) 流出した肥料に発生したクロキンバエの幼虫 5

居住区に流出した玄米 6

発酵した玄米から発生したイエバエ 7

流出 散乱した魚介類の腐敗物 から発生したハエ類 腐敗 乾燥した魚 瓦礫に溜まった腐敗した魚から発生したクロキンバエの幼虫 8

積み上げられた瓦礫から発生したハエ類 集められた瓦礫 瓦礫の中の貝の残渣に群がる イエバエ クロキンバエ ヒロズキンバエ 9

漁港に集められた魚介類ごみ 10

東日本大震災における蚊の大量発生要因 崩壊した建物跡に残された浄化槽などの水たまり 水路の崩壊による水たまり 漁船などに溜まった水 ボウフラの大量発生 11

水田用水路の損壊とボウフラの発生 12

浄化槽におけるボウフラの発生 13

詰まった排水溝におけるボウフラの発生 14

クロバエ科 震災後に確認されたハエ 1 イエバエ科 オオクロバエ イエバエ ヒロズキンバエ オオイエバエ クロキンバエ モモグロオオイエバエ ハナバエ科 ツマグロイソハナバエ ヒメクロバエ 15

震災後に確認されたハエ 2 ハマベバエ科フンコバエ科ハマベバエミギワバエ科ショウジョウバエ科 ヒメショウジョウバエ ハナアブ科 カルマイタマヒラタアブ ノミバエ科 オオキモンノミバエ クサビノミバエ 16

粘着トラップに捕獲されたハエの数 調査場所 県名 市町村名 調査月水産加工場漁港埠頭ゴミ処理場瓦礫堆積場 ハエ種名岩手県宮城県岩手県岩手県宮城県岩手県岩手県 7 月中旬 9 月 大槌気仙沼宮古山田山田気仙沼大船渡陸前高田陸前高田 イエバエ 304 60 78 14 0 252 41 141 29 クロキンバエ 2,364 401 7 98 61 2,564 135 154 24 オオクロバエ属 0 0 0 0 0 0 0 0 0 フンコバエ属 0 128 25 7 169 175 140 7 34 ハマベバエ属 0 0 0 1 0 0 0 0 0 オオクロバエ属 3 7 0 0 11 0 2 0 3 17

イエカ属 アカイエカ / チカイエカ 震災後に確認された蚊 1 カラツイエカ ハマダラカ属 コガタアカイエカ シナハマダラカ イナトミシオカ ハマダライエカ クロヤブカ属 オオクロヤブカ 18

ヤブカ属 震災後に確認された蚊 2 セスジヤブカ ヒトスジシマカ キンイロヤブカ トウゴウヤブカ ナガハシカ属 ヤマトヤブカ キンパラナガハシカ 19

蚊が媒介する感染症 日本脳炎 ( 致死率 20 40%): コガタアカイエカ ウエストナイル熱 ( 致死率 3 15%) : アカイエカ チカイエカ ヒトスジシマカ デング熱 ( 致死率数 %): ネッタイシマカ ヒトスジシマカ チクングニア熱 : ネッタイシマカ ヒトスジシマカ ジカ熱 : ネッタイシマカ ヒトスジシマカ 黄熱 : ネッタイシマカ マラリア : ハマダラカ 20

蚊の主な発生場所 アカイエカ チカイエカ ネッタイイエカ汚水溜 下水溝 汚水槽 湧水槽 浄化槽コガタアカイエカ水田 用水路 沼ヒトスジシマカ小型人工容器 墓石のくぼみ 雨水マスヤマダシマカ竹切り株 樹洞 墓石のくぼみキンイロヤブカ湿地 水田ヤマトヤブカ墓石のくぼみ 岩のくぼみ 樹洞オオクロヤブカ竹切り株 肥料溜シナハマダラカ水田 湿地 用水路セスジヤブカ汽水性湿地 21

津波被災地におけるボウフラの発生場所 ボウフラの発生が認められた水サンプル数 生息場所 調査数 トウゴウ アカ / チカ イナトミ キンイロ ヤマト シナハマ オオクロ ヤブカ イエカ シオカ ヤブカ ヤブカ ダラカ ヤブカ 浄化槽 32 17 14 1 1 3 2 排水ます 2 2 コンクリート容器 3 2 1 釣り船 2 2 コンクリート基礎 1 1 排水管 1 1 排水溝 1 1 マンホール 4 1 2 1 1 金属製ボックス 1 1 1 金属製容器 1 1 水たまり 2 1 1 1 古タイヤ 1 1 バケツ 1 1 合計 52 27 20 2 2 5 4 1 22

塩分濃度とボウフラ生息場所の関係 アカ / チカイエカ トウゴウヤブカ イナトミシオカ ヤマトヤブカ シナハマダラカ 海水塩分濃度 : 約 3.5% 23

津波被災地における蚊成虫密度の季節的変化 (a) アカイエカ (b) コガタアカイエカ (c) イナトミシオカ 24

被災地における衛生害虫対策 1 殺虫剤散布による防除 2 誘殺による防除 ( 光や誘引物質 ) 3 発生源の除去 ( ハエ : 餌となるものの除去 ; 蚊 : 水たまりの除去 ) 4 屋内にハエや蚊を入れないための防虫ネットやメッシュカーテンの利用 25

引用文献 渡辺護 渡辺はるな 田原雄一郎 平尾素一 Sudipta Roychoudhury 沢辺京子 石川善大 川端健人 菅野格朗 (2012) 東日本大震災の津波被害地における疾病媒介蚊の発生状況調査. Med. Entomol. Zool. 63: 31 43. 小林睦生 葛西真治 富田隆史 渡邉登志也 二瓶直子 林利彦 橋本知幸 武藤敦彦 吉田政弘 沢辺京子 (2012) 東日本大震災による津波被災市街地における蚊幼虫の発生状況 (2011 年 ). Med. Entomol. Zool. 63: 49 54. 葛西真治 小林睦生 (2012) 東北の津波被災地で大発生した衛生害虫の写真による記録. Med. Entomol. Zool. 63: 59 69. 田原雄一郎 菅野格朗 川端健人 石川善大 田中康次郎 平尾素一 公文堅一 渡辺護 (2012) 東北被災地におけるハエ類の大発生とその防除. Med. Entomol. Zool. 63: 71 83. 林利彦 渡辺はるな 渡辺護 小林睦生 (2012) 2011 年東日本大震災津波被災地におけるハエ類の大量出現とその種構成の変遷. Med. Entomol. Zool. 63: 85 89. 26

被災地における農地復旧における害虫の問題 被災による休耕田 休耕畑 雑草の繁茂 害虫発生源の増大 害虫の種構成の変化 東日本大震災の後は 休耕田における斑点米カメムシ類の増加 斑点米カメムシ 左 : アカスジカスミカメ右 : アカヒゲホソミドリカスミカメ 27

農地復旧時における害虫対策 1 害虫の発生量調査 2 発生源の除去 除草など雑草の管理 3 モニタリングに基づいての防除の実施 28

害虫防除方法の分類 化学的防除殺虫剤の利用. フェロモンを含む誘引剤による誘殺. フェロモンによる交信撹乱. 忌避剤の利用. 物理的防除 耕種的防除 生物的防除 手などによる捕殺. 光 音による誘殺. 隠れ場所の設置 処理. 網などの隔離資材による保護. 袋掛け. 黄色蛍光灯による行動抑制. 紫外線除去フィルムによる施設への侵入防止. 紫外線反射フィルムのマルチング. 熱水 太陽熱による土壌消毒. 湛水 散水. 栽培時期を害虫発生時期からずらす. 肥培管理による健全作物育成. 圃場の清掃による害虫生息場所除去. 輪作 混作. おとり作物の植え付け. 対抗植物の栽培. 抵抗性品種の利用. 接木. 土着天敵の保護と活性化. 有力天敵の導入. 特定天敵の増殖と放飼 ( 生物農薬 ). 生殖制御による防除不妊虫放飼による根絶. 法令による規制植物検疫. 29

環境に優しく 安心 安全な農作物 食品生産のための害虫防除 高付加価値の農作物 信頼できる食品 ブランド化による地域復興 30

総合的害虫管理 (IPM) 利用可能なすべての防除技術を経済性を考慮しつつ慎重に検討し 害虫の発生増加を抑えるための適切な手段を総合的に講じるものであり これを通じ 人の健康に対するリスクと環境への負荷を軽減 あるいは最小の水準にとどめるものである 31

生物的防除法 1 土着天敵の保護と活性化天敵温存植物の利用 天敵温存植物 花粉 花蜜天敵の餌となる害虫 天敵 2 特定天敵の増殖と放飼 ( 生物農薬 ) 32

物理的防除法 光による防除 : 昆虫の光応答反応を利用 ( I ) A 誘引 B 忌避 C 明順応 D 体内時計 E 光周性 F 細胞傷害 G 視覚遮断 H 背光反応 I エッジ反応 Shimoda & Honda (2013) 33

害虫防除における光の利用 ( 誘引 ) 大量捕殺用ライトトラップ 電撃殺虫器 モニタリング用ライトトラップ 光で誘引し 電撃殺虫または捕殺昆虫の走光性を利用し 光に誘引された虫を高電圧により感電殺虫またはトラップにより捕殺 34

害虫防除における光の利用 行動抑制 ナトリウムランプ 黄色蛍光灯 LED照明 低誘虫照明 虫の好む波長を少なくし 虫の誘引 侵入を抑制 暗順応 左 明順応 右 オオタバコガの複眼 夜行性蛾類の夜間照明による行動抑制 夜間に明るくし 夜行性蛾類の交尾や産卵行動を抑制 35

害虫防除における光の利用 反射光 コナジラミ用黄色粘着板 アザミウマ用青色粘着板 色への誘引性を利用したトラップ 特定波長の反射光への虫の誘引性を利用して害虫を捕殺 黄 コナジラミ アブラムシ 青 アザミウマ など 光反射資材 シルバーマルチ 虫が光に背を向ける反応を利用 地面から光を反射させることで 上下感覚を攪乱して 着地を阻害 36

光による防除研究の最新の知見 1 赤色光によるアザミウマ防除 37

赤色蛍光灯と光反射シートによるアザミウマ類の防除 ( 施設ナス ) 38

赤色ネットによる微小害虫の侵入抑制 39

光による防除研究の最新の知見 2 青色光による殺虫技術 紫外線 青色光 可視光 赤外線 400 500 780 波長 (nm) 特許 害虫の防除方法及び防除装置 特願 2013-248457 信越半導体株式会社との共同出願特許査定 :2017 年 3 月 14 日 40

ショウジョウバエ蛹に対する各種波長光の殺虫効果 378 nm 404 nm 417 nm 440 nm 456 nm 467 nm 496 nm 508 nm 532 nm 592 nm 657 nm 732 nm DD e e de de de de cde cde cd c cd 0 20 40 60 80 100 ショウジョウバエ蛹死亡率 (%) 異なる文字間に p<0.05 で有意差あり (Steel-Dwass test 30 蛹 8 反復 ) 光強度 :3.0 10 18 photons m -2 s -1 ( 直射日光中の青色成分総量の 10~15% 程度 ) 蛹化後 24 時間以内の蛹 蛹期間中照射 41 b a

従来の技術と青色光殺虫の違い 従来技術光に対する昆虫の応答を利用した 行動制御による防除 青色光殺虫光そのものの生体への傷害作用を利用した 殺虫による防除 42

殺虫効果がこれまでに確認された害虫 ( 農業害虫 ) 加害対象 害虫種 ( 効果を確認した発育段階 ) 効果的波長 (nm) 有効光強度 ( 直射日光 : 100) 農業 アシグロハモグリバエ ( 蛹 ) 470 60 トマトハモグリバエ ( 卵 蛹 成虫 ) 420 >60( 卵 ) 60( 蛹 ) イチゴハムシ ( 卵 蛹 ) 435( 卵 ) 470( 蛹 ) 60( 卵 ) >60( 蛹 ) ミカンキイロアザミウマ ( 卵 ) 420 60 チビクロバネキノコバエ ( 卵 蛹 ) 420 20( 卵 ) 40( 蛹 ) 43

殺虫効果がこれまでに確認された害虫 衛生 貯蔵害虫 加害対象 害虫種 効果を確認した発育段階 衛生 キイロショウジョウバエ 卵 幼虫 蛹 成虫 チカイエカ 卵 幼虫 蛹 成虫 オオチョウバエ 卵 蛹 成虫 効果的波長 nm 有効光強度 直射日光: 100 405 卵 470 幼虫 470 蛹 成虫 16 卵 32 幼虫 12 蛹 420 卵 蛹 470 成虫 40 卵 40 幼虫 60 蛹 450 卵 420 蛹 貯蔵 ヒラタコクヌストモドキ 蛹 420 ヒラタチャタテ 成虫 420 20 卵 40 蛹 6 44

推察される青色光の殺虫メカニズム 光 透過光 紫外線など比較的短い波長の多くは反射 特定の波長を特に吸収 昆虫表皮個体の致死細胞の損傷 DNAの損傷 光感受性物質発色団 励起 活性酸素 45

ケミカルフリーでクリーンな害虫防除技術 青色光 照射 様々な害虫に殺虫効果 農業 食品産業 貯水 水処理 衛生 畜産業 流通 輸送 様々な場面での 新たな殺虫技術 左記以外でも様々な場面 での害虫防除対策に 環境に優しい害虫防除 安全 安心な害虫防除 クリーンな害虫防除 殺虫剤を使用できない 場所での害虫防除 全てが可能に 46

青色光殺虫装置商品化第一号ブルーケア 470 260 mm 食品 医薬品など様々な製造現場に! 殺虫剤を使用できない機械装置内部に! 距離 :45 cm 面積 :40 40 cm をカバー 特許第 6118239 号 害虫の防除及び防除装置 ( 信越半導体株式会社との共同出願 ) の技術をもとに東北大学とアース環境サービス株式会社が共同開発 47

本日のディスカッションテーマ 災害時における効率的 効果的な害虫対策 どのような方法 ( 技術 ) を組み合わせて対策をとれば良いか? 災害時の害虫対策として どのような技術開発が期待されるか? 誰がどのように対策を立て 実施すれば良いか?( 求められる組織は?) などの視点から考える 48