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Transcription:

Prüfer & Partner Patent Attorneys 欧州共同体における人工知能 (AI) と特許 日欧産業協力センター, 東京 2017 年 9 月 28 日 クリスチャン アインゼル博士欧州弁理士ドイツ弁理士プリューファー & パートナーミュンヘン, ドイツ 1

概要 I. はじめに II. III. IV. 特許性 発明者 侵害 / 先行技術 V. 指令の提案への呼びかけ 2

I. はじめに Prüfer & Partner Patent Attorneys AI 特許の関連性 世界規模の人工知能 (AI) マーケット : 2022 年までに68 億 ~134 億 に達すると予想されている 2016 年 ~2022 年の年平均成長率 62.9% AI: EU における年間特許出願件数は 2004 年 ~2014 年で 3 倍 指数関数的にさらに増大することが見込まれている 3

I. はじめに Prüfer & Partner Patent Attorneys 近年における AI 特許数の推移 (2000-2016): 出典 : Fujii & Managi, RIETI Discussion Paper Series, May 2017: Trends in AI Technology Inventions: A Global Patent Analysis 4

I. はじめに 5

I. はじめに AI 特許 : 世界規模での動きと出願戦略 : 出典 : Fujii & Managi, in: http://www.eurasiareview.com/19062017-trends-and-priority-shifts-in-artificial-intelligence-technology-invention-a-global-patent-analysis/ 6

I. はじめに AI 発明 とは? A. ( 人間の ) 発明者が人工知能の分野において技術的向上を行う ( 前のスライドの統計で使用されているとおり ) B. C. 人工知能システム ( コンピューター / 機械学習能力を備えたネットワーク, ニューラルネットワーク等 ) が任意の技術分野において技術的向上を行う AI システム自ずからが技術的向上を行う (AI) 7

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys AI 発明の特許性 2000 年の欧州特許条約 (EPC) の下では : EPC 第 52 条 (1) : 欧州特許は 産業上利用することができ 新規でありかつ進歩性を有する 全ての技術分野におけるあらゆる発明に対して付与される 特許の適格性 : 技術的特性特許性 : 新規性 進歩性 産業上の利用可能性その他の要件 : 明確性 (EPC 第 84 条 ) 実施可能要件 (EPC 第 83 条 ) 形式的要件 (EPC 規則 42 43) 8

II. 特許性 特許の適格性からの除外 : EPC 第 52 条 (2) : 次のものは特に (1) にいう発明とはみなされない (a) 発見 科学理論及び数学的方法 (b) (c) 精神的な行為 遊戯又は業務の遂行のための計画 法則及び方法 並びにコンピュータ プログラム (d) EPC 第 52 条 (3) : (2) の規定は 欧州特許出願若しくは欧州特許が同項に規定される対象又は行為それ自体に関係している範囲内においてのみ 当該対象又は行為の特許性を排除する 9

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys コンピューターが生み出した発明 (CII) としての AI 発明 : 除外されるか? 80 年代初頭以来の判例 : クレームに記載されている対象の 技術的特性 を確定する必要がある : しかし過去には : 判例は様々であることが想定される 審査官向けの明確な評価法はない 出願人にとっては不満な状況 (A) EU における措置 : 2002 年 2 月 20 日 : コンピューターが生み出した発明の特許性についての欧州議会および欧州理事会の指令に関する欧州委員会の提案 COM(2002)92 ゴール : 特に EPO の鍵となる審決の観点で法律を調和させること 10

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys EU における措置 : 続き 2003 年 9 月 24 日 : 欧州議会を通過した指令は大幅に修正された 修正 : 技術性 の定義 一般規則 2005 年 3 月 7 日 : 閣僚理事会 : 妥協版 を再提出 修正 : 逆転され 技術的特性 に後退 2005 年 7 月 6 日 : 欧州議会は提案を648 票対 14 票 棄権 18 票で否決 現状 EU レベルで確定 11

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys (B) EPO における措置 : 2016: コンピューターが生み出した発明に関する EPO 審査ガイドライン の改訂 特許の適格性 特許性 ( 進歩性 ) 及び明確性を評価するための統一的なアプローチ 修正案は EPO 審判部及び拡大審判部の過去の判例と 最新の判例を反映 特に : T1173/97 審決, T424/03 審決及び G3/08 審決 技術的特性 の観点での除外について基本的な考え方に変更はないが 独特の統一された評価が可能となるように ハードルは形式的に審査後の段階へとシフトされた 12

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys EPO における CII の審査 : 技術的特性 EPC 第 52 条 (2) クレーム : EPC 第 84 条 形式的要件 カテゴリー EPC 第 54 条, 第 56 条 新規性 進歩性 13

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys 技術的特性 (EPC 第 52 条 (2)(c) および (3)): 先行技術と無関係に評価 クレームに記載のコンピュータープログラム (T424/03)? 事例 (a): クレームに記載されているコンピュータープログラム自体 : 更なる技術的効果 : コンピューターに搭載され プログラム ( ソフトウェア ) とコンピューター ( ハードウェア ) との間の 通常の 物理的相互作用を越える更なる技術的効果が達成されるのであれば 特許可能 (T1173/97) 産業上のプロセスの制御 コンピューター自体又はインターフェースの内部機能化 例えばプロセスの効率 例えばリソースの管理 例えばデータ転送速度 ( 技術的 ) 数学的方法の実行 更なる技術的効果は一般的に知られていてもよい 事例 (b): クレームに定義されているデバイスの存在 : 埋め込まれたシステム 14

II. 特許性 Prüfer & Partner Patent Attorneys 形式的な要件 (EPC 第 84 条 ): プログラムのクレームを EPC 第 52 条に関して容易に評価できる形式にするために役立つ! 2 つの事例のうちの 1 つが適用可能 : a. 全ての方法ステップを 一般的なデータ処理手段によって完全に実行することができる ( 例えば PC スマートフォン ) b. 方法ステップが 必須の特徴として 特定のデータ処理手段及び / 又は付加的な技術的デバイスを必要とする 事例 (a): クレーム X: プログラムがコンピューターにより実行される場合に コンピューターに請求項 1 の方法 [ のステップ ] を実行させる指示を含むコンピュータープログラム [ 物 ]. 事例 (b): クレーム X: 請求項 1 の方法のステップをクレーム Y のデバイスに実行させる指示を含むコンピュータープログラム [ 物 ] 注 : 方法のクレーム 1 は コンピューターの手段を使用する場合には技術的である 注 : コンピューターで読み取り可能な プログラムを記録している媒体のクレームも技術的である 15

II. 特許性 進歩性 (EPC 第 56 条 ): 一般的な課題 解決アプローチ EPC 第 52 条に関する検討は 技術的な問題に対して技術的な解決手段が要求されることを含意している (T641/00) 技術的特性に貢献する全ての特徴が考慮される 技術的な目標に役立つ非技術的な特徴も同様 しかし 非技術的な特徴は進歩性の存在をサポートすることができない クレームが 非技術的な分野において達成されるべき目標に言及している場合 このような目標が 満たされるべき制約として課題の定式化に現れていても妥当である 16

II. 特許性 ステップ : (i) 発明の技術的特性に貢献する特徴を認定する ( 外見上 ) (ii) ステップ (1) で認定した特徴に基づいて 先行技術 ( 最も近い先行技術 ) における適切な出発点を選択する 改訂後のガイドライン : 目下の 4 つの例 (iii) 最も近い先行技術との相違点を認定する. (iv) これらの相違点の技術的効果を認定し これらの相違点から技術的に貢献する特徴と 技術的に貢献しない特徴とを認定する (a) 相違点が存在しない ( 非技術的な相違点すら存在しない ) 場合 : 第 54 条で拒絶 (b) 相違点は存在するが 技術的に貢献するものではない場合 : 第 56 条で拒絶 (c) 相違点が技術的に貢献する特徴を含んでいる場合 : これらの特徴により達成される技術的効果に基づいた客観的な技術的課題を規定 クレームに記載の解決手段が明白である場合 : 第 56 条で拒絶 17

III. 発明者 発明の主体としての AI システム? 会社 A: 開発および製造 AI プログラム 会社 B: AI システムを所有 AI システム 会社 C: リソースを提供し AI システムを操作 リソース 発明者は誰か? 発明を認識 B,C 又は D のメンバー : アウトプットを検討 アウトプット 会社 D: 特定の適用のための学習データを規定 データ 18

III. 発明者 EPC による規定 (1): EPC 第 60 条 : 欧州特許を受ける権利 (1) 欧州特許を受ける権利は 発明者又はその承継人に属する 発明者が従業者である場合, 欧州特許を受ける権利は 従業者が主に雇用されている国の法律に従って決定される (2) (3) 欧州特許庁における手続については 出願人は欧州特許を受ける権利を行使する権利があるものとみなされる 19

III. 発明者 EPC による規定 (2): EPC 第 61 条 : 欧州特許を受ける権利を有さない者による欧州特許出願 (1) 出願人でない者が最終的な決定によって欧州特許の付与を受ける権利を有すると判断された場合 その者は 議定書に基づいて 次の何れかをなすことができる : (a) 手続を進めること (b) 出願をすること (c) 請求をなすこと 20

III. 発明者 EPC による規定 (3): EPC 第 62 条 : 発明者の掲載権発明者は 欧州特許出願人又は欧州特許権者に対し 欧州特許庁において発明者として掲載される権利を有する EPC 第 81 条 : 発明者の表示欧州特許出願には発明者を表示する 出願人が発明者でないか又は単独の発明者でない場合は表示は欧州特許を受ける権利の発生を示す陳述を含む 21

III. 発明者 EPC による規定 (4): EPC 規則 19: 発明者の指定 (1) 指定書には 発明者の姓 名 完全な宛先を記載し 第 81 条にいう陳述を含め 更に出願人又はその代理人の署名を付す (2) 欧州特許庁は 発明者の指定の正確性については確認しない (3) EPC 規則 60 によれば 発明者は遅くとも出願の 16 ヶ月後に指定されなくてはならない さもなければ出願は拒絶される! 22

III. 発明者 発明の定義 : 知的な ひいては個人による創作としての発明は 発明者に由来するものであり 発明者は常に自然人でなくてはならない (cf. Singer/Stauder, 7 th ed., 2016 (Legal Commentary to the EPC): Art. 60 EPC, 欄外注釈 4) 目下の EPC では AI システムが発明者になることは許されていない 実際には多くの場合において 自然人が少なくとも共同発明者の一人でありうる いずれも以下に貢献しているからである 解決すべき課題の設定すること 及び / 又は アウトプットを検討し 発明の存在を認識すること EP 特許取得のための形式的な要件を問題なく満たす 23

III. 発明者 Prüfer & Partner Patent Attorneys しかし法的な状況は依然として不十分 : 会社 A~D 間での権利の承継は 発明者の貢献が将来的に消滅する場合には未解決 会社 A B C D は AI システムのオペレーションを開始する前に共通の契約書で権利の帰属を明確にすべきである 上記の議論に戻ってみると : さらに : 発明者がいないのであれば 発明も存在しないことになるかもしれない その場合 EPC 第 52 条 (1) の要件は満たされないため 特許の適格性も満たされないことになるか? 世間で議論されている 1 つのアイデア : 発明と認められる要素としてセレンディピティ? 24

IV. 侵害 / 先行技術 Prüfer & Partner Patent Attorneys その他の問題 : AI システムによる特許侵害 : - 侵害は目下 各国の法律によって処理される (EPC 第 64 条 (3)) - 法的枠組みは十分か? ( 発展途上の判例による取り組みも考えられる ) 先行技術 : - アート プロジェクト 全ての先行技術 ( 公開された特許から 考えられる限り意味のある特徴の組合せを継続的に生みだす AI システム ) - 人間が関与することなく AI が生みだした発明は一般に先行技術から除外されるか? ( 区別が難しい ) 25

V. 指令の提案への呼びかけ Prüfer & Partner Patent Attorneys AI 開発における進歩の時間スケール : スティーブン ホーキング : AI の短期的な影響は AI をコントロールする人次第だ ; 長期的な影響は そもそも AI をコントロールできるのか次第だ レイ カーツワイル (2005): 2029 年までにはチューリング テストに合格するだろう 2045 年頃には, 変化のペースが驚異的に早くなり 我々は自分たちで創造しているインテリジェント機械と自分たちの知性とを併合して自身の知性を高めないかぎり ついていくことはできなくなるだろう 26

IV. 指令の提案への呼びかけ 欧州連合における措置 : 欧州議会による決議 2015/2103(INL) ロボティクスにかかる民法規則に関する欧州委員会への提言 : 451 票対 138 票 棄権 20 票で 2017 年 2 月 16 日に採択 EU は AI に関して新たな産業革命を認識 ロボット工学および人工知能の開発は EU レベルでの迅速な介入が必要な法的および倫理的問題を提起する 常に人間がインテリジェント機械を管理することの保証を希望 スマートロボットの登録 : 登録が必要になるであろうロボットを分類するための基準を確立 ロボット工学と人工知能のための欧州機関の整備 27

IV. 指令の提案への呼びかけ 決議 2015/2103(INL) 続き : 知的財産権 : メンバーは ロボット工学が採用されうる各種方面で適用可能な 水平で技術的に中立的な知的財産へのアプローチを委員会がサポートすることを要求 技術革新を保護すると同時に促進するハードウェア及びソフトウェアの標準及び慣例に適用された場合に 知的財産に対してバランスのとれたアプローチ コンピューター又はロボットによりつくり出された著作権により保護することができる作品について 自身の知的な創作 のための 基準の精密化 が要求される 特許は導入部で言及されているにすぎない そもそも特許法はここで関係があるのか? 28

IV. 指令の提案への呼びかけ 決議 2015/2103(INL) 続き : 責任問題 : 今後 10 ~15 年の間に予測されるロボット工学及び人工知能の開発と利用に関する法的な質問に関して 非立法措置 たとえばガイドラインや行動規範と組み合わせた立法措置の提言を要求 考えられうる限りの法的ソリューションの含意を精査 : 強制加入保険制度 長期的にはロボットのための具体的な法的地位を策定 29

ご静聴ありがとうございました! クリスチャンアインゼル博士プリューファー & パートナー mbb 知財法律事務所 Sohnckestr. 12, D-81749 Munich, Germany office@pruefer.eu www.pruefer.eu 電話 : +49 89 69 39 21-0 / Fax: +49 89 64 22 238 30