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Microsoft Word - Report (北村)最終版2.docx

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Microsoft Word - notes①1210(的場).docx

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三世代で暮らしている人の地域 親子関係 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部研究開発室的場康子 < 減り続ける > 戦後 高度経済成長を迎えた我が国においては 産業構造の変化により都市化 工業化が進む中で 多くの人が地方から都市に移動し核家族化が進んだ 低成長経済に移行した後

2008/3/4 調査票タイトル : ( 親に聞く ) 子どものダイエットについてのアンケート 調査手法 : インターネットリサーチ ( ネットマイル会員による回答 ) 調査票種別 : Easyリサーチ 実施期間 : 2008/2/22 14:28 ~ 2008/2/22 21:41 回答モニタ数

「学び直し」のための教育訓練給付制度の活用状況|第一生命経済研究所|的場康子

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調査実施の背景 わが国では今 女性活躍を推進し 誰もが仕事に対する意欲と能力を高めつつワークライフバランスのとれた働き方を実現するため 長時間労働を是正し 労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得促進策など労働時間制度の改革が行なわれています 年次有給休暇の取得率 ( 付与日数に占める取得日数の割合

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

Microsoft Word - Notes①1201(小谷).doc

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平成24年度高齢者の健康に関する意識調査結果 食生活に関する事項

man2

第2章 調査結果の概要 3 食生活

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日本医師会男女共同参画についての男性医師の意識調査 クロス集計

「夫婦関係調査2017」発表

第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

調査実施の背景 わが国は今 人口構造の変化に伴う労働力の減少を補うため 女性の活躍を推進し経済成長を目指しています しかし 出産後も働き続ける女性は未だ多くないばかりでなく 職場において指導的な立場に就く女性も少ない状況が続いています 女性の活躍を促進させるためには 継続就業のための両立支援策ととも

Microsoft Word 年1月(リリース).doc

PowerPoint プレゼンテーション

2 夜食 毎日夜食をとっている者は では 22.5%( 平成 23 年 23.9%) であり で % と割合が高い では 18.3%( 平成 23 年 25.2%) であり 40 歳代で割合が高い 図 夜食の喫食状況 (15 歳以上 性別 年齢階級別 )

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 30~60 代の既婚男女 2. サンプル数 800 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2006 年 1 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 769 名 (96.1%

特定保健用食品等の在り方に関する専門調査会 報告書46~63ページ

結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

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調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

調査の実施背景 介護保険制度が 2000 年に創設されてから 10 年余りが過ぎました 同制度は 家族介護をあてにせずに在宅介護ができる支援体制を整えることを目的として発足されたものですが 実際には 介護の担い手としての家族の負担 ( 経済的 身体的 精神的負担 ) は小さくありません 今後 ますま

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出産・育児調査2018~妊娠・出産・育児の各期において、女性の満足度に影響する意識や行動は異なる。多くは子どもの人数によっても違い、各期で周囲がとるべき行動は変わっていく~

質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業

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人生100年時代の結婚に関する意識と実態

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調査の概要 本調査は 788 組合を対象に平成 24 年度の特定健診の 問診回答 (22 項目 ) の状況について前年度の比較から調査したものです 対象データの概要 ( 全体 ) 年度 被保険区分 加入者 ( 人 ) 健診対象者数 ( 人 ) 健診受診者数 ( 人 ) 健診受診率 (%) 評価対象者

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アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国に居住する 20 歳から 59 歳の会社員の男女 2. サンプル数 700 名 3. サンプル抽出方法第一生命経済研究所生活調査モニター 4. 調査方法質問紙郵送調査法 5. 実施時期 2007 年 2 月 6. 有効回収数 ( 率 ) 601 名

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

平成29年高齢者の健康に関する調査(概要版)

質問 1 敬老の日 のプレゼントについて (1) 贈る側への質問 敬老の日 にプレゼントを贈りますか? ( 回答数 :11,202 名 ) 敬老の日にプレゼント贈る予定の方は 83.7% となり 今年度実施した父の日に関するアンケート結果を約 25% 上回る結果となった 敬老の日 父の日 贈らない

単身者の生活実態を明らかにするために、都心に勤務する就労単身者へのアンケート調査を行った

「終活」に関する意識調査

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

日常的な食事に関する調査アンケート回答集計結果 ( 学生 ) 回収率 平成 30 年 12 月 1 日現在 134 人 問 1 性別 1 2 男性女性合計 % 97.0% 100.0% 3.0% 男性 女性 97.0% 問 4 居住状況 家族と同居一人暮らし

調査結果のポイント 家族の健康 1: 配偶者が病気になった場合の不安 (P.13) 3 大不安は 病気が治らないこと 身体的な苦痛 精神的な苦痛 配偶者が有職の場合 4 人に 3 人は 働き方を変えざるを得なくなること 仕事を続けられなくなること にも不安 家族の健康 2: 子どもが病気になった場合

ウ食事で摂る食材の種類別頻度野菜 きのこ 海藻 牛乳 乳製品 果物を摂る回数が大きく異なる 例えば 野菜を一週間に 14 回以上 (1 日に2 回以上 ) 摂る人の割合が 20 代で 32% 30 代で 31% 40 代で 38% であるのに対して 65 歳以上 75 歳未満では 60% 75 歳以

「いい夫婦の日」アンケート結果2011

睡眠調査(概要)

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平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 日常生活に関する事項

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『いい夫婦の日』夫婦に関するアンケート調査 【プレゼント編】調査報告書

調査概要 調査対象 : 東京都 愛知県 大阪府 福岡県の GF シニアデータベース 有効回答件数 :992 件 標本抽出法 :GF RTD( ランダム テレフォンナンバー ダイアリング ) 方式 調査方法 : アウトバウンド IVR による電話調査 調査時期 : 平成 23 年 8 月 4 日 (

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

25~34歳の結婚についての意識と実態

 

表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

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相対的貧困率の動向: 2006, 2009, 2012年

よく登場する主食メニューは 家庭ではカレー 和風めん類 単身男性はカレー チャーハン 単身女性は和風めん類 パスタ あらかじめ 65 項目のメニューの選択肢を挙げ 月に 1 回以上 食卓に登場するメニューを聞きました 主食メニューをみると 主婦の回答では カレー 和風めん類 ( そば うどん等 )

~「よい夫婦の日」、夫婦間コミュニケーションとセックスに関する実態・意識調査~

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PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - Notes1107(水野).doc

( 2 ) % % % % % % % % 100% 20 90% 80% 70% 60%

夫婦間でスケジューラーを利用した男性は 家事 育児に取り組む意識 家事 育児を分担する意識 などに対し 利用前から変化が起こることがわかりました 夫婦間でスケジューラーを利用すると 夫婦間のコミュニケーション が改善され 幸福度も向上する 夫婦間でスケジューラーを利用している男女は 非利用と比較して

 

出産・育児・パートナーに関する実態調査(2015)

第 3 章 保護者との関わり 子育て支援 に来園する親子の平均組数は 国公立で 14.1 組 私立で 19.2 組だった ( 図 表 3-3-1) では どのようなことを親子は体験しているのだろうか 実施内容について複数回答で聞いたところ 私立幼稚園と国公立幼稚園で違いがみられた (

平成17年5月11日

Ⅳ 第 2 次計画の目標 : 第 2 次計画で新たに設定した項目 府民主体 府民と行政と団体 行政と団体 1 内 容 新 規 栄養バランス等に配慮した食生活を送っている府民の割合 2 朝食欠食率 第 1 次計画策定時 35 現状値 第 2 次計画目標 第 2 次基本計画目標 24% 15% 60%

Microsoft Word - Notes1104(的場).doc

調査研究方法論レポート

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

小学校 第○学年 学級活動(給食)指導案

厚生労働科学研究費補助金

「いい夫婦の日」アンケート結果 2014

「いい夫婦の日」アンケート結果 2015【プレゼント編】

◎公表用資料

PowerPoint プレゼンテーション

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25~44歳の出産・子育ての意識と実態

調査概要 調査名 : おせち料理と正月に関する意識調査 調査方法 :WEB モニターによるアンケート 対象 :20~60 歳代男女 実施期間 : 平成 27 年 10 月 9 日 ~10 月 12 日 サンプル数 :1,000 人 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 女性 100 人

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Press Release

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「高齢者の健康に関する意識調査」結果(概要)1

表紙

調査の背景 埼玉県では平成 29 年度から不妊に関する総合的な支援施策として ウェルカムベイビープロジェクト を開始しました 当プロジェクトの一環として 若い世代からの妊娠 出産 不妊に関する正しい知識の普及啓発のため 願うときに こうのとり は来ますか? を作成し 県内高校 2 年生 3 年生全員

「Debate in Portuguese《というイベントのアンケートの結果

Transcription:

高齢期の独居化と食生活の変化 上席主任研究員北村安樹子 < 夫の定年と 自宅 の変化 > 定年退職を迎えた夫が毎日自宅で過ごすようになり 日中夫が家にいることや 夫の昼食の支度を気にしなくてはならなくなった妻がストレスを感じる という話を聞くことがある 現在 60~70 代の夫婦には 現役時代から食事の準備を含めて家事全般はもっぱら妻の役割という生活を送ってきた人が少なくない このような場合 現役時代は仕事中心の生活をしてきた夫が 定年退職によってそれまでは名ばかりだった わが家 でようやくゆっくり過ごせるとの思いでいるのに対し 妻の側は それまで1 人で自由に過ごしていた わが家 に昼食の世話を必要とする存在が突如現われて 自身の自由時間が侵食されるように感じるらしい 筆者の周囲にも 定年を迎えた夫が自宅で日中を過ごす時間が増えて以来 それまでは気軽に訪れていた女友達がさっぱり来なくなった と嘆く60 代の女性がいる 彼女のように 子どもが無事巣立ち 夫婦で悠々自適のセカンドライフと聞けば 現役世代からみると何とも理想的な老後のようにみえる しかし 本人にすれば 自身のペースで過ごしていた日常生活が 夫の定年を機に大きく変わってしまったようである このような状況を防ぐためか 最近では互いの負担にならないよう 夫の定年後はせめて昼食は各々で食べるのを原則にしたり 食事の支度は夫が担当するという夫婦もいると聞くが 実態はどうなっているのだろうか また 夫婦 2 人暮らし世帯の男女が 配偶者の死亡等を経て将来 1 人暮らしになった場合 食生活の面ではどのような変化が生じるのか 本稿では 今年 1 月に実施した 別居する子どもがいる60~70 代の夫婦 2 人世帯の男女を対象とするアンケート調査から 彼らのふだんの食生活の実態とともに 将来 1 人暮らしになった場合に生じる変化について考えてみたい 調査の概要は 図表 1のとおりである 図表 1 アンケート調査の概要 調査対象 人口 10 万人以上の都市に居住し 別居の子どもがいる60~70 代の夫婦 2 人世帯男女 サンプル数 1,514 名 調査方法 インターネット調査 ( 株式会社クロス マーケティングのモニター ) 調査時期 2016 年 1 月 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Autumn 2016.10 35 ( ホームページの掲載は 2016 年 8 月 )

<ふだんの食生活にみられる男女差 > 図表 2は 夫婦双方の健康状態に問題がなく 男性は自身が就労していない 女性は夫が就労していないと答えた人にふだんの食生活についてたずねた結果を示したものである これをみると 食事は自分でつくることが多い では女性の94.6% があてはまると答えたのに対し 男性では17.3% であった ふだんの食事づくりを中心的に担っているのは やはり妻という人が多い また さまざまな食品 メニューをとるよう気をつけている では 女性の87.5% があてはまると答えたのに対し 男性では78.6% であった これに対して 腹八分目を心がけている では 男性の 78.4% があてはまると答えたのに対し 女性では73.3% であった ふだんの食生活に関して 女性では男性に比べて多様な食品やメニューをとることを意識しているのに対し 男性は女性に比べて食事の量を節制することへの意識が高い 食事は自分でつくることが多い 食事は 1 人で食べることが多い 朝食を食べないことが多い 間食や夜食をとり過ぎないよう気をつけている 図表 2 ふだんの食生活の実態 ( 性別 ) 0 20 40 60 80 100 (%) 男性 6.8 10.5 17.3 17.3 女性 74.4 94.6 20.2 94.6 4.3 9.7 14.0 8.8 2.3 6.5 3.2 3.8 7.6 4.5 3.1 36.8 33.0 14.0 8.8 7.6 83.6 81.9 46.8 48.9 83.6 81.9 栄養バランスのとれた食生活をしている 34.9 91.4 92.0 56.5 52.8 91.4 92.0 お酒を飲みすぎないよう気をつけている 30.0 44.0 72.7 42.7 73.8 29.8 72.7 73.8 甘いものの食べすぎに気をつけている 22.2 21.9 49.7 71.9 48.3 70.2 71.9 70.2 腹八分目を心がけている 21.9 21.6 78.4 56.5 51.7 73.3 78.4 73.3 さまざまな食品 メニューをとるよう気をつけている 19.7 29.3 78.6 58.9 87.5 58.2 78.6 87.5 食費の節約を心がけている 男性 9.2 3 46.2 女性 10.2 49.4 あてはまる ややあてはまる 注 1: 分析対象者は 夫婦双方の健康状態について よい まあよい ふつう と答えた人のうち 自身の就労状況について現在 働いていない と答えた男性 370 人 および配偶者の就労状況について 働いていない と答えた女性 352 人注 2: 斜体は あてはまる ややあてはまる の合計割合 36 Life Design Report Autumn 2016.10 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

< 将来 独居化した場合の食生活の変化 > では 将来 配偶者が死亡するなどして1 人暮らしになった場合 ふだんの食生活にはどのような変化が生じるのだろうか 図表 3は 食生活のさまざまな側面について 将来 1 人暮らしになった場合にどのような変化があると思うかをたずねた結果である 独居化しても 変わらない と答えた人がもっとも多かった項目もあるが 1 人暮らしになることは 食生活に関するいくつかの側面でさまざまな変化をもたらすようである 男女に共通して 増えると思う と答えた人が多かったのは 食事を1 人で食べること 栄養バランスの偏った食生活をすること 好きなものや同じものばかり食べてしまうこと の3 項目であった これらの点は 夫婦 2 人暮らしからの独居化によって 男女にかかわらず 比較的多くの人に想定される食生活の変化だと考えられる 図表 3 将来 1 人暮らしになった場合の食生活の変化 ( 性別 ) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 男性 54.1 32.2 13.8 食事を自分でつくること女性 13.6 57.1 29.3 食事を 1 人で食べること 56.5 69.7 37.2 25.4 4.9 6.2 朝食を食べないこと 11.9 8.2 76.8 81.0 11.4 10.8 間食や夜食をとりすぎてしまうこと 14.6 11.4 66.8 69.9 18.6 18.8 栄養バランスの偏った食生活をすること 37.2 46.2 49.7 38.6 15.1 13.1 お酒を飲みすぎてしまうこと 6.0 20.8 67.9 62.7 26.1 16.5 甘いものを食べ過ぎてしまうこと 13.8 18.5 65.7 68.2 20.5 13.4 好きなものや同じものばかり食べてしまうこと 48.4 45.7 43.0 44.6 8.6 9.7 食費を節約すること 19.7 29.0 72.4 67.3 7.8 3.7 増えると思う変わらない減ると思う 注 : 分析対象者は図表 2 に同じ 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Autumn 2016.10 37

将来一人暮らしになった場合に食事を自分でつくることWatching 一方 男女で最も大きな差がみられたのは 食事を自分でつくること であり 男性では54.1% が 増えると思う と答えたが 女性では13.6% にとどまった 女性の場合 変わらない と答えた人が 57.1% を占めてもっとも多いが 減ると思う と答えた人も29.3% となっている 女性のなかには 夫婦 2 人暮らしでいる間と同様に 1 人暮らしになっても自分で食事をつくる生活習慣が 変わらない と感じている人と 夫を失って1 人暮らしになれば それまでのようには自分で食事をつくらなくなるだろうと感じている人がいることがわかる 後者のような女性では 同居する配偶者の存在が 食事づくりの動機になっている面もあると考えられる < 男性では食事をつくる機会の 増加 女性では 減少 が課題 > 最後に 1 人暮らしになった場合に食事を自分でつくる機会の変化に関する回答結果によって 食生活の他の側面における変化についての回答結果がどのように異なるのかをみてみよう 図表 4は 将来 1 人暮らしになった場合に 栄養バランスの偏った食生活をすること 好きなものや同じものばかり食べてしまうこと という2つの側面がどのように変化すると思うかについての回答結果を 自分で食事をつくる機会の変化についての回答結果別に示したものである これをみると 将来 1 人暮らしになった場合に 自分で食事をつくることが 増える と答えた男性では 栄養バランスの偏った食生活をすること や 好きなものや同じものばかり食べてしまうこと が 増える と答えた人がそれぞれ5% 62.5% を占める よく言われるように 妻に先立たれた夫が1 人暮らしになると 自分で食事をつくる機会が増えて 不慣れな自炊への対処や栄養バランスの偏りといった問題が生じやすいと感じている人が多いことがうかがえる 図表 4 将来 1 人暮らしになった場合の食生活の変化 ( 性 自分で食事をつくる機会の変化別 ) 栄養バランスの偏った食生活をすること 好きなものや同じものばかり食べてしまうこと 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0% 20% 40% 60% 80% 100% < 男性 > 増える (n=200) 変わらない (n=119) 減る (n=51) < 女性 > 増える (n=48) 変わらない (n=201) 減る (n=103) 5 30.0 26.9 59.7 49.0 23.5 39.6 43.8 31.3 61.7 47.6 29.1 13.0 13.4 27.5 16.7 23.3 62.5 31.0 6.5 26.1 45.1 39.6 35.8 64.7 37.5 56.7 9.2 15.7 22.9 7.5 68.0 24.3 7.8 増える変わらない減る 増える変わらない減る 注 : 分析対象者は図表 2 に同じ 38 Life Design Report Autumn 2016.10 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部

一方で 女性の中には配偶者を失って将来 1 人暮らしになった場合に 自分で食事をつくることが 減る ことで 自身の食生活の規律を失ってしまう可能性を感じている人が少なくないようである 例えば 将来 1 人暮らしになった場合に 自分で食事をつくることが 減る と答えた女性では 栄養バランスの偏った食生活をすること や 好きなものや同じものばかり食べてしまうこと が 増える と答えた人がそれぞれ47.6% 68.0% を占める < 高齢期における 食事づくり の意味 > このようにみると 今回の調査対象である60~70 代の女性には 日々の食事づくりが 自身の健康や食生活の規律の維持につながっている人も少なからずいることがうかがえる 一般的に 家事が不得手なことの多い男性が配偶者を失った場合の方が 女性が配偶者を失った場合に比べて日常生活に問題が生じやすいイメージがある この世代の夫婦 2 人暮らしの男女の老後に関しても そうした言説を耳にしたことのある人は多いだろう 一方で この世代の夫婦 2 人暮らし世帯には 働きづめの現役時代を終え ようやく わが家 で過ごせるようになった夫のための食事づくりが むしろ妻自身の健康維持にも役立っているケースがあることも もう少し注目されてよいのではないか 近年 高齢期の生活において 自身が他者に支援を提供する存在だと感じられることの重要性が注目されている 男女にかかわらず 多くの人にとって老いに向き合う過程は 心身の衰えを実感したり 社会におけるさまざまな役割を失っていく時期に重なる そのようななかで 配偶者に限らず 自分のつくる料理を必要としたり 評価する存在がいることは 身体の健康の面だけでなく 自分の役割や存在価値を直接的に実感できるという点で 精神的な支えとして大きな意味をもつ場合もあるのだろう 他者へのサポート提供に負担や重荷を感じながらも それらに自身の役割や存在価値を感じる状況は 何も食事づくりという行為や夫婦という関係性の間に限ってみられる現象ではない 子どもの巣立ちを迎えて以降の夫婦のライフデザインという観点からは 負担や手間といったネガティブな面が強調されることの多い日々の食事づくりや ともに年を重ねた配偶者のつくる食事を食べることが 互いの生活習慣や健康の維持にも役立っている面があることも知っておきたい ( 研究開発室きたむらあきこ ) 第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 Life Design Report Autumn 2016.10 39